5G基礎知識

【総務省の5G政策】国が掲げる5Gの普及計画と産業応用6分野

【総務省の5G政策】国が掲げる5Gの普及計画と産業応用6分野

【2026年8月 追記】

本記事は2020年当時の政策・制度に関する記事です。2026年現在、総務省の整備目標に沿って5G基地局は30万2,118局(2024年度末・2025年3月末)まで拡大し、人口カバー率は98.6%(2025年度末)に達しました。次の政策テーマは5G SA方式の展開と、2030年代の6G(Beyond 5G)に移っています。

世界各国は国策として5Gを推進しています。

アメリカと中国の5G戦争とも言われるファーウェイを巡る争いは、5G通信がいかに国家にとって重要なのかを物語っています。

【5G戦争】ファーウェイはなぜ問題なのか?日本の対応と今後の動向

では、日本政府は5Gに対してどのようなスタンスで拡大発展を期待しているのでしょうか?

総務省が2019年6月に発表した第5世代移動通信システム(5G)の今と将来展望から、国が考える5G通信インフラの展望と、全国展開への道、さらにはローカル5Gの普及計画などについて詳しく解説していきます。

総務省が5Gに期待する分野

総務省が5Gに期待する分野

総務省が5Gに期待しているのは、5Gによって「スマホが速くなる」というだけではありません。

5Gによって進展する分野は様々な産業に及んでいます。

第5世代移動通信システム(5G)の今と将来展望では、具体的に以下の6つの分野での活用を期待しています。

  • 救急医療
  • 農業
  • 建設現場
  • 防災・減災
  • 地方での移動手段
  • 買い物

総務省が5Gによる大きな変革を期待する6つの分野の問題点と5Gによるソリューションについて詳しく解説していきます。

救急医療

5Gによって救急医療現場の変化が期待されています。

近年、救急出動件数は右肩上がりに増えており 、平成30年の出動件数は約660万件と過去最高を毎年更新しています。

5Gになると遅延性がなくなり、遠隔地からでも緊急治療を行うことができるようになります。

救急車や救急ヘリなどの中で遠隔手術を行うことができるようになれば、専門医が離れたところから適切な処置を施すことができるようになります。

【医療と5G】5G時代の医療の未来を考える

農業

5Gが農業分野でもイノベーションを起こすことを総務省は提示しています。

農業就業人口は65歳以上が全体の6割、75歳以上が3割と農業従事者の高齢化が進んでいます。

5Gの多接続性、低遅延性を生かせば、生産現場への多数のセンサー設置、農機の遠隔操作などが可能になります。

これによって、農業用センサーの設置、給餌ロボット、散水・薬剤散布ドローンなどが農業現場に導入できます。

この実現により、自宅からの農作業管理が可能になるでしょう。

高齢者が自宅にいながら質の高い農業を実現することができるようになります。

【2026年最新】5Gスマート農業とは?活用事例・ローカル5G・導入の課題を徹底解説

建設現場

5Gは建設現場でも大きな変化を起こすことが期待されています。

日本全体で高齢化は深刻ですが、建設業は他の業種と比較してさらに高齢化が深刻な業種です。

平成28年時点で、55歳以上の割合は約34%であるのに対して、29歳以下は約11%と他の業種よりも高齢化が深刻です。

5Gになれば遅延がなくなるので、様々な建設重機などを遠隔操作できるようになります

ドローンを活用した高精度な測量や建機の遠隔・自動操縦等が実現すれば建設現場の仕事のやり方が変わると総務省は期待しています。

防災・減災

5Gは防災・減災の分野でも社会を大きく変えることが期待されています。

言うまでもなく、近年日本では地震や水害などの多くの災害が発生しています。

遠隔操作による災害現場での遠隔医療はもちろん、5Gは減災にも寄与するでしょう。

例えば、街の中に多数設置された高精細な映像センサーによりデータを収集、活用することで、リアルタイムに災害情報を網羅的に把握することができます。

収集・分析した情報から被災者に最適な避難経路情報を迅速に届けることができるようになるため、「災害に強い社会」の実現を期待することができるでしょう。

地方での移動手段

5Gは交通手段、特に地方都市での交通手段の変革にも期待されています。

乗合バスの廃止など、地方では公共交通手段の減少が深刻です。

ここ数年で1万キロ以上の乗合バス路線が廃止されており、今後もその流れは止まりそうにありません。

5Gには遅延がほとんどないので、自動運転の実現が期待されています。

自動運転システムが実現することで、公共交通機関が利用しにくい地域でも、自動運転タクシーを呼び出し、過疎地域においても好きな時に好きな場所に出かけることができるようになります。

5Gによって高度モビリティ社会の実現を総務省は提唱しています。

買い物

5Gによって買い物のしかたにも変革が起こることが期待されています。

5Gによって身のまわりのあらゆるモノがインターネットにつながる本格的なIoT時代が到来すると言われています。

例えばスーパーで全ての商品にセンサーを設置することで、無人レジの実現、センサーが在庫状況を把握し商品を自動補充、購入した商品の賞味期限の把握と消費者への通知などが実現できる可能性があります。

総務省は5Gによって買い物や小売店の効率化の実現も提唱しています。

ちなみに総務省は5Gによる社会変革のイメージ動画を公開しています。映像で未来の社会像をつかみたい方は、あわせて視聴してみてください(総務省の5G紹介動画|YouTube)。

総務省主導ですでに5Gの実証実験が始まっている

総務省主導ですでに5Gの実証実験が始まっている

総務省は2019年に「5G利活用アイデアコンテスト」を開催して地方発のユニークな利活用アイデアを募集しました。

応募されたアイデアは、大きく次の4系統に分かれます。

  • 作業現場の安全と体験の拡張…「クレーン作業の安全確保」「5G+AR+AIによる音の視覚化」「5G×BodySharing技術による観光イノベーション」
  • 地方都市が抱える課題の解決…「雪害対策」「濃霧中の運転補助」「ゴルフ場でのラウンド補助」
  • 産業とエンターテインメントの効率化…「酪農・畜産業の高効率化」「選手と観客の一体感をもたらすスポーツ体験」「高齢者の見守り・行動把握」
  • 未来都市の実装…「ドローンによるスポット街燈+警備サービス」「災害時に避難誘導を担うペットロボット」「サイバー空間アバターを使った自律協調型ドローン」

5Gの産業応用では、私たちの「あったらいいな」を超えるアイディアが数多く応募され、そして実際に実証実験までスタートしているものも多数あります。

大手キャリアに5Gの周波数を割り当て

総務省主導ですでに5Gの実証実験が始まっている

5Gの普及には大手キャリアが5Gの通信網を構築することが欠かせません。

総務省は5Gに対して3.7GHz4.5GHz28GHzの3つの周波数を合計10枠をキャリアに対して用意しました。

周波数 枠数
3.7GHz 5枠
4.5GHz 1枠
28GHz 4枠

この枠を全国展開のスピード感や基地局設置数などによってキャリアを評価した上で、割当数を決定しています。

総務省がキャリアを評価するための基準を理解することによって、今後の5G通信網が全国的にどのように構築されていくのかを知ることができます。

大手キャリアへの周波数割当の審査基準について詳しくおさらいしていきましょう。

総務省が考える5G全国展開のイメージ

総務省は日本地図を10km四方のメッシュに区切って、メッシュ毎に5Gの高度特定基地局を整備することで、日本中に5Gの広範な5G通信網を構築する計画です。

具体的には以下の計画で総務省は5G通信網を日本中に網羅することとしています。

  1. 全国及び各地域ブロック別に、5年以内に50%以上のメッシュで5G高度特定基地局を整備する。(全国への展開可能性の確保)
  2. 周波数の割当て後、2年以内に全都道府県でサービスを開始する。 (地方での早期サービス開始)
  3. 全国でできるだけ多くの特定基地局を開設する。 (サービスの多様性の確保)
  4. MVNOへのサービス提供計画を重点評価(追加割り当て時には提供実績を評価)

5年以内に50%以上の範囲で5G基地局の整備を行い、周波数の割り当て後には2年以内に全都道府県でサービスを展開するという計画になっています。

実際にドコモは2020年6月には全都道府県でサービス開始予定を発表していますし、基地局整備で遅れているソフトバンクや楽天モバイルも2年後にはなんらかの形で全都道府県でのサービス開始をしなければならないでしょう。

さらに、総務省は4番目の評価基準として「MVNOへのサービス提供計画を重点評価」をあげているので、将来的にはMVNOでも5Gが利用できる見込みです。

格安5G SIM」なども登場するかもしれません。

  • 5年以内に日本国土の50%に基地局を整備
  • 2年以内に全都道府県で5Gを実施
  • 将来的にはMVNOにもサービス提供

これが総務省の5Gの基本整備計画です。

キャリアの評価基準

総務省は、各キャリアへ周波数を割り当てるにあたって、割り当て数に関する審査を行いました。

総務省がキャリアを評価する基準は以下の3点です。

  1. 「全国への展開可能性の確保」→ 5Gを展開する可能性を広範に確保できているかを評価
  2. 「地方での早期サービス開始」→ 全都道府県におけるサービス開始時期を評価
  3. 「サービスの多様性の確保」 → 全国における特定基地局の開設数や5G利活用に関する計画を評価

総務省の5G通信網計画やキャリアの評価基準を受けて、各キャリアな5G通信網の整備計画を以下のように発表しています。

5G特定基地局の開設計画に係る認定申請の概要 28

ドコモは2024年までに約8,000億円を投資して、97%のカバー率を実現する予定です。

KDDIは約4,600億円を投資して93%のカバー率を実現予定、ソフトバンクと楽天は投資額が少ないので、総務省の「50%以上」という基準をギリギリ超える程度の見込みとなっています。

2024年になってもソフトバンクや楽天モバイルでは、地方で5Gが繋がらない場所が多いかもしれません。

また、各社MVNOサービスへの提供も計画しています。

キャリアの評価プロセス

総務省はキャリアの整備計画を以下のプロセスで評価して周波数の割当てを実施しました。

各社が最低限の基準を満たしているかをまず審査し、その後に各社の計画を比較して順位を決定。

その後、希望順に周波数を割り当てていくという流れです。

割り当ての結果

上記の基準からキャリアへの周波数の割当審査が行われ、結果的には以下のように割当られました。

評価が最も高かったのがドコモです。

ドコモは3.7GHzと4.5GHzと28GHzを1枠ずつの合計3枠、KDDIも3枠、ソフトバンクは3枠希望でしたが、2枠へ減らされてしまいました。

これはすでに始まったソフトバンクの5G通信網を見れば仕方がないと言えるかもしれません。

2020年3月にソフトバンクの5G商用サービスは始まりましたが、ソフトバンクはキャリアの中でも通信エリアはダントツの狭さで、東京の人でも東京駅周辺でなければ利用することが難しいような状況です。

また、まだ5Gサービスが始まってもいない楽天モバイルもソフトバンクと同じく2枠に留まりました。

【2026年8月 追記】投資目標は達成、政策の焦点は次のフェーズへ

本文で紹介した「2024年度末までに人口カバー率90%超」という目標に対し、実績はこれを大きく上回りました。全国の5G人口カバー率は2025年度末(2026年3月末)時点で98.6%です(総務省が2026年7月27日に発表)。都道府県別では神奈川・大阪・沖縄が99.9%、最も低い島根でも89.2%です。キャリア単位のカバー率は総務省の公表対象外ですが、面としての整備はほぼ完了フェーズに入り、総務省の政策の重心は5G SA(スタンドアローン)方式への移行促進と、2030年代の6G(Beyond 5G)研究開発へと移っています。

【2026年8月時点】次の目標は「デジタルインフラ整備計画2030」

本文が書かれた2020年当時、総務省の整備目標は「2024年度末までに人口カバー率90%超」でした。この目標は前倒しで達成され、政策のフェーズはすでに次に移っています。2025年6月に策定された「デジタルインフラ整備計画2030」では、2030年度末時点で全国の5G人口カバー率99%、加えて各都道府県それぞれで99%とすることが整備目標として掲げられました。

ポイントは「各都道府県で99%」という条件が加わったことです。全国平均98.6%(2025年度末)はすでに99%目前ですが、都道府県別に見ると島根の89.2%をはじめ、まだ10ポイント近い開きがある県があります。つまり2030年に向けた次の5年間の主戦場は、全国平均を押し上げることではなく、遅れている地域の底上げだということです。2020年の本文で「地域による通信格差の是正」としてローカル5Gに期待が寄せられていた論点が、キャリア5Gの整備目標そのものに組み込まれた格好です。

5G人口カバー率の推移と2030年度末の整備目標 100% 50% 0% 2030年度末 目標 99% 10.0% 2020年度末 50%前後 2021年度末 96.6% 2023年度末 98.4% 2024年度末 98.6% 2025年度末 出典:総務省「5Gの整備状況」各年度公表資料および「デジタルインフラ整備計画2030」(2025年6月策定)をもとに作成。2021年度末は概数。
項目 2025年度末の実績 2030年度末の目標
全国の5G人口カバー率 98.6% 99%
各都道府県の5G人口カバー率 89.2%〜99.9% 各都道府県で99%

あわせて、5Gの次の世代であるBeyond 5G(6G)についても、総務省は2030年代のあらゆる産業・社会活動の基盤になると位置づけ、推進戦略のもとで研究開発を進めています。周波数の割当先を決めていた2019年の審査から、整備目標の達成、そして次世代規格への布石へ——総務省の5G政策は、この6年でフェーズを2段階進めたことになります。

総務省のローカル5Gについての取組

総務省のローカル5Gについての取組

総務省の第5世代移動通信システム(5G)の今と将来展望では、ローカル5Gについても言及されています。

ローカル5Gについて割り当てられる枠は4.5GHz帯と28GHz帯の2枠です。

このうち、28GHz帯についてはすでに申請受付を開始して、実際に仮免許を取得した事業者も存在します。

総務省が考えるローカル5Gの活用と、普及計画について詳しく解説していきます。

総務省が期待するローカル5Gのソリューション

ローカル5Gは、地域の企業や自治体等の様々な主体が特定の場所のみで5G通信網を構築できるシステムです。

このため、通信事業者によるエリア展開がすぐに進まない地方などの地域でも独自に5Gシステムを構築・利用することが可能になり、地域による通信格差を是正することができます。

【2026年最新】ローカル5Gとは?仕組み・導入手順・費用・活用事例を徹底解説

総務省はローカル5Gの活用事例として以下のようなものをあげています。

ローカル5Gの事例 実施事業者
スタジアム スタジアム運営者
遠隔医療 医療機関
4K 8K動画 ケーブルテレビ
建機遠隔制御 建設業者
スマートファクトリー 製造業者
テレワーク 自治体や企業
河川等の監視 国や自治体
自動農業 農家

このように、ローカル5Gは様々な事業者が独自に5G通信網を特定のエリアだけで構築し、業務の効率化やイノベーションを起こすことが可能になります。

2019年12月28.2-28.3GHzの申請受付開始

すでにローカル5Gの申請受付は始まっています。

東京では以下のような事業者が申請しています。

  • 東京都:臨海部のテレコムセンターの産業技術研究所で、自由にテストできるよう、インフラを作りたい
  • NTT東日本:eスポーツなどでの活用も検討、インバウンド向けに空港、港湾、酪農でのトラクターの自動運転

この他、NECやケーブルテレビ各社、ジュピターテレコム、富士通などが申請を行なっています。

その他の領域は2020年夏頃に申請受付予定

さらに、28.2-28.3GHzについては2020年夏頃に制度化を行い、受付を開始する予定です。

ローカル5Gに関しては、当面は屋内または敷地内での運用と決められていますが、今後は建設現場や農家でも利用できるように屋外でも利用できるようになるでしょう。

今は、そのような小さな事業者でローカル5Gを利用できるようにインフラ整備を行う側の大企業が申請を行なっている段階で、2021年くらいまではそのような状態が続き、2022年くらいから少しずつ本格的な産業応用が始まっていくことが予想されます。

【2026年8月時点】ローカル5Gの現状はどうなったか

ここまでは2020年当時の記述です。制度化から6年が経ち、ローカル5Gは以下の状況になっています。

項目 2026年6月末時点の実績
免許人の数 134者
基地局数 約1,710局(サブ6・ミリ波の合計)
使える周波数帯 サブ6(4.5GHz帯)とミリ波(28GHz帯)の2つ。当初の28.2-28.3GHzから拡張済み
屋外利用 制度化済み。当初の「当面は屋内・敷地内」という制約は解消された

本文で「2022年くらいから本格的な産業応用が始まる」と予想したとおり、用途は実証実験から実運用へと移りました。一方で、免許人134者・基地局約1,710局という規模は、全国キャリアの5G基地局が30万局を超えていることと比べると桁違いに小さいのが実情です。ローカル5Gは「どこでも使う汎用インフラ」ではなく、工場・港湾・医療機関・自治体など用途と場所を絞った専用インフラとして定着した、と見るのが2026年時点の実態に近いといえます。

制度面でも運用の柔軟化が進み、2023年8月の制度改正では、1つの基地局を複数の利用者で共同利用できる「共同利用」という形態が追加されました。導入コストの負担を分け合えるため、単独では設備投資が難しい中小規模の事業者にも門戸が広がっています。また28GHz帯については、電波伝搬試験用に2週間程度で開設できる「特定実験試験局」の制度も用意されており、本格導入の前に自社環境で電波の届き方を検証しやすくなっています。

出典:総務省 電波利用ポータル「ローカル5G」(令和8年6月末現在の免許人数・基地局数)

関連情報:携帯電話番号「060」の追加も総務省の通信政策の一つ

総務省は5Gの普及政策と並行して、電気通信番号制度の見直しも進めています。その一つが、携帯電話番号に新たに「060」を追加する制度改正です。2024年12月に制度化され、当初は2026年7月以降の利用開始が想定されていましたが、2026年7月8日に携帯大手5社が提供開始の延期を発表しました。詳しくは【2026年最新】携帯電話「060」番号はなぜ延期に?導入の経緯と今後の見通しを徹底解説で解説しています。

※本記事は2020年に公開した内容をもとに、総務省「5Gの整備状況(令和7年度末)」「デジタルインフラ整備計画2030」、および電波利用ポータルのローカル5G現況(令和8年6月末)など2026年8月時点の最新情報を追記して更新したものです。