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【医療と5G】5G時代の医療の未来を考える

【2026年10月 追記】

本記事は2020年当時の見通しです。5Gは契約数1億3,153万件・人口カバー率98.6%まで普及。超低遅延が要る分野は5G SAの普及とともに発展途上です。

2020年に期待された「5G×医療」は、2026年にオンライン診療は制度として定着、遠隔手術は実証段階まで進みました。

結論:6年後の答え合わせ

※現在地は2026年10月31日時点。

2020年の期待 2026年10月の現在地 評価
自宅から診察 初診オンラインが2022年に恒久化。2026年4月1日施行の改正医療法で法律上に位置づけ ◎ 実現
医師間の画像共有(DtoD) 遠隔読影が定着。情報連携も診療報酬で評価 ◎ 実現
AI診断で医師不足を補う 実用段階へ。主因はAI自体の進歩と制度 ○ 別ルート
遠隔地から手術 2024年国内/2025年日仏間で実証成功。2026年9月にはマイクロサージェリーの実証も開始 △ 実証段階
ハプティクスで遠隔触診 研究・実証が継続。商用は未確立 △ 発展途上
ドローンで処方薬配送 離島・過疎地で実証。通常の選択肢ではない △ 実証段階
遠隔医療と5G|制度と技術のあゆみ 2018 オンライン診療 が保険診療化 2020 コロナ禍で 初診オンライン特例 2022 初診からの オンライン診療が恒久化 2024 商用5G SAで ロボット手術支援実証 2025 日仏間 約23,000kmの 遠隔手術実証に成功 2026 改正医療法が施行 +診療報酬改定 青=制度面の動き/緑=技術・実証の動き

2020年に期待された変化

期待 内容
遠隔診断の高精度化 CT・MRI画像を高速伝送し、数百km離れた専門医が診断
AI診断支援 画像をAIが解析し医師不足を補う
DtoD(医師間) 専門病院と地方病院で即時共有、見落とし防止
DtoP(医師と患者) 離島・へき地や多忙な会社員も受診しやすく
ハプティクス ロボットの触感をグローブへ伝え、遠隔触診・遠隔手術
医療データ活用 家電・IoTと連携し健康状態を自己管理
ハプティクスによる遠隔触診・遠隔手術のイメージ 専門医 (専門病院) 触覚グローブを装着 患者 (地元病院) 手術支援ロボットが執刀 操作信号 触覚フィードバック 往復とも低遅延の5G通信区間を経由

オンライン診療は「制度」になった

年 できごと
2015年 厚労省が「離島・へき地はあくまで例示」と通知
2018年 オンライン診療が保険診療化
2020年 コロナ禍で初診オンラインを時限特例で容認
2022年 初診からのオンライン診療が恒久化
2025年12月 改正医療法が公布
2026年4月1日 改正医療法が施行。オンライン診療が法律上に位置づけ
2026年度 診療報酬改定で評価を拡充、同時に要件を厳格化

2026年4月:ガイドラインから「法律」へ

これまでのオンライン診療は厚労省の指針(ガイドライン)で運用されてきました。2026年4月1日施行の改正医療法で、法律上の根拠を持つ仕組みに変わっています。

変わった点 内容
定義 「映像及び音声の送受信」によるものと定義。電話だけの診療とは区別される
届出 オンライン診療を行う医療機関は都道府県への届出が必要
基準 指針に代わり、法令に基づく「オンライン診療基準」を整備
オンライン診療受診施設 公民館・郵便局などを診療所の開設許可なしで受診場所にできる。届出制。プライバシーが保たれる個室と、機器操作や急変に対応する人員が条件
行政の関与 都道府県が指導・立入検査を行い、是正を求められる

ポイント:ねらいは医療機関のない地域でも受診できる場所をつくることと、不適切な運用への歯止めです。通信環境と人員を備えた「受診施設」が公民館や郵便局に広がれば、通信インフラ側の要件も実用段階の話になります。

出典:厚生労働省医政局「オンライン診療について」(第124回 社会保障審議会医療部会 資料1・2026年1月26日)ほか。改正医療法は2025年12月公布・2026年4月1日施行(2026年9月19日確認)。

施行から半年:届出の実務はこうなっている

法律になったことで、医療機関と受診施設には都道府県への届出という具体的な手続きが生まれました。施行から半年が過ぎた2026年10月時点の運用は次のとおりです。

対象 いつ届け出るか 備考
施行日(2026年4月1日)時点ですでにオンライン診療を行っていた医療機関 2027年3月末まで(経過措置) すぐに届け出なくてよいため、未届けの医療機関がまだ残っている段階
オンライン診療受診施設の設置者 設置・変更・休止・再開・廃止から10日以内 手数料なし。設置届には建物の図面とチェックリストを添付
届出内容の公表 都道府県のウェブサイトに掲載 患者が受診できる場所を探す手がかりになる

読み方の注意:経過措置があるため、都道府県の公表リストに載っていない=オンライン診療をしていない、ではありません。2027年3月末までは、届出がまだの医療機関も実施できます。受診先を探すときは、医療機関自身の案内もあわせて確認してください。

出典:WAM NET(福祉医療機構)「オンライン診療の法制化」解説(2026年7月22日)、福岡市「オンライン診療受診施設の届出」(2026年10月17日確認)。改正医療法にもとづく都道府県への届出の全国件数は、2026年10月31日時点でも公表資料を確認できていません(診療報酬の施設基準の届出数は上記のとおり公表されています)。

数字で見る:どれだけの医療機関がオンライン診療をしているか

「定着した」と言える規模なのか。診療報酬の施設基準の届出数が、いちばん確かな手がかりです。

「情報通信機器を用いた診療に係る基準」の届出 令和5年
(2023)
令和6年
(2024)
令和7年
(2025)
病院 818 1,305 1,434
診療所 7,713 10,988 12,598
令和7年の全国の保険医療機関 施設数 うち届出済み(編集部算出)
病院 8,019 約18%
診療所 89,094 約14%

出典:中央社会保険医療協議会 総会(第653回・2026年7月22日)資料「主な施設基準の届出状況等」(中医協 総-4-1)。基準日は令和5年までが7月1日、令和6年からが8月1日現在。割合は編集部が同資料の施設数から算出したものです。

読み方:2年で診療所は約1.6倍に増えましたが、実施しているのはまだ1〜2割です。「どこでも受けられる」段階ではありません。

この数字は改正医療法の届出とは別物です。上の表は診療報酬を算定するための施設基準の届出で、基準日は改正医療法の施行(2026年4月1日)より前。都道府県への届出の全国件数は、2026年10月31日時点で公表資料を確認できていません。

2026年度改定:広げつつ締める

区分 内容
新設 遠隔電子処方箋活用加算(月1回に限り10点)
新設 看護師等遠隔診療注射実施料(1日につき100点)
再編 電子的診療情報連携体制整備加算(最大15点)
格差縮小 対面との報酬格差を縮小(従来は対面の約87%)
厳格化 指針遵守のチェックリストを自院サイトに掲示
厳格化 医療広告ガイドライン遵守を施設基準に明記
厳格化 向精神薬処方時に重複投薬等チェック(経過措置あり)

ポイント:高血圧・糖尿病・脂質異常症など慢性疾患の安定期フォローをオンラインで完結する方向。受診先はチェックリスト掲示が目安です。

遠隔手術は「実証成功」まで

時期 実施主体 内容
2024年6月 神戸大学 「hinotori」で商用5G SA+クラウド経由の遠隔手術支援を国内初実証(神戸大学)
2025年2月 NTT東日本など 「IOWN APN」で結んだ2病院間でhinotoriの遠隔手術支援に成功
2025年6月 日本外科学会・メディカロイド・NTTコミュニケーションズ 兵庫〜仏ストラスブール(IRCAD)約23,000kmの遠隔手術実証に成功(NTTドコモビジネス)
2025年12月11日 日本外科学会 AMED研究事業で「遠隔手術ガイドライン」第2版を公開(セキュリティ対策例・実証まとめ)
2026年9月16日 九州大学・日本外科学会・F.MED・NTTドコモビジネス・NTTイノベーティブデバイス・セラン 九州大学病院と同別府病院の約110kmを「IOWN APN」で結び、マイクロサージェリー用手術支援ロボットの遠隔操作を検証すると発表(この組み合わせは世界初)

2026年に始まった実証:細い血管を遠隔で縫う

項目 内容
対象の細かさ 直径1mm以下の血管を、直径0.009mm以下の糸で縫う(髪の毛は約0.15mm)
通信への要求 往復0.005秒以下の応答と、非圧縮に近い映像伝送
進め方 2026年度に映像伝送を検証 → 2027年度にロボットの遠隔操作を検証
あわせて検証 手術映像に書き込んだ指示が臓器の動きに追従するアノテーション技術での遠隔指導
位置づけ 総務省「令和8年度 地域社会DX推進パッケージ事業(先進的通信システム活用タイプ)」の採択事業

ポイント:ここで使われるのは5Gではなく光(IOWN APN)です。遠隔手術で効くのは「速い無線」ではなく往復の応答時間が揺れないこと。病室や術野の中は無線、拠点間は光という役割分担になりつつあります。

注意:5Gの低遅延だけで成立したわけではありません。大陸間は光速の伝送遅延が支配的で、優先制御の網設計とロボット制御の組み合わせが必要。回線も5Gに限りません。

社会実装に残る課題

  • 通信途絶時の安全確保(フォールバック)の制度化
  • 執刀医が現地にいない手術の責任の所在
  • ロボットと専用回線の導入費を担える病院規模
  • 遠隔手術の診療報酬上の評価

AI診断は5Gと別ルートで進展

  • 主因はAIモデルの性能向上と薬事承認の枠組み整備
  • 画像診断支援プログラム医療機器の承認が進展
  • 2026年度改定でもAI・ICT活用を評価

ポイント:5Gは「AI診断を生んだ技術」ではなく「AI診断を病院の外へ広げる土台」です。

病院の中でも5Gが活躍

ドコモは2026年3月26日、法人向け「5Gスライシング」を開始しました。厚い壁でWi-Fiが届きにくい院内でも5G活用が進んでいます。

方式 設備を持つのは 医療現場での想定・実証例
ローカル5G 病院が免許を取得して構築 院内の映像伝送・機器連携。外部の混雑に左右されない(聖マリアンナ医科大学等で実証)
5Gスライシング キャリア網の一部を論理的に占有 施設をまたぐ用途。自前設備なしで安定帯域

遠隔手術で重要なのは速度より「他人の通信に邪魔されないこと」。いずれも法人向けで、患者が直接契約するものではありません。

よくある質問

Q. オンライン診療に5Gスマホは必要?

不要です。ビデオ通話なので4GやWi-Fiで十分。5Gが効くのは大容量画像の伝送や遠隔手術です。

Q. オンライン診療は対面より安い?

安いとは限りません。2026年度改定で対面との格差は縮小。交通費・時間の節約効果は大きい場合も。

Q. 遠隔手術はいつ受けられる?

時期は未定。技術は実証済みで、安全確保・責任・診療報酬の設計がこれからです。

Q. 対応医療機関の探し方は?

厚労省の実施医療機関リストや、都道府県が公表する届出一覧で確認できます。ただし届出には2027年3月末までの経過措置があるため、リストに載っていない医療機関でも実施している場合があります。

まとめ

  • オンライン診療は2022年に恒久化、2026年4月に医療法へ位置づけ、2026年度改定で拡充と厳格化
  • ただし届出をしているのは病院の約18%・診療所の約14%(2025年8月1日時点)。制度は整ったが広がりはこれから
  • 遠隔手術は2024年国内・2025年日仏間で実証成功。2026年9月からは九州大学らが約110kmをIOWN APNで結ぶマイクロサージェリーの実証(2027年度に遠隔操作へ)
  • AI診断は5Gとは別ルートで進展
  • 残る焦点は技術ではなく制度と運用の設計

※本記事は2020年公開の記事に、2026年度診療報酬改定・遠隔手術の実証・ローカル5G等の動向を追記(2026年9月11日に遠隔手術ガイドライン第2版とIOWN APNの実証を追加)したものです。2026年9月13日に図表中心の構成へ再編集し、9月19日に2026年4月1日施行の改正医療法(オンライン診療の法制化・オンライン診療受診施設)を追記しました。2026年9月26日に5G契約数を2026年6月末の値に更新しました。2026年10月4日に、九州大学らによるIOWN APNでのマイクロサージェリー用手術支援ロボットの遠隔操作実証(2026年9月16日発表)を追記しました。2026年10月17日に、改正医療法の届出実務(既存医療機関の経過措置は2027年3月末まで、受診施設の届出は10日以内、届出内容は都道府県が公表)を追記し、受診先の探し方の注意点をFAQに反映しました。2026年10月31日に、中医協(第653回・2026年7月22日)の「主な施設基準の届出状況等」からオンライン診療の届出医療機関数の推移(病院1,434・診療所12,598=2025年8月1日時点)と全体に占める割合を追加し、診療報酬の届出と改正医療法の届出が別物であることを明記しました。


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