「5Gは期待外れだった」という声は、人口カバー率が98.6%に達した2026年になっても消えていません。エリアはほぼ全国に広がり、料金も下がり、スマホは全機種5G対応になりました。それでも「思っていたほど速くない」「4Gと変わらない」という体感が根強く残っています。
この記事では、5Gの何が問題視されてきたのか、そのうち何が実際に解決して何が残っているのかを、総務省の公表データとキャリア各社の展開状況に沿って整理します。結論から言えば、5Gの不満の大半は「エリアの広さ」ではなく「エリアの中身」に原因があります。
目次
そもそも、なぜ「期待外れ」と言われたのか
2020年の商用化当時、5Gは「4Gの100倍速い」「遅延1ミリ秒」「同時接続100万台」という3つのキーワードで語られていました。これはいずれも5Gの規格上の理論値であり、しかもその多くはミリ波帯とSA方式(5G専用設備)が揃って初めて実現する性能です。
ところが実際に各社が優先したのは、既存の4G周波数を5Gに転用してエリアを一気に広げる方法でした。カバー率は急速に伸びた一方、利用者の手元に届いたのは「5Gと表示されるが速度は4G相当」という回線でした。宣伝された理論値と、実際に配られた回線の性能。この差が「期待外れ」という評価の正体です。
解決した問題
2020年前後に指摘されていた課題のうち、次の3つはすでに実質的に解消しています。
- エリアの狭さ:全国の5G人口カバー率は98.6%(2025年度末・総務省)。基地局数も30万2,118局(2024年度末)まで増え、全国1,741市区町村すべてに5G基地局が整備されました。「そもそも5Gが入らない」という状況は、日常生活圏ではほぼなくなっています。
- 端末価格の高さ:商用化当初は5G対応機がハイエンドに限られ、10万円超が当たり前でした。2026年現在は10万円を切るミドル・エントリー機でも5Gに対応しており、機種選びで5G対応を気にする必要はほぼありません。
- 料金の高さ:かつては5G利用に月数百円〜1,000円程度の追加料金がかかる時期もありました。現在はahamo(30GB・2,970円)や楽天モバイル最強プラン(無制限3,278円)をはじめ、5Gは追加料金なしの標準機能です。
まだ残っている問題
| 課題 | 内容 |
|---|---|
| NSA方式の「なんちゃって5G」 | 4G設備を併用するNSA方式が主流で、特に4G周波数の転用エリアでは実速度が4G相当。「表示は5Gなのに速くない」という不満の最大の原因 |
| ミリ波の展開が進まない | 最高速度を出せるミリ波(28GHz帯)は障害物に弱く投資対効果が悪い。Sub6展開率75.5%に対し、ミリ波はスタジアムや主要駅などスポット中心にとどまる |
| キラーアプリの不在 | 消費者向けに「5Gでなければ成立しない」用途が乏しい。高精細動画もオンライン会議も4Gで足りてしまう。産業用途(ローカル5G・遠隔制御)が先行している |
| 地域差が残る | 都道府県別では神奈川・大阪・沖縄が99.9%に対し、最も低い島根は89.2%。全国平均の98.6%だけでは見えない差がある |
4つのうち最初の2つは技術と投資の問題であり、時間とともに改善が進んでいます。一方で3つ目の「キラーアプリの不在」は、5Gが個人向けに何をもたらすのかという問い自体への答えが出ていない状態が続いています。実際、5Gの本領が発揮されているのは工場の遠隔制御やスマート農業といったローカル5Gの領域で、一般利用者が体感できる変化は「混雑時につながりやすくなった」程度にとどまるのが正直なところです。
今後の鍵を握る「SA方式」
状況を変えうるのが、5G専用のコア設備を使うSA(スタンドアローン)方式です。4G設備に依存しないため、5G本来の低遅延やネットワークスライシング(用途ごとに帯域を切り分ける技術)が使えるようになります。総務省の資料では、SAの平均下り速度はNSAの約1.7倍、上りは約1.5倍とされています。
| キャリア | 5G SAの状況(2026年8月時点) |
|---|---|
| ドコモ | 商用提供済み。都市部を中心にエリアを拡大中で、法人向けのネットワークスライシング活用も進む |
| au(KDDI) | 商用提供済み。Sub6帯の全国展開を土台にSA対応エリアを拡大 |
| ソフトバンク | 商用提供済み。主要都市から順次拡大中で、上り高速化技術の導入も進める |
| 楽天モバイル | 現時点ではNSA中心。SA導入に向けた準備・整備段階 |
ただしSA方式を使うには、対応エリアに加えて対応端末と対応プラン(またはSIM設定)が揃う必要があります。「SAが始まった」という発表があっても、自分の環境がすぐ切り替わるわけではない点は押さえておきたいところです。
「自分の5Gが遅い」と感じたときの確認手順
期待外れという感覚は、実際には設定や環境で改善できる場合もあります。順に確認してみてください。
- 端末の設定を確認する:省電力設定や「5Gオート」系の設定で4Gに固定されていないか。モバイル通信のネットワーク設定から確認できます。
- エリアマップでSub6かどうかを見る:各キャリアのエリアマップは、4G転用の5GエリアとSub6エリアを色分けして表示しています。自宅や職場がどちらかを確認すると、体感の理由がはっきりします。
- 時間帯を変えて測ってみる:昼休みや通勤時間帯は混雑の影響を受けます。同じ場所でも時間帯で結果は変わります。
- 屋内・地下では4Gの方が安定することもある:Sub6は障害物に弱いため、建物の奥では4Gに切り替わる方が快適なケースもあります。
まとめ:5Gは「失敗」ではなく「途中」
5Gに向けられた不満の多くは、宣伝された理論値と、実際に広く配られた4G転用エリアの性能差から生まれました。エリア・端末・料金という当初の3つの障壁はすでに解消し、残る課題はSub6とSA方式の面的な展開、そして個人向けの用途開拓に絞られています。
「期待外れ」という評価は、2020年の過剰な期待を基準にすれば正しく、2020年の4G環境を基準にすれば的外れです。少なくとも、混雑した場所でのつながりやすさや上り速度の改善といった形で、5Gは着実に日常のインフラになりつつあります。
※本記事は2020年公開の記事を、2026年8月時点の最新情報に全面改稿したものです。料金・仕様は変更される場合があるため、最新情報は公式サイトをご確認ください。