【2026年8月 追記】
本記事は2020年当時の予測です。楽天モバイルはその後Rakuten最強プラン(1,078〜3,278円)に到達し、データ無制限で最安クラスの地位を確立しました。
2020年春、ドコモ・au・ソフトバンクの大手3社が5G商用サービスを開始しました。同年4月に4G LTEを始めたばかりの楽天モバイルは、6月に5G参入を予定していました。
出遅れて見える楽天モバイルですが、「4Gの混雑がない」ことで5G商戦に有利になるのではという見方がありました。以下、当時の技術的背景を解説します(2026年の実績は末尾の「答え合わせ」参照)。
目次
5Gの通信速度に差がある理由
大手キャリアの5G速度には差がありました。原因は周波数だけでなく、開始当初の4G LTEとの関係が大きかったためです。
5Gサービス開始直後の大手キャリアの通信速度
2020年4月時点の主要3社の理論値(下り/上り最大)は以下の通りです。
| キャリア | 下り最大 | 上り最大 |
|---|---|---|
| NTTドコモ | 3.4Gbps | 182Mbps |
| KDDI | 2.8Gbps | 183Mbps |
| ソフトバンク | 2.0Gbps | 103Mbps |
サービス開始当初はドコモが最速で、KDDIも同年夏のアップデート追随を予定していました。
5G通信網の周波数帯域幅が異なるから
ミリ波(28GHz帯)は各社400MHz幅で平等に割り当て。差が出るのは6GHz以下の「サブ6」(枠数=道幅)です。
- NTTドコモ:3.7GHz帯+4.5GHz帯(2枠)
- KDDI:3.7GHz帯(2枠)
- ソフトバンク:3.7GHz帯(1枠)
2枠持つドコモ・KDDIが理論上有利ですが、開始当初は各社とも1枠(100MHz幅)しか使っておらず、2020年4月時点では速度差に表れていませんでした。
サービス開始当初の5G速度は4Gネットワークが大きく影響
速度差のもう一つの理由が運用方式です。開始当初の5Gは4G設備を土台に基地局を置く「ノンスタンドアローン(NSA)」方式が中心でした。端末は5G・4G基地局に同時接続し電波を結合して高速化する「デュアルコネクティビティ」技術を使うため、5G速度は4G側の周波数割り当てにも左右されていました。
下記は大手キャリアが対応している周波数です。
ドコモは4G周波数の割り当てが最も多く、結果的に5Gの速度でも有利でした。
【2026年時点の補足】
ドコモ・au・ソフトバンクは2023年までに5G SA(スタンドアローン、4Gに依存しない方式)へ移行済みです。一方、楽天モバイルは2026年8月現在もNSA運用が中心で、5G SAは他社に遅れて2026年以降の提供を目指すと発表しています。
5Gの速度は環境の変化によって遅くなる
理論値はあくまで最大値で、実際の速度は環境で変わります。開始直後の実効速度を大きく左右したのが4G LTEの混雑状況でした。
| 項目 | ドコモ・au・ソフトバンク | 楽天モバイル |
|---|---|---|
| 4G顧客基盤 | 多い(既存客が多数) | 少ない(開始直後) |
| デュアルコネクティビティへの影響 | 4G混雑時は5Gも遅くなりやすい | 4Gが空いており影響を受けにくい |
| 予想される速度 | 混雑状況次第で変動 | 相対的に高速・安定と予想 |
楽天モバイルが5G開始当初に有利な3つの理由
楽天モバイルが5G開始当初に有利とされた理由は、次の3つです。
| 理由 | 内容 |
|---|---|
| ① 4Gの混雑がない | 顧客基盤が少なく、デュアルコネクティビティで空いている4G回線と結合できる |
| ② 28GHzは横並び | ミリ波(28GHz帯)は4社とも1枠ずつで同じ条件 |
| ③ エリアはどこも狭い | サービス開始当初は各社ともエリアが限定的(例:ソフトバンクは東京駅周辺程度)。楽天は首都圏・大阪・名古屋等の一部都市圏以外はKDDI回線を利用。▶ 楽天モバイルのエリアを見る |
出遅れていた楽天モバイルが、5G開始時には意外な強みを持つ可能性が指摘されていました。
【2026年の答え合わせ】楽天モバイルはスタートダッシュを決めたのか
「4Gの混雑がないから5Gも有利」という見立ては技術的には理にかなっていました。ただ実際の勝負を分けたのは、速度よりもエリアの広さでした。
| 項目 | 2020年の見立て | 2026年の実績 |
|---|---|---|
| 料金 | 価格競争力を発揮するはず | Rakuten最強プラン 1,078〜3,278円(税込)。5G追加料金なし |
| エリア | 首都圏等の一部のみ、他はau回線 | プラチナバンド(700MHz帯)運用開始で屋内・地方も改善 |
| 5G普及 | 各社ともエリア限定的 | 全国5G人口カバー率98.6%(2025年度末・総務省) |
| 通信方式 | NSA(4G依存)前提の解説 | 楽天は2026年時点もNSA中心。5G SAは他社に遅れて展開へ |
結果として楽天モバイルは「速度で一気に他社を抜く」というより、無制限を低価格で提供する立ち位置で存在感を確立しました。当時の「意外な大穴」という予測は、料金面では的中したと言えます。
2026年の焦点:楽天モバイルだけが5G SA未提供
本記事で解説したNSA(ノンスタンドアローン)方式は、2026年になっても楽天モバイルの主力です。コアネットワークまで5G化した5G SA(スタンドアローン)で、楽天モバイルは大手3社に明確に出遅れています。
| キャリア | 5G SAの状況 |
|---|---|
| ドコモ・au・ソフトバンク | 2023年までに商用提供を開始。auは全国のSub6エリアで利用可能な設定を完了 |
| au系のサブ・オンラインブランド | UQ mobileに続き、2026年8月25日にpovo2.0でもSAの提供を開始。KDDIのマルチブランド全体でSAが使える状態に |
| 楽天モバイル | 未提供。2026年に運用を開始し、検証を経てユーザーが使えるのはその先という見通し(2025年7月・同社CTO発言) |
この「未提供」は、設備の数字にもそのまま表れています。総務省の電波の利用状況調査(2025年3月末時点)によれば、楽天モバイルのSA対応基地局は0局で、前年から1局も増えていません。同時期にソフトバンクは99,871局、au(KDDI)は40,627局、ドコモは14,248局のSA基地局を持ち、全国合計では5G基地局の50.7%にあたる155,721局がSA対応になっています。
皮肉にも、2020年に「4Gの混雑がないから5Gで有利」と見られた点が、2026年には逆の構図になっています。大手3社は4G時代からの潤沢な設備投資でコアネットワークの5G化を進められた一方、ゼロから網を築いた楽天モバイルは、エリアの面展開とプラチナバンドの整備を優先せざるを得なかったからです。
実測分析ではSAの下り速度はNSAの約1.7倍とされ、速度差は今後開く可能性があります。ただし楽天モバイルの訴求点は当初から速度ではなく価格であり、この出遅れが競争力をただちに損なうとは限りません。SAとNSAの違いは5G SA(スタンドアローン)とは?NSAとの違い・キャリア対応状況を図解で完全解説で詳しく解説しています。
2026年9月末:頼りにしてきたKDDIローミングが原則終了する
本記事が2020年に「楽天は一部都市圏以外はKDDI回線を利用」と書いた、そのKDDIローミングが2026年9月末で原則終了します。楽天モバイルにとって、この記事で扱ったどのテーマよりも大きな転換点です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 終了日 | 2026年9月30日 |
| 発表 | 2026年8月7日・KDDI決算説明会(松田社長) |
| KDDIの説明 | 7年間提供し「本来の目的を果たした」。「想定外のエリアからの通信がKDDIのネットワークに来ている部分があった」として、自社ユーザーへのリソース配分を優先 |
| 都市部 | 基本的に9月末で終了 |
| 郊外(ルーラル) | 「基地局整備は自らでやってもらう」前提で、期間を定めて一部継続 |
| 対象エリア・期間 | 未確定(2026年9月5日時点でも協議中) |
楽天モバイル側も継続分があることを認めています。三木谷CEOは2026年8月12日、「楽天モバイルがカバーに時間を要するエリアに関しては、ローミングは10月以降も継続します。一方、楽天モバイルが十分カバーできているエリアはローミングを縮小していきます」とX上で説明しました。ただしどの地域がどれだけの期間続くのかは、本記事の更新時点で公表されていません。
2020年の「有利な条件」が反転した
この記事の主題だった「4Gの混雑がないから5Gで有利」という見立ては、裏を返せば自社網がまだ薄いことの言い換えでもありました。当時それを補っていたのがKDDIローミングです。
- 2020年:自社網は一部都市圏のみ。それ以外はKDDI回線が穴を埋める前提だった
- 2026年:プラチナバンド(700MHz帯)の整備が進み自社網は大きく改善。一方でKDDIローミングという安全網が外れる
つまり2026年10月以降は、楽天モバイルのエリアが「自社網の実力そのもの」で評価される段階に入ります。都市部では影響が小さいと見られますが、これまでローミングで補われていた地域では体感が変わる可能性があります。契約中の方・検討中の方は、自分の生活圏が楽天モバイルの自社回線エリアかどうかを9月のうちに確認しておくのが確実です。
ただしエリアマップだけで判断すると見誤ります。楽天モバイル公式のマップでパートナー回線エリアとして色分けされるのは山間部が中心ですが、ケータイWatchが2026年8月7日に公開した検証では、KDDI側が公開するローミング提供エリアと突き合わせると東京23区以外の市町村のほとんど、神奈川・埼玉・千葉の住宅地にも相当な範囲でローミングエリアが存在すると指摘されています。
そこで、本記事の主題である5Gを手がかりにした目安を挙げておきます。楽天モバイルの5G(Sub6・ミリ波)は自社回線エリアでのみ提供され、KDDIから借りているパートナー回線は4G LTEでの提供です。つまり普段いる場所で画面に「5G」が出ているなら、そこは自社回線がカバーしている場所ということになります。逆に自宅や職場でいつも4G表示なら、自社の電波か借りた電波かをこの表示だけでは区別できません。そこが10月に変化を確認すべき場所です。
なお、かつてmy 楽天モバイルで見られた接続回線の判別表示は、2023年6月の最強プラン開始時にパートナー回線の容量制限が撤廃されたのに伴って廃止されています。現在この方法は使えません。
出典:ケータイ Watch「KDDI、楽天へのローミングを9月末で終了」/Impress Watch「楽天モバイル、10月以降もKDDIのローミング一部継続を強調」
よくある質問
Q. 楽天モバイルの5Gは今どのキャリアより遅いのですか?
一概には言えません。楽天モバイルはコアネットワークまで5G化した5G SAが未提供(SA基地局0局)で、方式としては大手3社に遅れています。実測分析ではSAの下り速度はNSAの約1.7倍とされるため、SAが使える場所・端末では大手3社が有利です。ただし実際の速度は周波数帯と混雑状況の影響が大きく、方式の違いだけで決まるものではありません。
Q. KDDIローミングが終わると楽天モバイルは圏外になりますか?
圏外になるわけではありません。終了するのはKDDI回線を借りる仕組みで、楽天モバイル自身の回線は使えます。プラチナバンドの整備も進んでいます。ただし、これまでローミングで補われていた地域では電波状況が変わる可能性があります。なお郊外(ルーラル)は期間を定めて一部継続する方針で、対象エリアと期間は2026年9月5日時点でも未確定です。
Q. 2020年の「楽天が5Gで有利」という予測は当たりましたか?
料金面では当たり、速度面では外れた、というのが実際のところです。Rakuten最強プランはデータ無制限で最安クラスの地位を確立しました。一方「4Gが空いているから5Gも速い」という技術的な見立ては、その後の勝負がエリアの広さとコアネットワークの5G化で決まったため、優位性として持続しませんでした。
まとめ
- 開始直後の5Gは4G回線に依存 → 4G混雑が5G速度に影響
- 楽天モバイルは4G顧客が少なく、当時は有利な条件だった
- 実際に強みを発揮したのは料金の安さとエリア改善(詳細は上記「答え合わせ」)
- 5G SAは2026年9月時点で未提供(SA基地局0局)。8月25日のpovo対応で、大手4社のうち楽天だけが未提供という構図が鮮明に
- 2026年9月末でKDDIローミングが原則終了。10月以降はエリアが自社網の実力で評価される段階に入る
※本記事は2020年公開の予測記事に、2026年9月時点での楽天モバイルの現状(Rakuten最強プラン・プラチナバンド・全国5G普及・5G SAの状況・KDDIローミングの2026年9月末終了)を「答え合わせ」として追記したものです。NSA/デュアルコネクティビティ等の技術解説は2020年時点の内容です。
