【2026年8月 追記】
本記事は2020年当時のエリア展開の見通しです。2026年現在、5G人口カバー率は98.6%に達し、地方でも5Gが利用できる状態になりました。5G JAPANが実際にどれだけの基地局を建てたのかは、記事後半の【2026年の答え合わせ】にまとめています。
結論:KDDIとソフトバンクは2020年4月、地方への5G基地局整備を共同で行う新会社「5G JAPAN」を設立した。背景には5Gの電波特性(届く範囲が狭い)と総務省の厳しい整備基準がある。
- 2020年3月:NTTドコモ・KDDI(au)・ソフトバンクが5G商用サービス開始
- 2020年4月1日:KDDIとソフトバンクが共同出資で「5G JAPAN」設立
本記事では、設立の背景・仕組み・両社にとってのメリットを解説する。
目次
5G JAPANとは|KDDIとソフトバンクの合弁会社
5G JAPANは、地方への5G通信網構築を目的にKDDIとソフトバンクが設立した会社。突然の提携に見えるが、両社は以前からインフラシェアリングで協業してきた実績がある。
KDDIとソフトバンクの合弁会社
| 社名 | 株式会社5G JAPAN |
|---|---|
| 設立日 | 2020年4月1日 |
| 事業内容 | 5G基地局の設計・施工に関する調整・管理 |
| 住所 | 東京都港区新橋1-1-13 アーバンネット内幸町ビル4F |
| 主な役員 | 代表取締役社長 寺尾 徳明(KDDI建設本部出身) 代表取締役副社長 大瀧 栄司(ソフトバンクエリアネットワーク本部出身) |
| 資本金 | 5億円 |
出資比率はKDDIとソフトバンクで50:50(各2億5,000万円)。社長・副社長の出身母体も両社均等で、出資・人事ともにフラットな体制になっている。
KDDI(au)とソフトバンクの5G通信網確立が目的
5G JAPANの目的を、寺尾社長は次のように語っている。
5Gネットワークの地方展開を加速するべく、両社が保有する基地局資産を効率的に相互利用するインフラシェアリングを推進し、5G基地局の工事設計や施工管理に関する業務を行います。
KDDI株式会社の「お客さまの期待を超える感動をお届けすることにより、豊かなコミュニケーション社会の発展に貢献」と、ソフトバンク株式会社の「情報革命で人々を幸せに」の二つのビジョンの下、あらゆる産業をカバーする5Gネットワークを早期に整備し、日本の産業育成や地方創生、国土強靭化に貢献することで国際競争力の向上を目指して参ります。
5G JAPANのミッションは、KDDIとソフトバンクの5G基地局を共同で全国展開することだ。
以前からKDDIとソフトバンクは提携している
- 2019年7月:KDDIとソフトバンクが地方5Gネットワーク整備での協業を発表
- 2019年秋〜:北海道旭川市・千葉県成田市・広島県福山市で実証実験(インフラシェアリング)
- 2020年4月:実証実験の蓄積を踏まえ5G JAPAN設立
「突然の提携」ではなく、約1年の実証実験を経た合流である。
KDDIとソフトバンクが5G JAPANを設立した理由
設立の背景は主に2つ。①5Gの電波特性による基地局整備コストの高さ、②総務省が定める厳しいエリア整備基準だ。
全国整備には膨大な数の基地局の設置が必要
5G最大の課題は通信エリアの狭さ。高周波数の5G電波は1基地局あたりの通信可能距離が約200mしかなく、全国に行き渡らせるには膨大な数の基地局が必要になる。「サービス開始してもすぐ使えない」と言われるのはこのためだ。
| キャリア | 2020年3月時点の5Gエリア |
|---|---|
| NTTドコモ | 公共施設・スタジアム・駅・ドコモショップなど |
| KDDI | 全国各都市の主要エリアのみ |
| ソフトバンク | 東京駅周辺などごく一部 |
商用開始当初の5Gエリアはどのキャリアもごく限定的だった。
長期にわたる工事と多額の投資
基地局整備には巨額投資が必要。総務省提出資料によると、各社の投資規模とカバー率計画には大きな差がある。
| キャリア | 投資額(〜2024年) | カバー率計画 |
|---|---|---|
| NTTドコモ | 約8,000億円 | 97% |
| ソフトバンク | 約2,000億円 | 64% |
単独では投資力の差がそのままエリア差になる。KDDIとソフトバンクは基地局を共同整備・シェアすることでこの差を埋めようとしている。
インフラシェアリングで総務省基準を満たす
基地局を共同利用するインフラシェアリングで、総務省基準のクリアと全国展開の両立を図る。
総務省の基準は2年以内の全国展開・5年以内に人口カバー率50%
| 総務省の基準 | 難易度 |
|---|---|
| 2年以内に全都道府県でサービス開始 | 易:一部エリアでの提供でも達成可能 |
| 周波数割当から5年以内に、50%以上のメッシュ(全国10km四方区切り)で5G高度特定基地局を整備 | 難:膨大なコストと時間が必要 |
2つ目の基準がハードルとなり、KDDIとソフトバンクは共同での基地局整備でこれを乗り越えようとしている。
【総務省の5G政策】国が掲げる5Gの普及計画と産業応用6分野
かなり遅れているソフトバンク
KDDIはすでに多くの都道府県で5Gを開始した一方、ソフトバンクの5G通信網は大きく出遅れた。
| 時期 | ソフトバンクの5Gエリア(東京) |
|---|---|
| 2020年3月(開始時) | 東京駅周辺のみ |
| 2020年夏以降(計画) | 新宿・渋谷・池袋・お台場など |
| 東京全体 | 展開計画は未定 |
5G JAPANはKDDI・ソフトバンク双方にメリットあり
5G JAPANはKDDI・ソフトバンク双方にメリットがある。KDDIは業界シェア拡大、ソフトバンクは出遅れの挽回が狙いだ。
KDDIは5Gでドコモと勝負ができる
NTTドコモは投資額約8,000億円で先行。展開計画は以下の通り具体的だ。
- 2020年3月末:全国150か所
- 2020年6月末:全都道府県に導入
- 2021年3月末:全政令指定都市に導入
- 2021年3月末:500都市以上に導入
業界2位のKDDIは5G JAPANによる地方の基地局整備で、地方エリアにおいてドコモと勝負できる体制を作る狙いがある。
ソフトバンクは大きな遅れを取り戻せるか
ソフトバンク単体のカバー率計画は64%で、総務省基準をぎりぎりクリアする水準にとどまる。単独での出遅れは契約数減少や基準未達のリスクに直結するため、KDDIとの協力が欠かせない。
【2026年の答え合わせ】5G JAPANは何を実現したのか
設立から6年。「地方へのエリア展開を早期実現できるか」という本記事の問いに対する答えは、両社が公表した実績値から確認できます。
2023年度末までの実績
| 項目 | 2020〜2023年度末の実績(1社あたり) |
|---|---|
| 共同構築した基地局 | 3万8,000局超 |
| 設備投資コストの削減額 | 累計450億円 |
1社あたり3万8,000局超という規模は、記事本文で触れた「膨大な数の基地局が必要」という課題に対して、インフラシェアリングが実際に機能したことを示しています。総務省が求めた整備基準のクリアにも寄与しました。
2024年、協業範囲を全国へ拡大
成果を踏まえ、両社は2024年5月8日に協業範囲の拡大を発表しました。当初の枠組みから、対象が二重に広がっている点が重要です。
| 項目 | 設立当初(2020年) | 拡大後(2024年5月〜) |
|---|---|---|
| 対象エリア | 地方のみ(都市部は各社独自) | 全国へ拡大 |
| 対象の通信方式 | 5Gのみ | 5G+4G |
| 協業の範囲 | 基地局の共同構築 | 工法の標準化・部材の共同調達も検討 |
| 2030年度までの目標 | — | 1社あたり累計10万局/1,200億円の投資削減 |
設立時に「都市部は各社が独自に競争する」としていた線引きが外れ、全国が対象になりました。2024年度に技術検討とトライアルを開始し、2026年度から本格的な協業範囲の拡大を目指すとされています。つまり2026年は、5G JAPANの枠組みが次の段階に入る年にあたります。
本記事の見立ては当たったのか
| 2020年当時の見立て | 結果 |
|---|---|
| 共同整備で地方展開を早められる | 的中。3万8,000局超を共同構築し、人口カバー率は98.6%に |
| KDDIは5Gでドコモと勝負ができる | おおむね的中。5G SAでは全国のSub6エリアで利用可能な設定を完了し、第三者調査でも評価が高い |
| 都市部は各社が独自に競争する | 外れ。2024年に対象が全国へ拡大し、都市部も共同構築の対象に |
| 複数社が地方で競争でき料金競争が働く | 限定的。エリア差は縮んだが、大手の無制限プランは7,000〜8,000円台で高止まり。価格競争はahamo・povo・楽天モバイルが担っている |
インフラシェアリングは「エリアを早く広げる」という目的では明確に成功しました。一方、それが料金の引き下げに直結したとは言いにくいのが実情です。2026年時点で無制限プランを安く使いたい場合、選択肢は大手本体ではなくオンライン専用ブランドや楽天モバイルになります。詳しくは5Gはどのキャリアを選ぶべき?大手4社を5つの視点で徹底比較をご覧ください。
まとめ
- 5G普及の鍵は通信エリアの全国展開をどう進めるか
- NTTドコモは巨額投資で単独先行、KDDI・ソフトバンクは5G JAPANで共同整備
- 複数社が地方でも競争できる状態になれば、料金競争が働きやすくなると期待される
※本記事は2020年4月に公開した記事に、5G JAPANのその後の実績を加筆し、2026年8月時点の情報に更新したものです。実績値・目標値はソフトバンク/KDDIの2024年5月8日付発表に基づきます。
