2020年3月からスタートした5G。
「これまでの4G LTEとの違いがよく分からない」
「スマホの買い替えは必要?」
「何がどれだけ早くなるのか分からない」
という人が大多数ではないでしょうか?
メディア報道などでは「5Gサービス開始」ということだけで先走って注目されて、実際に5Gになるとどんな変化があるのかについてはほとんど言及されていません。
そこで、5Gの仕組みや、何がすごいのか、対応するスマホなどのについて詳しく解説していきます。
5Gの凄さはスマホだけに留まりません。
「いつスマホを買い替えるか」という身近なことを決めるのと同時に、「5Gが本格的に普及する時代になると、世の中がどのように変わるのか」ということもイメージできるようになりましょう。
目次
5Gとは?4Gとの違いや言葉の意味
5Gとはどのような意味なのでしょうか?
5Gの言葉の意味や、今の通信方式からどんな変化をするのかについて詳しく見ていきましょう。
5GのGはGeneration
5GのGはGenerationの頭文字です。
Generation=世代、5Gは移動通信システムの第5世代という意味です。
移動通信というのは、無線で電話をしたりインターネットをする通信システムのことで、簡単に言えば私たちが普段から利用しているスマホの通信手段のこと。
5Gは移動通信システムの第5世代になります。
4Gの次の世代の通信規格だから5G
2020年3月から日本でも5Gの商用サービスがスタートしました。
2020年3月スタートの5Gが第5世代ということは、これまでも第1世代から第4世代の移動通信システムがあったということです。
移動通信システムは概ね10年おきに世代交代をしています。
世代 | 年代 | 通信速度 |
---|---|---|
1G | 1980年代 | アナログ回線のみ |
2G | 1990年代 | 2.4kbps~28.8kbps |
3G | 2000年代 | 384kbps~14Mbps |
4G | 2010年代 | 50Mbps~1Gbps |
5G | 2020年 | 10Gbps〜20Gbps |
このように移動通信システムの世代は10年おきに代替わりしており、その度に通信速度は大幅に高速化しています。
現在主流の回線が4G LTE回線で、環境のよい場所では非常に早く通信することができますが、5Gになると現在よりも圧倒的に早い速度で通信できるようになります。
5Gは高い周波数で通信速度を圧倒的に向上させる通信方式
5Gは28GHzという非常に高い周波数で通信します。
4Gが最大3.5GHzですので、5Gの周波数は4Gと比較して圧倒的に高いことが分かります。
この非常に高い周波数で、4Gよりも圧倒的に早い通信を実現するのが5Gと理解しておけばよいでしょう。
なお、サービス開始から間も無くは、高周波での通信の準備が整わないので6GHz以下の周波数で通信する「サブ6」という周波数で5Gはスタートします。
それでも4Gよりは十分に早い通信を実現することができるでしょう。
5Gは通信エリアは狭くなるものの、5Gよりは圧倒的な高速通信を実現することが可能です。
5Gネットワークがもたらす3つの変革
5Gネットワークは現在の4G LTE通信から以下の3つの変革をもたらすと言われています。
- 圧倒的な高速大容量
- 人間の感覚では感じないほどの低遅延
- 多くの人が同時にアクセスできる多接続
5Gは4Gと比較してどんな変化があるのか、詳しく見ていきます。
5Gは4Gの20倍程度の高速大容量
4Gの通信最高速度は1Gbpsです。
5Gの通信最高速度は20Gbpsとされているので、理論上は5Gは4Gの20倍の通信速度を実現することができます。
4Gの最高速度の1Gbpsと5Gの最高速度の20Gbpsの比較をざっくりすると以下のようになります。
ハイレゾ音楽のダウンロード | 50Gのゲームのダウンロード | 4kオンライン動画を同時に見られる人数 | |
---|---|---|---|
1G | 約30秒 | 約7分半 | 40人 |
20G | 約2秒 | 約15秒 | 800人 |
ハイレゾ音楽などは、ほぼ待ち時間なしでダウンロードすることができ、ゲームも10秒ちょっとの待ち時間でダウンロード可能です。
5Gになると、これまでダウンロードやストリーミングの際に要求された待ち時間はほぼ不要なものになります。
5Gは4Gの10分の1の遅延
5Gになると4Gの際に感じた遅延は10分の1になると言われています。
地上波とネット放送を同時に視聴していると「ネット放送の方が若干遅れがある」と感じたことがある人も多いと思います。
5Gになるとこのような遅延を感じることはほぼなくなり、人間の感覚では遅れに気づかないくらいしか遅延は発生しません。
今起こっていることが遅延なく通信できるようになるので、この特徴は産業分野を大きく変革することに期待されています。
5Gは多接続性が10倍になる
5Gでは多くの端末が1つのネットワークに接続できるようになります。
これまでは1つのネットワークに接続することができる端末の数は限られていました。
そのため、防犯カメラの数などが限られてしまいましたが、5Gになるとそのような制約はなくなります。
街中至るところにカメラをやセンサーを設置してスマートシティを実現することなども技術的には難しくなくなります。
また、この特徴も製造業や農業などの産業分野への応用されることが期待されています。
5G通信サービス開始時期は2020年3月|自分のエリアに来るのはいつから?
テレビCMやニュースでもおなじみのように、5G通信サービスは2020年3月に、NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの大手3社で開始されました。
ただし、開始段階では繋がるエリアは超限定的で、ほとんどの人は日常生活で5Gを利用することはできません。
大手キャリアの5Gの料金プランは対応エリア、そしてそれぞれのキャリアが地方部にまで5G通信網を広げていくまでの時間について詳しく解説していきます。
NTTドコモの5Gプランと対応エリア
NTTドコモの5G料金プランは以下のようになっています。
月額基本使用料 | 7,650円 |
---|---|
通信容量 | 100GB |
割引後最優遇基本使用料 | 4,480円 |
ドコモは家族割、ドコモ光との併用などの優遇プランを併用することで、最大4,480円まで基本使用料が割引されます。
通信容量は使い放題ではなく、100GBまでとなっているので注意しましょう。
サービス開始当初のドコモの5Gが利用できるのは限定的なエリアだけです。
全国の一部のドコモショップと、以下のような施設だけです。
- オリンピックアクアティクスセンター 観客席
- 東京スタジアム 観客席、入場ゲート周辺
- 横浜国際総合競技場
- 羽田国際空港
- 東京スカイツリー
- 渋谷STREAM
- 渋谷スクランブルスクエア
- 山王パークタワー
5Gサービス開始と同時くらいのタイミングで新型コロナウィルスの感染が拡大し外出自粛となってしまったので、2020年4月現在でドコモの5Gを体感できる人は皆無に近い状態と言えます。
また、コロナウィルスとは無関係に、サービス開始当初のドコモの5Gはエリアが限られているため日常生活で利用できる人はほぼいないでしょう。
【地域別】NTTドコモの5Gが繋がるのはいつから?
ドコモは5Gの通信エリアの計画を以下のように発表しています。
2020年3月末 | 全国150か所 |
---|---|
2020年6月末 | 全都道府県に導入 |
2021年3月末 | 全政令指定都市に導入 |
2021年3月末 | 500都市以上に導入 |
サービス開始当初の2020年3月末の段階の150箇所のメインはドコモショップです。
これが2020年6月末までには全国のドコモショップに広がるでしょう。
5Gが生活エリアでも利用できるようになるとすれば、2021年3月末からです。
全国の政令指定都市をはじめとして中規模以上の都市の中心部などでは、5Gが使えるようになるでしょう。
ただし、それでも住宅街などに広がる見通しは立っていないので、2021年3月頃から1年程度かけて生活圏にも5Gが繋がるようになるでしょう。
私たちが日常生活の中でドコモの5Gを利用することができるのは2022年ころと考えておけばよいでしょう。
auの5Gプランと対応エリア
auは5Gの基地局展開にかなり力を入れている印象です。
そして料金プランも大手キャリアの中で最も本格的なものとなっています。
月額基本使用料 | 8,650円 |
---|---|
通信容量 | 無制限 |
割引後最優遇基本使用料 | 3,460円 |
通信容量無制限のauは月額使用料はキャリアの中で最も高額になっています。
ただし、家族割プラス、auスマートバリュー、5Gスタートキャンペーン、スマホ応援割IIなどの割引プランが充実しているので、最優遇割引を受ければ3,460円で5Gプランに契約することができます。
auは繋がるエリアがサービス開始当初から広いのが大きな特徴です。
au 5Gが接続できる都道府県は以下のようになっています。
- 北海道
- 埼玉
- 千葉
- 東京
- 富山
- 静岡
- 愛知
- 大阪
- 岡山
- 広島
- 愛媛
- 福岡
- 佐賀
- 大分
- 沖縄
これらの都道府県のどこか一部では5Gを接続することが可能です。
NTTドコモが一部の施設とドコモショップでしか接続することができないのに対してauは日本全国まで展開していることが分かります。
【地域別】auの5Gが繋がるのはいつから?
サービス開始当初の5G接続エリアは広いauですが、この後の全国展開の計画に関しては時若干不透明です。
auは2021年3月末には全国に1万局まで基地局を増強し、そして、2022年3月末予定には全国2万局以上にすると発表しています。
おそらくは2021年3月には全国の主要都市の中心エリア、2022年3月には主な地方都市の生活圏でも繋がるようになるでしょう。
auを運営するKDDIはソフトバンクと一緒に【5G JAPAN】という5G基地局敷設会社を立ち上げています。
地方での5G基地局拡大については【5G JAPAN】がauとKDDIの通信網を広げていくことになるでしょう。
ソフトバンクの5Gプランと対応エリア
ソフトバンクはドコモやauと比較して最も5Gの展開が遅れていると言えます。
料金プランは既存の料金プランに1,000円を上乗せするだけですが、その1,000円もキャンペーンによって2年間は無料です。
つまり、ソフトバンク5Gは2年間は4G LTEと同じ料金で利用することができます。
5Gの利用ができるソフトバンクの料金プランは以下の4つです。
プラン | 通信容量 | 料金 |
---|---|---|
メリハリプラン | 50GB | 4,480円〜 |
ミニフィットプラン | 1GB+使った分だけ | 1,980円(〜6ヶ月) 2,980円(6ヶ月〜) |
スマホデビュープラン | 2GB | 980円(〜12ヶ月) 1,980円(12ヶ月〜) |
データシェアプラン | 親回線の50GBをシェア | 980円 |
ソフトバンクの通信エリア超狭小です。
サービス開始直後に接続できるのは東京駅周辺、名古屋、大阪駅周辺のほんの一部のみとなっています。
日常生活はおろか、ビジネスシーンでもソフトバンクの5Gと接続することは非常に難しいと考えられます。
そのため、「2年間は無料」で5Gプランに契約できるのでしょう。
【地域別】ソフトバンクの5Gが繋がるのはいつから?
ソフトバンクに関しては地方まで通信網が広がる計画は未定というのが実情です。
ソフトバンクの発表では、2020年の夏以降で、新宿、渋谷、池袋、お台場などをカバーすることができる見込みで、東京全体をカバーする計画はまだ立ててられていません。
地方への拡大は、前述したKDDIとの共同出資の「5G JAPAN」がメインになって行なって行くことが予想されます。
そのため、KDDIが地方への5G通信網を敷設する2022年3月末くらいまでにはソフトバンクも繋がるようになるでしょう。
5G対応のスマホはアンドロイドのみ!携帯端末の買い替えは必要?iPhoneの5G対応は?
5Gについて多くの人が気になることは「スマホの買い替えは必要なのか?」「iPhoneは5Gに繋がるのか?」ということではないでしょうか?
結論的には5Gに接続するためには5Gに対応したスマホに買い替える必要があります。
また、2020年4月現在で5Gに対応したスマホはAndroidのみで、iPhoneは5Gに接続することはできません。
5G対応スマホのラインナップやiPhoneが5Gに対応する時期などについて詳しく見ていきましょう。
5G対応スマホとは?5Gモデム搭載のスマホのこと
5Gに対応したスマホとは、5G対応のモデムを搭載しているスマホのことになります。
5Gに対応したモデムとしては、主に以下のようなものがあります。
- Qualcomm Technologies(クアルコム):Snapdragon 8、Snapdragon 7、Snapdragon 6、Snapdragon X55などのシリーズ
- Samsung(サムスン):Exynos 980
主な5G対応スマホはクアルコムのモデムを搭載しています。
5G対応モデムを搭載していないスマホでは、残念ながら5Gを通信することはできません。
サービス開始当初はアンドロイドのみ
5Gサービス開始当初の2020年春現在、5Gに対応しているスマホはアンドロイドのみとなっています。
大手キャリアが発売しているいる(発売予定の)5G対応アンドロイドは以下のようになります。
NTT docomo・au・SoftBankの5G対応スマホ一覧
機種 | カメラ | ディプレイ | 価格 | ドコモ | au | ソフトバンク |
---|---|---|---|---|---|---|
Galaxy S20 5G | 約1,200万画素の超広角カメラ約1,200万画素の広角カメラ 約6,400万画素の望遠カメラ |
6.2インチ有機ELディスプレイ | 117,480円 | ○ | ○ | – |
Galaxy S20+ 5G | 約1,200万画素の超広角カメラ 約1,200万画素の広角カメラ 約6,400万画素の望遠カメラ TOFカメラ |
6.7インチ有機ELディスプレイ | 121,164円 | 2020年5月 | 2020年5月 | – |
Xperia 1 II | トリプルカメラ 1200万画素 |
6.5インチ有機ELディスプレイ | 121,455円 | 2020年4月 | 2020年5月 | – |
AQUOS R5G | 1,220万画素の標準カメラ 約4,800万画素の超広角カメラ 約1,220万画素の望遠カメラ |
6.5インチPro IGZO液晶ディスプレイ | 117,405円 | ○ | ○ | ○ |
arrows 5G | 約3,200万画素メインカメラ 約1,600万画素超広角レンズ 約4,800万画素広角レンズ 約800万画素望遠レンズ |
6.7インチ有機ELディスプレイ | 価格未定 | 2020年6月 | – | – |
OPPO Find X2 Pro | 約4,800万画素の標準カメラ 約4,800万画素の超広角カメラ 約1,300万画素の望遠カメラ |
6.7インチ有機ELディスプレイ | 価格未定 | – | 2020年7月 | 2020年7月 |
Mi 10 Lite 5G | 未発表 | 未発表 | 価格未定 | – | 2020年7月 | |
ZTE a1 | 約4,800万画素のメインカメラ 約800万画素の超広角カメラ 約200万画素のマクロカメラ |
6.5インチ液晶ディスプレイ | 価格未定 | – | 2020年7月 | ○ |
LG V60 ThinQ 5G | 約6400万画素メインカメラ 約1300万画素広角カメラ |
6.8インチ有機ELディスプレイ 2画面 |
価格未定 | 2020年4月 | – | 2020年4月 |
iPhoneは5Gに対応していない
なお、2020年春現在では、5Gに対応したiPhoneは存在しません。
2020年3月の5Gサービス開始時点で最も新しい機種であるiPhone 11は5G非対応ですし、2020年4月に発売と噂されるiPhone SEも5Gに対応する予定はありません。
iPhoneの5G対応化は2020年秋発売予定のiPhone 12から
iPhoneが5Gに対応するのは、2020年秋に発売が予定されるiPhone 12からになる予定です。
iPhone 12は、5G対応モデムであるSnapdragon X55が搭載される予定で、6GHz以下の周波数で通信する5Gである「サブ6」にも28GHzの高周波で通信する「ミリ波」にも対応すると言われています。
新型コロナウィルスの感染拡大の影響で、当初は2020年9月発売と噂されていましたが、数ヶ月は発売が遅れる見込みです。
「iPhoneで5Gに接続したい」という人は2020年後半から2021年にかけて発売される予定のiPhone 12の発売を待つしかありません。
スマホの買い替えは生活圏が5G提供エリアになってからで十分
「5G対応のスマホにはいつ買い替えればよいのだろう?」と悩んでいる人も多いのではないでしょうか?
2020年3月から5G対応のスマホが続々と発売され、買い替えを焦る気持ちになるのは分かります。
しかし、よほど「すぐに5Gを通信したい」という想いが強くないのであれば、買い替えはしばらく待った方が無難です。
ご説明したように、5Gが生活圏で通信できるようになるまでには、2022年くらいまでは待たなければなりませんし、地方都市ではもっと遅くなる可能性もあります。
そのため、スマホを5G対応に買い替えたとしても生活圏で5Gに接続できる人はごくわずかでしょう。
スマホの進化は日進月歩ですので、今スマホを買い替えても5Gが通信できるようになる頃には、5Gスマホとして利用できないという可能性もあります。
もしかしたら数年後には、スマホの画面から通信相手がモノグラムの立体映像になって浮かび出す技術も開発されているかもしれませんが、そうなると現在の最新機種は使い物にならない可能性があります。
5Gスマホが発売されたからと言って焦ることなく、自分の生活圏で5Gが通信できるようになった時に最新の機種を購入するのがよいでしょう。
スマホだけじゃない!5Gによる変革が期待される7つの分野
5Gによって変革されるのはスマホだけではありません。
むしろ、スマホは動画の視聴やゲームのダウンロードが早く綺麗になる程度の変化しかありませんので、4G LTEとできることは大きく変わりはありません。
5Gによって変化が期待されているのは産業や医療などの以下の分野です。
- 医療分野
- 交通分野
- 製造分野
- 災害救助
- 農業分野
- 観光分野
- エンターテイメント
5Gがこれらの分野に具体的にどのような変化をもたらすのか、詳しく見ていきましょう。
5Gによる医療分野の変革
5Gによって医療分野の変革が期待されています。
期待されている分野は遠隔医療と遠隔手術です。
5Gによって高精細な大容量画像データを通信できるようになれば遠隔地から、内科診断や患部の正確な診断ができるようになります。
すでに遠隔医療は4G時代から始まっていますが、5Gになるとさらに拡大する見込みです。
また遠隔医療の進化系として遠隔触診や手術なども可能になると言われています。
5Gにはハプティクスという遠隔地に触感を伝える技術があります。
これによって遠隔地の医師が装着しているグローブに離れたところでロボットが触っている感触が遅延なく伝えることが可能です。
ハプティクスの技術によって遠隔地にいる医師が患者の触診を行なったり、手術をすることができるようになります。
5Gは過疎化や医師不足による医療が抱える未来を解決する可能性があるのです。
5Gによる交通分野の変革
5Gによって交通分野も変化することが期待されています。
具体的には自動運転の実現です。
車に設置された様々なカメラやセンサーの情報を5Gなら瞬時に処理できます。
また、離れたところにある管理事務所にはダイレクトに車の映像を伝えることができます。
これによって、安全な自動運転を実現し極力事故を避けることができるでしょう。
路線バスの維持などが難しい地方の部での自動運転バスの運行などが期待されています。
5Gによる製造現場に変革
5Gは製造現場にも変革が期待されます。
5Gの多接続性、低遅延性によって、製造現場に様々なセンサーを設置することで、現場ごとのデータを分析することができます。
これによってオペレーション管理の最適化を図ることができ、在庫管理の最適化も可能です。
また、本社から地方や海外の工場の遠隔オペレーションなども可能になるでしょう。
5Gによる災害現場の変革
5Gは災害現場の変革にも寄与します。
街中至るところで設置されたカメラやセンサーなどによって詳細な災害情報をいち早く住民に伝達することができるようになります。
また、災害ヘリや救急車の中でも遠隔医療によって患者がすぐに専門医の治療を受けることができるようになるでしょう。
5Gによる農業分野の変革
5Gは農業分野も大きく変革することを期待されています。
- 無数のセンサー設置によって作物の管理を最適化
- 衛星写真の解析によって作物の成分をデータ化し、肥料の最適化
- 農機具の遠隔運転による省人化
- ドローンによる農薬の空中散布
このように、農業はマンパワーに依存する部分が非常に大きな業界です。
5Gによって人手の効率化や「ベテランの勘」などを効率化することができれば大きな変革を実現できることが期待されています。
5Gによる観光分野の変革
5Gは観光分野の変革も期待されています。
- スマートグラスによって、観光をしながら観光案内が表示される技術
- 遠隔地にいながらVRによって仮想空間を観光できる技術
なども開発中です。
5Gは「自宅にいながら遠隔地への訪問を体験できる」という技術を実現することができます。
新型コロナウィルス感染拡大によって、多くの国民が外出自粛が余儀なくされている中、この技術はもっとも早く開発を期待される分野かもしれません。
5Gによるエンターテイメント分野の変革
エンターテイメント分野は5Gによって非常に大きく変化するでしょう。
- VRによって仮想空間でのゲームプレイ
- VRによってスタジアムにいるのと同様のスポーツ観戦
- スタジアムでスマートグラスをかけながら他会場の結果確認や選手の情報表示
などなど、ゲームやスポーツの分野では、5Gを活用した技術は非常に多く登場することが予想されます。
5Gによってゲームやスポーツで多くの人が同時に接続できる、仮想空間でのエンターテイメントが実現されるでしょう。
NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの5G実証実験
大手キャリアもスマホ以外の分野で5Gの産業応用のビジネスチャンスを狙っています。
5Gの産業応用実用化向けて、すでにNTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの3社は様々な実証実験を行なっています。
大手キャリアが行う5Gの実証実験はどのようなものなのか、詳しく見ていきましょう。
NTTドコモの実証実験
ドコモが5Gに関して行なっている実証実験は以下のようなものがあります。
28GHz帯5G電波の透過・反射を動的制御する透明メタサーフェス技術の実証実験
5Gの電波は直進性が高いので、基地局から見通せる範囲外は電波の反射を活用してエリア構築することが効果的です。
そこで、ドコモはAGCとともに特殊なガラスを開発。
このガラスでは、
- 入射電波を透過するモード
- 電波の一部を透過し一部を反射するモード
- すべての電波を反射するモード
という3パターンを動的に制御することを可能にしました。
これによって、きめ細やかな5Gエリアを構築することが可能です。
自分の顔に他者の口の動きと表情をリアルタイムに再現する「Face Sharing」を開発
この技術では頬に装着したデバイスが、口の周りの筋肉に電気刺激を与えて収縮させることで、他者の口の動きやAIが指定する口の動きを再現することができます。
一見不要な技術のように思えますが、この技術によって
- 他者に代わって自分が会話をすることができる
- 他者の口の動かし方を体験できるようになるので遠隔からサポートを受けながら外国語での会話や専門的な知識が必要な会話などを行うことが可能
5Gと水中ドローンを活用した漁場遠隔監視の実証実験
ドコモと東京大学は5Gによる大容量・低遅延通信と水中ドローンを活用した漁場遠隔監視の実証実験を行い成功しています。
遠隔地から漁場を監視することができれば以下のようなことが可能になります。
- 魚の養殖現場で餌やりの作業を行う効率的なタイミングの把握
- 成育状況の把握が効率化
- 産卵の把握や幼生の浮遊状況も確認可能
これまではこれらの作業を実際に労働者が漁場まで行って行なっていましたが、遠隔で監視できるようになることで大幅な労働力の節約になります。
東海道新幹線における5G無線通信実験
ドコモとJR東日本は東海道新幹線による高速走行中の5G無線通信に成功しました。
直進性が非常に強く遮蔽物などに弱い28GHzの5G電波は新幹線などの移動中の接続が懸念されていましたが、200㎞/h以上で走行する高速鉄道車内と、地上との間の5G無線通信実験に世界で初めて成功しています。
今後5Gが日本全国で通信できるようになった際にも安定して新幹線などで通信できるようになるでしょう。
KDDIの実証実験
KDDIは産業に応用できる様々な実証実験を行なっています。
ゼネコンと組んで工事現場の実証実験
大林組、NECと組んで、工事現場の実証事件を行いました。
実験では、建設機械に5台のカメラを設置して、遠隔地の遠隔操作室から機械を操作。
無事、遠隔操作に成功しています。
災害現場などへの応用が期待されています。
走行中の車内での接続実験
5Gは電波の直進性が高く、遮蔽物にも弱いので自動車運転中に電波が途切れてしまうという懸念があります。
KDDIは新宿で移動する車内での5G接続実験を行い、動画として公開しています。
KDDIは車内でも安心して繋がる5Gを実証しています。
各種スポーツ会場での実験
auはスポーツ施設での実証実験も豊富に行なっています。
野球会場では、スマートグラスを観客に配布し、野球を観戦しながら、スマートグラス上で選手のデータや他会場の試合の確認ができるような実験をしています。
ドラゴンボールのスカウターのようなことがすでに実証実験されているのです。
さらにはサッカー会場に無数のカメラを設置し、その映像をコンピューターが繋ぎ合わせてゴールシーンをさまざまな角度から見ることができる「au/4D Replay」という技術も実証実験済みです。
膨大なデータ量になる複数の映像を同時に送受信できる高速大容量の5Gだからこそ実現することができる技術です。
今後のスポーツ観戦の主流になっていくことでしょう。
ソフトバンクの実証実験
ソフトバンクはユーザーに5Gを体感させることをメインとした実証実験を行なっています。
5G×IoT Studioでの5G体験
ソフトバンクは5Gの実験基地局である「5G×IoT Studio」という施設を設置しています。
ここでは以下のような体験をすることができます。
- リアルハブティクス体験
- 360度カメラ体験
遠隔地の触感をグローブを通じて体感することができるリアルハブティクスですが、「5G×IoT Studio」にはリアルハブティクスのグローブが設置されており、実際に体感することができます。
また、「5G×IoT Studio」ではヘッドマウントディスプレイに送信された4方向から撮影された映像を繋げ、360度繋がった映像をを観ることができます。
トラックの無人縦列走行実験
この他、ソフトバンクはトラックの無人縦列走行実験も行なっています。
この実験はトラック3台を縦列で走行させ、後続の2台は自動運転で走行するというものです。
無人の車が前の車を追従するためには、無人車が周囲の状況をタイムリーかつ正確に伝える必要があります。
回線に遅延があると他の自動車へ周囲の状況を他の車両にタイムリーに伝えることができません。
この実験では、5Gの低遅延性が発揮され、後続の車が先頭車両へタイムリーに状況を伝えることができ、安全な縦列走行が成功しました。
一地域や一工場だけが5Gエリアになる!ローカル5Gとは?
「電波は基地局が近いに来ないと繋がらない」というのが常識的な感覚です。
そのため、5Gも「基地局が近く来ないと利用できない」と考えている人がほとんどではないでしょうか?
確かにスマホの電波でだけで見れば基地局が近くに来ないと繋がることはありません。
しかし、「工場に5Gを通す」「病院に5Gを通す」など特定の地域や場所を限定した通信エリアを構築することができます。
これをローカル5Gと言います。
ローカル5Gは地方活性化や産業のイノベーションなどに大きく期待されている分野です。
ローカル5Gについて詳しく見ていきましょう。
地域や場所を限定した5G通信網
ローカル5Gとは特定の地域や特定の工場など、特定の場所に限って5G通信網を構築することです。
ローカル5GはNTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルといった総務省から許可を受けた大手キャリア社の管理する電波の外で、独自に5Gネットワークを築くことです。
総務省に届け出を出して認められれば、民間会社や地方自治体なども独自に5G通信網を構築することができます。
工場の中などに5G通信を敷設することが可能
ローカル5Gでは会社内や地方自治体の一部エリアなどに5G通信網を構築することができます。
例えば「自社の工場を5Gでもっと効率化を図りたい」という場合には、工場の中にローカル5Gを敷設することによって工場だけの5G通信網を構築することができます。
大手キャリアの5G電波がこない場所でもローカル5Gを敷設することによって独自に5Gを通信することが可能です。
地方の情報格差をローカル5Gが埋めることができる
5Gは都市部から地方部へと広がっていきます。
そのため田舎に行けばいくほど5Gが通信できるのは後になります。
明らかに地方は情報通信で遅れをとってしまいますが、ローカル5Gを活用することによってむしろ田舎が情報先進地域となることができる可能性あります。
例えば、「地方自治体が牽引して山の上の工業団地にローカル5Gが敷設されている」というような地域を作ることも可能です。
ローカル5Gは情報格差を埋める効果があるだけでなく、町おこしにも繋がる可能性を秘めています。
5Gの2つの問題点
ここまで5Gの特徴や可能性などについて詳しく説明してきました。
「5Gはいいことばかり」と考える人が多いと思いますが、5Gには問題点もあります。
- 周波数が高すぎてエリアが非常に狭い
- 高い周波数は健康被害も指摘されている
5Gには上記のような問題点があるのも事実です。
最後に5Gの問題点について詳しく解説していきます。
周波数が高すぎてエリアが非常に狭い
5Gの電波は周波数が高すぎて、エリアが非常に狭いという問題点があります。
5Gの電波は直進的で遮蔽物に当たると途切れてしまうこともあります。
低い周波数の電波であれば、通信範囲が広く建物の裏などにも通信することができますが、高速通信の5Gの通信範囲は200m程度です。
そのため、無数の基地局を設置しなければならず、これが5Gの通信エリアが非常に狭く、全国展開には何年もかかってしまうと言われる大きな理由です。
高速通信を実現する5Gはエリアが狭いので日本全国で接続できるようになるまでにはかなりの時間を要するでしょう。
高い周波数は健康被害も指摘されている
5Gに使用する28GHzという周波数は健康被害も指摘されています。
- 電波が免疫力を低下させる
- ガンを誘発する
- 動物が死ぬ
- コロナウィルスをばらまいた
などの健康に被害を及ぼす噂も流れています。
いずれも医学的な裏付けには乏しいものですが、実際に5Gの電波塔や基地局の建設を一時中断する国や地域が存在するのも事実です。
医学的には問題ないとされていますが、どうしても5Gの電波が心配という人にとっては大きなリスクに感じられるかもしれません。
まとめ
5Gとは現行の4G LTEの次の世代の移動通信システムの規格です。
5Gには以下の特徴があります。
- 通信速度は4G LTEの20倍
- 4G LTEの10倍の低遅延
- 4G LTEの10倍の多接続
これによって、スマホだけでなく様々な産業への応用が期待されています。
2020年3月から大手キャリアの5G商用サービスが始まりましたが、通信エリアという意味では各社まだまだ超限定的です。
スマホの買い替えは自分の生活圏で5Gが利用できるようになってからで問題ないでしょう。
5Gがどのように社会を変えていくのか、今後の様々な分野への応用に期待です。