KDDIとソフトバンクが2020年4月に作った「5G JAPAN」は、地方の5G基地局を共同で建てる会社で、2024年には対象が全国・4Gへ拡大しました。
目次
結論:6年間の答え合わせ
| 2020年の見立て | 結果 |
|---|---|
| 共同整備で地方展開が早まる | 的中:1社あたり3万8,000局超を共同構築(2023年度末) |
| KDDIがドコモと勝負できる | おおむね的中:第三者調査でも評価が高い |
| 都市部は各社が独自に競争 | 外れ:2024年に全国が対象に |
| 地方でも料金競争が働く | 限定的:大手の無制限は7,000〜8,000円台のまま |
5G JAPANの概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 設立 | 2020年4月1日 |
| 出資 | KDDI・ソフトバンク 50:50(資本金5億円) |
| 事業 | 5G基地局の設計・施工の調整・管理 |
| 経緯 | 2019年7月に協業発表 → 旭川・成田・福山で実証 → 設立 |
作った理由(2020年当時)
| 課題 | 内容 |
|---|---|
| 電波が届く範囲が狭い | 高い周波数の5Gは基地局を大量に建てる必要 |
| 投資額の差 | ドコモ 約8,000億円・計画97% / ソフトバンク 約2,000億円・計画64% |
| 総務省の基準 | 割当から5年以内に10km四方メッシュの50%以上に整備(2年以内の全都道府県開始は比較的容易) |
| 当時のエリア | ソフトバンクは東京駅周辺のみ(2020年3月) |
2024年:協業を全国へ拡大
| 項目 | 2020年 | 2024年5月〜 |
|---|---|---|
| エリア | 地方のみ | 全国 |
| 方式 | 5G | 5G+4G |
| 範囲 | 基地局の共同構築 | 工法の標準化・部材の共同調達も検討 |
| 実績(2023年度末) | 1社あたり3万8,000局超・投資削減累計450億円 | |
| 目標(2030年度) | 1社あたり10万局・1,200億円削減 | |
2024年度に技術検討・トライアル、2026年度から本格拡大を目指す(両社 2024年5月8日発表)。
国の計画での位置づけ
| 指標 | 実績 | 2030年度末の目標 |
|---|---|---|
| 全国の5G基地局 | 26万局(2023年度末)→ 30万2,118局(2025年3月末) | 60万局(途中目標:2025年度末に30万局) |
| うちインフラシェアリング | — | 30万局(半分) |
| 人口カバー率 | 98.6%(2025年度末) | 全国・各都道府県で99% |
| サブ6展開率 | 70.1%(2023年度末) | 95%(途中目標:2027年度末に90%) |
| ミリ波基地局 | 4.4万局(2023年度末) | 合計7万局(途中目標:2027年度末に5万局) |
出典:総務省「デジタルインフラ整備計画2030」(2025年6月11日・別紙2)。サブ6展開率は「高トラヒックエリアのうち複数事業者のサブ6基地局が展開されているエリアの割合」で、事業者ごとの展開率とは定義が異なります。
ここも答え合わせになる:計画の途中目標「2025年度末に合計30万局」は、2025年3月末(2024年度末)の30万2,118局ですでに1年前倒しで到達しています。数を建てる速さは計画を上回りました。一方で2030年度末の60万局は、その半分の30万局をインフラシェアリングで賄う前提です。5G JAPANが「地方だけ」から「全国・4Gも」へ広がったのは、この前提と地続きの動きといえます。残る論点は数ではなく中身で、サブ6展開率とミリ波の目標がそこを測る物差しになります。
同じ基地局でも中身は違う
| キャリア | 5G基地局 | うちSA対応 | SA化率 |
|---|---|---|---|
| ソフトバンク | 104,441局 | 99,871局 | 95.6% |
| au(KDDI) | 110,037局 | 40,627局 | 36.9% |
| ドコモ(参考) | 52,532局 | 14,248局 | 27.1% |
出典:総務省「令和7年度 電波の利用状況調査」(2025年3月末時点)
ポイント:共用するのは鉄塔・電源と電波の届く範囲。SAかNSAかは各社が決めます。基地局数はほぼ同じでもSA化率は2.6倍違います。
2026年9月:設備の共用は4社へ広がる動き
5G JAPANはKDDI・ソフトバンクの2社の枠組みですが、2026年9月にはミリ波について大手4社の共同検討が始まりました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 参加 | ドコモ・KDDI・ソフトバンク・楽天モバイルの4社 |
| 覚書 | 2026年9月11日締結(発表は9月16日) |
| 中身 | 各社が展開済みのミリ波基地局・中継器を、事業者間で相互に活用する技術・方式の共同検討 |
| 前提 | エリア展開は各社が自ら進める |
| 時期 | 実施時期・具体策は未公表 |
5G JAPANとの違い:5G JAPANはこれから建てる基地局を一緒に建てる仕組み、ミリ波の共同検討はすでに建てたものを融通し合う発想です。後者は新規投資を伴わないため、使える場所がすぐ増えるわけではありません。
ドコモは単独でも9月29日に「ドコモミリ波イニシアチブ」を始め、装置メーカー8社とレピータ(中継器)・メタサーフェス・導波路でミリ波の届く範囲を広げる取り組みに入りました。基地局の共同構築(5G JAPAN)、設備の相互活用(4社)、電波の中継(ドコモ)と、手段が3通りに分かれてきたのが2026年の構図です。
出典:NTTドコモ報道発表(2026年9月16日)
実測で答え合わせ:同じ基地局を使っても体感は分かれた
「地方のエリアはほぼ同じ」まではその通りです。ただし体感品質は一致していません。Opensignalの日本レポート2026年10月版(調査期間7月1日〜9月28日・18部門)が分かりやすい答え合わせになります。
| キャリア | 首位になった部門 | 読み方 |
|---|---|---|
| au(KDDI) | 18部門中10部門で単独首位(国内最多は5期連続) | つながりやすさ・安定性の評価が高い |
| ソフトバンク | ダウンロード速度(71.5Mbps)と5Gに接続している時間 | 同じ鉄塔を共用していても速度では上に出た |
| ドコモ | カバレッジ(行ける範囲の広さ) | 5G JAPANに参加していないドコモが範囲では首位 |
| 楽天モバイル | アップロード速度 | 後発でも上り方向では首位 |
出典:Opensignal「日本モバイル・ネットワーク・ユーザー体感レポート」2026年10月28日発表。数値はマイナビニュース(20261028-5212448)とselectraの記事で一致を確認(Opensignal公式サイトはHTTP 403で直接取得できませんでした)。auのダウンロード速度は63.1Mbps。
共用の射程はここまで:5G JAPANが共用するのは鉄塔・電源と電波の届く範囲で、周波数の持ち方・SAかNSAか・設備の設定は各社が決めます。だから「行ける場所」はそろっても、そこで出る速度は別の勝負になります。地方で選ぶときは、エリアマップの色ではなく自分が困っている部門(速度か、つながる時間か)で見るのが実用的です。
利用者にとっての変化
| 項目 | 2020年 | 2026年 |
|---|---|---|
| 地方でつながるか | 都市部でも限定的 | 人口カバー率98.6% |
| auとSBのエリア差 | 投資額の差=エリア差 | 地方はほぼ同じ |
| 料金 | 競争に期待 | 安さはahamo・povo・楽天モバイルが担う |
よくある質問
Q. 5G JAPANは今も活動している?
はい。2026年度から全国・4Gへ本格拡大する段階です。
Q. 地方ならauとソフトバンクどちらでも同じ?
エリアはほぼ同じですが、方式や周波数は違うため体感速度は同じとは限りません。
Q. ドコモは参加していない?
5G JAPANには参加していません。ただし国の計画はシェアリングを前提にしており、ミリ波では2026年9月に4社での共同検討が始まりました。
※出典:ソフトバンク/KDDI発表(2024年5月8日)、総務省「デジタルインフラ整備計画2030」(2025年6月11日)、「令和7年度 電波の利用状況調査」(2026年1月公表)、NTTドコモ報道発表(2026年9月16日「通信事業者間での5Gミリ波の利用エリア拡大に向けた共同検討を開始」、2026年9月29日「ドコモミリ波イニシアチブ」)。本記事は2020年4月公開の内容を、2026年9月13日に図表中心の構成へ再編集し、9月15日に両社の発表・総務省資料の鮮度を再確認、9月21日にミリ波4社共同検討を追記したものです。2026年10月6日に「ドコモミリ波イニシアチブ」(2026年9月29日発表)を追記しました。2026年10月20日時点でも、共同構築の新しい実績(2024年度以降)は両社から公表されていません。公表済みの最新値は2024年5月8日発表の「1社あたり3万8,000局超」(2023年度末)のままです。2026年10月20日に、「デジタルインフラ整備計画2030」(別紙2)からサブ6展開率とミリ波基地局の目標を表に追加し、途中目標「2025年度末に30万局」が2024年度末時点ですでに達成済みであることを追記しました。5G JAPANの共同構築実績は同日時点でも2024年5月発表の値が最新であることを確認しています。
※2026年11月1日に、Opensignal 2026年10月版(10月28日発表・調査期間7月1日〜9月28日)の部門別の首位を報道2本で確認し、「基地局を共用しても体感は分かれる」ことを示す節を追加しました。
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