2020年3月末に日本でも商用サービスが始まった5Gですが、「日本のほとんどのエリアで繋がらない」という問題が起きています。
実際に、サービス開始当初で5Gが繋がるのは空港やスタジアムやキャリアのショップのみという状況で、日本のほとんどのエリアでは5Gを繋げることはできません。
鳴り物入りでスタートした割には、あまりにもエリアが狭いことから「期待はずれ」という声が聞こえる5Gですが、各社は通信エリアを広げるための様々な努力をしています。
5Gのエリアが狭い原因や、各社のエリア拡大への取り組みなどをご紹介していきます。
目次
5Gのエリアが狭い3つの理由
5Gの通信エリアが狭い理由としては以下の3つの理由をあげることができます。
- 5Gの電波は通信範囲が200m
- 5Gの電波は直進性が高い
- コロナの影響で計画が遅れ
技術的な問題に加えて、商用サービス開始と同時に始まった新型コロナウイルスが大きく関係しています。
5Gの通信エリアが狭い原因について詳しく解説していきます。
5Gの電波は通信範囲が200m
5Gのミリ波と呼ばれる超高周波の電波は、その通信範囲が200mの範囲しか届かないと言われています。
高速大容量通信を可能にする5Gの電波は周波数が高いですが、その高さゆえに通信範囲が非常に狭いのです。
広い範囲をエリアにする場合には、無数の基地局を設置しなければならず、単純にその設置が全く追いついていないというのが5Gの通信エリアが異常に狭い最大の理由です。
5Gの電波は直進性が高い
5Gの電波は直進性が非常に強いというのも通信範囲が狭い大きな理由の1つです。
例えば、ビルなどに当たると5Gの電波は途切れてしまう傾向があります。
低周波の電波では、ビルなどの障害物に電波が当たっても、障害物の裏まで回り込んで通信可能になりますが、5Gのような高周波の電波は直進性が高いので障害物に弱く、ビルの多い都会ではビルの屋上だけでなく、窓やガラスなどの様々な場所にアンテナを設置する必要があります。
直進性が強いがために、障害物の多い都会でのエリア拡大のハードルになっています。
コロナの影響で計画が遅れ
5G通信網の拡大は新型コロナウイルス感染拡大によって計画に遅れが出ているという問題もあります。
- 部品の供給が遅れている
- ビルの屋上に上がれないなどの工事の遅れ
これらの理由によって、例えばNTTドコモは5Gエリア拡大計画に遅れが生じることをすでに公表しています。
ただでさえ、5Gの電波にはエリアの拡大に難があることに加えて、新型コロナウイルスの問題も影響したことが遅れに拍車をかけています。
各社のエリア拡大への取り組み
このようなエリアの問題を各社が指を加えて見ているわけではありません。
大手キャリアはそれぞれのエリア拡大のために独自の取り組みを行なっています。
各社のエリア拡大への取り組みについて詳しく見ていきましょう。
ドコモは独自技術の開発を進める
ドコモはすでに様々な企業と協力して、5Gのエリア拡大のために必要なアンテナ技術の開発などを行なっています。
代表的な技術としては
- 電柱などの巻きつけるアンテナ
- ガラスアンテナ
などになります。
ドコモの開発している新技術について詳しく紹介します。
巻きつけるアンテナ
2020年2月、ドコモは電柱に巻きつけるアンテナを開発したと発表しています。
このアンテナはフッ素樹でできており、電柱に巻きつけることによって360度通信可能になり、このアンテナはミリ波に対応しています。
日本国内の無数の電柱に巻きつけることで、日本中にミリ波の電波を行き渡らせることができるようになることが期待されています。
ガラスアンテナ
ドコモはAGCと共同で、「窓を基地局化する」ガラスアンテナを開発したと発表しています。
このアンテナのサイズは
- 縦20センチ
- 横80センチ
- 重さ約2キロ
程度の小さなサイズとなっており、ガラスアンテナの基地局から100メートル~200メートル程度先まで5Gの電波を届けることができるということです。
前述したように、5Gの電波は直進性が強いのでビルなどに電波が当たることで通信が途切れてしまう可能性があります。
しかし、ビルの窓が基地局になればこのような心配はありませんし、景観を乱すこともありません。
都市部でのエリア拡大に寄与する技術として注目されています。
KDDIとソフトバンクは共同出資で会社を設立
KDDIとソフトバンクは2020年4月1日に5G JAPANという会社を設立しました。
この会社の目的は地方での5G基地局設置を行うことです。
つまり、KDDIとソフトバンクは地方での5G基地局拡大を共同で行なっていくということです。
KDDIとソフトバンクは都市部では切磋琢磨して基地局を拡大しつつ、地方では共同で基地局を拡大して、最大手のドコモに対抗していくとの方針のようです。
本当の5Gの実現はまだ先
このように、各社5Gのエリア拡大への取り組みを行なってはいますが、本当の5Gの実現はまだまだ先と言えそうです。
現在の5Gはsub6という5Gの中では遅い電波で通信を行い、コアネットワークは4Gのものを使っています。
今後は、コアネットワークが5Gになることで、5Gは高速大容量通信の真価を発揮することになるでしょう。
現在の5Gのコアネットワークは4G
現在の5Gネットワークは5G独自のネットワークではありません。
コアネットワークは4Gのネットワークを使用し、高速な5G回線を部分的に利用する「ノンスタンドアロン5G」(5G NSA)と呼ばれる方式によって通信しています。
つまり、まだまだ5Gは4Gネットワークの一部という位置付けにしかすぎないのです。
コアネットワークが5Gになるのは2021年以降
5Gが5G独自のコアネットワークに切り替わるのは2021年以降と言われています。
つまり、少なくとも2021年以降に5Gコアネットワークに切り替わるまでは、大手キャリアとしても「メインは4G LTE」という位置付けになっていると考えられます。
KDDIは2021年中に5Gをコアネットワーク化する
そんな中、日本国内のキャリアの中で、KDDIは2021年中にコアネットワークを5G化した「スタンドアロン5G」(5G SA)を展開予定と発表しています。
スタンドアロン5Gになることによって、回線の用途ごとに帯域幅を細かく制御することができるので、例えば「遠隔医療には低遅延の帯域を保証する」などの制御が可能になります。
5Gの産業応用などが本格的になるのは、まさにコアネットワークが5G化してからであると考えられます。
通信エリアもそうですが、コアネットワークが4Gである現在の5Gはまだまだお試し段階ということができるでしょう。
楽天モバイルはNECとともに開発中
もう1つの大手キャリアである楽天モバイルはまだ5Gをスタートさせていませんが、楽天モバイルは5GコアネットワークをNECとともに開発中です。
2020年6月にスタート予定だった楽天モバイルの5Gサービスは3ヶ月遅れると発表されており、この間楽天モバイルは何もしないわけではなく、しっかりとNECとともに5Gコアネットワークを開発しています。
まとめ
5G通信エリアは2020年6月現在も非常に狭いものとなっています。
ただでさえ狭いエリアしか通信できない状態でしたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響によってエリア拡大はさらに遅れています。
大手キャリアはエリア拡大のために様々な技術開発を行なっており、今後は少しずつですがエリアは広がっていくでしょう。
いずれにせよ、5Gが本格的に普及し社会で活用されるようになるのは、コアネットワークが5G化した「スタンドアロン5G」になってからになるものと思われます。
「スタンドアロン5G」になる2021年以降に向けて、どの程度通信エリアが広がっていくのか、期待していきましょう。