アメリカが主導してきた、ファーウェイ排除の動きが世界中に広がっています。
これまではファーウェイを容認してきたフランスもファーウェイ排除へ舵を切ることに決定しました。
フランスはなぜファーウェイ排除に舵を切り、ファーウェイにはどのような安全保障上のリスクがあるのでしょうか?
フランスがファーウェイ排除に踏み切った背景と、今後のファーウェイと5Gを巡る国際的な枠組について詳しく解説していきます。
目次
フランスは28年までにファーウェイを排除
フランスは2020年7月に2028年までにファーウェイを完全に排除する方針を打ち出しました。
具体的には、すでにファーウェイを使用している業者も、将来的には脱ファーウェイにならなければ通信会社としての許可を与えてもらうことができず、将来的にはファーウェイ製品を使用している業者は免許を許可されなくなります。
フランスのファーウェイ排除の具体的な中身を詳しく解説していきます。
ファーウェイ製品使用の通信会社に対しては事業許可を3~8年しか与えない意向
フランス政府のファーウェイ排除の中身はかなり本格的なものとなっています。
フランス政府は、ファーウェイ製品使用の通信会社に対して、事業許可を3年〜8年しか与えないというものです。
今すぐにファーウェイからの脱却を強制するものではないですが、将来的に通信事業者がフランスで事業をしようと考えるのであればファーウェイ製の製品を使用することは実質的に不可能になります。
一部の国が「政府調達物からファーウェイ排除」という動きを見せていることと比較すると、民間企業に対してまで厳しい規制をかけたフランス政府の対応はかなり厳しいものであると言えるでしょう。
以降は更新は許可されない
ファーウェイ製品を使用した通信事業者はフランス政府から3年〜8年の事業許可しか与えられません。
以後は、ファーウェイ製の製品を使用した事業者は事業許可が更新されないので、継続的にフランス国内で通信事業を営もうとする事業者は3年から5年以内にファーウェイからの完全脱却を図る必要があります。
つまり、フランス政府の対応はファーウェイを3年から8年で完全に国内から駆逐することになります。
フランス国内の5G整備網に遅れが出る可能性も厭わない
すでにフランスでは多くの通信事業者がファーウェイ製の製品を使用して5G通信網を整備しています。
今後はファーウェイ製の製品を使用することができないので、規格の合わない他のメーカーの部品に切り替えて再整備する必要があります。
これによってフランス国内の5G整備計画には遅れが出る可能性があると言われていますが、今回のフランスの判断は5G通信網整備の遅れも厭わないほどに厳しいものです。
これまでファーウェイはEUに対して強いコネクションを持っており、アメリカやオセアニア諸国などがファーウェイを排除してもEUなどへ販売することによってファーウェイは業績を拡大してきました。
フランスもこれまではファーウェイを容認する方針を打ち出してきました。
しかし、EUの中心国であるフランスがファーウェイ排除に踏み切ったことによって、いよいよ国際的なファーウェイ排除の枠組みができつつあると、大きな注目を集め、さらにファーウェイにとっても大きな危機に直面していることは間違いありません。
フランスがファーウェイ排除に転じた理由
これまでは、ファーウェイに対して寛容な態度をとってきたフランスがここに来てファーウェイ容認に舵を切った理由はどこにあるのでしょうか?
具体的には以下のような事柄が理由を挙げることができます。
- 中国の新型コロナウイルスに対する対応
- 香港への強権的な対応
- ウイグル族への弾圧
ファーウェイが1つの民間企業ではなく、中国の国策企業であることはもはや世界の共通認識ですが、中国のこれまでの外交的・内政的姿勢がフランスの危機感を高めてしまっていると言えるでしょう。
フランスがファーウェイ排除に踏み切った具体的な理由を詳しく解説していきます。
中国の新型コロナウイルスに対する対応
中国発の新型コロナウイルスを巡って中国とフランスが対立した経緯があります。
中国大使館は7月12日、中国大使館のインターネットサイト上に、フランスなど欧州諸国の新型コロナウイルスへの対応について「高齢者施設ではスタッフが職場放棄し、入所者を飢餓と病気で死なせた」と証拠を挙げずに非難し、「西欧諸国は中国が『(新型ウイルスに関する)真実を隠している』という虚偽の仮説で中国を中傷している」と指摘しました。
これに対してフランスのルドリアン外相は、中国大使館の主張について「両国の2国間関係の質に適合していない」と批判する声明を発表しています。
日本をはじめ、新型コロナウイルスの対応によって中国に対して不信感が増したのは世界共通ですが、フランス政府もこの件で中国に対する不信感を高めたことは間違いありません。
香港への強権的な対応
ついで、2020年7月1日に香港で施行された「香港国家安全維持法(国安法)」の問題です。
これまでは一国二制度のもと言論の自由が保障されてきた香港ですが、同法の施行によって民主化は完全に不可能になり、デモなども実質的には不可能になります。
つまり、香港は実質的に中国本土化したといえます。
実際に同法が施行された7月1日だけで約370人が身柄を拘束されており、日本や英国など27カ国は「懸念」の共同声明を発表しています。
ウイグル族への弾圧
さらには以前から国際的に避難の対象となっているウイグル族への弾圧です。
ウイグル族の共産党に非協力的な人物や、信心深いイスラム教徒が収容所に送り込まれています。
収容された人は100万から200万人いるとされ、恭順の意を示さないと何年間も拘束された上で、リンチの果てに殺されることもあります。
ウイグル族の人口を減らすために強制的に女性は不妊手術を受けさせられると言われ、まさに民族浄化が行われていると言われています。
このような中国の非民主的な行動が近年続いていることから、実質的には中国の国策企業であるファーウェイに国家のインフラである5G通信網に関与されることに危機感を覚えたため、フランス政府はファーウェイ排除に踏み切ったものと考えられます。
ファーウェイ云々よりも中国が国家として信用できるかという問題だと言えるでしょう。
アメリカ・イギリスと足並みを揃える方針
これまでは中国を擁護してきたフランスですが、今後はアメリカやイギリスと連携してファーウェイ排除の連携をしていく方向性になるでしょう。
アメリカとイギリスのこれまでのファーウェイに対する対応をおさらいするとともに、今後の国際的な反ファーウェイの方向性を展望していきましょう。
アメリカはファーウェイに対する措置を強化し続ける
アメリカは国際社会を主導してファーウェイ排除を行なっています。
アメリカ国内での民間レベルでのファーウェイ製の排除の他、2020年5月には、「米国製の製造装置を使った半導体についてファーウェイ向けの輸出禁止」という制裁措置を発表しました。
これによって、ファーウェイが使用している半導体の大部分を輸入している世界最大の半導体受託生産メーカーである台湾のTSMC(台湾積体電路製造)から半導体の輸入がストップすることになりました。
さらに、アメリカと中国の対立は、両国の領事館を閉鎖する動きにまで発展しており、ファーウェイ排除から中国全体に対する制裁に変わっています。
イギリスは23年までにファーウェイを完全排除
またイギリスは2020年5月までは35%以下までファーウェイ製品を許容していましたが、2023年までに英国内の5G通信網などにおける中国メーカーの関与をなくす方針へと大きく方向転換しています。
ここにフランスの排除が加わって、主要国の中からファーウェイは確実に排除される流れとなっています。
まとめ
2020年に入ってからの中国の外交・内政に民主国家が懸念を覚え、ファーウェイ排除網が国際的に出来上がりつつあります。
日本においては「ファーウェイ製を使用しない企業に対しては減税措置を講ずる」というもので非常に弱い排除となっていますが、尖閣のみならず沖ノ鳥島にまで違法調査を行なっている現状において、日本政府もさらに強い排除に出る可能性があります。
日本も含めた民主主義国家が中国とファーウェイに対してどのような姿勢で臨むのか注目が集まります。
なお、日本においてはソフトバンクなどがファーウェイ製のスマホを販売しています。
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