【2026年9月 追記・訂正】
タイトルの「原因はコロナ?」は2020年当時の憶測の紹介です。英政府の公式根拠は米制裁による半導体調達リスク(NCSC評価)で、コロナは一度も決定要因に挙げられていません。
イギリスは2020年7月14日にファーウェイ排除を正式決定。2027年末の完全排除期限は2026年10月時点も維持されており、残りは約1年3か月です。
目次
結論:英国の排除の要点
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 方針転換 | 2020年1月「35%以下なら容認」→4カ月後に排除へ |
| 公式根拠 | 米の制裁強化で半導体調達が困難に(NCSC評価) |
| コロナ説 | 当時の憶測。政府の公式資料には登場しない |
| 最終期限 | 2027年12月31日(一度も変更なし) |
| 2026年10月 | 入れ替え作業は継続中。費用がかさみ難航。期限まで約1年3か月 |
2020年:容認から排除へ
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 2019年まで | 「ファイブ・アイズ」(米・豪・NZ・加・英)で足並みを揃え排除 |
| 2020年1月 | 英国のみ転換。占有率35%以下なら容認(基幹部分は排除) |
| 2020年5月15日 | 米商務省がFDPR改正。米国技術を使う半導体の供給に許可が必要に |
| 2020年5月25日 | 英政府が排除方針を発表、関係部局に計画立案を指示 |
| 2020年7月14日 | 排除を正式発表 |
排除の理由:公式根拠と憶測
| 要因 | 内容 | 位置づけ |
|---|---|---|
| NCSCの評価 | TSMC製など米国技術の半導体を調達できず、将来機器の安全性を保証できない | 【公式】政府が公表 |
| 国内の安全保障論 | 重要インフラを海外ベンダーに依存すべきでない(保守党など) | 【背景】従来からの懸念 |
| EU離脱・米中対立 | 米英FTA交渉などでの対米配慮 | 【背景】推測 |
| コロナを巡る対中不信 | 中国の情報開示への不満が強硬論を後押し | 【憶測】未確認 |
ポイント:NCSCは「ファーウェイは今後、米国の技術を用いることがほぼ不可能になる」と分析。決定打は半導体供給網の不確実性です。
排除の代償
| 影響 | 内容 |
|---|---|
| コスト | 1月の「35%以下」規制だけで5億ポンドのコスト増見込み |
| スケジュール | 2033年までの全戸光ファイバー敷設計画にも遅れ |
| 判断 | それでも英国はセキュリティを優先 |
段階的な期限(2022年10月指示)
英政府は2022年10月13日、通信事業者35社に指示書を送付しました。
| 期限 | 求められた対応 |
|---|---|
| 2022年10月(即時) | 5G網への新規設置を禁止 |
| 2023年1月28日 | 国家安全保障上重要な施設から排除 |
| 2023年7月31日 | 5G網での使用割合を35%以下に |
| 2023年10月31日 | FTTP(光)網で35%以下に(当初2023年7月31日から延期) |
| 2023年12月31日 | コア網から排除(当初2023年1月28日から延期) |
| 2027年12月31日 | 全機器を完全排除(変更なし) |
ポイント:中間期限はサプライチェーン混乱などで後ろ倒し。最終期限だけは一貫して不変です。
期限に強制力があるのは「法律と罰則」があるから
英国の排除は要請ではなく、2021年成立の通信セキュリティ法(Telecommunications (Security) Act)に基づく法的義務です。
| 仕組み | 内容 |
|---|---|
| 罰則 | 違反すると売上高の最大10%、継続的な違反は1日あたり最大10万ポンドの罰金 |
| 監督 | 規制当局Ofcomが技術的検査・担当者への聴取・事業者の施設への立入りを行う |
| 是正 | Ofcomは、見つかった穴を埋めるための暫定措置を事業者に指示できる |
それでも即罰ではありません。Ofcomがまず進捗を評価・報告する建て付けのため、中間期限の遅れ(BTのコア網など)が直ちに制裁につながったわけではない、と報じられています。
出典:英政府 GOV.UK「New telecoms security law to protect UK from cyber threats」(2026年10月4日確認)。
出典:ジェトロ ビジネス短信、Computing、CNBCなどの報道。
入れ替えの規模(事業者別)
| 事業者 | ファーウェイ製設備 | 入れ替え状況・コスト |
|---|---|---|
| BT | 約1万9,000拠点の約3分の2 | 撤去コストは約5億ポンド規模 |
| ボーダフォン | 1万8,000拠点の約3分の1 | 約3,500拠点をエリクソン製へ完了、約2,500拠点をサムスン製へ進行中 |
| Three | 5G機器はファーウェイ1社のみ | 年間設備投資4億5,000万ポンドの大部分を入れ替えに |
※報道・調査会社の推計で確定値ではありません。BTの負担は約6億1,200万ドルとする報道(RCR Wireless、2023年)もあり幅があります。BTは2023年末のコア網期限に一部(2G・3Gの通信、全体の1%未満)が間に合わなかったと報じられました(ISPreview、2024年1月)。
Light Readingは作業を「costly and tortuous(費用がかさみ困難)」と表現(Light Reading, 2024年7月17日ほか)。
受け皿のOpen RAN化、NECも参画
- ボーダフォンは約2,500拠点(全体の1割強)を特定ベンダーに依存しないOpen RANへ
- パートナー:Capgemini・Dell・Intel・Samsung・Wind River・NEC
- NECはO-RAN Alliance準拠(7-2x分割)の大規模MIMO無線機を供給。稼働サイトでサムスン製ソフトとの相互接続を実証(Light Reading、TelecomTVなど)
- BT・Threeはエリクソン・ノキア中心の構成
欧州での位置づけ:英独比較
| 国 | コア網からの排除 | アクセス網を含む排除 |
|---|---|---|
| イギリス | 2023年12月31日 | 2027年12月31日 |
| ドイツ | 2026年末 | 2029年末(管理機能) |
ポイント:英国はコア網で3年、最終期限で2年ドイツより早い。次の指標は目前のドイツのコア網期限(2026年末)です。
ドイツの期限はジェトロ ビジネス短信による。
2026年:EUが「加盟国任せ」をやめる動き
EUの5Gセキュリティ規制(5Gツールボックス)はこれまで法的拘束力のない勧告で、排除を実施した加盟国は一部にとどまりました。2026年1月、欧州委員会が提案したデジタル・ネットワーク法(Digital Networks Act)はこれを変えようとしています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 提案 | 2026年1月、欧州委員会が公表 |
| 仕組み | 「高リスク」に指定された供給者の機器を、事業者が3年以内に撤去する義務 |
| 対象 | 条文は企業名を挙げないが、ファーウェイ・ZTEが念頭と報じられている |
| 反対 | 2026年9月15日、業界団体Connect Europeを通じて欧州通信17社のCEOが反対書簡。オレンジ・ドイツテレコム・テレフォニカなど |
| 反対の理由 | 域外供給者の一律排除は最大400億ユーロの置き換え費用になると試算 |
| 現状 | 欧州議会と加盟国政府の間で調整中(2026年10月時点で未成立) |
ポイント:英国が2020年に単独で決めた「排除と期限」を、EUは6年遅れで域内共通ルールにしようとしている段階です。焦点は排除の是非より誰が費用を負担するかに移りました。
出典:Euronews(2026年9月15日)、The Register(2026年1月21日)。法案は審議中のため、最終的な内容・期限は変わる可能性があります。
【2026年10月】RUSI:英国は最も介入的だが、通信の外側に穴がある
英国のシンクタンクRUSIが2026年10月に公表した報告書は、ドイツ・スペイン・英国を比較し、英国を3か国で最も介入的と位置づけています。その上で、残る課題を挙げています。
| 論点 | RUSIの評価 |
|---|---|
| 5G RANの中国製比率(2024年時点) | 英国約20%(ドイツ約60%・スペイン約30%)。3か国で最も低い |
| 通信分野 | 5Gからのファーウェイ排除と、政府機関での中国製監視カメラの排除を実施済み |
| 残る穴 | 通信と政府調達の外側にある重要インフラでは、高リスク供給者の評価・撤去に踏み込んでいない |
| 審議中の法改正 | サイバーセキュリティ・レジリエンス法案の修正案が成立すれば、政府は供給者を「国家安全保障上のリスク」と公表せずに禁止できるようになる |
| 提言 | 通信と政府調達を超えて、重要インフラ全体を対象とする法整備が必要 |
出典:RUSI「High-Risk ICT Vendors and Critical Infrastructure」(2026年10月)、Computer Weekly(2026年10月2日・UK and Europe at risk from Chinese tech, says security think tank)
RUSIは、中国の国家情報法・反スパイ法が企業に政府への協力を義務づけている点に加え、脆弱性を発見から48時間以内に当局へ報告させ、国外への公表を禁じている制度を挙げ、これが供給者の国籍を問題にする根拠だとしています。一方で、技術的な脆弱性は中国製に限らずどのベンダーにも存在するとも述べています。
よくある質問
Q. 排除の原因はコロナですか?
いいえ。公式根拠は米制裁による半導体調達リスク(NCSC評価)で、コロナは当時の憶測です。
Q. 完全排除の期限はいつ?
2027年12月31日です。2026年10月時点でも変更されておらず、残りは約1年3か月です。
Q. 期限に間に合わないとどうなる?
通信セキュリティ法で、売上高の最大10%、継続的な違反なら1日あたり最大10万ポンドの罰金が課せます。ただしOfcomがまず進捗を評価する仕組みで、中間期限の遅れが直ちに制裁になった例は報じられていません。
Q. ファーウェイと日本の現状は?
ファーウェイは独自チップ「Kirin」とHarmonyOSで中国国内では復権、日本のスマホ市場からは事実上撤退しています。日本の5G網の「脱ファーウェイ」も定着しました(5G人口カバー率98.6%・2025年度末)。
まとめ
- 英国は2020年1月の容認から4カ月で排除へ転換
- 公式根拠は米制裁による半導体リスク。コロナ説は憶測
- 中間期限は延期されたが、2027年末の最終期限は不変(残り約1年3か月)
- 強制力の裏付けは通信セキュリティ法(売上の最大10%・日額最大10万ポンドの罰金とOfcomの検査権限)
- コア網の排除はドイツより3年早く完了
- EUは2026年にようやく域内共通の撤去義務(高リスク指定から3年)を提案。業界は400億ユーロの負担を理由に反対
楽天モバイル
日本の5G網は大手4社とも「脱ファーウェイ」で構築されています
日本の大手4キャリアはいずれも5G基地局にファーウェイ製の主要設備を採用していません。楽天モバイルは3GB以下なら1,078円、無制限でも3,278円で、5Gは追加料金なしで使えます。
※本記事は2020年公開の記事に、英政府・NCSCの公式見解、2022年10月の段階的な中間期限、Open RANへの移行状況、欧州各国との期限比較を追記したものです。2026年9月13日に図表中心の構成へ再編集し、9月19日にEUのデジタル・ネットワーク法案と業界の反対(2026年9月15日)を追記しました。2026年9月26日に、BTのコア網期限の遅れ(2024年1月報道)を追記しました。2026年10月4日に、期限の強制力の裏付け(通信セキュリティ法の罰則とOfcomの権限・英政府GOV.UK)と、最終期限まで残り約1年3か月であることを追記しました。2026年10月15日に、英シンクタンクRUSIの報告書(2026年10月・Computer Weekly 10月2日報道)から、英国が3か国で最も介入的である一方、通信と政府調達の外側に規制の穴があるという評価と、サイバーセキュリティ・レジリエンス法案の修正案を追記しました。