2020年5月15日、「ファーウェイがスマホの製造ができなくなる」と世界に衝撃が走りました。
アメリカがファーウェイに対する追加の制裁を発表し、この制裁によってファーウェイのスマホの製造に大打撃が加えられることが分かったためです。
ファーウェイがスマホの製造をすることができなくなるほどの制裁の中身とは何か、ファーウェイは今後どのようになり、アメリカの目的はどこにあるのか、詳しく解説していきます。
目次
ファーウェイのスマホとは
アメリカの制裁によってファーウェイはスマホを製造することができないレベルにまで追い込まれました。
すでにファーウェイは世界有数のスマホの巨大メーカーです。
ファーウェイのスマホシェアや特徴などについてまずは軽くおさらいしておきましょう。
ファーウェイはスマホシェア世界2位
ファーウェイは韓国のサムスンについで、スマホシェア世界2位の会社です。
アメリカからの経済制裁の影響によって、世界市場では苦戦を強いられてはいるものの、巨大な中国国内市場では圧倒的なシェアを誇っています。
中国市場では堅調であることから、2019年の出荷量は2億4,060万台と世界2位のスマホ目かーとなっています。
ちなみの私たち日本人には圧倒的なシェアを誇るAppleは世界3位です。
ただしファーウェイのスマホはアメリカの経済制裁の影響でGoogleアプリを使うことができません。
この影響で出荷台数は下落が続いており、20年1~3月期まで4四半期連続で前年割れしています。
Googleアプリは使えない
ファーウェイのスマホの致命的なデメリットはアメリカの経済制裁の影響によって、Googleアプリを使うことができないという点です。
そのため、アプリのダウンロードに便利なGoogleプレイストアを利用することもできなければ、Googleマップも利用することはできません。
Android端末であれば、当たり前のように利用することができ、「使えない」という事象が考えられないGoogleアプリですが、ファーウェイのスマホではGoogleアプリを使用することができません。
そのため、ファーウェイのスマホではAppGalleryというファーウェイ独自のアプリからアプリをダウンロードします。
AppGalleryから主要なアプリは大抵ダウンロードすることが可能です。
2万円代の5Gスマホを投入予定
さらにファーウェイは2万円代の5Gスマホを投入予定です。
2020年5月ファーウェイ傘下のサブブランドであるhonor(栄耀)がHonor X10という機種をリリース予定であることを発表しています。
このHonor X10は2万円代で発売されることが予想されており、5G対応のスマホとしては初の2万円代の機種となる見込みです。
日本では「体験できる」程度のエリア整備しかされていない5Gですが、2万円代の機種であれば「試してみよう」という人は多いかもしれません。
このように、これまでもアメリカからの経済制裁の影響を受けながらも順調のスマホ販売を確実してきたファーウェイですが、2020年5月のアメリカの追加制裁によって、スマホ事業は致命傷になるのではないか?とまで言われています。
ファーウェイをそこまで追い込むほどのアメリカの経済制裁の内容とはどのようなものだったのでしょうか?
アメリカの制裁でファーウェイの5Gスマホ生産が止まる理由
アメリカがファーウェイへの追加制裁を行なったことによって、ファーウェイのスマホ生産はストップするのではないかと言われています。
なぜ、アメリカの追加制裁がファーウェイのスマホ生産にそこまで大きな影響を及ぼすのでしょうか?
アメリカの追加制裁の中身と、制裁がファーウェイのスマホ生産体制にいかに大打撃を与えたのかいついて詳しく解説していきます。
アメリカの制裁の中身
アメリカ商務省が2020年5月15日に発表した制裁の内容は「米国製の製造装置を使った半導体についてファーウェイ向けの輸出禁止」というものです。
これまでは「ファーウェイや関連会社が設計に関与する半導体が外国製」であれば制裁の対象外となっていたため、ファーウェイとすればアメリカ由来の技術を使ったアメリカ以外の国から半導体を購入していれば制裁の影響を免れることができました。
しかし、新しい制裁は「米国製の製造装置を使った半導体」をファーウェイに輸出することを禁止しているため、制裁の抜け穴がなくなったことになります。
さらに、現在は現在の「アメリカ由来の技術やソフトウエアが25%以下」までであればファーウェイは使うことができますが、今後は「10%以下」までしか使うことができない内容となります。
これによって、ファーウェイはほぼアメリカの技術を使用することができなくなりました。
半導体受託生産の世界最大TSMCがファーウェイの新規受注を停止
そして、ファーウェイが使用している半導体は世界最大の半導体受託生産メーカーである台湾のTSMC(台湾積体電路製造)から輸入しているものです。
今回のアメリカの制裁発表を受けてTSMCはファーウェイからの新規受注を停止することを決定しました。
これによって、ファーウェイはスマホ生産や5G基地局の必要な半導体を調達することができなくなってしまいました。
9月中旬までは通常通り出荷可能
TSMCがすでにファーウェイから受注済みの半導体は9月中旬までの出荷分です。
新規の受注は受け付けないことから、9月中旬以降はTSMCからファーウェイへの輸出はストップすることになります。
2021年前半からスマホ生産・基地局整備で打撃を受ける
ファーウェイは半導体の代替調達を国内から行うと、強気の発信をしていますが、実際にはTSMCに替わる代替調達は不可能であると言われています。
そのため、アメリカの識者は「2021年前半からファーウェイの5Gスマボ生産や5G基地局整備に対して深刻な打撃を受ける」と予測しています。
これまでも何度となく、アメリカの経済制裁の網をくぐってきたファーウェイですが、今回ばかりは代替策や抜け道のない深刻な危機に陥っています。
中国企業を5G以降の通信産業から排除するのが狙い
ファーウェイに対する制裁が行われている理由については様々な陰謀説がささやかれていますが、真偽のほどは定かではありません。
しかし、1つだけ言えることは、世界のインフラになりうる5Gを中国がリードすることは安全保障的にも経済的にもアメリカにとっては都合が悪く、5G以降の通信産業では中国企業を締め出したいというのがアメリカの狙いでしょう。
今回の措置によってアメリカが何を狙っているのか、詳しく解説していきます。
中国在住の7万人のアメリカ人研究者・技術者に帰国命令
アメリカは中国国内での新型コロナウイルス感染拡大に伴い、中国在住の7万人のアメリカ人研究者・技術者に帰国命令を出しています。
これまで中国は中国在住の技術者に対して資金供与などを行うなどして技術移転を求めてきましたが、アメリカはこの帰国命令を機に中国への技術移転を防ぐ目的があるとも言われています。
5.5G、6Gは日米企業の連携で行われる
通信業界では5Gに次ぐ次世代の通信技術である5.5Gや6Gは日本のNTTが主導して形で2025年に5.5G、30年に6Gの採用が始まる予定になっています。
ここにはアメリカのインテルやマイクロソフトといった企業が連携・協力することになっています。
5Gでは中国のファーウェイが世界の中でも先んじています。
社会インフラまでをも担う5Gが中国企業に牛耳られることに危機感を覚えるアメリカ中心とした国々が安全保障の観点からファーウェイを締め出していると言っても過言ではないでしょう。
「5Gではファーウェイに奪われた覇権をなんとか取り戻したい、そのためには今からファーウェイを通信業界から排除しておく」
それが、今回のファーウェイに対する追加の経済制裁の真意のようです。
まとめ
アメリカがファーウェイへの経済制裁を強めたことによって、ファーウェイは5Gスマホの生産ができなくなる可能性があります。
今回の経済制裁はファーウェイにとって本当に危機的な状況だということは間違いありません。
しかし、中国も黙って制裁を受け入れるはずはなく、報復措置としてクアルコム・アップル・シスコシステムズなどへの制裁をほのめかしています。
このままでいくと本当にファーウェイは通信業界で仕事ができなくなります。
しかし、これまでも米中は経済戦争の最中、制裁と緩和を繰り返してきました。
これまでの例からも今後のファーウェイと米国の行方は分かりません。
中国とアメリカの間に挟まれた私たち日本人としては状況を注視していくしかないでしょう。