【2026年10月 追記】本記事は2020年7月、中印国境衝突を機にインドがファーウェイ排除を検討し始めた時点のものです。
- 5G排除は実現:2021年5月に試験ベンダーから除外。2022年10月開始の商用5Gも中国製抜き
- 中印関係:2024年10月以降は対話継続も「限定的・戦術的な安定化」
- 中国製アプリ禁止:TikTok等59種の禁止は2026年時点も継続
- 2026年10月28日時点:「信頼できる調達先(trusted source)」制度は維持され、方針の変更は確認できていません
インドは2020年まで価格の安さを理由にファーウェイを受け入れていましたが、2020年6月の国境衝突で排除へ転換。2026年時点も継続中です。
目次
結論:2020年の見立てと2026年
| 項目 | 2020年当時 | 2026年時点 |
|---|---|---|
| 5G網からの排除 | 政府が検討を開始 | 2021年5月に正式除外。商用5Gは欧州・韓国・国産設備 |
| ファーウェイの事業 | 約7,500人の雇用。完全排除は困難 | インフラ事業から実質撤退、規模は大幅縮小 |
| 中印関係 | 国境衝突で急速に悪化 | 対話は断続。国境画定は未解決 |
| 中国製アプリ | 59種を禁止 | 禁止は継続中 |
| インドの5G | 整備の遅れを懸念 | 4億3,000万件(2025年末) |
2020年まで排除しなかった理由
| 要因 | 内容 |
|---|---|
| 価格 | 自国に5G技術がなく、ファーウェイは世界最安クラス。欧州製(ノキア・エリクソン)は割高 |
| 通信各社の経営 | 逼迫と激しい価格競争で割安調達を期待 |
| 2019年12月31日 | ファーウェイを含む全ベンダーに5G試験参加を許可(商業運用は含まず)。米国の排除要請にも応じず |
| 2020年3月 | ファーウェイが5G活用のサーマルイメージング(遠隔体温検知)を提供。印象改善の狙いとみられる |
転換点:2020年6月の国境衝突
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 未画定の国境 | 約3,000km(ヒマラヤ山脈沿い) |
| 2020年6月の衝突 | ガルワン渓谷。インド側20人死亡、45年ぶりの死者 |
| 政府の通達(報道) | 国営通信会社に4G更新・5G試験でファーウェイ・ZTE製品を使わないよう指示 |
| その他の対中措置 | 大型投資案件の中止、電動バス・機械関連事業の凍結 |
| 限界 | 中国はインド最大の輸入相手国。ファーウェイは進出20年 |
中国アプリ59種を禁止
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 主な対象 | TikTok、WeChat、Weibo、Kwai など |
| TikTokのインド比率 | 世界ユーザーの約3分の1 |
| TikTokの累計投資 | 10億ドル(約1,075億円) |
| ByteDanceの推定損失 | 60億ドル(約6,450億円) |
| 世論 | 国民は概ね支持。インフラからの完全排除を求める声が多数派 |
ポイント:排除の引き金は米国の懸念ではなく中印の国境対立。安全保障で対立する国の企業に通信インフラを委ねない、という判断です。
その後の経緯(2021〜2026年)
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 2021年5月 | 5G試験をエリクソン・ノキア・サムスン・国産C-DOTに限定 |
| 2022年10月 | ジオ(サムスン+自社技術で中国製部品ゼロ)、エアテル・Vi(ノキア・エリクソン中心)が5G開始。4Gの中国製は5Gで入替 |
| 2024年10月 | デプサン・デムチョク2地点で哨戒再開合意。インド法人の従業員は一桁台に縮小と報告 |
| 2025年8月 | 王毅外相が訪印、第24回特別代表会談。国境画定の専門家グループ設置。レアアース輸出制限緩和の報道 |
| 2026年6月 | 王毅外相が再訪印、「段階的な正常化」を確認 |
| 2026年8月6日 | ニューデリーでWMCC第36回会合 |
雪解けの背景に、2025年発足のトランプ第2次政権の高関税による米印関係悪化があるとの指摘も。
WMCC第36回会合の要点
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 代表 | 印:スジット・ゴーシュ東アジア局長/中:侯艶琪 境界海洋事務局長 |
| 議題 | 国境画定・国境管理・メカニズム構築・越境協力 |
| インドの要求 | 越境河川の専門家会合、上流ダムの技術情報共有 |
| 合意 | 既存チャンネルで誤解・誤算を回避 |
注意:雪解けは外交・実務レベル。「トラステッド・ソース」認定で調達先を政府承認ベンダーに限る運用は続き、排除方針の見直し情報は2026年10月28日時点でもありません。
排除後のインドの5G
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| 5G契約数(2025年末) | 4億3,000万件(全体の35%) |
| 4G契約数(2025年) | 約5億7,000万件(46%)→2031年に約1億6,000万件 |
| 2031年の5G見通し | 11億件超(普及率81%) |
| エリア | ほぼ全県に展開。5G FWAも拡大 |
| 機能面 | ポストペイド向けにネットワークスライシングの差別化サービス |
出典:エリクソン モビリティレポート(2026年6月版)
ポイント:排除が普及を後押ししたわけではありませんが、特定ベンダーを外しても整備の致命傷にはならなかったことを数字が示しています。
| 2026年の実績値 | 数値 |
|---|---|
| 携帯電話契約数(2026年8月末) | 13.0億件超(TRAI) |
| Jioの5G利用者(2026年6月末) | 2億8,500万人(1年で7,300万人増/Reliance Industries 2027年3月期 第1四半期決算) |
| 5G FWA契約数(2026年8月末) | 1,345万件(7月末1,321万件から増加)。内訳はJio 約942万・Airtel 約403万(TRAI) |
| 基地局(2025年12月時点) | 51.5万局超・900都市超。Jioは30万局超をSA(スタンドアローン)で新規構築、Airtelは19万局超 |
出典:TRAI月次加入者レポート(2026年8月末分)、Reliance Industries 決算資料。基地局数は第三者集計(2025年12月時点)で政府の公式統計ではありません。
見どころ:Jioは最初からSAで建てた点が日本と対照的です。日本では楽天モバイルがSA未提供で、大手3社も4G設備を併用するNSAから移行している途中ですが、インドは中国製ベンダーを外したうえで新規構築したため、SAが標準になりました。
排除の受け皿になった「国産スタック」
民間大手がノキア・エリクソン・サムスンに置き換えた一方、国営BSNLは国産技術で建て直す道を選びました。2020年に政府が「国営通信会社は中国製を使うな」と指示した部分の、その後です。
| 役割 | 担当 |
|---|---|
| 全体の構築 | TCS(タタ・コンサルタンシー・サービシズ) |
| 基地局・無線設備 | Tejas Networks |
| コア網 | C-DOT(政府系の研究機関) |
| 規模 | 約10万局の4G網 |
| 追加発注(2026年) | 2026年8月27日付で、TCSがTejas Networksへ18,685局分の無線設備(153億7,000万ルピー)の基本発注書を発行 |
| 5G化 | 設置した局は5Gへ更新できる設計。ただし2025年10月に通信相が示した「6〜8か月で5G化」の時期は過ぎており、完了の確認は取れていない |
出典:Tejas Networksの発注受領の開示(2026年8月27日付LoI・Voice&Data)、BSNL・TCS・C-DOT・Tejasの国産4Gスタック発表(Developing Telecoms)、5G化の時期はRCR Wireless(2025年10月8日)が伝えた通信相の発言。いずれも企業開示・報道で、政府(PIB/DoT)の公式統計ではありません。
日本との対比:インドは「排除したあと、自国の産業で埋める」方向に進みました。日本も2020年にNEC・富士通などへ総額700億円を投じましたが、国内の5G網はエリクソン・ノキア・サムスンが中心で、国産設備で全国網を建てる道は取っていません。インドのやり方は時間がかかっており、4Gの全国展開に数年、5G化はさらに遅れています。
よくある質問
Q. インドはファーウェイを完全に締め出した?
5Gインフラは事実上締め出しました。ただし4Gの既存設備には過去の納入分が残っています。
Q. 米国の要請に応じず、後から排除したのはなぜ?
引き金は2020年6月の国境衝突です。安全保障上の判断が価格のメリットを上回りました。
Q. 中印関係が改善すれば戻れる?
調達方針の見直しは確認されていません。外交の雪解けとは切り分けて扱われています。
Q. ファーウェイを外した分は何で埋めたのですか?
民間大手はノキア・エリクソン・サムスン、国営BSNLはTCS・Tejas Networks・C-DOTによる国産スタックです。BSNLの5G化は当初の予定より遅れています。
Q. 排除で通信料金は上がった?
直接示すデータは未確認。ただ普及の速さから、価格が壁になっている状況ではないと考えられます。
まとめ
- 2020年まではファーウェイの安さを優先していた
- 2020年6月の国境衝突(45年ぶりの死者)で排除へ転換
- 2021年5月に正式除外、商用5Gは中国製抜きで構築
- 中印は対話再開も、排除方針は2026年10月時点で継続
- 国営BSNLは国産スタック(TCS・Tejas Networks・C-DOT)で約10万局の4G網を構築。5G化は当初の予定より遅れている
- インドの5Gは4億3,000万件と急成長
更新履歴(2020年7月公開の記事を2026年9月時点に更新)
- 2026-09-13 図表中心へ再編集/09-17 排除方針に変更なしを再確認
- 2026-10-15 TRAI月次レポート(2026年8月末)とReliance決算から実績値(携帯13.0億件超、Jioの5G利用者2億8,500万人、5G FWA 1,345万件)を追記
- 2026-10-28 BSNLの国産スタック(TCS・Tejas・C-DOT/約10万局、2026年8月27日付で18,685局分を追加発注、5G化の遅れ)を企業開示・報道ベースで追記
Warning: Trying to access array offset on false in /home/money555/5g-media.net/public_html/wp-content/themes/jin/cta.php on line 8
Warning: Trying to access array offset on false in /home/money555/5g-media.net/public_html/wp-content/themes/jin/cta.php on line 9