2020年5月25日、イギリス政府がファーウェイ製品を排除するとの報道が流れました。
2020年1月にイギリはファーウェイ製品の一部容認をしたばかりで、そのわずか4ヶ月先に方針を急展開させたことになります。
アメリカも5月15日にファーウェイに対する制裁を強化したばかりで、ここ数日は米英でファーウェイの排除を行なっています。
その原因は様々ですが、最も大きな原因は新型コロナウイルスの問題ではないかと言われています。
ファーウェイが排除された理由と新型コロナのウイルスの関係について詳しく解説していきます。
目次
イギリスが中国製品の限定採用方針を転換
イギリスが5月25日に発表したファーウェイ排除の方針は、これまでの方針を大きく転換するものでした。
これまでは、35%以下であればファーウェイ製品が認められていましたが、将来的には中国製品をゼロにすることとなります。
まずは、これまでのイギリスの対応と、方針転換後の規制の内容について詳しく解説していきます。
これまでは35%以下までは認められていた
アメリカをはじめとしたオーストラリア、ニュージーランド、カナダそしてイギリスは諜報機関の情報を共有する「ファイブ・アイズ」という同盟を組み、2019年までは足並みを揃えてファーウェイ製の部品などを一定程度排除していました。
しかし、2020年1月にイギリスだけはこの方針を転換。
5G通信網などに占有率35%以下でファーウェイ製の製品の使用を認めることとしました。
ただし、5Gネットワークの最も重要な基幹部分からは引き続き排除されることとなり、あくまでも機密情報とは無関係な部分のみ認められていました。
2023年までに中国製ゼロへ
しかし、イギリはファーウェイ製品を一部認める方針を2020年5月に急遽転換します。
報道によると、「イギリス政府は計画を立案するよう、関係部局に指示した」とされています。
イギリスは一部認める方針を打ち出してからわずか4ヶ月後に排除へと180度方向転換したことになるのです。
イギリスはなぜ急に方向を転換したのでしょうか?
イギリスがファーウェイ排除に転じた理由
イギリスがファーウェイ排除に転じた理由として、最も大きな理由として伝えられていることが、中国に対する新型コロナウイルスに端を発した不信感です。
その他にも様々な理由が伝えられており、以下のようなものがあります。
- 中国に対するコロナによる不信感
- イギリス国内の保守党の反対
- アメリカのファーウェイへの制裁強化
- 米中のコロナを巡る対立
- イギリスのEU離脱
イギリスがファーウェイ排除に動いた5つの理由について詳しく解説します。
中国に対するコロナによる不信感
イギリスが方向転換した最も大きな原因は中国に対するコロナに関係した不信感だと言われています。
ほとんどの欧米各国は新型コロナウイルスは中国発祥であると疑いませんが、中国はこれを否定しています。
それどころか感染者数などの正確な情報も出そうとしていないと言われています。
中国のこのようなコロナウイルスに関する態度に不信感を抱いたジョンソン首相は、ファーウェイに対しても不信感を抱き、再度のファーウェイ排除に踏み切ったものと考えられています。
イギリス国内の保守党の反対
また、以前からイギリス国内で保守党を中心とした反対の声が大きかったのも要因の1つです。
アメリカやオセアニアの国々と同じように「ファーウェイにインフラを握られたら、中国に主要なインフラを握られたことと同じことであり、安全保障に関わる。国家機密が流出する」といったものです。
以前からこのような声があったことも排除に転じた理由の1つでしょう。
アメリカのファーウェイへの制裁強化
イギリスが再度のファーウェイ排除に踏み切ったのが5月25日です。
その10日前、5月15日にアメリカはファーウェイに対する追加の制裁を発動しており、これによってファーウェイはスマホを製造することができない可能性が生じています。
今回のイギリスの方向転換が、アメリカの追加制裁とは無関係だとは思えません。
アメリカが追加で制裁を発動したことによって、ファーウェイの5G産業は大打撃になると一部では言われています。
将来の見通しがつかないファーウェイにつくよりも、アメリカについた方がメリットがあるという政治的な意図が働いたのではないかとされています。
米中のコロナを巡る対立
アメリカと中国はコロナウイリスによってさらなる対立を深めています。
イギリスも中国に対してはコロナで不信感を抱いており、この対立構造の中で、イギリスは同盟であるアメリカについたとも言われています。
いずれにせよ、今回の新型コロナウイルスの問題で中国が国際社会からの信頼を相当損ねたことだけは間違いないようです。
イギリスのEU離脱
また、イギリスがEUを離脱したということも背景として大きく関係していると考えられています。
イギリスのEU離脱によって短期的に大きな経済的損失を被るのはイギリスです。
イギリスはEUに変わる新たな商売相手を探さなければなりません。
折しも米英間では自由貿易協定(FTA)交渉が進んでいる最中で、アメリカの機嫌を損ねたくなかったというのもイギリスの本音でしょう。
このように、様々な要因が絡み合って、イギリスは短期間でファーウェイ容認から排除へと舵を切ったことになります。
イギリスはファーウェイ排除で問題ないのか?
これまではファーウェイ製の商品を使って5G通信網構築をしてきたイギリスですが、今後ファーウェイを排除してしまっても技術的には問題ないのでしょうか?
技術面でもコスト面でも影響があることは必至で、5G通信網の計画には遅れが生じることが指摘されています。
逆に言えば、遅れや損失を被ってでも、イギリスはファーウェイを拒否したことになります。
その程度の損失や遅れが生じるのか報道されている内容を確認していきましょう。
35%以下の規制でも5億ポンドのコストがかかる
そもそも1月の段階で「ファーウェイ製の製品は35%以下」という規制がかかったことによって、5億ポンドのコスト増だと言われていました。
価格の安いファーウェイ製品を35%以下しか使うことができないということは、それだけコストが大きくなってしまうということです。
これがゼロにするということであればさらなるコスト増大は避けられません。
コストの増大と計画の遅れは否めない
イギリスは、ファーウェイ排除によってコストの増大と、光回線敷設の計画の遅れは避けられないとしています。
イギリスは2033年までに全戸に光ファイバーを敷設する計画を掲げていますが、ファーウェイ製を排除することになると、この計画にも遅れが出るであろうと言われています。
それでもイギリスはセキュリティを優先してファーウェイ排除を決めたということでしょう。
いかに、新型コロナウイルスの対応の悪さがイギリスの不信を高めたかご理解いただけるのではないでしょうか?
まとめ
アメリカの追加の規制に次いでイギリスもファーウェイ完全排除へと舵を切りました。
新型コロナウイルスの影響によって、中国は世界中から信頼を失い、その不信がファーウェイ排除となっているようです。
実際に中国とコロナの関係、そしてファーウェイを巡る疑惑の真相は分かりません。
しかし、今回のコロナのことで、「信頼のない国に国家の情報に関与されるのは危険」とアメリカやイギリスが判断したことは間違いありません。
日本を含めた他国のファーウェイに対する今後の関わりに注目です。