2020年8月、本記事は「5Gが普及しない3つの理由」を解説しました。それから約6年。答え合わせをすると、5Gは完全に普及しました。総務省の統計では5G契約数は1億2,632万件(2026年3月末時点、2026年7月公表)、人口カバー率は98.6%(2025年度末)です。この記事では、当時挙げた「普及を妨げる3要素」がどう解消されたのかを振り返り、2026年に残された本当の課題を整理します。
目次
2020年に挙げた「普及しない理由」とその後
結論を先に表でまとめると、当時の3つの懸念はいずれも解消済みです。
| 当時の懸念 | 2020年の状況 | 2026年の状況 |
|---|---|---|
| エリアの狭さ | 主要都市のスポットのみ | 人口カバー率98.6%・基地局30万局超 |
| 端末の高さ | ハイエンド中心で10万円超 | 2〜3万円台のエントリー機でも対応 |
| 料金の高さ | 大手の高額プランが実質必須 | 格安プランでも追加料金なしで5G |
理由1:エリアが狭すぎる → 解消
2020年当時の5Gは「スポット」でしか使えませんでした。その後、4G周波数の転用とSub6基地局の増設(2024年度末で30万局超)により、人口カバー率98.6%まで拡大。都市部では5G接続がデフォルトになりました。地域差は残り、総務省の集計では最高が神奈川・大阪・沖縄の99.9%、最低が島根の89.2%と、都市と地方の開きはまだあります。
理由2:対応スマホが高い → 解消
2020年は5G対応機がハイエンド中心で10万円超でした。現在は新品スマホのほぼ全機種が5G対応で、2〜3万円台のエントリー機でも5Gが使えます。iPhoneも2020年秋のiPhone 12以降はすべて5G対応です。
理由3:料金プランが高い → 解消
2020年当時は5G利用に大手キャリアの高額プランが実質必須でした。現在はahamo(2,970円/30GB)、povo2.0(基本料0円)、LINEMO(990円〜)、楽天モバイル(1,078円〜3,278円無制限)など、低価格プランでも5Gが追加料金なしで使えます。
5G契約数はこう伸びた
普及の実感が一番はっきり出るのが契約数の推移です。サービス開始からの立ち上がりを図にすると、右肩上がりで1億件を突破したことがわかります。
※2025は2026年3月末時点。総務省「電気通信サービスの契約数及びシェアに関する四半期データ」等を基に概数化。
残された課題:真の5G「SA」と体感差
普及した現在も、「5Gで生活が劇的に変わった」という体感が薄いのは事実です。多くのエリアが4G設備を流用するNSA方式で、5G本来の低遅延・スライシングはSA方式の普及待ち。ミリ波(ミリ波帯)の活用も限定的です。
Opensignal調べでは、SA方式は平均下り速度がNSAの約1.7倍、上りは約1.5倍。低遅延や用途別に帯域を割り当てる「ネットワークスライシング」もSAで初めて本領を発揮します。ここが広がって初めて、自動運転やスマート工場、遠隔医療といった「5Gならでは」の用途が生活に届きます。「つながる5G」から「価値を生む5G」への移行が2026年以降のテーマです。
2020年には予想されていなかった変化
答え合わせをすると、当時の記事が「外した」のは悲観の方向だけではありません。予想の枠外で起きた変化もあります。
| 2020年には想定外だったこと | 2026年の実際 |
|---|---|
| 衛星との直接通信 | スマホが衛星と直接つながる「Starlink Direct」などが4キャリアで展開。5Gのエリア外対策が、地上の基地局増設とは別の手段で進んだ |
| 3Gの完全終了 | au(2022年)、ソフトバンク(2024年)に続き、ドコモのFOMAも2026年3月31日に終了。「3G・4G・5Gの併存」は解消された |
| 料金の下落幅 | povo2.0の基本料0円やLINEMOの990円〜など、5G込みで1,000円を切る選択肢が定着した |
| ミリ波の失速 | 当時は本命視されたミリ波が、投資対効果の壁でスポット展開にとどまった。速度の主役はSub6になった |
とくに衛星直接通信は、「5Gの基地局をどこまで山間部に建てるか」という2020年当時の問いの立て方そのものを変えました。人が少ない地域のカバーは、地上網を延ばすか衛星で補うかという二択になりつつあります。逆にミリ波は、当時もっとも喧伝された技術でありながら最も期待を下回りました。技術の優劣より投資対効果が普及の速度を決めるという教訓は、6Gを見るときにもそのまま当てはまります。
次の「答え合わせ」は2030年
普及の目標そのものも更新されています。総務省は2025年6月に「デジタルインフラ整備計画2030」を策定し、2030年度末までに全国の5G人口カバー率99%、かつ各都道府県それぞれで99%という目標を掲げました。
ポイントは後半の「各都道府県で99%」です。全国平均はすでに98.6%に達していますが、島根の89.2%のように10ポイント近い開きが残っています。全国平均を積み上げるフェーズは終わり、次は取り残された地域をどう埋めるかという課題に移ったことが、この目標設定から読み取れます。2020年の「普及しない理由」が都市部の話だったのに対し、2026年以降の論点は地方の最後の1割です。
まとめ
2020年に挙げた「エリア・端末・料金」の3つの壁は、2026年時点でいずれも解消されました。数のうえでの普及は達成済みで、次の焦点はSA化とミリ波活用による「質」の向上と、2030年度末までに各都道府県で99%という「地域差の解消」です。今から回線を選ぶなら、5Gは追加料金なしでほぼどのプランでも使えるため、料金と使い方で選んで問題ありません。
※本記事は2020年8月公開の記事を、2026年8月時点の情報で全面改稿したものです。