結論から述べます。5Gは「数」のうえではすでに普及しました。5G契約は1億3,153万件(2026年6月末)で携帯契約の約57%、人口カバー率は98.6%(2025年度末)です。それでも「普及しない」「速くない」と言われ続けるのは、エリアの中身が本来の5Gになっていないからです。全国の5G基地局30万2,118局のうち、本来の5G用の周波数(Sub6)を使う局は一部にとどまります。
この記事の結論
「普及しない」と言われる原因は、エリアや端末や料金ではありません。(1)エリアの多くが4G周波数の転用、(2)本来の5G(SA)が後回し、(3)5Gで儲ける道筋が立っていない、(4)ミリ波の失速、(5)5Gでなければ困る場面の少なさ——この5つです。2020年に言われた「エリア・端末・料金」の3つの壁は、すでに解消しています。
目次
まず結論:数は普及、「中身」が追いついていない
| 観点 | 2026年の実際 | 評価 |
|---|---|---|
| 契約数 | 1億3,153万件(携帯契約の約57%) | 普及した |
| 人口カバー率 | 98.6%(2025年度末) | 普及した |
| 対応端末 | 2〜3万円台のエントリー機も対応 | 普及した |
| 追加料金 | 不要(格安プランでも5G利用可) | 解消 |
| 体感速度 | 場所によって4Gと大差ない | 課題が残る |
| SA(本来の5G) | 基地局の約51.5%、楽天モバイルは未提供 | 課題が残る |
つまり「普及しない」という言葉が指しているのは、契約や電波の届く範囲ではなく、つないだときの中身です。以下、その原因を5つに分けて見ていきます。
理由① 5Gエリアの多くが「4G周波数の転用」
5Gには、大きく3種類の周波数が使われます。このうち転用周波数は、もともと4Gで使っていた電波を5G用に切り替えたものです。アンテナの表示は「5G」になりますが、速度は4Gと大きく変わりません。エリアを一気に広げるには有効な手段で、人口カバー率98.6%はこの転用に支えられています。
問題は、どの周波数でつながっているかを利用者が見分けられない点です。実際のところ、各社の5G基地局はこの配分が大きく異なります。
| キャリア | 5G基地局の総数 | うちSub6帯 | Sub6の比率 |
|---|---|---|---|
| ドコモ | 52,532局 | 33,543局 | 約64% |
| au(KDDI) | 110,037局 | 41,596局 | 約38% |
| ソフトバンク | 104,441局 | 12,541局 | 約12% |
基準時点:2025年3月末。出典:総務省「携帯電話及び全国BWAに係る電波の利用状況調査」(ケータイWatch 2026年1月14日報道)。比率は本記事での試算。楽天モバイル(総数35,108局)はSub6帯の局数を同調査の公表値から確認できなかったため除いた。
ここが誤解されやすい点:基地局の数が多い会社ほど速い、ではありません。ソフトバンクはドコモの約2倍の5G基地局を持ちますが、速さの主役であるSub6帯の局数はドコモの約3分の1です。ソフトバンクは転用周波数で広さを、ドコモはSub6で速さを優先した——という戦略の違いが表れています。
理由② 本来の5G「SA」が後回しにされた
5Gには、4G設備を併用するNSAと、5G設備だけで動くSAの2方式があります。低遅延やネットワークスライシングといった「5Gならでは」の機能はSAで初めて本領を発揮しますが、各社はコストと展開速度を優先してNSAから始めました。
| SAで変わること | 内容 |
|---|---|
| 速度(Opensignal調べ) | NSA比 下り約1.7倍・上り約1.5倍 |
| 低遅延・ネットワークスライシング | SAで本領発揮。自動運転・スマート工場・遠隔医療に現実味 |
| キャリア | SA対応基地局 | 5G基地局の総数 | SA化率 |
|---|---|---|---|
| ソフトバンク | 99,871局 | 104,441局 | 95.6% |
| au(KDDI) | 40,627局 | 110,037局 | 36.9% |
| ドコモ | 14,248局 | 52,532局 | 27.1% |
| 楽天モバイル | 0局 | 35,108局 | 0% |
| 全国合計 | 155,721局 | 302,118局 | 51.5% |
基準時点:2025年3月末。出典:総務省「電波の利用状況調査」。全国合計にはUQコミュニケーションズ等を含むため、4社の合計とは一致しない。
- 2026年8月25日、povo2.0もSA対応。au・UQ・povo全ブランドで利用可(KDDIはカバー率90%超と公表)
- 大手4社で未提供は楽天モバイルだけ
- SAを使うにはキャリア・場所・端末・契約の4つが揃う必要がある。povo2.0「通話+データ」はSA対応SIMへの申込みが必要、ドコモも申込みを求める場合あり
- 全国30万2,118局のうち16万5,000局超(5割超)がインフラシェアリング。基地局を各社で共用することで整備を加速させている
理由③ 5Gで儲ける道筋が立っていない
「普及しない」の背景には、利用者からは見えにくい事業としての採算の問題があります。5Gは高い周波数を使うため4Gより多くの基地局が必要になる一方、5Gにしたからといって通信料を上げられたわけではありません。各社がネットワーク投資を抑え、AIやデータセンターへ資金を振り向けている構図です。
| 年度 | モバイル設備投資の合計 | 前年度比 |
|---|---|---|
| 2024年度(実績) | 1兆3,260億円 | 2.6%減 |
| 2025年度(計画) | 約1兆3,830億円 | ほぼ横ばい |
| 2026年度(予測) | 約1.5兆円 | 11%増 |
| 2024年度の設備投資(会社別) | 金額 |
|---|---|
| NTTドコモ | 5,552億円 |
| KDDI(au) | 3,834億円 |
| ソフトバンク | 2,618億円 |
| 楽天モバイル | 930億円 |
出典:MCA調査(ケータイWatch 2026年6月21日)。2026年度の増加は、工事の遅れを挽回する楽天モバイルの投資拡大が主な要因とされる。
補足:投資額そのものは2026年度に増える見通しで、「5G投資が止まった」わけではありません。ただし5Gならではのキラーアプリケーションは現れておらず、KDDIとソフトバンクは5Gネットワークのコストを1,200億円削減する一方、AIデータセンターへ中長期で約1,000億円を投じる方針を示しています(ケータイWatch 2024年9月7日)。資金の向かう先が5Gの基地局からAI基盤へ移りつつある、というのが2026年の姿です。
理由④ ミリ波が失速した
5Gの「下り数Gbps」という宣伝で使われていたのは、主にミリ波(28GHz帯)です。ところが実際には、障害物に弱く届く範囲が狭いという弱点に加えて、トラフィックの伸びが小さく投資に見合わないため、空港・スタジアム・一部の駅などのスポット展開にとどまりました。5Gが「期待外れ」と言われる理由の多くは、このミリ波の失速に起因します。
| 項目 | 2026年の状況 |
|---|---|
| 展開範囲 | 空港・スタジアム・一部の駅などのスポット中心 |
| 利用状況 | トラフィックの伸びが小さく、低い水準にとどまる |
| iPhone | 日本モデルは歴代ミリ波非対応(最新のiPhone 18 Proでも非対応) |
| 今後の動き | 2026年9月16日、4社が既存のミリ波設備を相互活用する共同検討を発表。実施時期は未公表 |
日本で売られるiPhoneがミリ波に対応していないことは、ミリ波が普及しなかった原因と結果の両面を持ちます。最も台数の多い端末が非対応であれば、設備を増やす動機も生まれにくくなります。
理由⑤ 「5Gでなければ困る」場面が少ない
最後は、使う側の事情です。動画視聴・SNS・ゲームといった日常の用途は、4GやWi-Fiでもほとんど支障なく使えます。5Gの強みである低遅延や多数同時接続が効くのは、自動運転・スマート工場・遠隔医療・XRといった分野で、個人のスマホでは実感しにくいものです。
| 5Gの強み | 個人のスマホで実感できるか |
|---|---|
| 高速・大容量 | △ Sub6エリアなら体感できるが、4Gでも動画は見られる |
| 低遅延 | × SAエリアが前提。用途も限られる |
| 多数同時接続 | × IoT・産業向けの特性 |
4Gへの移行時は「スマホで動画が見られる」という誰にでもわかる変化がありました。5Gにそれに相当する変化がなかったことが、「普及した実感がない」という受け止めにつながっています。
2020年の「3つの懸念」は答え合わせ済み
一方で、2020年によく挙げられた「普及しない理由」は、いずれも現在は当てはまりません。
| 当時の懸念 | 2020年 | 2026年 |
|---|---|---|
| エリアが狭い | 主要都市のスポットのみ | カバー率98.6%・基地局30万局超 |
| スマホが高い | ハイエンド中心で10万円超 | 2〜3万円台のエントリー機も対応 |
| 料金が高い | 大手の高額プランが実質必須 | 格安プランでも追加料金なし |
| 補足 | 内容 |
|---|---|
| 地域差 | 最高 神奈川・大阪・沖縄99.9%/最低 島根89.2% |
| iPhone | 2020年秋のiPhone 12以降すべて5G対応 |
| 低価格プラン例 | ahamo 2,970円/30GB(12/1から40GB・3,135円)、povo2.0 基本料0円、LINEMO 990円〜、楽天モバイル 1,078〜3,278円で無制限 |
5G契約数の伸び
ポイント:5Gは携帯契約の約57%(2026年6月末)。4G LTEは1億581万件で前期比2.8%減です。契約の移行は着実に進んでいます。
「速い5G」かを確かめる3手順
自分がいま使っている5Gが転用周波数なのかSub6なのかは、次の手順で推定できます。
| 手順 | やること | 判断の目安 |
|---|---|---|
| 1. 実測 | 速度測定アプリで2〜3回 | 数百MbpsならSub6、数十Mbpsなら4G転用の可能性 |
| 2. エリア確認 | 公式マップで自宅・職場 | 「5G」と「Sub6」を塗り分ける社が多い |
| 3. 端末確認 | 仕様表でSub6(n77/n78/n79)・SA対応 | 非対応なら速度は伸びない |
多くの場合、原因はキャリアではなくその場所が4G転用エリアであることです。キャリアを乗り換えても、同じ場所で同じ周波数しか来ていなければ体感は変わりません。
2020年には想定外だった変化
| 変化 | 2026年の実際 |
|---|---|
| 衛星との直接通信 | Starlink Directなどが4キャリアで展開。エリア外対策の新手段 |
| 3Gの完全終了 | au(2022年)、SB(2024年)、ドコモFOMA(2026年3月31日) |
| 料金の下落幅 | povo2.0 基本料0円、LINEMO 990円〜。1,000円未満が定着 |
| ミリ波の失速 | 投資対効果の壁でスポット展開止まり。速度の主役はSub6。2026年9月、4社が既存設備の相互活用の共同検討を発表 |
教訓:普及速度を決めたのは技術の優劣より投資対効果でした。同じ力学は6Gにも当てはまります。
2026年:料金は上げ局面へ
| 時期 | できごと | 方向 |
|---|---|---|
| 2026年6月1日 | SB「メリハリ無制限+」受付終了。現行はテイガク無制限 8,008円/ペイトク2 10,538円 | 値上げ方向 |
| 2026年6月2日 | ワイモバイル「シンプル3」改定(S 3,278円/M 4,378円/L 5,478円) | 改定 |
| 2026年7月18日 | AppleがiPhoneを一斉値上げ(8,000〜25,000円) | 値上げ |
| 2026年8月1日 | ahamoがキャンペーンで30GB→40GB(料金据え置き・11月30日まで) | 実質値下げ |
| 2026年9月10日 | Appleが国内価格を再度改定。iPhone 17 159,800円/16 139,800円/17e 124,800円/Air 189,800円へ(18 Pro 219,800円・Pro Max 239,800円で登場) | 値上げ |
| 2026年10月1日 | WiMAX各社が値上げ(Broad +630円/GMO +605円/カシモ +594円/BIGLOBE +330円) | 値上げ |
| 2026年12月1日 | ドコモが料金プランを改定(eximo等は最大550円値上げ、ahamoは3段階制へ)。SoftBank Air 5,368円→5,698円 | 値上げ |
注意:理由は物価高騰と回線調達コスト。値上げは既存契約者にも適用されるケースが増えています。「実質月額◯円」の古い表記にも注意してください。
次の答え合わせは2030年
| 総務省「デジタルインフラ整備計画2030」 | 内容 |
|---|---|
| 策定 | 2025年6月 |
| 目標 | 2030年度末に人口カバー率99%、各都道府県で99% |
| 現状との差 | 全国98.6%に対し島根89.2%。論点は地方の最後の1割 |
2030年に向けた焦点は、カバー率の数字そのものではなく、転用周波数で広げたエリアをSub6とSAに置き換えられるかです。ここが進めば「5Gなのに速くない」という評価は変わっていきます。
よくある質問
Q. 結局、5Gは普及したのですか?
数のうえでは普及しました(携帯契約の約57%、人口カバー率98.6%)。ただしエリアの多くが4G周波数の転用で、SA対応も基地局の約51.5%です。「電波は届いているが、本来の性能は出し切れていない」というのが正確な状況です。
Q. なぜ5Gなのに速くないのですか?
その場所が4G周波数の転用エリアである可能性が高いです。アンテナ表示は「5G」でも、速度は4G相当にとどまります。速度測定アプリで数十Mbpsなら転用、数百Mbpsが出ればSub6と推定できます。
Q. キャリアを変えれば速くなりますか?
場所によります。Sub6の局数はドコモが約64%、auが約38%、ソフトバンクが約12%と配分が異なるため差は出ますが、同じ場所にSub6が来ていなければ乗り換えても体感は変わりません。公式のエリアマップでSub6の塗り分けを確認してから判断してください。
Q. 5Gにすると料金は上がる?
5Gにすること自体で追加料金はかかりません。2020年当時は5G専用プランで月1,000円ほど高いのが一般的でしたが、現在は格安プランでも5Gが使えます。ただし2026年は各社が料金そのものを値上げする局面にあります。
Q. 自分の地域は5Gエリア?
人口カバー率は面積ではありません。各キャリアのエリアマップで住所単位の確認をしてください。島根の89.2%のように、都道府県によって10ポイント近い差があります。
Q. ミリ波はもう使われない?
使われていますが、スタジアム・空港・一部の駅などのスポットにとどまります。2026年9月16日に4社が既存のミリ波設備を相互活用する共同検討を発表しましたが、実施時期は未公表です。日本で売られるiPhoneは歴代ミリ波非対応です。
Q. 6Gになれば解決しますか?
同じ課題が繰り返される可能性があります。5Gの普及速度を決めたのは技術ではなく投資対効果でした。6Gは2030年ごろの実用化が目標とされていますが、採算の見通しが立たなければ同じ経過をたどりかねません。
まとめ
- 5Gは契約数(1億3,153万件・約57%)とカバー率(98.6%)ではすでに普及済み
- 「普及しない」と言われる原因はエリアの中身。Sub6の比率はドコモ約64%・au約38%・ソフトバンク約12%と大きく異なる
- SA化率は全国51.5%。未提供は楽天モバイルだけ
- 背景には5Gで収益を伸ばせていないという事業面の事情がある。資金はAI基盤へ移りつつある
- ミリ波は失速し、日本のiPhoneは歴代非対応
- 次の焦点は2030年度末・各都道府県99%と、転用エリアのSub6/SAへの置き換え
※本記事は2020年8月公開の記事を、2026年9月6日時点の情報(5G契約数・人口カバー率・SA対応基地局)で全面改稿し、povo2.0の5G SA提供開始(8月25日)と2026年の料金改定一覧を追記したものです。2026年9月13日に図表中心の構成へ再編集し、9月20日に4社によるミリ波の共同検討(9月16日発表)と、9月10日のiPhone国内価格改定を追記しました。9月26日に5G契約数を総務省の2026年6月末の値(9月25日公表)に更新しました。2026年10月4日に「普及しない」と言われる5つの理由(周波数の転用・SAの遅れ・採算・ミリ波の失速・用途)を軸に再構成し、周波数帯別の基地局数と設備投資額のデータを追加しました。あわせて5G基地局の全国総数を、総務省調査の公表値である302,118局(2025年3月末)に訂正しました(旧記載307,263局)。