2020年5月27日、国が5Gやドローン開発を支援する新法が参議院を通過して成立しました。
これによって、5Gやドローンを国内で製造する業者が税金の優遇措置や低金利融資を受けられるようになり、日本国内において5Gやドローンの研究開発や導入を行う民間企業が増えることが期待されます。
国会で成立した、5Gやドローン開発を国が支援する新法について詳しく解説していきます。
目次
5Gやドローン開発を支援|法律の目的とは?
この法律の正式名称は「特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律」と言います。
この法律の目的は、国民生活の向上と国民経済の向上だけでなく、安全保障の目的も謳われています。
5Gやドローンといった、特定高度情報通信技術を活用したシステムの開発と供給は、国民生活が向上することに加えて、サイバーセキュリティという観点から安全保障にも資することから国が支援を行なっていくというのがこの法律の趣旨になります。
特定高度情報通信技術活用システムとは
特定高度情報通信技術活用システムとは主に5Gとドローンの2つの技術です。
法律では、5Gとドローンについて以下のように表記しています。
- 5G:政令で定める周波数の電波を使用することにより大量の情報を高速度で送受信することを可能とするもの
- ドローン:政令で定める事業に係る点検、測量その他の政令で定める業務を一体的に行うよう構成された小型無人機
条文には難しく記載されていますが、簡単に言えば、5Gとドローンの開発や普及を行う事業者に対して一定の補助を与えるのがこの法律の趣旨になっています。
5Gやドローン開発で国の支援を受けるためには
この法律では、5Gやドローンの開発や導入をする事業者に対して支援を行うということが趣旨になっています。
国からの支援を受けるためには
- 特定高度情報通信技術活用システム導入計画
- 特定高度情報通信技術活用システム開発供給計画
いずれかの認定を受ける必要があります。
認定を受けるために必要な項目などについて、詳しく解説していきます。
特定高度情報通信技術活用システム導入計画の認定を受ける
特定高度情報通信技術活用システム導入計画の認定を受けるためには、
システムの導入を行うとする事業者が以下の内容を盛り込んだ計画を策定する必要があります。
- 特定高度情報通信技術活用システムの導入の目標
- 特定高度情報通信技術活用システムの導入の内容及び実施時期
- 特定高度情報通信技術活用システムの導入を行うために必要な資金の額及びその調達方法
- 特定高度情報通信技術活用システムの導入に関し必要な事項
具体的なタイムスケジュールや資金調達計画を記載して主務大臣の認可を受ける必要があります。
具体的には、「自分の会社にローカル5Gを敷設したい」などという場合には、認定の対象になる可能性があります。
特定高度情報通信技術活用システム開発供給計画の認定を受ける
システムの開発を手がける事業者は「特定高度情報通信技術活用システム開発供給計画」を国に提出して認可を受ける必要があります。
開発供給を行おうとする事業者は、以下の内容を盛り込んだ計画を策定しなければなりません。
- 特定高度情報通信技術活用システムの開発供給の目標
- 特定高度情報通信技術活用システムの開発供給の内容及び実施時期
- 特定高度情報通信技術活用システムの開発供給の実施体制
開発供給を行う業者は、資金調達計画までは策定する必要はありません。
開発の内容や、実施時期などを記載した計画を策定し、主務大臣の認可を受けることができます。
「ドローンを使った監視システムを作りたい」などの場合には認定の対象になる可能性があるでしょう。
5Gやドローン開発への国の支援内容は?
認定を受けた事業者は国からの金銭面での支援を受けることができます。
国から受けることができる支援は以下の2つです。
- 日本政策金融公庫の低金利融資
- 投資に対する減税措置
5Gやドローン開発・導入の認定事業者が国から受けることができる具体的な支援について解説していきます。
日本政策金融公庫の低金利融資を受けられる
今回の法律の第13条には以下のように記載されています。
公庫は、〜中略〜指定金融機関に対し、認定開発供給事業者又は認定導入事業者が認定開発供給計画又は認定導入計画に従って特定高度情報通信技術活用システムの開発供給等を行うために必要な資金の貸付けに必要な資金を貸し付ける業務及びこれに附帯する業務(以下この節及び第三十一条第一項第四号において「開発供給等促進円滑化業務」という。)を行うことができる。
「開発供給等促進円滑化業務」とは、特定の政策目標実現のために必要な資金を、日本政策金融公庫が民間金融機関に供与して、民間銀行が融資を行うというスキームです。
つまり、認定開発供給事業者または認定導入事業者は、日本政策金融公庫から必要な資金の貸付を受けることができる
もしくは
日本政策金融公庫から資金供与を受けた民間金融機関から必要な資金の融資を受けることができるという内容になっています。
金利等の条件はまだ決められていませんが、基本的には通常の運転資金融資などと比較してかなり低い金利で融資を受けることができると考えて間違いないでしょう。
減税措置を受けられる
また、認定事業者になると、システムの開発や導入のために支出した資金に関しては大幅な減税措置を受けることもできます。
第26条には以下のように記載されています。
認定導入計画に従って実施される特定高度情報通信技術活用システムの導入を行う認定導入事業者が、当該特定高度情報通信技術活用システムの導入の用に供するために取得し、又は製作した機械及び装置、器具及び備品、建物附属設備並びに構築物については、租税特別措置法(昭和三十二年法律第二十六号)で定めるところにより、課税の特例の適用があるものとする。
要するに認定事業者が、システム導入の際に取得や製作した装置や備品や建物などについては、「課税の特例」が適用されるという内容です。
課税の特例とは、システム導入・開発の際に取得や製作した装置や備品や建物などについて特別償却または税額控除が認められるというものです。
つまり、システム導入・開発の30%を経費参入する(特別償却)か、システム導入・開発にかかった費用の15%を税額控除することができるという内容です。
これによって、利益が出ている法人には大きな節税効果が生まれるので、利益が出ている法人が5Gやドローンに対して「投資をしてみよう」と考えるインセンティブが与えられることになります。
2020年初頭に政府の税制大綱で決められた5G減税の内容が適用されるものと考えられます。
まとめ
国は5Gやドローンの導入開発を行う事業者を資金面、税制面から支援する目的で「特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律」を成立させました。
この法律によって、日本では遅れていると言われている5Gやドローンに対する投資が活発化していくことが期待されています。
また、アフターコロナの不景気を引っ張るのが5Gやドローンなどの高度情報通信技術活用システムであると言われています。
5Gやドローンに対して研究開発や投資を行おうとする企業は、国からの資金供与が非常に受けやすくなっています。
これによって、日本にどの程度5Gやドローンが普及するのか期待したいところです。