政府・与党は2019年12月、2020年の税制改正大綱で5G普及促進のための新たな税制をまとめました。
簡単に言えば「5Gへの投資を行う企業には減税を行う」というもので、これだけ聞くと「政府が5Gの整備を税制面で後押ししている」と思います。
確かに税制面から政府が5Gの普及促進を後押ししていることは間違いありません。
しかし、この税制の目的は5Gの普及促進だけではないようです。
5G減税の概要や、この税制を新設する政府の意図などについて詳しく解説していきます。
目次
5G投資を促す税制優遇とは
新設される見込みの5G減税の概要は以下の通りです。
- 投資額の15%の税額控除か30%の特別償却を選択できる
- 減税を受けるには認定が必要
- ローカル5Gへの投資も減税対象になる
制度のポイントについて、もう少し細かく深掘りしていきます。
5G投資額の15%の税額控除か30%の特別償却のいずれかを選択できる
5G投資に対する減税策は
- 5G投資額の15%の税額控除
- 30%の特別償却
いずれかを選択することができるというものです。
例えば5Gに対して100億円設備投資した場合に
- 15%の税額控除を選択すれば:15億円の税額控除(支払うべき税金から控除される)
- 30%の特別償却を選択すれば:30億円を減価償却費として経費参入
することができ、企業の収益状況に合わせて任意の優遇を受けることができます。
減税には認定を受けることが条件
5G投資に対する税制優遇を受けるためには事前に国の認定を受ける必要があります。
国の認定を受けるためには
- 企業の5G整備計画を提出し審査を受ける
- 審査通過には安全保障上の懸念がある国の企業の部品が使われていないことなどを確認
という条件があります。
つまり、安全保障上の懸念があるとされる中国のファーウェイ製の部品を使って5Gの整備を行なっても、この税制優遇を受けることはできません。
ローカル5Gも減税対象に
5G投資への税制優遇には、企業が工場などに独自の5Gネットワークを構築するローカル5Gへの投資も対象となる見込みです。
移動通信網を構築する大手キャリアだけでなく、製造業や建設業などのローカル5Gを活用した投資を行う企業も減税対象となるので、幅広い業界でも 5G投資の活発化が期待できます。
5G減税の3つの狙い
政府与党が5G減税を新設した目的として、以下の3点を挙げることができます。
- 5G導入促進のために税制で優遇する
- 国内産業の育成のための税制優遇
- ファーウェイの排除を間接的に行う
5G減税の目的は通信網の早期確率や国内産業育成だけでなく、ファーウェイの排除という安全保障上の問題も絡んでいるようです。
5G減税を新設する政府与党の3つの目的について詳しく解説していきます。
5G導入促進のために税制で優遇する
5G投資への税制優遇は、5G通信網構築で遅れをとっている国内5G通信網の早期構築に寄与します。
減税措置があることによって、大手キャリアが積極的に5Gへの投資を拡大すれば、日本国内全体に早期に5Gが通信通信網が構築されることが期待できるでしょう。
日本の新たな成長戦略の一環として5G通信網の構築は欠かすことができないものであり、通信網の早期構築を大手キャリアに促す目的で5G投資の税制優遇は実施されます。
国内産業の育成のための税制優遇
日本企業は5Gに関しては中国などから大きく遅れをとってしまっています。
国内企業へ5G投資への税制優遇を行えば、国内企業が5Gへの投資や研究開発を積極的に行うことが期待でき、遅れをとった5G関連の国内産業を育成することに繋がるでしょう。
海外の技術に頼らずに国内産業を育成する目的としても5G投資への税制優遇は行われます。
ファーウェイの排除を間接的に行う
5G投資への税制優遇の一番のキモは、アメリカを中心として排除を進めている中国のファーウェイ製の商品を排除することだと一部では言われています。
税制優遇を受けるためにはファーウェイ製の部品を使って投資を行うことができません。
日本は、ファーウェイを排除するオーストラリアやニュージーランドのように、国をあげての直接的なファーウェイ排除は行なっていません。
しかし、税制面でファーウェイ製の部品を排除することによって間接的にファーウェイの排除を行なっているのが実態です。
アメリカを中心とした国際的なファーウェイ排除の枠組みに参加する目的で、5G投資への税制優遇が行われるという意見もあります。
まとめ:5G減税の目的と効果とは
新たに新設される見込みの5G減税の目的は以下の3つです。
- 5G通信網の早期確率
- 国内産業の育成
- ファーウェイ製の排除
企業にとっては5Gへの投資で大きな減税効果を得られ、国にとってもファーウェイを排除することによって安全保障を確保することができます。
また、この減税はローカル5Gにも適用されることから、私たちが自宅へ街で普通に5Gが使えるようになるよりも先に、勤務先では5Gによって遠隔操作などで作業ができるようになるかもしれません。