【2026年9月 追記】
本記事は2020年公開当時の情勢です。ファーウェイ排除は2026年も続き、同社は日本のスマホ市場から事実上撤退。日本の5G人口カバー率は98.6%(2025年度末)です。オープン化のその後は後半の追記で解説しています。
2020年、ファーウェイ排除で日本勢に復権の好機が訪れました。しかし2026年時点で日本企業のシェアは依然数%未満とみられ、オープンRANは「新規参入の後押し」という形で効いています。
目次
結論:2020年の期待と2026年の実際
| 論点 | 2020年に期待されたこと | 2026年の実際 |
|---|---|---|
| 調達コスト | オープン化で基地局が安くなる | 市場はファーウェイ・エリクソン・ノキアで7割超のまま |
| 日本勢の復権 | ファーウェイの36%を取りにいく | NECは専用ハードの販売終了(2026年4月末)、京セラは参入断念。富士通の事業は1FINITYへ。ただしOpen RANソフトに絞れば日本勢3社で約37%(2025年上期・Omdia) |
| エリア | — | メーカーと無関係に98.6%達成 |
| 料金 | 調達競争で下がる | 楽天の新規参入を通じて効いた |
2020年当時:世界のファーウェイ排除
| 動き | 内容 |
|---|---|
| 米国主導で排除 | 米・日・英・加・豪・NZ・台湾・スウェーデン・ポーランド・デンマーク・チェコ・ラトビア・エストニア・ルーマニア等 |
| 2020年7月 欧州へ波及 | フランスが「2028年までに完全排除」。月末にポルトガル大手3社も |
| 漁夫の利 | シェア2位エリクソン、4位ノキア(北欧勢) |
排除の理由は安全保障上の懸念(通信インフラの中枢を特定国の企業が握るリスク)とされます。
2020年当時:日本勢の立ち位置
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 日本勢シェア | NEC 1.3%+富士通 0.8%=2.1% |
| 焦点 | ファーウェイの世界シェア36%の奪い合い |
| 政府支援 | NEC・富士通・楽天モバイル等に総額700億円。2025年(大阪万博)までに集中開発 |
| 英国とNEC | 2020年6月に5G参入を協議(サムスン電子も候補) |
| NTT×NEC | 2020年6月、NTTが640億円出資(第3位株主・約4.8%) |
ポイント:提携の柱は基地局のオープン化。ファーウェイより2〜3割高い価格差を、メーカー間競争で埋める狙いでした。
【2026年追記】オープンRANとは
基地局の接続仕様を共通化し、異なるメーカーの機器を組み合わせる考え方です。
年表:排除からオープンRANまで
| 時期 | 主な出来事 |
|---|---|
| 2020年 | ファーウェイ排除が本格化、欧州にも波及 |
| 2022年12月 | 携帯4社が横須賀に「Japan OTIC」開設(共同運営は世界初) |
| 2023年1月 | KDDIがサムスン電子・富士通の仮想化5G基地局を大阪で商用展開 |
| 2023年2月 | ドコモが海外展開ブランド「OREX」始動 |
| 2024年4月 | ドコモ・NECが合弁「OREX SAI」設立 |
| 2024年 | ドコモがエリクソン製の採用拡大と報道 |
| 2025年7月 | 富士通がネットワーク事業を分社し1FINITYが営業開始(光伝送・基地局・6G研究を承継) |
| 2025年6月 | 総務省「デジタルインフラ整備計画2030」公表 |
| 2025年10月 | 京セラが5G基地局事業への参入を断念(2027年めどの参入方針を撤回)と報道 |
| 2026年1月 | 欧州委員会がデジタル・ネットワーク法(Digital Networks Act)を提案。高リスク指定から3年以内に機器撤去を義務化する内容(企業名は挙げないがファーウェイ・ZTEが念頭) |
| 2026年1月29日 | NECが専用ハードの基地局販売を2026年4月末で終了と発表。vRANへ集中し、構造改革費用 約180億円を計上 |
| 2026年5月 | 1FINITYの無線機が楽天モバイルの全国商用網へ展開完了(7月公表) |
| 2026年8月5日 | NECが海外向けネットワーク機器の再販事業をイタリア企業主導の陣営へ譲渡すると発表(2026年度中に完了予定) |
| 2026年9月15日 | 欧州通信17社のCEOがConnect Europe経由で同法に反対する書簡。置き換え費用は最大400億ユーロと試算。欧州議会と加盟国で調整中で未成立 |
国内メーカーの明暗
| 企業 | 現在地 |
|---|---|
| OREX SAI | 資本金160億円(ドコモ66%・NEC34%)。2030年ごろ世界シェア20〜30%が目標。カタールOoredooで試験成功、シンガポールで商用協業 |
| 1FINITY(旧・富士通のネットワーク事業) | 2025年7月1日に営業開始。楽天モバイルの全国商用網へOpen RAN無線機の展開を完了(2026年5月)。ボーダフォン採用(2025年10月)、AT&Tでエリクソンの分散ユニットと接続した商用Open RAN通話、独テレコムの3,000サイト超でファーウェイ置換に参画 |
| NEC | 専用ハードの基地局販売を2026年4月末で終了。vRANソフトとMassive MIMO無線機の開発、既存機の保守、OREX SAI、6G研究は継続。ネットワークインフラ事業は航空宇宙・国家安全保障の区分へ統合 |
| 京セラ | 参入断念(2025年10月報道)。KDDIと共同開発の中継装置(リピーター)に注力 |
| 楽天シンフォニー | 2025年通期で初のnon-GAAP営業黒字(売上856.9億円)。顧客70社。2026年2月にRAN制御機能(RIC)を国内商用網へ全国展開 |
注意:Dell’Oroの集計では2026年上期も上位5社(ファーウェイ・エリクソン・ノキア・ZTE・サムスン)で世界シェア96%と順位は変わっていません。基地局市場全体で公表値から確認できる日本勢はNEC 0.9%・富士通 0.5%(2024年時点)で、2026年の個社別シェアは有料レポートのみです。Open RANのソフトウェアだけを切り出した数字は公表されており、下の節にまとめました。
オープンRANは2026年にどこまで来たか
| 指標 | 2026年時点 |
|---|---|
| Open RAN市場 | 2022〜2024年に約4割縮小したあと、2025年は世界売上が二桁成長 |
| クラウド化の見通し | Cloud RANは2030年でも全RANの15〜20% |
| マルチベンダー構成 | 2030年でも5%未満の見込み。「複数社の機器を混ぜる」使い方はなお少数派 |
| vRANの上位 | サムスン、楽天シンフォニー、1FINITY(2025年第2四半期) |
出典:Dell’Oro Group(2026年3月・8月の公表分)。順位と上位5社合計までが公開値で、個社別のシェアは有料レポートのみです。
「Open RANソフト」に絞ると、日本勢で約37%
基地局市場全体では日本勢は数%未満ですが、Open RANのソフトウェアだけを切り出すと順位が逆転します。楽天モバイルが2026年2月26日に総務省の協議会へ提出した資料に、Omdiaの集計が載っています。
| 順位 | 企業 | シェア(2025年上期) |
|---|---|---|
| 1 | サムスン | 42.7% |
| 2 | 楽天シンフォニー | 23.4% |
| 3 | Mavenir | 10.4% |
| 4 | NEC | 7.9% |
| 5 | 富士通(1FINITY) | 5.5% |
| 6 | ノキア | 4.2% |
| — | その他 | 5.8% |
出典:楽天モバイル「情報通信への投資の在り方」(総務省 情報通信成長戦略 官民協議会 ヒアリング発表資料3-4・2026年2月26日)。原典はOmdia。対象はOpen RANのソフトウェア売上で、基地局市場全体(ハードを含む)ではありません。
読み方:日本勢3社(楽天シンフォニー・NEC・富士通)の合計は約36.8%。2020年に狙った「ファーウェイの36%」に数字としては並びました。ただし土俵が違います。Open RANはRAN市場全体の1割未満(2025年時点)で、同じ資料も「今後5年間で2倍以上に成長」という見通しの段階です。小さな市場で大きなシェアを取ったというのが2026年の正確な位置づけです。
読み方:オープン化は「日本勢が世界シェアを取り返す」形ではなく、無線機(RU)など部分的な供給と、海外事業者の置き換え案件という形で実を結びました。1FINITYのボーダフォン・AT&T・独テレコム向け供給がその例です。EUのデジタル・ネットワーク法が成立すれば置き換え需要はさらに増えますが、費用負担をめぐり事業者側の反発が強く、2026年10月3日時点でも審議中で行方は未定です。
【2026年10月】置き換え市場の大きさと、EUが動けない理由
日本勢にとっての商機は「EUがどれだけ中国製を抱えているか」と「それをいつ外すか」で決まります。RUSIが2026年10月に公表した報告書は、その両方に触れています。
| 国 | 5G RANの中国製比率(2024年時点) | 置き換えの状況 |
|---|---|---|
| ドイツ | 約60% | 中国との経済関係から慎重。コア網は2026年末が期限 |
| スペイン | 約30% | EUが明示した範囲では従う |
| 英国 | 約20% | 2027年12月までに5Gから完全撤去(法的拘束力あり) |
出典:RUSI「High-Risk ICT Vendors and Critical Infrastructure」(2026年10月)、Computer Weekly(2026年10月2日・UK and Europe at risk from Chinese tech, says security think tank)
読み方:ドイツの約60%は、裏返せば置き換え案件の規模です。ただしRUSIは、EUに「高リスクベンダー」の共通定義がなく、2020年の5Gセキュリティ・ツールボックスを完全に実施したのは27か国中10か国にとどまると指摘しています。定義と期限が国ごとにばらばらな間は、置き換えがまとまった需要として出てきません。日本勢にとっては、市場が大きいことと、発注が読めないことが同時に起きている状態です。
オープン化の優等生・楽天はSAで最後尾
SA対応は155,721局。調査対象の5G基地局307,263局の50.7%です(2025年3月末・総務省 電波利用状況調査)。
楽天モバイルは2026年10月3日時点でもSAを提供していません。報道では「2026年内に運用できる状態、利用者への提供は2027年ごろ」とされ、開始時期の公式発表はありません。
| 事業者 | SA対応基地局 | ネットワークの作り |
|---|---|---|
| ソフトバンク | 99,871局 | 従来型ベンダー中心 |
| KDDI | 40,627局 | サムスン+富士通の仮想化基地局 |
| NTTドコモ | 14,248局 | OREXで海外展開 |
| 楽天モバイル | 0局 | 完全仮想化。SAは未提供 |
ポイント:オープンな部品で組むことと、最新機能を早く出すことは別問題。楽天のSA開始は2026年内/2027年と報道が割れています。
政府は基盤整備を継続
| デジタルインフラ整備計画2030 | 目標(2030年度末) |
|---|---|
| 基地局 | 60万局体制(うちインフラシェアリング30万局) |
| 人口カバー率 | 99%前後 |
総務省、2025年6月11日公表。
よくある質問
Q. オープン化で通信料金は安くなった?
調達競争による値下げは未実現。ただし楽天の完全仮想化での参入を後押しし、価格競争に間接的に効いたと言えます。
Q. メーカーの勢力図はエリアに影響した?
ほぼしていません。エリアはインフラシェアリングと国の計画で進み、98.6%に達しました。
Q. 日本勢の今後の軸は?
OREX SAIなどの海外展開と、1FINITYのようなRU(無線機)供給です。NECは専用ハードの販売をやめてvRANソフトと防衛・次世代規格へ、京セラは中継装置へと、それぞれ領域を絞りました。
まとめ
- 2020年の日本勢シェアは2.1%。排除で好機とされた
- 2026年も3社で7割超、日本勢は数%未満とみられる
- NECは専用ハードの販売を2026年4月末で終了、京セラは参入断念。OREX SAIと1FINITYは海外へ
- 楽天は完全仮想化でもSA対応0局
- オープン化は料金よりも新規参入に効いた
- ただしOpen RANソフトの売上シェアでは楽天シンフォニー23.4%・NEC 7.9%・富士通5.5%=日本勢で約37%(2025年上期・Omdia)。市場そのものはRAN全体の1割未満
更新履歴(2020年8月公開の記事を2026年9月時点に更新)
- 2026-09-13 図表中心へ再編集。オープンRAN、国内メーカーの現状、SA対応基地局数(2025年3月末・総務省)を加筆
- 2026-09-18 NECの基地局ハード販売終了(2026年1月29日発表・4月末終了)と海外再販事業の譲渡(8月5日発表)、富士通のネットワーク事業分社(1FINITY、2025年7月1日)、Dell’Oro Groupの市場動向を追記
- 2026-09-25 EUデジタル・ネットワーク法の提案(2026年1月)と欧州通信17社CEOの反対書簡(Euronews 9月15日)を追記
- 2026-10-15 RUSI報告書(2026年10月)から3か国の5G RAN中国製比率と共通定義の不在を追記
- 2026-10-28 Open RANソフトウェアの売上シェア(2025年上期・Omdia/楽天モバイルが2026年2月26日に総務省の官民協議会へ提出)を追記。基地局市場全体のシェアとは土俵が違う点を明記
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