2018年に始まった米中の「5G戦争」。スパイ活動の直接証拠は今も示されていませんが、ファーウェイ排除は米国・欧州の一部・日本で制度として定着しました。
目次
結論:「もしも」で始まり、制度で固定化
| 論点 | 2020年 | 2026年 |
|---|---|---|
| スパイの証拠 | 示されず | 今も示されず(孟晩舟氏は司法取引で帰国) |
| 日本の5G網 | ソフトバンクに依存あり | 大手4社ともファーウェイ製なし |
| 欧州 | ドイツ・フランスは排除せず | ドイツが2026年末にコア網から排除 |
| ファーウェイ | 制裁で失速 | 中国内シェア首位に復権・北米除く基地局シェア約41% |
米中の主張
| 立場 | 主張 |
|---|---|
| 米国 | ファーウェイ製品による情報収集・スパイの疑い。中国の安全保障当局からの資金提供を指摘 |
| 中国 | 主張を否定。一方的な制裁には対抗すると表明 |
米国の本音:5G網は生活インフラの土台。「もしも」中国に握られたら困るから、今のうちに排除する。
各国の対応(2020年→2026年)
| 国 | 2020年当時 | その後 |
|---|---|---|
| 米国 | 政府調達を禁止 | 輸出規制を年々強化 |
| 豪州・NZ | 5G網への参加を認めず | 排除を継続 |
| 英国 | 一部容認 | 排除に転換 |
| フランス | 排除しないと言及 | 排除に転換 |
| ドイツ | ファーウェイが契約確保 | 2026年末コア網、2029年末アクセス網の管理機能を排除 |
| 日本 | 政府調達禁止・税制優遇 | 経済安全保障推進法で事前審査(2024年5月〜) |
ドイツはドイツテレコム・ボーダフォン・テレフォニカが合意。第1段階はほぼ達成済みと報道(ハンデルスブラット、ジェトロ)。
EU「デジタル・ネットワーク法(DNA)」(未成立)
EUを一律に縛る規制は、2026年1月の欧州委員会提案が出発点です。企業名は挙げていませんが、ファーウェイ・ZTEが念頭にあるとされます。
| 時期 | 動き |
|---|---|
| 2026/1/20 | 欧州委員会が「デジタル・ネットワーク法」を提案。高リスク指定から36か月以内に該当機器の撤去を義務づける内容 |
| 2026/5/22 | 加盟国が「特定方法や範囲を明確に」と注文 |
| 2026/9/15 | 欧州通信17社のCEOが反対の公開書簡(業界団体Connect Europe経由)。オレンジ・ドイツテレコム・テレフォニカの首脳が署名し、置き換え費用は最大400億ユーロと試算 |
| 2026/9 | 理事会の作業部会で議論継続 |
| 2026年Q4〜 | 欧州議会ITREで審議。理事会との協議は2027年初めとの見方 |
反対の理由は「中国寄り」ではなく費用と期限です。17社は、置き換え自体ではなく、EU域外供給者を一律に禁じる形と3年という期限に反対しています。ドイツは排除には賛成ですが、EU一律の義務化には反対です。
※この提案は報道によって「サイバーセキュリティ法の改正」としても扱われます。いずれも2026年1月の同じパッケージを指しています。出典:Euronews(2026年9月15日)、The Register(2026年1月21日)、Jones Day(2026年7月)ほか。
ファーウェイの現在地
| 分野 | 状況 |
|---|---|
| 業績 | 2026年1〜6月の売上高4,678億元(前年同期比+9.5%)。純利益は約37%減、研究開発費は1,214億元で過去最高(売上高の25.9%) |
| 基地局 | 北米除くシェア約41%(2025年・Dell’Oro)。2026年Q1もRAN市場で首位 |
| チップ | SMIC製造の自社Kirin:Mate 60(2023)→ Kirin 9020(Mate 70)→ Kirin 9030(Mate 80・2025/11) |
| OS | HarmonyOS 5・6の搭載端末が世界5,000万台超(2026年3月) |
| スマホ | 中国内シェア首位(2025年・約16%)。日本ではGoogleアプリ非対応で事実上撤退 |
| 特許 | 5Gの標準必須特許を多数保有。機器を外しても特許料は残る |
制裁は「ファーウェイを壊す」よりも「中国の技術内製化を加速させた」という見方が有力です。2026年上半期も増収を保ちながら、利益を削って研究開発に投じています。
排除のデメリット(2020年当時の論点)
| 論点 | 内容 |
|---|---|
| 技術力 | 2017年に基地局シェア世界1位。過酷な環境にも設置できると評価 |
| 代替 | エリクソン・ノキアで代替可能(3社で市場の7割超) |
| コスト | 低価格が強み。ただし代替不能ではない |
| 置き換え | 導入済みの国・企業にとって完全排除は時間がかかる |
日本のキャリア
| キャリア | 対応 |
|---|---|
| ドコモ・au | 当初から採用せず |
| ソフトバンク | 2019年にエリクソン・ノキアを選定、4Gも置き換え |
| 楽天モバイル | 当初から採用せず(NEC・ノキア等のOpen RAN) |
国産側ではNEC・富士通がBeyond 5Gを開発。京セラは2025年12月に5G基地局開発の継続を断念。
よくある質問
Q. 日本のキャリアはファーウェイ製を使っている?
主要4社の5G網に新たな採用は確認できません(2026年9月)。
Q. EUは排除の法律を作った?
まだ成立していません。2026年1月提案の「デジタル・ネットワーク法」を審議中で、2026年9月15日には通信17社のCEOが反対の公開書簡を出しました。ドイツは国内合意で先に進めています。
Q. 排除すれば影響はなくなる?
機器は外せても、5Gの特許料は残ります。
まとめ
- スパイの証拠は示されないまま、排除は制度として定着
- ドイツは2026年末にコア網から排除
- ファーウェイは中国・新興国で存在感を維持。陣営ごとの分断が固定化
- EU一律の義務化は未成立。2026年9月には通信17社が最大400億ユーロの負担を理由に反対
※出典:日本経済新聞、ジェトロ ビジネス短信、Dell’Oro Group、Jones Day(2026年7月)、36Kr Japan(2026年9月8日・ファーウェイ上半期決算)、Euronews(2026年9月15日・欧州通信17社CEOの反対書簡)、The Register(2026年1月21日)ほか。本記事は2020年公開の内容を、2026年9月13日に図表中心の構成へ再編集し、9月15日に2026年上半期の業績を追記したものです。