5G基礎知識

【5G戦争】ファーウェイはなぜ問題なのか?日本の対応と今後の動向

【2026年8月 追記】

この記事は2020年公開当時の情勢を伝えたものです。2026年現在も米中対立とファーウェイの5G機器排除は続いています。ファーウェイは米制裁下で独自チップ「Kirin」を復活させ、自社OS「HarmonyOS」により中国国内では復権しましたが、日本のスマホ市場からは事実上撤退した状態です。日本の5G網の「脱ファーウェイ」はそのまま定着し、5G人口カバー率は98.6%(2025年度末)に達しています。

2019年はニュースで「ファーウェイ」という言葉を耳にする機会がよくありました。多くの人が「ファーウェイは悪いことをしているのか」とざっくり捉えているかもしれませんが、問題はそれほど単純ではなく、アメリカと中国の主張は大きく食い違っています。政治的にアメリカ側に立つ日本もアメリカの主張に同調していますが、これは単なる貿易戦争ではなく安全保障にも関わる問題で、多くのことが事実ではなく「もしも」で動いています。本記事では、ファーウェイを巡るアメリカと中国の主張、日本政府の具体的対応を解説します。携帯キャリアを選ぶ上でも押さえておきたい前提です。

ファーウェイを巡る米中5G戦争とは?

ファーウェイを巡る米中5G戦争とは?

2018年末頃からファーウェイの問題が取りざたされるようになりました。ファーウェイを巡るアメリカと中国の主張の食い違いや、アメリカの制裁的な対応は「米中5G戦争」と呼ばれるほど熾烈になっています。まずは米中それぞれの主張を事実ベースで整理します。

立場 主張・主な出来事
アメリカ ファーウェイ製品による不正な情報収集・スパイ活動の疑いを主張。イラン制裁違反の疑いで孟晩舟副会長を逮捕。CIAは中国の国家安全保障当局からファーウェイへの資金提供を指摘。ファーウェイが中国政府・人民解放軍と深い繋がりを持つことは事実
中国 アメリカの主張を一切認めず、「ファーウェイを含む同国企業に一方的な経済制裁を発動する国には対抗する」と主張。資金提供の事実はあるが、アメリカが主張するスパイ活動の証拠は実際には示されていない

事実だけを並べると「アメリカは証拠がないのに危機感を持ってファーウェイを排除しようとしている」とも見えます。この裏にあるのは、「今後の」安全保障に対する危機感だと言われています。ファーウェイは以前、5Gインフラで世界1位のシェアを誇った企業で、本格的に5Gインフラが整った国は、情報通信だけでなく生活インフラの多くを5G通信網経由で担うようになるとされます。仮にアメリカの主張通り、ファーウェイ製通信機器から中国政府が情報収集できるとすれば、ファーウェイ製機器で5G通信網を構築した国の情報やインフラは中国に握られてしまうことになります。つまり「もしも」通信網を支配されたら安全保障上の脅威になる、だから「今のうちに」中国政府の実質的な支配下にあるファーウェイを排除したい、というのがアメリカやオーストラリアなどの意図だと考えられます。「事実」よりも「もしも」を考慮した結果が、現在のファーウェイ排除の流れに繋がっています

アメリカの呼びかけによって世界各国はファーウェイ排除の動きへ

アメリカの呼びかけによって世界各国はファーウェイ排除の動きへ

アメリカは世界各国に「5G通信網にファーウェイ社製の製品を使わないように」と呼びかけています。これに呼応して欧米ではファーウェイ排除の動きが加速し、日本でも強制的な排除ではないものの税制優遇などで排除の動きが出ています。

対応
アメリカ 国防権限法で製品・部品の政府調達を禁止
オーストラリア 政府がファーウェイの5G通信網への参加を認めない
ニュージーランド 政府がファーウェイの5G通信網への参加を認めない
イギリス 通信大手が5Gネットワークからファーウェイを排除
カナダ 国家情報局がリスクに言及
フランス ファーウェイを排除しないと閣僚が言及(当時)
ドイツ ファーウェイが5G通信網の契約を確保(当時)

アメリカ・オーストラリア・ニュージーランドは政府としてファーウェイを排除し、イギリスは一部容認、ドイツはファーウェイが通信網を構築するなど、国によって対応は大きく異なっていました。アメリカ・オーストラリア・ニュージーランド・イギリス・カナダは諜報情報を共有する「ファイブ・アイズ」同盟を組んでおり、一定程度足並みを揃えています。一方EUの中心国であるフランスとドイツは、当時はファーウェイ排除を行っていませんでした(フランス・ドイツともその後方針を転換したことは後述の追記で解説します)。

日本政府の方針もアメリカと足並みを揃えるもので、①政府調達を禁止する方針、②民間企業にファーウェイ製品を調達しないよう呼びかけ、③ファーウェイ製を使用しなければ5G通信網整備で3年間税制優遇、という施策が取られました。政府・民間ともにファーウェイを排除する方向で、対中国の最前線に位置する日本の地政学上のリスクを踏まえれば、「if」を仮定してアメリカと歩調を合わせる現実的な対応と言えます。

ファーウェイを排除した場合のデメリットは?

ファーウェイを排除した場合のデメリットは?

ファーウェイは2017年に携帯インフラで世界1位でしたが、2018年はアメリカの排除の効果もあり2位に転落しています。それでも基地局設置の技術力は世界的に評価されており、「マラリアが発生する湿地や南米コロンビアの山腹に基地局を設置できるのはファーウェイだけ」とも言われるほどで、ファーウェイの技術力に頼らなければ5G通信網を整備できない国は存在するでしょう。5G通信網シェア世界1位を争うのはファーウェイとスウェーデンのエリクソンで、アメリカや日本などファーウェイ排除に動く国はエリクソンと組む方針です。ファーウェイ製品は低価格というメリットはありますが、どうしてもファーウェイでなければならないわけではありません。ただしメーカーごとの規格の違いがあるため、すでにファーウェイの規格で整備を進めてきた国や企業にとって完全排除は容易ではないのも実情で、世界中に根を張ったファーウェイを完全に排除することは現実的には難しい側面があります。

日本でのファーウェイの扱いは?

日本でのファーウェイの扱いは?

アメリカ政府の呼びかけに呼応する形で、日本政府もファーウェイ製通信機器の排除を進めていますが、方針はあくまで税制優遇等にとどまり、民間企業であるキャリアへの強制力はありません。ドコモとauは5G基地局にファーウェイ製品を導入しない方針を明確にした一方、ソフトバンクはすでにファーウェイ製品で基地局整備を進めていました。ドコモ・auと同様「政府方針に則って調達する」旨の声明は出していたものの、導入済み基地局の規格の問題もあり、当時は排除するかどうか不透明な状況でした。

ファーウェイのスマホ自体は当時も日本で発売されていましたが、アメリカの排除の一環としてファーウェイ製端末ではGoogleのアプリが使用できないという大きな問題がありました。GoogleマップもGoogle Playも使えず、Googleアプリを使う人にとっては不便な状況が続きました。真偽は定かではないものの、情報漏洩を懸念して忌避する人がいたのも事実です。

【2026年8月更新】その後の経過と現在地

この記事は2020年の公開時点での見立てを記したものですが、あれから6年が経ち、状況はかなり具体的に見えてきました。当時「もしも」で語られていた部分が、実際にどう転んだのかを整理しておきます。

米中の対立そのものはどうなったか

ファーウェイの孟晩舟副会長は、2018年12月にカナダで逮捕された後も長く係争が続いていましたが、2021年9月に米司法省との間で「訴追延期合意(司法取引)」を結び、罪状を認めることなくカナダから中国へ帰国しました。米国側がスパイ活動そのものを裁判で立証したわけではなく、この一件は銀行に対する説明義務違反(イラン制裁関連の取引を巡るもの)として決着しています。つまり、記事本文にあった「スパイ活動の直接証拠はない」という状況は、2026年時点でも基本的に変わっていません。

一方で米国による半導体・先端技術の対中輸出規制は年々強化され、ファーウェイは最先端の外部調達チップを使えない状態が続きました。これに対しファーウェイは中国国内の中芯国際(SMIC)製造による自社設計「Kirin」チップの生産を再開し、2023年発売の「Mate 60」シリーズでの復活を経て、2024年発売の「Mate 70」シリーズでは「Kirin 9020」、2025年11月発売の「Mate 80」シリーズでは新型「Kirin 9030」(SMIC最新プロセス採用)を投入しています。基本ソフト(OS)も独自の「HarmonyOS」への全面移行を進めており、2026年3月時点でHarmonyOS 5・6を合わせた搭載端末は世界で5,000万台を突破したと発表されました。制裁は「ファーウェイを壊す」効果よりも「中国国内での技術内製化を加速させる」効果の方が大きかった、という見方が現在では有力です。

ファーウェイの世界シェアは今どうなっているか

通信インフラ調査会社Dell’Oroの分析によれば、北米市場を除いた集計でファーウェイは2025年に世界の通信機器(基地局など)市場で約41%のシェアを持つとされています。北米・日本・英国・オーストラリアなど「排除」を選んだ国では姿を消した一方、アフリカ・中東・東南アジア・中南米など新興国市場では引き続き強い存在感を保っており、価格競争力の高さがその背景とされています。同社の2026年第1四半期(1〜3月)集計でも、ファーウェイは世界の移動体通信基地局(RAN)市場で首位を維持しているとされています。世界全体で見ると、ファーウェイ・エリクソン(スウェーデン)・ノキア(フィンランド)の3社で市場の7割以上を占める寡占状態が続いています。

スマートフォンについても、中国国内では複数の調査会社の推計で2025年通年シェア1位(約16%前後)と報じられており、国内市場に限れば大きく回復したと言えます。ただし国外、とりわけ日本市場では、Googleのアプリやサービスが使えない制約もあり、実質的に販売の勢いを失っている状況です。

欧州の「排除」は今まさに期限を迎える段階に

記事本文で触れた各国の対応のうち、2026年に大きな節目を迎えるのがドイツです。ドイツ政府は通信事業者との合意にもとづき、2026年末までに5G通信網の中核部分からファーウェイ製機器を排除する方針を進めています(日本経済新聞)。ドイツは欧州の中でもファーウェイ製設備への依存度が高く、排除の判断が遅れていた国でした。その国が期限を切って置き換えに動いていることは、欧州全体として「排除」が例外ではなく既定路線になったことを示しています。

ドイツ方式で注目したいのは、一律に撤去するのではなくネットワークの部位ごとに期限を分けた点です。第1段階として2026年末までにコア(基幹)網からファーウェイ・ZTEの重要コンポーネントを排除し、第2段階として2029年末までにアクセス網(基地局側)のネットワーク管理システムの重要機能を他社製へ置き換える、という2段構えになっています。情報が集中し、乗っ取られた際の影響が最も大きいコア網を先に守り、物量が膨大なアクセス網には時間をかけるという考え方です。ドイツテレコム・ボーダフォン・テレフォニカの通信3社がこの方針で合意しており、ドイツ経済紙ハンデルスブラットによれば2026年末を期限とする第1段階の要件は現時点でほぼ満たされているとされています(ジェトロ ビジネス短信)。

2020年当時の本記事では、ドイツを「ファーウェイが5G通信網の契約を確保」した国として紹介していました。その見立ては6年で完全に覆ったことになります。ただしドイツは、欧州委員会が2026年1月に打ち出したEU一律で排除を義務づける法制化案には反対の立場を取っており、「排除はするが、どのベンダーを排除するかを決めるのは各国政府であるべきだ」という姿勢です。欧州の「脱ファーウェイ」は方向としては固まりつつも、その決め方をめぐってはなお一枚岩ではありません。

一方で見落とされがちなのが特許の問題です。ファーウェイは5G関連の標準必須特許を世界で最も多く持つ企業の一つとされており、各国が基地局から同社製の機器を外したとしても、5Gの規格そのものを使う限り特許使用料の支払いは残ります。「機器は排除できても、技術の影響力までは排除しきれない」というのが、6年を経て見えてきたもう一つの現実です。

日本政府・国内キャリアのその後の対応

日本政府は2022年5月に「経済安全保障推進法」を成立させ、基幹インフラ事業者に対する設備の事前審査制度などを法制化しました。ファーウェイ排除は税制優遇のような誘導策から、より制度的な枠組みへと移行しています。

携帯キャリア側では、ソフトバンクが2019年の時点で5G基地局のパートナーとしてエリクソンとノキアを選定し、既存の4G設備についても北欧2社製への置き換えを進める方針を示していました。当時の記事では「導入済み基地局の扱いは不透明」としていましたが、その後の報道を見る限り、ソフトバンクも含め国内大手キャリアはファーウェイ製設備に依存しない方向で足並みを揃えています。楽天モバイルはネットワーク構築の当初からファーウェイを採用せず、NEC・ノキア・シスコ(Ciena含む)などの技術を組み合わせた仮想化ネットワーク(Open RAN)を採用しました。

国産基地局メーカーの側では、NECと富士通が政府の支援を受けながら次世代(Beyond 5G/6G)の中核技術の国産化に取り組んでいますが、2025年12月には京セラが自社での5G基地局開発の継続を断念すると発表するなど、国内メーカー各社の体力差も表面化しています。

ファーウェイ・米中5G摩擦の主な経過(2018〜2026) 2018 孟晩舟氏 カナダで逮捕 2019-20 米が禁輸措置 英が排除方針表明 2021 孟晩舟氏、司法取引で 帰国・釈放 2022 日本、経済安全保障 推進法が成立 2023 独自Kirinチップで 中国内シェア回復 2025 北米除くシェア約41% (Dell’Oro調べ)

結局、何が「もしも」で何が「事実」になったのか

2020年時点の記事は「ファーウェイ製機器を通じて中国政府が情報収集できてしまうかもしれない」という仮定(if)に基づく安全保障論と、それを裏付ける確定的な証拠が乏しいという構図を指摘していました。2026年現在も、この「証拠は乏しいが排除は既定路線として進んだ」という構図自体は基本的に変わっていません。変わったのは、対立が一時的な摩擦ではなく、米国・欧州の一部・日本などが自国の通信網から中国製設備を排除する体制を制度として定着させた一方、ファーウェイは中国国内および新興国市場での存在感を維持・拡大するという「陣営ごとの分断」がより固定化した点です。どちらの主張が正しかったかを断定できる材料は今も出ておらず、この論点は引き続き注視が必要と言えるでしょう。

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キャリア選びの前提として:日本の5G網はどの社もファーウェイ製設備を使っていません

ドコモ・au・ソフトバンク・楽天モバイルのいずれも、5G基地局にファーウェイ製の主要設備を採用していません。なかでも楽天モバイルは当初からOpen RANで構築しており、料金は3GB以下1,078円・無制限3,278円、5Gは追加料金なしです。

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まとめ

ファーウェイの問題は、事実そのものよりも「もしも」に基づく懸念の比重が大きいように思えます。「安全保障上の脅威である中国に安全保障や生活インフラのネットワークを押さえられてしまったら」という懸念は誰もが持つものですが、アメリカもスノーデンファイルで明らかになったように他国のネットワークに侵入していた事実があり、Googleも世界中の情報を集めています。結局、日本にとっては「どちらの国に情報を知られた方がよりマシなのか」という問題に帰結するのかもしれません。日本がアメリカに安全保障を頼っている以上、日本政府の選択は現実的なものと言えるでしょう。ただし、ファーウェイはアメリカから部品調達などのために莫大な金額を支払っているとされ、両国が完全に関係を絶つことはもはや不可能とも言われています。米中という2つの大国に挟まれた日本は、米中貿易戦争、米中5G戦争を引き続き注視していく必要があるでしょう。

※本記事は2020年に公開した内容を、ドイツの排除期限や特許を巡る論点など2026年8月時点の最新情報に更新したものです。