【2026年7月 追記】
この記事は2020年公開当時の情勢を伝えたものです。2026年現在も米中対立とファーウェイの5G機器排除は続いています。ファーウェイは米制裁下で独自チップ「Kirin」を復活させ、自社OS「HarmonyOS」により中国国内では復権しましたが、日本のスマホ市場からは事実上撤退した状態です。日本の5G網の「脱ファーウェイ」はそのまま定着し、5G人口カバー率は98.6%(2025年度末)に達しています。
アメリカと中国は貿易戦争・通信戦争を経て本当の戦争に突入しそうな勢いになっています。
この最中、アメリカは「5Gクリーネットワーク」という国内通信事業における中国当局の脅威を排除する取り組みをスタートさせました。
中国企業排除を国内から排除すると同時に国際的に大きくアピールする取り組みです。
5Gクリーンネットワークは日本企業にも大きく関係し、今後は日本企業のファーウェイをはじめとした中国企業との付き合い方も大きく変わらざるを得ないでしょう。
5Gクリーンネットワークの概要と日本との関係について詳しく解説していきます。
目次
5Gクリーンネットワークとは
5Gクリーンネットワークとは、以前からアメリカが進めていた5Gクリーンパスという取り組みに基づき、中国からの脅威を排除するサービスです。
簡単に言えば、中国の様々なインターネットサービスの中で、危険性が高いと判断したものをアメリカ政府が名指しして排除する呼びかけになります。
まずは5Gクリーンサービスの概要について理解していきましょう。
中国当局の脅威を排除する取り組み
5Gクリーンネットワークとは、アメリカの国内事業者向けの取り組みで、アメリカ国内の通信事業者を中国当局の脅威から守る取り組みです。
国内事業者向けに中国の危険な企業やアプリなどを排除する取り組みで、アメリカのポンペオ国務長官は「クリーン・ネットワークは、中国共産党などによる悪質な攻撃・侵入から、米国民の個人情報と企業の最も重要な情報を保護するための包括的なプログラムである」と話しています。
アメリカの対中国向けの取り組みであると同時に、中国をアメリカの通信事業から排除する取り組みです。
5Gクリーン・パスに基づく取り組み
5Gクリーン・ネットワークは、トランプ政権が今年4月に公表した「5Gクリーン・パス(5G Clean Path)」構想に基づく取り組みです。
クリーン・パス構想とは、5Gによる通信がアメリカの外交関連施設を通過する際に、ファーウェイZTEなど信頼できない中国のベンダーからの機器・サービスを一切介さないことを通信事業者に対して求めるものです。
トランプ政権は5Gクリーン・パスに以下の5つの指針を付け加え、世界各国の産業界にも中国のメーカーをアメリカと同じように排除することを求めています。
5つの指針は次のとおりです。
- クリーン・キャリア:信頼できない中国の通信キャリアが米国の通信網に接続されていないことを確実にする
- クリーン・ストア:信頼できないアプリを米国のモバイルアプリストアから排除する
- クリーン・アプリ:信頼できない中国のスマートフォン製造者(ファーウェイを例示)が、製造した端末に米国のアプリを事前インストールしている、もしくは独自のアプリストアからダウンロードできる状況を阻止する
- クリーン・クラウド:アリババ、バイドゥ、テンセントなどの企業のクラウドシステムを通じて、米国市民の機微な情報や米企業の重要な知的財産が外国の敵対勢力に渡ることを阻止する
- クリーン・ケーブル:米国と国際インターネット通信をつなぐ海底ケーブルが中国政府による諜報に侵されないよう確実にする
これらの総称をクリーンネットワークとしています。
アメリカが排除するサービス
アメリカが排除する主なサービスは以下の通りです。
- TikTok
- アリババや百度、テンセントなどの企業が米国内で運営するクラウドベース
当初はファーウェイ排除を目的としていた5Gクリーンパスでしたが、今は中国IT業界全体を排除する動きへと変化しています。
5Gクリーンネットワークによる影響
5Gクリーンネットワークに関して、民間企業や西側諸国がアメリカの忠告を守らなかったからと言って法的な拘束力はありません。
しかし、アメリカが公式にこのような発表をすることによって世界には大きく「中国の情報産業は信頼できない」とアピールすることができるので、中国企業に影響が出ることは間違いありませんし、実際にすでに影響は出ています。
5Gクリーンネットワークでどのような影響があるのか、具体的に解説していきます。
法的拘束力はないが中国企業に影響を与えることは間違いない
5Gクリーネットワークを守らなかったからと言ってアメリカの通信業界に対して法的拘束力はありません。
ただし、政府がここまで大々的に中国IT業界を締め出す理由として「中国共産党政権がクラウドサービスを通じて、米国民の個人情報や中共ウイルス(新型コロナウイルス)のワクチン研究を含む米企業の貴重な知的財産にアクセスするのを阻止するため」だと言及している以上、アメリカでは実際に中国IT企業は締め出しになり、中国企業に影響を与えることは間違いありません。
アメリカが中国を信頼していないことのアピール
そして、日本をはじめとする西側諸国にとっても、アメリカがここまで大々的に中国を排除するように求めているのですから無視することはできません。
今や多くの国が「中国を選ぶかアメリカを選ぶのか」の岐路に立たされており、日本やイギリス、台湾、フランスを始めとした多くの国がファーウェイなどの中国勢を排除しています。
アメリカが5Gクリーネットワークを策定しアピールすることで、アメリカ国内だけでなく、世界的に中国のIT排除は加速していくことになります。
現実に日本でもTikTokの信用禁止が真剣に議論され始めました。
クリーンリストも公表
アメリカが発表した5Gクリーンリストアメリカは、5Gに関してクリーンな取り組みをしている企業のリストである「クリーンリスト」も公表しています。
ここは、日本企業に対して明暗を分ける結果となりました。
結論的に言えばソフトバンクはリストから漏れてしまいました。
リストから漏れたソフトバンクは安全なのかどうか、リストに入る基準とともに解説していきます。
日本ではNTTとKDDIがリスト入り
アメリカが発表している5Gクリーンリストの中に、日本企業ではNTTとKDDIは入りました。
この2社は以前から5Gの通信網からファーウェイを排除していることは公表していたため、この点が評価され5Gクリーンリストに入ったものだと思われます。
ソフトバンクはリスト漏れ
一方、以前からファーウェイとの強い関係性が指摘されていたソフトバンクは5Gクリーンリストから漏れてしまいました。
2018年時点では、ソフトバンクの携帯基地局ベンダーシェアのうち59.9%がファーウェイとなっています。
今後はエリクソンとノキアを採用すると発表していますが、2018年時点の数字を見るとアメリカがソフトバンクを信用していないと判断しているのも頷けます。
ソフトバンクの取り組みについて知りたい方はソフトバンクのホームページを参照してください。
ちなみに、楽天モバイルはNECをベンダーとして選んでいるため、安心だと言えるでしょう。
楽天モバイルの5Gサービスはまだ開始されていませんが、通信ベンダーは安全ですし4Gであれば1年間無料なので、安く安全を求めるのであれば実はかなりメリットの大きなキャリアです。
詳しくは下記をご覧ください。
ソフトバンクは安全なのか
では、ソフトバンクは安全なのでしょうか?
確かにアメリカが懸念している通り、ファーウェイが個人情報を中国共産党に提供している可能性は否定できません。
実際にファーウェイが中国政府、人民解放軍と深い繋がりがあることは事実であることは広く知られています。
そのため、携帯基地局ベンダーの6割もファーウェイに頼っているソフトバンクは危険と言えば危険です。
しかし、今の日本国内の世論を考えらればファーウェイ排除は避けようがありません。
ソフトバンクもノキアやエリクソンへの転向を表明しているため、将来的には安全でしょう。
すぐに危険性はないものの、心配は人は様子を見ながらソフトバンクを利用すると言ったところが無難ではないでしょうか?
ちなみにソフトバンクは2年間は5Gを4Gと同じ料金で利用できるので、お得と言えばお得です。
すでにソフトバンクユーザーの人が様子見がてらソフトバンクの5Gを試すのであればメリットがあるプランになっています。
詳しくは以下に。
【2026年7月追記】その後、何が起きたのか
この記事の公開から6年が経過しました。米中対立という大きな構図そのものは今も続いていますが、当時は「呼びかけ」に過ぎなかったクリーンネットワークは、その後大きく姿を変えています。確認できる情報の範囲で、実際に何が起きたのかを追記します。
ソフトバンクのファーウェイ排除、その後
本文にある「ソフトバンクは今後エリクソンとノキアを採用すると発表」という部分についてです。ソフトバンクは実際に2019年、5G向け基地局のベンダーとしてエリクソンとノキアを選定したと発表しました。既存の4G基地局についても、両社製品への置き換えを段階的に進める方針を明らかにしています。その後の進捗を正確な数値で追える公開資料は限られるものの、業界報道を見る限り、ソフトバンクの通信網における主要ベンダーは欧州系2社が中心になっているとみられます。
クリーンネットワークは「呼びかけ」から「義務」へ
2020年当時のクリーンネットワークは、法的拘束力を伴わない米政府の呼びかけでした。しかし2026年に入り、米連邦通信委員会(FCC)はファーウェイやZTEなど「Covered List」に掲載された企業の機器について、輸入・販売そのものを禁止する規則を段階的に整備してきました。2026年3月にはBureau(局)レベルでの規則案(PS Docket 26-72)が示され、6月26日に採択、7月16日から施行されています。また4月30日には、Covered List掲載企業に対して電気通信事業の包括的許可(Section 214)を自動付与しない規則案(FCC 26-29)も委員会で採択され、意見募集の手続きに入りました。当初の「信頼できる企業を選んでほしい」という任意の推奨から、「中国企業との取引そのものを禁止する」という強制力を伴う規制へと転換が進んでいるといえます。米国の対中姿勢は、本文執筆時点よりもむしろ強まる方向で推移しています。
ファーウェイの現在地:中国では復権、日本では不在
ファーウェイは米国の半導体規制の影響でスマートフォン事業が一時大きく落ち込みましたが、自社開発チップ「Kirin」と独自OS「HarmonyOS NEXT」により巻き返しを図り、2025年には中国国内のスマートフォンシェアで4年ぶりに首位に返り咲いたと報じられています。一方、日本国内では2019年以降、大手キャリアによるファーウェイ製スマートフォンの取り扱いが止まったままで、公開市場向けの新製品供給も実質的に途絶えており、日本の消費者が新品のファーウェイ端末を目にする機会はほぼなくなっています。日本市場への具体的な再参入計画は、現時点で確認できる情報の範囲では見当たりません。
日本の5G網は「脱ファーウェイ」のまま定着
総務省の発表によれば、2025年度末(2026年3月末)時点で全国の5G人口カバー率は98.6%に達し、全国1,741市区町村すべてに5G基地局が整備されています。5Gクリーンリストが話題になった当時の「脱ファーウェイ」路線は、その後も方針転換されることなく続いており、国内の主要キャリアの5G網に中国メーカーの主要機器が新たに採用されたという情報は確認できません。
今、日本の消費者にとっての意味
2026年時点で、クリーンネットワークや5Gクリーンリストという枠組み自体を一般の消費者が意識する場面はほとんどありません。国内の通信キャリアを選ぶうえで「基地局に中国製機器を使っているかどうか」を心配する必要は、記事公開当時に比べてかなり小さくなったといえるでしょう。むしろ現在は、料金プランやエリア品質、端末のサポート体制など、通信キャリア本来の比較ポイントで検討するのが実務的です。
まとめ
2020年にアメリカが打ち出した「5Gクリーンネットワーク」は、当初は法的拘束力のない任意の呼びかけに過ぎませんでした。しかし6年が経った2026年現在、その考え方はFCCによる輸入禁止措置や許可制度の見直しという具体的な規制として実装され、米中の通信インフラを巡る分断は解消するどころか、むしろ制度として固定化が進んでいます。
中国のIT企業がどこまで実際に安全保障上のリスクを持つかについて、第三者が完全に検証することは難しく、この記事でも断定はできません。ただし、通信インフラという国の基盤に関わる分野では、供給元の透明性や信頼性が重視されるという流れ自体は、この6年で後戻りしていないというのが実態です。
日本国内に目を向けると、NTTドコモはNEC・ノキア・富士通、KDDIはエリクソン・サムスン電子・ノキア、ソフトバンクはエリクソン・ノキアへの移行、楽天モバイルはNECという体制で、いずれも中国メーカーを含まないベンダー構成が定着しています。
| キャリア | 主な5G基地局ベンダー | 中国メーカーの採用 |
|---|---|---|
| NTTドコモ | NEC・ノキア・富士通 | なし |
| KDDI(au) | エリクソン・サムスン電子・ノキア | なし |
| ソフトバンク | エリクソン・ノキアへ移行 | なし(4G時代の中国製機器から置き換え済み) |
| 楽天モバイル | NEC ほか(Open RAN構成) | なし |
クリーンリストが公表された当時に「漏れていた」ソフトバンクも、その後にエリクソン・ノキアへの置き換えを進め、現在は他社と同じく中国メーカーを含まない構成になっています。記事公開当時に問われた「ソフトバンクは安全なのか」という問いは、2026年時点ではベンダー構成の面では実質的に解消済みというのが答えになります。
記事公開当時に話題となった「クリーンリスト」を意識して契約先を選ぶ必要性は、消費者目線では実質的になくなったと言えるでしょう。契約するキャリアを選ぶ際は、現在では料金プランやエリアカバー率、サポート体制といった通常の比較軸で検討するのが現実的です。
※本記事は2020年に公開した内容をもとに、FCCによる規制強化や国内キャリアのベンダー構成など2026年8月時点の最新情報を追記して更新したものです。