5G基礎知識

5Gでガンになる?悪影響派と問題ない派の意見の全てを解説します

大手キャリアの5G通信エリア

【2026年8月 追記】

5Gと新型コロナウイルスを結びつける説は、その後WHOや各国当局・科学界によって明確に否定されました。2026年現在、日本の5G契約数は1億2,632万件に達していますが、5G電波による健康被害の科学的根拠は確認されていません。国際ガイドライン(ICNIRP)に基づく電波防護の安全基準は現在も維持されています。

5Gの普及により、あらゆるモノがインターネットにつながる便利な社会が期待されています。

一方で、5Gの電波が健康に悪影響を及ぼすのではという懸念の声も、主にアメリカを中心に上がってきました。

本記事では、健康被害を訴える意見と、科学的根拠に基づく反論の両方を整理し、最後に結論となる国際的な安全基準について解説します。

アメリカでは健康被害で大論争

アメリカでは健康被害で大論争

アメリカでは議会も巻き込む騒動となり、Facebook上ではデマも拡散しました。まずは反対派の主張から見ていきます。

5Gの健康被害が懸念される理由

5Gの電波(ミリ波)は、もともと空港の危険物検知装置や暴徒鎮圧用の電子銃(ADS)など、米国防総省が開発した軍事技術に由来します。5G化に伴い、2019年以降だけで通信衛星が2万基以上打ち上げられ、地上の基地局も通信距離の短いミリ波の特性上、200mおきに高密度で設置されます。周波数も4Gの6GHzに対し30〜100GHzと5〜15倍に上がるため、「これまでにない高周波数に人々がさらされる」ことが懸念の主な理由です。

まとめると、懸念の理由は次の4点です。

  • 元々が軍用技術
  • 宇宙から膨大な数の電波が降り注ぐ
  • 基地局は200mおきに設置される
  • 周波数が非常に高くなる

2005年以降、欧米の一部研究機関ではマウスを用いた電波実験が続けられており、皮膚・目・生殖機能への影響を懸念する結果も報告されています。すでに5G基地局が設置された地域の住民から体調不良を訴える声もあります。

反対派の意見

5G反対派の学者や政治家などの主な主張は次の通りです。

発言者・肩書 主張の要旨
ロナルド・パウウェル博士
(ハーバード大学 応用物理学)
「5Gの人体への悪影響を防ぐには地域から5Gを排除するしかない。導入中止がベストの選択」
マーティン・ポール博士
(ワシントン州立大学名誉教授・生化学)
「5Gの電磁波は生殖能力・脳・心臓機能、最終的にはDNAにも影響する」。妊娠中の牛が基地局付近にいたケースで、生まれた253頭中79頭(32%)が白内障を発症したとの報告を紹介
ベン・イシャイ博士
(イスラエル・アリエル大学 物理学)
「5Gの周波数は体内の汗腺に徐々に破壊的な影響を与える」
クレア・エドワーズ氏
(元国連職員)
「過去20年で昆虫の80%が死滅、5G本格稼働で100%死滅する。次いで動物、人間も同じ運命をたどる」

これに加え、米国立衛生研究所(NIH)傘下の国家毒性プログラム(NTP)が10年以上・約3,000万ドルを投じた大規模な動物実験では、高強度の電波を全身に浴びせ続けたオスのラットで心臓の腫瘍(悪性シュワン細胞腫)に「明確な証拠」、脳の腫瘍(悪性グリオーマ)に「いくらかの証拠」が報告されました。2018年にはイタリアのラマジーニ研究所によるラット実験でも、心臓腫瘍について同方向の結果が報告されています。

この研究は「5Gの実験」ではない点に注意

しばしば「5Gでがんになる根拠」として引用されますが、NTPの実験で使われたのは2G・3Gで使われていた700〜2,700MHz帯の電波で、5Gのミリ波(28GHz帯など)は対象外です。NIEHS(米国立環境衛生科学研究所)自身も、5Gは変調方式が異なり実験当時は技術が確立していなかったためこの結果を5Gに当てはめることはできないと説明しています。ラマジーニ研究所の実験も1.8GHz帯(携帯基地局相当)で行われたものです。
また、実験動物は人間の携帯利用とは比べものにならない強度の電波を1日9時間・2年間にわたり全身に浴びており、NTPはこの条件を通常の携帯電話利用にそのまま適用することはできないとしています。

ただし、WHO(世界保健機関)は携帯電話の電波塔が発する電波の発がん性を「2B(可能性があるが証拠不十分)」に分類しており、最も危険性の高い「グループ1(確実な発がん性)」には該当しないとしています。

国や議会でも規制の動き

人体への悪影響を懸念する声を受け、国や議会を巻き込んだ規制の動きも世界各地で見られます。

米国の自治体・州 動き
オレゴン州ポートランド市議会 FCCに5Gの健康リスク研究のアップデートを求める決議(2019年)
ルイジアナ州議会下院 環境・健康への影響調査を州環境当局に要請(2019年5月)
ニューハンプシャー州議会 5Gの健康影響を調査する委員会を設置
カリフォルニア州ミル・バレー 新たな5G基地局の設置を禁止(2018年)
ニューヨーク州シラキュース市 住民の訴えを受け、5Gアンテナの安全性検証立ち合い検査を許可

ヨーロッパでも同様の規制の動きがあります。

国・地域 動き
ベルギー・ブリュッセル 5Gの実験・導入を禁止する措置を発表(2019年4月)
イタリア 5Gの使用を制限する裁判所決定を告知
スイス・ボード州、米サンフランシスコ 5Gの使用を制限する裁判所決定を告知
スイス(全国) 健康影響調査システムが完成するまで新規5G設置を延期する方針を決定

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スイスでは全国的な反対運動

スイスは特に規制が進んでいる国です。2019年9月21日にはベルンの政府庁舎前で大規模な反対デモが行われ、複数の州でアンテナ設置工事の凍結を求める署名活動も広がりました。

医師会も「安全性に科学的根拠がない限り電磁波の制限値引き上げは控えるべき」との立場を示しており、住民投票の実施を求める声もあります。こうした動きを受け、スイスは健康影響の調査システムが完成するまで新規の5G設置を延期する方針を決定しました。

世界最大の保険会社の衝撃的な対応

世界最大級の保険会社ロイズは、通信事業者から5G関連保険の引き受けを打診されましたが、これをすべて拒否したと報道されています。

健康被害の補償額が事業として採算に合わないとの判断とみられ、この対応が反対派の主張を後押しする材料となりました。

健康被害のデマ拡散も

週刊誌「女性自身」は2018年8月、「ムクドリが大量死!5Gはベルギーで導入中止に」との記事を掲載しました。オランダ・ハーグで実際にムクドリが大量死した事件はありましたが、その時期にハーグで5Gの通信テストが行われた事実はなく、この記事はデマだったと判明しています。

5Gをめぐる情報には、こうした事実に基づかない拡散も混在している点に注意が必要です。

健康に影響なしの意見

健康に影響なしの意見

一方で、「5Gは健康に影響しない」とする意見もあります。医学的見地からの主張もあれば、健康被害の情報自体を根拠不明とする見方もあります。ここでは代表的な論拠を見ていきます。

ミリ波導入には時間がかかる

懸念の中心であるミリ波は通信距離が短く、200mおきの基地局設置に膨大なコストがかかります。そのため当面は、既存のテレビ用低周波帯や4G用中周波帯を転用する計画が主流で、日本もこの方針です。

仮に健康リスクがあるとしても、ミリ波が全国に行き渡るまでには時間がかかり、5G開始直後に即座に影響が出る状況ではありません。

ミリ波の電波にはX線やガンマ線が非常に低い

5G反対派は「電波に含まれるX線やガンマ線ががんを誘発し、分子結合を破壊する」と主張します。しかし、ミリ波は非電離放射線であり、分子結合を破壊する性質はありません。周波数は高くても、電離作用を持つ短波紫外線やX線、ガンマ線のレベルは極めて低いとされています。

発言者 主張
毒物学者 ロバート・デモット氏 「5Gという名の下に周波数を変えても、生物学上の健康要因であるエネルギー量自体は変わらない」
ピッツバーグ大学 原子物理学教授
エリック・S・スワンソン氏
「日常的な可視光は、ミリ波を含む携帯電話の周波数帯よりも周波数・電磁エネルギーがともに高い」

つまり、ミリ波の基地局が増えても、健康に影響を及ぼすX線やガンマ線の量自体が少ないため、健康被害は生じにくいという見解です。

ロシア系のデマ?

5Gの健康被害説そのものがロシア発のデマだとする見方も根強くあります。ロシア国営テレビ「RTアメリカ」の番組では、専門家が5Gの健康リスクについて警鐘を鳴らしました。

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ロシアは5G技術で中国のファーウェイに依存しており、米国のファーウェイ排除圧力に対抗して5Gの健康被害説を流布し、米国の5G導入を遅らせる狙いがあるという見方です。

実際、ロシアは健康被害を警鐘しながらも自国では全土での5G展開を進める方針を打ち出しており、この矛盾がデマ説を後押ししています。

まとめ

ここまで、5Gの健康被害を巡る両者の主張を見てきました。論点ごとに整理すると、次のようになります。

論点 悪影響派の主張 科学的根拠に基づく見解
ミリ波の性質 軍事技術由来で危険性が高い 非電離放射線であり、DNAや分子結合を破壊しない
がんとの関連 NTP(NIH傘下)やラマジーニ研究所の動物実験で腫瘍が報告 いずれも2G/3G相当の周波数を用いた実験で5Gは対象外。WHOは電波を「2B(証拠不十分)」に分類し、最上位の「グループ1」には該当しない
各国の規制 一部の自治体・国で導入凍結や禁止の動き ICNIRPの国際ガイドラインに基づく安全基準は現在も維持
情報の信頼性 議員・活動家・一部研究者による警鐘 ムクドリ大量死報道など、一部は事実誤認・デマと判明

2026年現在、5Gの電波(非電離放射線)が健康に悪影響を及ぼすという科学的根拠は確認されていません。WHOやICNIRP(国際非電離放射線防護委員会)による安全基準は現在も有効で、各国の保健当局もこの基準を支持しています。4Gの普及時にも同様の懸念が示されましたが、深刻な健康被害は確認されませんでした。

一方で、5Gに対する懸念は一部の専門家・活動家から今も示されており、科学的合意が完全に固まっているわけではありません。今後も新しい研究や国際機関の見解の更新には注意を払う価値があります。

※本記事は公開後の内容を、2026年8月時点の最新情報に更新したものです。NTP(米NIH傘下)およびラマジーニ研究所の動物実験は2G/3G相当の周波数帯を対象としたもので、5G(ミリ波)の実験ではない点を追記しました。