5G基礎知識

5Gでガンになる?悪影響派と問題ない派の意見の全てを解説します

大手キャリアの5G通信エリア

「5Gでがんになる」という懸念は、2019年ごろ米国を中心に広がりました。2026年時点で、5Gの電波が健康に悪影響を及ぼす科学的根拠は確認されていません。

結論:主張と科学的な見解

論点 悪影響派の主張 科学的な見解
電波の性質 軍事技術由来で危険 非電離放射線。DNAや分子結合を壊さない
がん NTP・ラマジーニ研究所の動物実験で腫瘍 実験は2G/3G相当の周波数で5Gは対象外。WHO委託レビューでも関連は認められず
基地局の電波 高密度に建って危険 国内実測で指針の約1万分の1以下(NICT)
各国の規制 スイス・米国自治体で凍結 ジュネーブ州条例は無効。スイスの5Gは人口の99%をカバー
情報の信頼性 議員・活動家の警鐘 ムクドリ大量死報道などデマも混在
電磁波スペクトラムにおける5Gミリ波の位置 5G(ミリ波)・4G等の携帯電波 電波 赤外線 可視光 紫外線 X線 ガンマ線 非電離放射線(DNAを損傷しない) 電離放射線(DNA損傷の恐れ) 周波数・エネルギーが高くなるほど右へ(電離作用が強まる) 5Gミリ波はこの中で最もエネルギーが低い側に位置し、電離作用を持たない WHOは携帯電話の電波を「2B(証拠不十分)」に分類。X線・ガンマ線の「グループ1」には該当しない

悪影響派の主張(2019〜2020年)

懸念された理由

  • ミリ波は空港の検査装置や暴徒鎮圧装置など軍事技術に由来
  • 通信衛星が大量に打ち上げられる
  • ミリ波は届く距離が短く、基地局が約200mおきに必要
  • 30〜100GHz帯という高い周波数にさらされる

※日本の4Gは700MHz〜3.5GHz帯。ミリ波はスタジアムや駅など限られた場所にとどまっています。

主な発言

人物 主張
ロナルド・パウウェル博士(応用物理学) 地域から5Gを排除すべき
マーティン・ポール博士(生化学) 生殖・脳・心臓・DNAに影響。基地局近くの牛の子の32%が白内障と紹介
ベン・イシャイ博士(物理学) 汗腺に破壊的な影響
クレア・エドワーズ氏(元国連職員) 昆虫が100%死滅する

引用された動物実験

実験 結果 5Gに当てはまるか
NTP(米NIH傘下・10年超) オスラットに心臓腫瘍「明確な証拠」、脳腫瘍「いくらかの証拠」 × 700〜2,700MHz帯。1日9時間・2年間の全身照射
ラマジーニ研究所(2018) 心臓腫瘍で同じ傾向 × 1.8GHz帯

NIEHS自身が「5Gは変調方式が異なり、この結果を当てはめられない」と説明。

当時の規制と、その後

2019〜2020年の動き 2026年10月時点
スイス・ジュネーブ州が新規アンテナを事実上凍結 州憲法裁判所が2021/4/15に条例を無効(電波規制は連邦の権限)
スイスが調査完了まで新規5Gを延期 展開は継続。2025年末でSwisscom 99%・Sunrise 99%超をカバー(ComCom)
米国の自治体・州(ポートランド、ルイジアナ、ミル・バレーなど)が調査要請・設置禁止 全米で5G展開は継続。連邦基準の引き下げなし
ブリュッセルが5G導入を禁止(2019/4) —
ロイズが5G保険の引き受けを拒否と報道 ロイズの一次声明は確認できず。保険を理由に展開が止まった例なし
「昆虫が100%死滅する」 実現を示す報告なし

「影響なし」とする根拠

根拠 内容
非電離放射線 ミリ波は分子を電離させない。可視光の方が周波数もエネルギーも高い(スワンソン教授)
体の奥まで届かない ミリ波は皮膚の表層で吸収される
国内の実測 NICT:都内と近郊の商用5G基地局は指針の中央値で約1万分の1以下。ダウンロード中でも4G基地局と同程度以下(2024/7/5)
WHO委託レビュー 2023年10月〜2025年5月に12本。成人の脳腫瘍・小児脳腫瘍などのリスクを高めないと考えられる(中程度の確実性)
日本の基準 電波防護指針はICNIRPと同等。SARは2W/kg(四肢4W/kg)。2024年に高周波領域を改定。2026年も情報通信審議会の検討作業班で審議が続く(第18回 6月16日・第19回 7月9日。2026年10月6日時点でも次回の開催は未公表)

ただし:2025年にはWHOレビューの手法を批判する論文も出ています。「WHOが安全宣言」ではなく、「がんとの関連を支持する証拠は見つかっていない」が正確です。

いま審議中の「指針の見直し」は何を変えるのか

「電波防護指針が見直される」という話は、危険が見つかったから基準を厳しくする/緩めるという話と混同されがちです。2026年に審議されている内容は、そのどちらでもありません。

論点 内容
審議の名前 情報通信審議会 諮問第2035号「電波防護指針の在り方」のうち「局所吸収指針の主な対象の見直し」
いまの決まり 局所吸収指針(体の一部が集中的に電磁界にさらされる場合の詳細な評価)の主な対象は「携帯電話端末等の小型無線機」で、携帯電話基地局は対象として明記されていない
何が課題か 波源のすぐ近く(10cm未満)を含め、基地局装置に対する局所SAR・全身平均SARの評価方法が定められていない。そのため基地局は局所吸収指針の適用を受けられない
なぜいま必要か 事業者が、従来の大型(マクロセル)基地局から小型の基地局まで使い分けるようになり、人が近づく場所にも置かれるため
改定の目的 基地局装置をSARで評価できるようにすること。IEC等の国際規格や欧米の動向を踏まえた措置
安全性の扱い 報告案は「人体に好ましくないと考えられる生体作用(熱作用)を及ぼさないよう、電波防護指針への適合性は確実に確保する必要がある」と明記

読み替えると:これは「評価できる対象を増やす」話であって、許容される被ばく量の数値を動かす話ではありません。むしろ、これまで電磁界強度でしか測っていなかった小型基地局を、端末と同じSARという物差しでも測れるようにする改定です。「基地局が規制の対象に追加される」という見出しだけを読んで「これまで野放しだった」と受け取るのは誤りで、現行でも基地局は電磁界強度指針で評価されています。

2026年10月6日、委員会報告が「案」ではなくなった

手続きはひとつ進みました。2026年10月6日の第69回 電波利用環境委員会で、委員会報告の取りまとめが行われています。

時期 何があったか
2025年6月30日(第62回) 検討開始。作業班を設置。あわせて諮問第2045号「基地局等から発射される電波の強度等の測定方法及び算出方法」も別の作業班で同時に検討へ
2026年7月14日(第67回) 意見募集にかける委員会報告(案)を取りまとめ(意見募集は7月23日〜8月26日)
2026年10月6日(第69回) 委員会報告の取りまとめ=「案」が外れた。電波防護指針の改定案も別添として確定
この先 情報通信審議会の答申 → 省令・告示の改正。2024年の改定では答申から省令改正まで約7か月かかった

報告が示した根拠:国際的なガイドラインであるICNIRPは「電波源の種類を問わず適用される」ことを前提にしており、局所ばく露と全身ばく露の指針値を同時に満たすことを求めています。報告は、今回の改定を「その実態に即した自然な流れであり、ICNIRPガイドラインに近づく方向のもの」と位置づけました。つまり国際基準に寄せる改定で、緩める方向ではありません。

出典:情報通信審議会 情報通信技術分科会 電波利用環境委員会 報告「諮問第2035号『電波防護指針の在り方』のうち『局所吸収指針の主な対象の見直し』について」(資料69-3-1/soumu.go.jp/main_content/001095098.pdf・2026年11月1日に本文を確認)。

デマ・情報戦の側面

話題 実際
「ムクドリ大量死は5Gのせい」(女性自身 2018/8) 同時期にハーグで5Gテストは行われておらずデマ
ロシア国営RTアメリカが5G健康被害を発信 米国の5G導入を遅らせる狙いとの見方(推測)。ロシア自身は5Gを推進
「ロシア発デマ」説が指摘する矛盾の構図 米国がファーウェイを 排除する圧力 RTアメリカ等で 5G健康被害説を発信 米国の5G導入を 遅らせる狙い(推測) 一方ロシアは 自国で5G展開を推進 警鐘の内容と自国での行動が矛盾=デマ説の根拠に ロシアは5G技術で中国ファーウェイに依存しているとされる

よくある質問

質問 回答
近くに5G基地局が建った。心配すべき? 国内実測は指針の約1万分の1以下です。気になるときは各地方の総合通信局に相談できます。
NTPで腫瘍が出たのに「根拠がない」の? その実験は2G/3G相当の周波数で、5Gの根拠には使えません。
5Gをオフにした方がいい? 健康上の必要はありません。電池持ちのために4G固定にする人はいます。
WHO(IARC)の「2B」分類は変わる? 現時点では2Bのままです。IARCの諮問グループは2024年4月に再評価を「高優先度」とし、2025〜2029年の後半に実施するよう勧告しています。
ICNIRPの基準は見直される? 2026年10月6日時点で高周波は2020年版が現行。改定予定は低周波です。
日本の電波防護指針は緩められた? いいえ。2026年も審議は続いていますが、論点は6GHzを超える電波を人体の近くで使う機器の測り方で、方向は国際基準との整合です。規制値を引き上げる見直しではありません。

まとめ

  • 5Gの電波は非電離放射線で、健康被害の科学的根拠はない
  • 引用された動物実験は5Gの周波数ではない
  • 国内の基地局は指針の約1万分の1以下
  • 研究と議論は続いているため、一次情報で確認するのが確実

※出典:NICT(2024年7月5日)、NIEHS、Environment International掲載のWHO委託レビュー、スイス連邦通信委員会(ComCom)、ICNIRP公式サイト(2026年9月29日確認)、JEIC「IARC Advisory Group recommended RF as high priority」(2026年9月15日確認)、総務省 情報通信審議会「電波防護指針の在り方に関する検討」(2026年9月21日確認)ほか。本記事は2020年公開の内容を、2026年9月13日に図表中心の構成へ再編集し、9月15日にIARC再評価の予定を追記、9月21日に日本の電波防護指針の審議状況(規制値の緩和ではない点)を追記したものです。2026年10月6日に、ICNIRPの現行ガイドラインと情報通信審議会 検討作業班の開催状況に変更がないことを再確認しました。2026年10月20日に、情報通信審議会で審議中の「局所吸収指針の主な対象の見直し」(報告案)の中身を一次情報から確認して追加しました。基地局装置をSARで評価できるようにする改定であり、許容される被ばく量の数値を動かすものではない点を明記しています。

※2026年11月1日に、電波利用環境委員会 報告(資料69-3-1)の本文を一次資料から確認し、2026年10月6日の第69回委員会で委員会報告が取りまとめられたこと(=「案」が外れたこと)と、報告がICNIRPガイドラインに近づく改定と位置づけていることを追記しました。


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