【2026年8月 追記】
本記事は2020年当時の技術ニュースです。2026年現在、5G基地局は30万2,118局(2024年度末)まで拡大し、人口カバー率は98.6%に達しています。
2020年当時、5Gは「エリアが狭く、から騒ぎに終わる」と懸念されていました。同年2月、NTTドコモが発表したのが電柱に巻きつけるアンテナです。
目次
5Gの問題点は通信範囲の狭さ(2020年当時)
| 2020年当時の課題 | 内容 |
|---|---|
| 通信エリアが200mのみ | ミリ波は直進性が強く、基地局1台の通信範囲は約200mのみ |
| 光ケーブル敷設が膨大 | 200m間隔の基地局同士を光ケーブルで結ぶ必要があり、全国整備に時間がかかる |
| 当面はキャリアアグリゲーション | 2020年中はミリ波基地局が未整備のため、LTEと5G帯域を束ねて疑似高速化(理論値2Gbps、実測は1Gbps想定) |
ドコモが開発した電柱に巻けるアンテナとは?(2020年当時)
- 28GHz帯(ミリ波)対応:電柱に巻いてミリ波を送受信する試作アンテナ
- フッ素樹脂製で360度対応:巻くだけで全方位に送受信でき、全国の電柱に広げればミリ波エリアの一気拡大が期待された
- ガラスアンテナも同時開発:ビルの窓に設置し、景観を保ったまま街中に5G網を構築。2020年中のサービス開始を目指すと発表
新技術で5Gエリアはどんどん加速する(2020年当時の見通し)

電柱・ガラスアンテナが普及すれば、大掛かりな電波塔なしで5Gエリアが広がると期待されていました。ドコモは2023年までに人口のほとんどを5G網でカバーすると発表していました。
2026年最新状況:ドコモの新型アンテナ技術はその後どうなったか
発表から6年。「電柱アンテナ」「ガラスアンテナ」「ミリ波(28GHz帯)」の今を、公表資料で確認できた範囲で整理します。
電柱アンテナは続報なし、発想は次世代技術へ継承
ドコモ・AGC試作のフッ素樹脂製アンテナが全国規模で商用導入された公式な続報は見当たりません。ただし「身の回りのものをアンテナ化する」発想自体は継承されています。
- つまむアンテナ(ドコモ、2021年発表):ケーブルをプラスチック片で挟むだけで周囲を通信エリア化。工場・屋内向けに6G時代を見据えた研究が継続中
- フィルム型アンテナ(DNP、2022年発表):電柱・街灯に巻ける5G対応アンテナ。2023年度量産化を目指すと発表したが、その後の商用導入規模を示す続報は確認できず
ガラスアンテナは実用化が進み、大阪・関西万博でも稼働
- WAVEATTOCH(AGC)として製品化:ドコモ・AGC・エリクソン・ジャパン開発。ビルの窓に設置し、屋内外の5Gエリア構築用途で導入拡大中
- 2025年の大阪・関西万博会場でも活用:「景観を乱さずアンテナを設置する」という2020年当時の狙いは、ガラスアンテナ側で先に実を結んだ形
- 2026年4月、適用範囲を拡大:省エネ性能の高いLow-Eガラス(電波を通しにくい金属膜コーティング)越しでも、施工により屋外5Gの受信電力を約10dB(電力比約10倍)改善する実証実験にドコモ・AGCが成功
ミリ波(28GHz帯)は「面」でなく「点」の展開に
2020年当時「全国に広がる」と期待されたミリ波基地局ですが、実態は異なります。
- 2025年度末の5G人口カバー率98.6%は、主に4G周波数帯の「5G NR化」やSub6帯(3.7GHz帯・4.5GHz帯)による(総務省)
- 直進性が強く障害物に弱いミリ波は、スタジアムや駅など人が密集する限定エリアでの「点」展開にとどまる
- 2026年5月、ドコモ・KDDIが共用中継器を共同開発:両社のミリ波電波を1台で中継。サイズ216×216×246mm・重さ4.9kgで、従来のミリ波用基地局比大きさ・重さとも約7割削減。2026年夏から上野恩賜公園で実証実験予定
ミリ波普及の軸足は「面を敷き詰める」方式から、中継器でピンポイント補強する方式へ移りつつあります。
| 技術・要素 | 2020年当時の位置づけ | 2026年時点の状況 |
|---|---|---|
| 電柱巻きつけアンテナ(ドコモ・AGC試作) | 2020年2月に試作発表、実用化に期待 | 大規模商用導入の続報なし。研究の方向性は「つまむアンテナ」等へ発展 |
| ガラスアンテナ(AGC「WAVEATTOCH」) | 2020年中のサービス開始を目指すと発表 | 実用化が進み、2025年大阪・関西万博などで活用 |
| ミリ波(28GHz帯)全体 | 全国に高速大容量5Gを行き渡らせる切り札として期待 | スタジアム・駅・イベント会場など限定エリアでの活用が中心。全国カバレッジの主役はSub6帯 |
| 次世代研究(つまむアンテナ/6G) | (未発表) | 2021年に発表。6G時代の「どこでもアンテナ」構想として研究継続中 |
読者にとっての結論:ミリ波対応スマホは必要か
新型アンテナのニュースが自分のスマホ選びに関係するか気になるところですが、2026年時点の実態を整理すると答えは「ほとんどの人には不要」です。
| こんな人 | ミリ波対応の必要性 | 理由 |
|---|---|---|
| 通勤・自宅・街中で使うのが中心 | 不要 | 生活圏はSub6帯・4G転用帯でカバーされ、ミリ波を掴む機会はほぼない |
| スタジアム・大型駅・イベント会場によく行く | あれば有利 | 混雑時に大容量を確保しやすい。ただし対応エリアは限定的 |
| とにかく最高速度を体感したい | 検討の価値あり | 条件が揃えばGbps級。ただし数十メートル離れる・障害物が入るだけで切り替わる |
日本向けiPhoneはミリ波非対応の型番で、対応はアメリカ向けモデルのみ。Android側も対応機種は一部にとどまるため、「ミリ波対応かどうか」を機種選びの最優先条件にする必要はありません。速度を左右するのは、むしろ自分の生活圏がSub6エリアかどうかです。
まとめ:アイデアは生きたまま、実装の形が変わった6年間
- 「電柱ごとアンテナ化」という2020年当時の未来像は、そのままの形では実現せず。発想はガラスアンテナの実用化とつまむアンテナの研究開発に姿を変えて受け継がれた
- 2026年時点の5GエリアはSub6帯による広域カバー+ミリ波・中継器によるスポット補強の組み合わせが実態。新技術の発表は「実現可能性を示すニュース」であり、全国普及の確約ではない点に注意
※本記事は2020年公開の記事を、2026年8月時点の最新情報に更新したものです。技術の実用化状況や仕様は変更される場合があるため、最新情報は各社の公式発表をご確認ください。