5G基礎知識

【2026年最新】オール光ネットワーク(APN)がITU-T国際標準に採択|NTT・KDDI・楽天モバイル主導、6G時代の基盤技術に

NTT・KDDI・1FINITY・NEC・楽天モバイル・沖電気工業・住友電気工業の国内7社は2026年8月21日、次世代の光通信基盤「オール光ネットワーク(APN:All-Photonics Network)」の設計指針が、国際電気通信連合の標準化部門ITU-Tにおいて2026年8月13日付で国際標準勧告「Y.3335」として採択されたと発表しました。異なる通信事業者をまたいでも低遅延・低消費電力な通信経路を構築できるようにする技術仕様で、Beyond 5G(6G)時代の基盤技術として世界規模での相互接続性を目指すものです。

項目 内容
勧告番号 ITU-T勧告 Y.3335
国際標準として採択 2026年8月13日
7社による発表 2026年8月21日
主導企業 NTT・KDDI・1FINITY・NEC・楽天モバイル・沖電気工業・住友電気工業
標準化の対象 オール光ネットワーク(APN)の設計指針=事業者間をまたぐ低遅延・低消費電力な通信経路の構成・技術要件
目的 特定団体・実装方式に依存しない体系化による、世界規模での相互接続性の実現
関連する国の施策 総務省「Beyond 5G(6G)推進戦略」、NICT「Beyond 5G(6G)基金事業」

オール光ネットワーク(APN)とは何か

APNは、電気信号への変換処理をできる限り減らし、端から端まで光のまま伝送することで、大容量・低遅延・低消費電力を同時に実現しようとするネットワーク構想です。NTTが提唱してきた次世代通信基盤構想「IOWN(アイオン)」の中核技術のひとつでもあります。

今回標準化されたのは、複数の事業者をまたいでAPNを接続する際に必要な、ネットワーク構成や技術要件を定めた「設計指針」です。各社が個別に蓄積してきたAPNや光ネットワークフェデレーション技術の研究成果を、特定の団体・実装方式に依存しない形で体系化した点がポイントになります。

なぜ「光のまま」だと速く、電力も少ないのか

現在の通信網では、光ファイバーを流れてきた光信号が、交換機やルーターを通るたびに電気信号へ変換され、処理されてから再び光へ戻されています。この光と電気の往復変換が、遅延と消費電力の両方を生む要因です。APNはこの変換を減らし、送り手から受け手まで光の経路を通したまま届けようとします。「速くする」というより「途中で止まる回数を減らす」発想に近いと考えると分かりやすいでしょう。

APNが目標に掲げる性能

NTTグループがIOWN構想で掲げている2030年ごろの目標値は、現在の電気を中心としたネットワークとの比較で次のとおりです。

指標 目標(従来比) 現状
エンドツーエンド遅延 200分の1 2023年3月開始の「APN IOWN1.0」で先行して達成とされる
電力効率 100倍 2030年ごろの目標
伝送容量 125倍 2030年ごろの目標

このうち遅延については、NTT東日本・NTT西日本が2023年3月16日に法人向けサービス「APN IOWN1.0」の提供を開始しており、すでに商用の形になっています。APNは構想段階の話ではなく、限られた用途で動き始めている技術です。ただし現時点の提供対象は法人向けの専用線であり、個人がスマートフォンやインターネット回線で直接契約できるサービスではありません。

なぜ今、国際標準化が必要だったのか

APNは自社網の中だけで完結させても効果は限定的で、事業者や国境をまたいで相互接続できて初めて、大容量・低遅延通信の恩恵が広がります。総務省は2026年3月時点の資料で、複数の通信事業者をシームレスに接続するAPNサービスの本格的な国内展開・海外展開を見据えた取り組みを進めており、光通信関連の市場規模は2030年に約53兆円に拡大するとの予測も示されています。今回のY.3335採択は、日本発の技術仕様が国際標準の土台になったという意味で、今後の海外展開競争における足場を固める動きといえます。

標準化がないまま各社が独自方式で光ネットワークを組んだ場合、事業者をまたいだ瞬間に信号の変換が必要になり、せっかく削った遅延と電力が戻ってしまいます。APNにとって国際標準は「あると便利な追加要素」ではなく、技術の価値を成立させる前提にあたります。

6G(Beyond 5G)・Physical AIとの関係

APNは5Gの次世代規格である6G(Beyond 5G)を支える基盤技術のひとつと位置づけられています。NTT・KDDI・富士通・NEC・楽天モバイルの5社は2024年10月、総務省とNICTが推進する「革新的情報通信技術(Beyond 5G(6G))基金事業」に、複数事業者のAPNを協調させ品質を確保する研究開発で採択されており、今回の国際標準化はその延長線上の成果にあたります。発表では、AIの普及によるデータ量の急増や、ロボット・自動運転など現実世界で動作する「Physical AI」の広がりに対応するため、大容量・低遅延・低消費電力な通信基盤の必要性が今後さらに高まるとしています。

無線側の6G標準化は2029年に固まる

APNが有線(光)側の基盤であるのに対し、スマートフォンが直接つながる無線側の6G規格は、移動通信の標準化団体3GPPが策定します。3GPPは2026年6月のシンガポール会合で、初の6G規格となる「Release 21」の日程を承認しました。公表されている主なマイルストーンは次のとおりです。

時期 内容
2027年3月 ステージ1凍結(サービス要件・ユースケースの確定)
2028年6月 ステージ2凍結(アーキテクチャの確定)
2028年12月〜2029年3月 ステージ3凍結・仕様の最終確定
2030年以降 初期の商用6Gネットワーク開始の見込み

つまり有線側(APN)と無線側(3GPP Release 21)が、いずれも2029〜2030年に向けて足並みをそろえて進んでいるのが現在の構図です。今回のY.3335採択は、この2本立てのうち有線側で日本勢が一歩進めた、という位置づけになります。

APN標準化までの流れ 2024年10月 Beyond 5G(6G) 基金事業に採択 2026年8月13日 ITU-T勧告Y.3335 として採択 2026年8月21日 国内7社が 共同発表 今後:総務省が目指す2030年ごろの 複数事業者シームレス接続・海外展開へ

私たちの通信は、いつ・どう変わるのか

読者にとって気になるのは「スマホが速くなるのはいつか」という点でしょう。整理すると次のようになります。

時期 個人の体感への影響
現在〜数年 直接的な変化はほぼありません。APNは法人向けの専用線が中心で、個人向けサービスは提供されていません
間接的な影響 データセンター間や事業者間の基盤が効率化されると、動画配信やクラウドサービスの安定性・提供コストに影響しうる
2030年ごろ〜 無線側の6G商用化と重なり、遠隔操作・自動運転・XRなど遅延が価値を左右する用途から順に恩恵が出る見込み

逆に言えば、いま自分のスマートフォンの速度に不満がある場合、その原因はAPNや6Gではなく、現行5Gのエリアやプランの側にあります。5Gの体感を左右しているのは、Sub-6のエリアがどれだけ広がっているか、契約中のプランに速度制限がないか、5G SA(スタンドアローン)に対応しているかといった要素です。APNの話は、その手前の課題を解決するものではない点は押さえておきたいところです。

よくある質問

Q. APNの国際標準化で、スマホの通信速度はすぐ速くなりますか?

A. 今回標準化されたのは事業者間を接続するための「設計指針」であり、スマートフォン向けの新サービスがすぐ始まるものではありません。総務省は複数事業者をシームレスに接続するAPNサービスの本格展開を2030年ごろと見込んでおり、消費者向けの効果が表れるのは中長期的な話になります。

Q. APNは6Gと同じものですか?

A. 同じではありません。APNは有線(光)側の基盤技術で、6Gは無線側の通信規格です。6G(Beyond 5G)時代に必要とされる大容量・低遅延・低消費電力な通信を、APNが土台として支えるという関係にあたります。標準化を担う組織も、APNはITU-T、6GはとりわけRelease 21を策定する3GPPと分かれています。

Q. ITU-Tとは何をする組織ですか?

A. 国際電気通信連合(ITU)の中で通信技術の国際標準(勧告)を策定する部門です。ここで勧告として採択されると、世界各国の通信事業者・メーカーが仕様を参照する共通の土台になります。

Q. IOWNとAPNの違いは何ですか?

A. IOWNはNTTが提唱する次世代通信基盤の構想全体を指す名称で、APNはその中核を担うネットワーク技術です。IOWNという傘の下に、APNのほかにも光電融合デバイスなどの要素技術が含まれます。

Q. すでに使えるAPNのサービスはありますか?

A. NTT東日本・NTT西日本が2023年3月16日から法人向けに「APN IOWN1.0」を提供しています。ただし個人向けのインターネット回線や携帯電話プランとして提供されているものではありません。

出典:NTT ニュースリリース「AI時代の低遅延・低消費電力なネットワークの設計指針がITU-Tで国際標準化」2026年8月21日(https://group.ntt/jp/newsrelease/2026/08/21/260821a.html)/総務省「オール光ネットワーク(APN)の普及・拡大に向けた取組」2026年3月25日(https://www.soumu.go.jp/main_content/001072093.pdf)/富士通ニュースリリース 2024年10月22日(https://pr.fujitsu.com/jp/news/2024/10/22-1.html)/NTT東日本「APN IOWN1.0の提供開始について」2023年3月2日(https://www.ntt-east.co.jp/release/detail/20230302_01.html)/3GPP Release 21 の日程は2026年6月のシンガポール会合で承認

※本記事は、2026年9月時点の最新情報に更新したものです。IOWNの目標値、法人向けサービスの提供状況、3GPP Release 21の6G標準化日程を追記しました。