5G基礎知識

5Gクリーンネットワークとは何か?|クリーンリストから漏れたソフトバンクは安全?

5Gクリーンネットワークとは何か?|クリーンリストから漏れたソフトバンクは安全?

2020年に米国が打ち出した「5Gクリーンネットワーク」は、中国企業を通信網から外すよう呼びかける枠組みでした。2026年には強制力のある規制に置き換わっています。

結論:2020年と2026年の違い

項目 2020年 2026年
米国の手法 クリーンネットワーク(任意の呼びかけ) FCCが輸入・販売を禁止
線の引き方 ファーウェイ・TikTokなど企業やアプリを名指し 「米国外で生産されたか」という品目単位
日本の仕組み 「クリーンリスト」への掲載が話題 経済安全保障推進法の事前審査
日本の5G網 ソフトバンクがリスト漏れ 大手4社とも中国メーカーを含まない
クリーンネットワークをめぐる経緯 2020年 米国が クリーンネットワーク発表 (法的拘束力のない呼びかけ) 2020~21年 日本のキャリアで 「脱ファーウェイ」が定着 2024~25年 ファーウェイ、中国国内では シェア首位に復権 日本では不在続く 2026年 FCCが任意の指針から 強制力を伴う輸入禁止措置へ

5Gクリーンネットワークとは(2020年)

トランプ政権は2020年4月の「5Gクリーン・パス」に次の5指針を追加し、各国に同調を求めました(法的拘束力・罰則なし)。

指針 内容
クリーン・パス 米外交施設を通る5G通信に、ファーウェイ・ZTE等の機器を使わない
クリーン・キャリア 信頼できない中国キャリアを米国網に接続させない
クリーン・ストア 信頼できないアプリを米国のアプリストアから排除(TikTok・WeChat)
クリーン・アプリ 中国製スマホに米国アプリを事前インストールさせない
クリーン・クラウド アリババ・バイドゥ・テンセントのクラウド経由の情報流出を防ぐ
クリーン・ケーブル 海底ケーブルを中国の諜報から守る

クリーンリストと日本企業(2020年時点)

企業 リスト 当時の状況
NTTドコモ・KDDI 掲載 5G網でファーウェイ排除を公表
ソフトバンク 非掲載 基地局ベンダーの59.9%がファーウェイ(2018年報道)
楽天モバイル 対象外 NECを採用

2026年:米国は「禁止」へ

時期 FCCの動き
2025/12/22 外国製ドローンをCovered Listに追加
2026/3/23 外国製家庭用ルーターを追加
2026/4/30 Covered List企業に包括的許可(Section 214)を自動付与しない規則案(FCC 26-29)
2026/6/26 輸入・販売禁止の規則(PS Docket 26-72)を採択、7/16施行
2026/7/23 Third Report and Order を公表。Covered List企業の「部品」を含む機器まで認証禁止を拡大(下記)
2026/7/28 外国製電力インバーター・ロボット機器を追加
2026/9/9 一部のルーターとロボット機器に「条件付き承認」(リストの適用を除外。DA-26-957)
  • 規制対象は米国での新しい認証。認証済み機器の使用までは禁止しない
  • 国防総省などの条件付き承認を得た製品は対象外。2026年9月9日にはルーター・ロボット機器の一部も承認された
  • 日本国内での利用には直接影響しない(日本は技適などが基準)

2026年7月:規制の単位が「完成品」から「部品」へ

2026年までの規制は、Covered List企業が作った機器を対象にしていました。7月23日の規則は、ここを一段細かくしています。

変わる点 内容
部品まで対象 Covered List企業が製造した論理処理を伴う部品(logic-bearing hardware)を含む機器は、完成品メーカーが別会社でも認証を受けられない。ねじや筐体のような機械部品は対象外
通販サイトの義務 保管・発送などを担う出品形態では、プラットフォーム側も販売・輸入規則の対象。有効なFCC IDの表示が求められる
再認証 Covered List企業は、対象機器かどうかによらず機器を変更するたびに再認証の申請が必要
施行 部品の規制は連邦官報への掲載から30日後(FCC ID関連は180日後・270日後)

ポイント:2020年の「企業名で線を引く」から、2026年は「どこで作られた、どの部品か」で線を引く方向へ進んでいます。完成品メーカーを替えるだけでは外せない、という考え方です。

出典:FCC Covered List、Baker McKenzie(2026年7月)、Wiley「FCC Expands Covered List Prohibitions to Devices with Certain Logic-Bearing Hardware Components」(2026年7月23日のThird Report and Orderの解説)、FCC Public Notice DA-26-957(2026年9月9日)

日本:「リスト」ではなく法律の審査に

項目 内容
根拠 経済安全保障推進法 第3章(2022年成立)
開始 2024年5月17日から届出義務
対象分野 電気通信を含む15分野。2026/6/17公布の改正で医療を追加し16分野に
対象事業者 258者(2026年7月1日時点)
手続き 重要設備の導入・保守委託の前に計画を届け出て審査(原則30日)
見るポイント 供給者の資本関係・役員国籍・製造工場の所在地など
結果 おそれが大きければ措置を勧告・命令
自治体への拡大 改正地方自治法施行規則(2026/6/26公布・2027/7/1施行)で、自治体のIT調達もJC-STAR・ISMAP等の登録製品が原則に

出典:内閣府「特定社会基盤役務の安定的な提供の確保に関する制度について」(2026年7月7日版)、総務省 総行サ第42号(2026年6月26日)

ポイント:企業名や国名で禁じるのではなく、設備ごとに来歴と管理体制を審査。「リスト漏れ=危険」という見方は意味を失いました。

EU:義務化の法案は審議中(2026年10月31日時点)

米国が「禁止」、日本が「事前審査」に進む一方、EUは加盟国ごとの対応が続いています。全体を縛る法案は成立していません。

時期 動き
2026/1 欧州委員会がデジタル・ネットワーク法を提案。高リスク供給者の指定から36か月以内に機器を撤去させる内容(企業名は挙げていない)
2026/9/15 欧州通信17社のCEOが反対の公開書簡。置き換え費用を最大400億ユーロと試算
2026/9時点 欧州議会と加盟国で調整中。未成立
2026/10/1 英シンクタンクRUSIが報告書を公表。「EUに共通の枠組みがなく、加盟国の判断がばらばら」と指摘し、全加盟国に適用されるリスク評価の枠組みを提言(米国系の供給者も審査対象になり得る内容)
2026/10/31 欧州議会の採決は確認できず。審議中のまま10月を終えた

EUは先に動いた国(ドイツ・フランス・スウェーデンなど)と、費用を理由に慎重な事業者に割れています。米国の「禁止」や日本の「事前審査」ほど輪郭が定まっていない段階です。

なぜEUは足並みが揃わないのか

RUSIの報告書(2026年10月1日)は、ばらつきの原因を制度の空白に求めています。

論点 2026年10月時点の状況
共通ルール 5Gセキュリティ・ツールボックス(2020年1月開始)は任意。27か国のうち完全に実施したのは10か国にとどまる
「高リスク」の定義 公式な定義がなく、法的な区分でもない。各国が解釈の幅を使って調達できる状態
審議中の規制 サイバーセキュリティ法の改正で、18の重要分野から指定供給者を排除する案。成立すれば36か月以内に撤去。欧州委員会はファーウェイ・ZTEを指定候補に挙げる考えを示している

同じ提案は報道によって「デジタル・ネットワーク法」「サイバーセキュリティ法の改正」と呼び分けられますが、いずれも2026年1月の同じパッケージを指します。

国 5G RANの中国製比率(2024年推計) 方針の傾向
ドイツ 約59% 対中貿易(年2,518億ユーロ)を重視してきた。メルツ政権で方針は変わりつつあるが、RUSIは短期での構成変化は見込まれないとする
スペイン 約32% 費用を優先する調達が多い。比率は縮小の見込み
英国(EU域外) — 2027年末までに通信網から中国製を排除する方向

※比率はRUSIの推計で、公式統計ではありません。

法案より先に、ドイツの期限が来る

EU全体の法案は未成立ですが、ドイツは国内の合意で先に期限を切っています。

対象 期限 内容
5Gコアネットワーク 2026年末 ファーウェイ・ZTEの重要部品を撤去
アクセス網・伝送網 2029年末 アンテナ・伝送路などの管理系を置き換え

出典:2024年7月のドイツ内務省の決定(Deutsche Telekom・Vodafone・Telefónicaの3社と合意)。EU法案の36か月とは別枠で、コア網の期限はあと2か月です。ドイツの5G RANの中国製比率は約59%(RUSI推計)で、2029年の期限が本番になります。

反対しているのは通信事業者だけではない

立場 主張
欧州の通信事業者17社 置き換え費用は最大400億ユーロ。「光ファイバー・5G・6Gに必要な資本を業界から奪う」(Connect Europeの公開書簡・2026年9月15日。オレンジ、ドイツテレコム、テレフォニカのCEOが署名)
ファーウェイ 供給者を原産国で制限するのはEUの公平性・無差別・比例性の原則に反する
中国商務省 提案が可決されれば対抗措置をとると表明

2026年10月17日時点で、欧州議会の委員会採決や修正案の内容は報じられていません。

出典:Euronews(2026年9月15日)、The Register(2026年1月21日・2026年10月1日「EU’s hodgepodge tech policy exposes members to Chinese vendor risks, says think tank」)、RUSI報告書(2026年10月1日)

日本の4キャリアのベンダー構成

キャリア 主な5G基地局ベンダー 中国メーカー
NTTドコモ NEC・ノキア・富士通 なし
KDDI(au) エリクソン・サムスン電子・ノキア なし
ソフトバンク エリクソン・ノキア(2019年に選定、4Gも切り替え) なし
楽天モバイル NECほか(Open RAN) なし

ファーウェイの現在

地域 状況
中国 独自チップKirin・HarmonyOS NEXTで巻き返し、2025年に国内シェア首位へ(報道)
日本 2019年以降キャリア取り扱いなし。再参入計画は確認できず

よくある質問

Q. クリーンネットワークは今もある?

当時の形では機能していません。米国ではFCCの禁止規則に置き換わりました。

Q. ソフトバンクは危険?

いいえ。エリクソン・ノキアに移行し、ベンダー構成は他社と差がありません。

Q. キャリア選びで基地局メーカーを気にする必要は?

ほぼありません。料金・エリア・サポートで選ぶのが実務的です。

Q. 中国メーカーのルーターやドローンは日本で使えなくなる?

なりません。FCCの規制は米国内の認証の話です。

まとめ

  • 2020年の「呼びかけ」は、2026年に米国で禁止規則へ
  • 日本は経済安全保障推進法の事前審査で対応。2027年7月からは自治体のIT調達にも広がる
  • 国内4キャリアは中国メーカーを含まない構成
  • EUは義務化の法案を審議中で未成立。費用負担をめぐり通信事業者が反対し、共通ルール(ツールボックス)の完全実施も27か国中10か国にとどまる

【記録】2020年公開時点の本文表記(当時の情報)

  • 楽天モバイル:5G未開始・4Gは1年間無料 → その後5Gは2020年9月30日に開始、キャンペーンは終了
  • ソフトバンク:5Gは2年間4Gと同料金

※本記事は2020年公開の内容をもとに、FCCの規制強化・経済安全保障推進法・国内キャリアのベンダー構成を反映し、2026年9月13日に図表中心の構成へ再編集し、9月15日にFCCの条件付き承認(9月9日)を追記、9月21日にEUのデジタル・ネットワーク法の審議状況を追加、9月29日に自治体向け省令(2027年7月施行)を追記し、2026年10月5日にRUSI報告書(10月1日)をもとにEU加盟国の対応差とツールボックスの実施状況を追加したものです。2026年10月17日に、FCCが7月23日に公表したThird Report and Order(Covered List企業の部品を含む機器まで認証禁止を拡大・通販サイトへのFCC ID表示義務)と、EUの法案に対するファーウェイ・中国商務省の反応を追記しました(10月17日時点で欧州議会の採決は報じられていません)。2026年10月31日に、欧州議会の採決が同日時点でも確認できないことを年表に加え、ドイツが国内合意で切っている期限(5Gコア網は2026年末、アクセス・伝送網は2029年末)の表を追記しました。


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