【2026年7月 追記】
この記事は2020年公開当時の情勢を伝えたものです。2026年現在も米中対立とファーウェイの5G機器排除は続いています。ファーウェイは米制裁下で独自チップ「Kirin」を復活させ、自社OS「HarmonyOS」により中国国内では復権しましたが、日本のスマホ市場からは事実上撤退した状態です。日本の5G網の「脱ファーウェイ」はそのまま定着し、5G人口カバー率は98.6%(2025年度末)に達しています。本記事のテーマである「5G基地局のオープン化」がその後どう進んだかについては、本文末尾の【2026年8月追記】オープンRANの進展と国内基地局メーカーの現在地で詳しく解説しています。
2020年、米国主導のファーウェイ排除が世界に広がる中、5Gで出遅れていた日本勢に復権のチャンスが訪れていました(本記事は2020年当時の情勢です)。
目次
止まらない世界のファーウェイ排除(2020年当時)
| 動き | 内容 |
|---|---|
| 米国主導で排除した国々 | 米・日・英・加・豪・NZ・台湾・スウェーデン・ポーランド・デンマーク・チェコ・ラトビア・エストニア・ルーマニア等 |
| 2020年7月、フランスが排除へ | EU中心国のフランスが「2028年までに完全排除」を表明。同月末にはポルトガル大手通信3社も排除を宣言し、欧州にも波及 |
| 漁夫の利は北欧勢 | 5Gシェア世界2位エリクソン(スウェーデン)、4位ノキア(フィンランド)がシェア拡大の追い風を受ける |
5Gシェアへ復権をかける日本勢(2020年当時)

ファーウェイが北米・欧州・日本で排除される中、5Gで大きく出遅れていた日本には復権の好機が生まれました。

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 当時の日本勢シェア | 世界の5Gインフラ市場でNEC1.3%・富士通0.8%、合計わずか2.1% |
| 焦点 | ファーウェイが持つ世界シェア36%を各国がどう奪い合うか |
| 政府支援 | NEC・富士通・楽天モバイル等に総額700億円を支援し、光ファイバー網・次世代基地局・6Gを2025年(大阪万博)までに集中開発 |
| 英国とNECの協議 | 2020年6月、ファーウェイ排除済みの英国政府とNECが5G市場参入について協議(サムスン電子も候補に) |
ラストチャンスへNTTとNECが資本提携(2020年当時)

2020年6月、NTTがNECに640億円を出資し第3位株主(約4.8%)となる資本提携を締結。「両社の通信技術を結集し海外大手に挑む」ことが目的で、5Gに加え6Gの超高速無線・海底ケーブル・宇宙通信まで見据えた長期協業です。
提携の柱の一つが5G基地局のオープン化研究です。メーカーごとに異なる基地局機器の接続仕様を共通化すれば、複数メーカーの機器を組み合わせられ、調達競争でコストが下がります。ファーウェイより2〜3割安いとされていた価格差を、オープン化によるメーカー間競争で埋める狙いがありました。
まとめ(2020年当時の見立て)
- 当時の日本勢シェアはわずか2.1%。ファーウェイの36%を各国が奪い合う構図だった
- 「ガラパゴス化」してきた日本メーカーが、互換性重視の「オープン化」に舵を切ろうとしていた
【2026年8月追記】オープンRANの進展と国内基地局メーカーの現在地
本記事の公開から約6年が経過し、当時期待されていた「基地局のオープン化」を軸とした日本勢の巻き返しは、一部で成果を上げつつも、国内基地局メーカーにとっては厳しい局面も同時に訪れています。ここでは2026年8月時点で確認できる範囲の動きを整理します。
複数事業者によるオープンRAN基盤整備
2022年12月、NTTドコモ・KDDI・ソフトバンク・楽天モバイルの携帯4社は神奈川県横須賀市(YRP)に、O-RAN ALLIANCEの国際規格に基づく機器の試験・認証拠点「Japan OTIC」を共同で開設しました。複数の通信事業者が共同でこうした拠点を運営するのは世界初とされています。
続いて2023年1月、KDDIはサムスン電子・富士通と協力し、O-RAN標準インタフェースに準拠した5G仮想化基地局の商用展開を大阪市内で開始しました。サムスン電子製の制御装置(DU・CU)と富士通製の無線装置(MMU)を汎用サーバー上で組み合わせる構成で、異なるメーカーの機器を接続する「オープン化」を実運用の形で示した事例です。
NTTドコモも2023年2月、オープンRANの海外展開を支援するブランド「OREX」を始動させました。
NTTドコモ・NECの合弁会社「OREX SAI」による海外展開
2024年4月、NTTドコモとNECは資本金160億円の合弁会社「OREX SAI」を設立しました(出資比率はドコモ66%、NEC34%)。海外通信事業者向けにオープンRAN製品・サービスの現地調達や検証を担う会社で、2030年ごろをめどにオープンRANの世界シェア20〜30%を目指すとしています。
その後の実績としては、2025年1月にカタールのOoredooとの5G Open RAN SAのフィールドトライアルに成功したこと、同年3月にシンガポールでの商用展開に向けた協業を開始したことなどが報じられています。
富士通は楽天モバイルへの供給を拡大
富士通は楽天モバイルの5G sub6(3.7GHz帯)向け無線装置(RU)の供給に参入し、2025年からの導入が報じられています。国内オペレーターとの取引という点では着実な広がりを見せています。
一方で、国内メーカーには厳しい判断も
その一方で、国内基地局メーカーを取り巻く事業環境は必ずしも順風とは言えません。NTTドコモは2024年に基地局の調達方針を見直し、Sub6・Massive MIMO対応など高性能な分野でスウェーデン・エリクソン製基地局の採用を広げる方針を示したと報じられており、これに伴い国内メーカーの調達シェアは低下傾向にあるとされています。
こうした状況を受け、NECは2026年に入り、4G・5Gなど既存規格向け基地局のハードウェア開発を中止し、開発リソースをソフトウエア分野に集中させる方針を示したと報じられています(防衛関連機器や次世代規格に向けた開発は継続するとされています)。また、2025年2月に5G基地局事業への参入を発表していた京セラも、同年12月には参入を断念したことを明らかにしました。今後は基地局本体ではなく、KDDIと共同開発を進める中継装置(リピーター)などの周辺機器に注力するとされています。
報道によれば、2025年末時点でもファーウェイ・エリクソン・ノキアの3社で世界の5G基地局市場の7割超を占めるとされ、日本企業のシェアは本記事公開当時から大きくは変わらず、依然として数%未満にとどまっているとみられます。
政府は基盤整備を継続
総務省は2025年6月、「デジタルインフラ整備計画2030」を公表しました。2030年度末までに全国で基地局を60万局体制(うちインフラシェアリングによるものが30万局)とし、人口カバー率99%前後を目指す方針を示しています。基地局メーカーの国際競争力とは別に、国内の5Gインフラ自体の面的整備は引き続き政策的に推進されています。
| 時期 | 主な出来事 |
|---|---|
| 2020年 | 米国主導のファーウェイ排除が本格化。フランス・ポルトガルなど欧州にも波及(本記事公開時点) |
| 2022年12月 | 携帯4社共同でオープンRAN試験・認証拠点「Japan OTIC」を横須賀に開設 |
| 2023年1月 | KDDIがサムスン電子・富士通とO-RAN準拠の仮想化5G基地局を商用展開 |
| 2023年2月 | NTTドコモがオープンRAN海外展開ブランド「OREX」始動 |
| 2024年4月 | ドコモ・NECが合弁会社「OREX SAI」設立(資本金160億円) |
| 2024年 | ドコモが基地局調達方針を見直し、エリクソン製の採用を拡大と報道 |
| 2025年 | 富士通が楽天モバイルの5G sub6帯RU供給に参入 |
| 2025年6月 | 総務省が「デジタルインフラ整備計画2030」公表(基地局60万局体制目標) |
| 2025年12月 | 京セラが5G基地局事業への参入断念を発表 |
| 2026年1月 | NECが既存規格向け基地局のハード開発中止・ソフト分野へ集中と報道 |
下図は「クローズド」な従来型構成と、複数メーカーの機器を組み合わせられる「オープンRAN」構成の違いを簡略化して示したものです。
以上のように、2026年時点では「オープンRANの枠組みづくり」自体は着実に進んだ一方、国内基地局メーカーの事業環境はむしろ厳しさを増しており、当初期待されていたようなシンプルな「日本勢の復権」には至っていないというのが実情に近いと言えそうです。今後はOREX SAIなど海外展開に特化した枠組みや、防衛・次世代規格分野への選択と集中が、国内勢の生き残り戦略の軸になっていくとみられます。
楽天モバイル
オープンRANで自社網を築いた楽天モバイル
完全仮想化ネットワークを採用する楽天モバイル。データ無制限で月額3,278円(税込)、5G通信も追加料金なしで使えます。
※本記事は2020年8月に公開した記事に、オープンRANの進展と国内基地局メーカーの現状を加筆し、2026年8月時点の情報に更新したものです。