5G基礎知識

新型コロナウィルスが5Gに与えた3つの影響|5Gの一般化は遠のいた?

新型コロナウィルスが5Gに与えた3つの影響|5Gの一般化は遠のいた?

【2026年8月 追記】

本記事はコロナ禍初期(2020年)の見通しです。結果として5Gは普及し、2026年現在の契約数は1億2,632万件、人口カバー率は98.6%に達しています。当時の3つの懸念がその後どうなったかは、記事後半の【2026年の答え合わせ】にまとめました。

結論:新型コロナウイルス(2020年)は、①「5Gがコロナを広げた」というデマ、②iPhoneの出荷遅れ、③大手キャリアの整備スピード鈍化、という3つの経路で5Gの普及を遅らせました。ただし2026年現在、5Gはすでに一般化しています。

①5Gデマ拡散 英国で焼き討ち等 ②iPhone出荷遅れ 中国工場の停止 ③キャリアの余裕 五輪延期で急務消滅 5Gの一般化が約2年後ろ倒しに (2026年時点では普及済み)
影響 内容
①「5Gがコロナを広げた」というデマ 英国中心に拡散し、実際に通信施設が焼き討ちされる被害も発生
②iPhoneの出荷遅れ 中国・武漢周辺の組立工場停止で発売スケジュールが遅延
③大手キャリアに時間的余裕 東京五輪延期などで基地局整備を急ぐ理由が薄れた
コロナウィルスが5Gに与えた影響

「5Gがコロナを広げた」というデマ

事実:5GはCOVID-19を拡散しません。電波やモバイルネットワーク上をウイルスが移動することはなく、WHOも公式に否定しています。ただし英国を中心にデマが拡散し、実害も出ました。

項目 内容
デマの内容 「5G電波がコロナウイルスを広げている」という主張
拡散地域 英国が中心。日本国内にも信じる人が一部存在
実害 英国で通信施設への放火・関係者への脅迫が発生
発生源とされるもの ロシア系メディアや米国右派サイトなどのSNS拡散との指摘

デマがもたらした社会的影響

5Gがコロナを広げたデマ
出来事 内容
英国での実害 通信施設の焼き討ち・脅迫が40件以上。新設の臨時病院「ナイチンゲール病院」のアンテナも放火被害に
世論調査 英国で「コロナと5Gは関係がある」と回答した人が1割
WHOの対応 「5Gモバイルネットワークは新型コロナウイルス感染症を広めません」と公式に否定
YouTubeの対応 2020年4月7日、5G陰謀論を含む動画をポリシー違反として削除する方針を発表

関連記事:5Gの電波がコロナを広げた?イギリスで流布された背景や噂の根拠

WHOが説明する実際の感染経路:

  • ウイルスは電波やモバイルネットワーク上を移動できない
  • COVID-19は5Gモバイルネットワークがない国でも感染が拡大している
  • 咳・くしゃみ・会話による飛沫感染が主な経路
  • 汚染された表面に触れた手で目・口・鼻を触ることでも感染

iPhoneの出荷遅れ

iPhoneの出荷遅れ

日本はiPhoneのシェアが世界でも最高水準の国。iPhoneが5Gに対応しない限り、日本人には5Gが広く普及しないと言われるほど影響が大きい端末です。

機種 影響
iPhone SE(2020) 発表が3月末予定→4月15日に延期(組立サプライヤー鴻海の操業停止が影響)。なお5G非対応機種
iPhone 12(5G対応) 当初9月発表の見方が濃厚だったが延期が確実視され、年内発売を危ぶむ報道も

関連:【iPhone SEは5G非対応】5G元年のiPhoneが5Gに対応しないの3つの理由

大手キャリアに生まれた時間的余裕

大手キャリアはコロナで余裕ができた

日本の5G通信エリアは以前から「狭すぎる」と指摘されてきました(例:当時のドコモはスタジアム・駅・空港の一部のみ、ソフトバンクは東京駅周辺のみ)。コロナで基地局整備を急ぐ理由が薄れたことが、さらに拡大を遅らせました。

要因 内容
東京五輪の延期 2020年夏開催予定→1年延期。「五輪までに整備」という目標が消失
iPhone 12の発売延期 国内シェア69.1%(2019年)のiPhoneが5G対応しないと本格競争が始まらないため

【2026年の答え合わせ】3つの影響はその後どうなったか

ここまでは2020年春の時点で書いた見通しです。6年が経ち、3つの影響がそれぞれどう決着したかを実際の数字で確認します。

当時の懸念 実際にどうなったか 判定
①デマで5Gへの不信が定着するのでは 英国での放火被害は2020年に集中し、その後は沈静化。国内でも5Gを理由に契約を避ける動きは主流にならなかった 影響は一時的
②iPhoneの5G対応が大幅に遅れるのでは iPhone 12は2020年10月23日に発売。例年の9月発売から約1か月の遅れにとどまり、「年内発売も危ぶまれる」という懸念は外れた 遅れは軽微
③五輪延期で基地局整備が停滞するのでは 東京五輪は2021年7月に開催。整備は止まらず、人口カバー率は2023年度末98.1%→2024年度末98.4%→2025年度末98.6%と伸び続けた 停滞せず

結果として、コロナ禍が5Gに与えた影響は「普及を止めた」ではなく「立ち上がりを1〜2年遅らせた」という程度に収まりました。当時もっとも懸念が大きかったiPhoneの遅れが1か月で済んだことが、その後の展開を大きく左右しています。

ただし「一般化」の中身は当時の想像とは違った

一方で、当時思い描かれていた「5Gの一般化」とはややズレた形で普及が進んだ点は押さえておく価値があります。カバー率98.6%を達成した主役は、5G本来の高速帯域(Sub6・ミリ波)ではなく、4G用の周波数を5Gに転用したエリアだったからです。

転用周波数は電波の届きやすさが4Gと同じためエリアを一気に広げられますが、速度も4G並みにとどまります。Sub6の展開率は75.5%、ミリ波は駅やスタジアムなどごく一部という状況です。「5Gと表示されるのに速くならない」という不満が2026年になっても残っているのは、この構造によるものです。

また、コアネットワークまで5G化した5G SA(スタンドアローン)が本格的に動き出したのも近年のことでした。低遅延を前提とする遠隔医療や自動運転といった応用は、SAの普及を待つ必要があったのです。詳しくは5G SA(スタンドアローン)とは?NSAとの違い・キャリア対応状況を図解で完全解説をご覧ください。

この一件から何を学べるか|技術デマの見分け方

「5Gがコロナを広げる」というデマは沈静化しましたが、新しい技術が出るたびに似た構図の話は繰り返されます。当時の騒動を振り返ると、広がった主張にはいくつか共通する特徴がありました。

デマに共通する特徴 5G・コロナの場合 確認の仕方
時期の一致を因果と取り違える 5Gの商用化とコロナの流行がたまたま2019〜2020年に重なった 「同時に起きた」以外の根拠が示されているかを見る
反証を無視する 5Gが未導入の国でも感染は拡大していた 主張が成り立たない事例が既に存在しないかを探す
専門機関の見解に触れない WHOは「5Gネットワークは新型コロナウイルス感染症を広めません」と明確に否定していた WHO・総務省・ICNIRPなど一次情報を直接確認する
仕組みの説明がない 電波でウイルスが運ばれる経路は説明されないままだった 「どういう仕組みでそうなるのか」が書かれているかを見る

とくに4つ目が実用的です。電波の健康影響については、国際的な非電離放射線防護委員会(ICNIRP)が2020年にガイドラインを改定し、5Gで使われる周波数帯も含めた防護指針を示しています。日本の電波防護指針もこれに整合しており、「基準そのものが5Gを想定して作られている」点は、当時あまり知られていませんでした。詳しくはICNIRPのガイドライン解説にまとめています。

なお、デマが実害(英国での放火40件以上)にまで至った背景には、ロックダウン下で不安と情報が同時に増幅されたという事情もありました。技術そのものへの疑問と、社会不安のはけ口としての攻撃は別物です。前者は一次情報で解消できますが、後者は解消しにくい——この違いを踏まえておくと、次に似た話が出てきたときに落ち着いて判断できます。

まとめ|5Gプランへの切り替えは急がなくてよい

当時は「しばらく生活圏で5Gは繋がらない」と見られていましたが、その後エリアは急速に拡大。2026年時点で5Gの人口カバー率は98.6%、契約数は1億2,632万件に達し、コロナによる遅れは結果的に一時的なものでした。

プラン 月額目安
ahamo 2,970円/30GB(2026年8月1日からキャンペーンで40GBに増量中・終了日未定)
povo2.0 基本料0円
LINEMO 990円〜
楽天モバイル 1,078円〜3,278円(無制限)

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※本記事は2020年4月に公開した記事に、その後の答え合わせと技術デマの見分け方を加筆し、2026年8月時点の最新情報に更新したものです。人口カバー率は総務省「5Gの整備状況(令和7年度末)」(2026年7月27日公表)に基づきます。