ローカル5G

【ローカル5G】富士通ら3社がローカル5Gネットワークを構築|実用化の日は近い?

【ローカル5G】富士通ら3社がローカル5Gネットワークを構築|実用化の日は近い?

【2026年8月 追記】

本記事は2020年当時のローカル5G実証の内容です。2026年現在、ローカル5Gは実導入フェーズに入り、免許取得も着実に増えています。

ローカル5Gは、特定のエリアや施設だけに構築する5G通信網です。2020年4月、富士通・富士通ネットワークソリューションズ(FNETS)・宮崎県のケーブルテレビ局「ケーブルメディアワイワイ」の3社が、ローカル5G検証システムの構築を発表しました。本記事ではその概要と、6年後の2026年時点での普及状況をあわせて解説します。

ローカル5G検証システムの構築を開始

ローカル5G検証システムの構築を開始

2020年4月6日、3社はローカル5G検証システムの構築開始を発表。地域のケーブルテレビ局が運用主体となり、大手メーカーが技術・免許申請を支援する体制の先駆け事例です。

富士通ら3社が構築|2020年10月スタート予定

項目 内容
発表日 2020年4月6日
実施3社 FNETS/富士通/ケーブルメディアワイワイ
対象エリア 宮崎県 延岡・日向エリア
開始時期 2020年10月(予定)
目的 工場・農業・自治体の課題解決インフラとしてのローカル5G活用研究

各社がそれぞれの役割を担ってローカル5Gを運用する

企業 役割
FNETS 無線局免許申請支援、無線エリア設計、電波伝搬測定、ネットワーク設計・工事
富士通 ローカル5G検証システム(コア装置・無線基地局等)の提供、実証実験支援
ケーブルメディアワイワイ 検証システムの運用計画

大手の技術提供と免許申請支援によりローカル5Gは普及する

大手企業が技術を提供し、免許申請を支援し、ケーブルテレビ局が運用する」という座組みは、他社にも広がっています。住友商事はケーブルテレビ各社と共同で無線プラットフォーム会社「グレープ・ワン」を設立し、同様の支援モデルを展開しました。今回の富士通×ケーブルメディアワイワイの取り組みも、この流れに沿ったものです。

関連記事:ローカル5Gでケーブルテレビに光が当たる|5G時代のケーブルテレビの役割とは

ケーブルメディアワイワイに設置されるネットワーク

ケーブルメディアワイワイに設置されるネットワーク

コア設備とエッジ設備をローカル基地局で結ぶ

設備 役割 設置場所
コア設備 通信制御・ユーザー認証・データ転送を担うIAサーバ上のソフトウェア ケーブルメディアワイワイ
エッジコア設備 ローカル基地局・BWA基地局の情報を収集しコア設備へ送信 実証実験先
ローカル基地局/BWA基地局 現場の無線アクセスポイント(BWA=広帯域移動無線アクセス) 実証実験先(工場・農地等)

これにより、一地域や特定の設備だけに5Gのローカルネットワークを構築できます。

NSA方式で構築

基地局は4G LTE基盤を流用するNSA(ノンスタンドアロン)方式で開局。制御信号にLTE、ユーザーデータに5Gを使う方式で、4Gコアネットワークを利用するため、大手キャリアの5G通信網が構築されていないエリアでもローカル5Gネットワークを構築できます。

ローカル基地局は工場や農地に設置可能

末端のローカル基地局は工場や農地にも設置可能です。理論上、エッジコア設備・ローカル基地局・BWA基地局を置ける場所であれば、どこでも5Gローカルネットワークを構築できます。3社は今後、スマート工場の実現と地域課題解決に向けた実証実験を進めるとしています。

ローカル5G検証システムでできること

ローカル5G検証システムでできること

検証システムで想定されている活用例は次の3つです。

用途 概要
遠隔監視・センシング 工場や街中にカメラ・センサーを設置し、遠隔からのモニタリングや異常の早期検知に活用
リモート作業支援 重機のカメラ映像を遠隔の管制室で監視・操作。低遅延の5G通信で工事現場や農業機械の無人化を後押し
実用化に向けた取り組み 実証実験で得たデータをもとに、自動運転やスマート工場の実現に向けた検討を進める

大手キャリアの5G通信網構築よりも早くなる?

当時、NTTドコモ・KDDI・ソフトバンクの5G通信網整備は遅れており、地方への展開まで数年かかると見られていました。ケーブルテレビ局が敷設するローカル5Gの方が、大手キャリアより早く地域に浸透するのではという見立てもありました。この見立てのその後の実態は、記事末尾の2026年追記で解説しています。

【2026年8月追記】あれから6年、ローカル5Gは「実用化」したのか

ここまでが2020年4月時点の記事本文です。冒頭で紹介した富士通・FNETS(富士通ネットワークソリューションズ)・ケーブルメディアワイワイ3社によるローカル5G検証システムについて、その後の具体的な成果や本格運用への移行時期などの続報は、公開情報の範囲では確認できませんでした。個別プロジェクトの行方を追うのは難しいため、ここではローカル5G全体がこの6年でどう動いたのかを、総務省の公表資料をもとに整理します。

2026年6月末時点の公式な数字

まず、総務省が電波利用ポータルで公表している最新の数字を確認します。令和8年(2026年)6月末現在、ローカル5Gの免許人は134者、基地局数はサブ6とミリ波での利用を合わせて約1,710局です。

項目 令和8年6月末現在
免許人の数 134者
基地局数(サブ6+ミリ波) 約1,710局
周波数帯 サブ6(4.5GHz帯)/ミリ波(28GHz帯)

※出典:総務省 電波利用ポータル「ローカル5G」(https://www.tele.soumu.go.jp/j/adm/system/ml/mobile/local5g/index.htm)

免許人が134者にとどまる点は、普及の遅れというより制度の性格によるものです。ローカル5Gの免許を受けるのは工場・病院・自治体・通信事業者といった特定の主体で、一般の個人が取得するような仕組みではありません。「何者が使っているか」より「どこで何に使われているか」で評価すべき技術だといえます。

用途別の内訳(2025年9月末時点)

どのような用途で使われているかは、総務省総合通信基盤局電波部移動通信課の資料(2025年9月末時点)が参考になります。周波数帯・用途別の内訳は下表の通りです。

※この内訳の単純合計(1,847局)は、上記の電波利用ポータルが示す「約1,710局」(令和8年6月末)と一致しません。集計の基準日と対象範囲が異なるため、両者は直接比較できません。全体の規模を見るときは電波利用ポータルの公表値を、用途の内訳を見るときはこちらの資料を参照してください。

いずれの数字を見てもSub6帯の電気通信業務用が大半を占めます。2020年の実証実験段階から、実際に免許を取得して運用するフェーズへと移行してきたことがうかがえます。

周波数帯 用途 免許局数
Sub6帯 電気通信業務用 1,313局
Sub6帯 一般業務用(工場・医療など) 504局
ミリ波帯 電気通信業務用 11局
ミリ波帯 一般業務用 17局
ミリ波帯 公共業務用 2局
合計(単純合計) 1,847局

※2025年9月末時点の用途別内訳。総務省総合通信基盤局電波部移動通信課の公表資料をもとに作成。

ローカル5G制度の歩み 2019年 制度創設 2020年 実証実験 (本記事の事例) 2023年 共同利用解禁 2024年9月 HPUE制度化 2025年9月 免許1,847局 出典:総務省資料等をもとに作成

制度面のハードルも下がってきた

総務省は2023年に「共同利用」を解禁したほか、2024年9月には高出力端末(HPUE)やレピーター(電波の中継装置)の利用を制度化するなど、エリアカバーの改善や導入コストの低減につながる見直しを重ねてきた。2020年当時に本記事で紹介した「大手メーカーが技術と免許申請支援を提供し、地域のケーブルテレビ局などが運用を担う」という座組みは、その後もローカル5G普及の一つのモデルケースとして各地で参照されている。

ローカル5Gを検討するときに最初に確認する3点

実導入フェーズに入ったとはいえ、ローカル5Gは「とりあえず入れてみる」設備ではありません。検討を始める段階で、次の3点を先に押さえると判断を誤りにくくなります。

確認点 見るべきこと
①Wi-Fiで足りないか 屋内の限られた範囲ならWi-Fi 6/7のほうが安価で早い。ローカル5Gが効くのは、広い敷地・屋外・多数端末・電波干渉を避けたい場面
②免許と運用体制 ローカル5Gは無線局免許が必要。申請・エリア設計・保守を自社で担うのか、ベンダーやケーブルテレビ局などのパートナーに委ねるのかを先に決める
③費用を回収できる用途か 設備は数千万円規模になりうる。遠隔操作による人員削減や不良検知による歩留まり改善など、効果を数字で見積もれる用途から始める

本記事で紹介した富士通・FNETS・ケーブルメディアワイワイの座組みが示したように、免許申請とエリア設計を支援できるパートナーを見つけられるかどうかが、導入の可否を左右する実務上の分かれ目になります。

「大手キャリアより早い」という構図は変わった

2020年当時の本記事では、大手キャリアの5G通信網整備の遅れを踏まえ、「地方まで5Gが届くのは数年先」「ローカル5Gの方が先に実用化するかもしれない」という見立てを紹介していました。しかし総務省の発表によれば、全国の5G人口カバー率は2025年度末時点で98.6%に達しており、大手キャリアによる5Gエリア展開はこの数年でほぼ全国規模まで進みました。

その結果、当初イメージされていた「ローカル5Gが大手キャリアの穴を埋める」役割よりも、工場内のセンサーネットワークや建設現場の遠隔操作、農地でのスマート農業機器の制御など、特定の敷地・用途に閉じたネットワークとしての価値が主戦場になっています。エリアの広さで大手キャリアと競う存在というよりは、キャリア5Gとは別軸で棲み分ける専用インフラとして定着しつつある、というのが2026年時点の実態に近いといえます。

「実用化の日は近い?」への2026年時点の答え

2020年の記事が投げかけていた「実用化の日は近い?」という問いに対する2026年時点での答えは、「限定的な用途では実用化が着実に進んだが、当時イメージされていたような大手キャリア5Gに匹敵する広がりには至っていない」というのが実情に近いでしょう。基地局数は約1,710局・免許人134者(令和8年6月末)という規模まで積み上がり、共同利用の解禁やHPUE制度化など制度面の見直しも続いていますが、爆発的な普及というよりは、工場・農業・建設・防災といった特定分野で着実に活用が広がってきた6年間だった、とまとめられます。

※本記事は2020年に公開した内容をもとに、ローカル5Gの免許局数や共同利用・HPUEなどの制度改正、5G人口カバー率の実績を含む2026年8月時点の最新情報を追記して更新したものです。