【2026年7月 追記】
本記事は2020年当時のローカル5G実証の内容です。2026年現在、ローカル5Gは実導入フェーズに入り、免許取得も着実に増えています。
特定のエリアや施設だけに5G通信網を敷設するローカル5Gがいよいよ実用化に向けて動き出しています。
大手電気機器メーカー富士通と宮崎県のケーブルテレビ「ケーブルメディアワイワイ」はローカル5G検証システムを構築。
以前から伝えていたように、ローカル5Gはケーブルテレビ会社を介して普及が始まることが現実味を帯びてきました。
富士通と宮崎県のケーブルテレビがどのようにローカル5G通信網を構築し、この動きが日本全体にどのように波及していくのか解説していきます。
目次
ローカル5G検証システムの構築を開始
2020年4月6日、富士通ネットワークソリューションズ株式会社(以下、FNETS)、富士通株式会社、株式会社ケーブルメディアワイワイにの3社はローカル5G検証システムの構築を開始したことを発表しました。
以前からローカル5Gがケーブルテレビ局が実施主体となり、その技術支援を大手メーカーが行うと言われてきましたが、今回はその先駆けとなる動きです。
ローカル5G検証システムの構築を開始するまでの動きを見ていきましょう。
富士通ら3社が構築|2020年10月スタート予定
プレスリリースでは「FNETSと富士通、ケーブルメディアワイワイでは、地域の工場や農業、自治体などが抱える様々な課題を解決するインフラ構築の手段として、ローカル5Gの活用を研究してきました」と発表しています。
今回は、その研究を実験に写すフェーズに入ったと言えるでしょう。
ローカル5Gに必要な光ケーブル網や電柱などのインフラをすでに保有しているケーブルテレビ局はローカル5G構築に欠かせない存在と言われており、今回、富士通は宮崎県の延岡・日向エリアを中心に事業展開しているケーブルテレビ局「ケーブルメディアワイワイ」と組んで、ローカル5G検証システムを構築します。
このシステムは2020年10月にスタートする予定です。
各社がそれぞれの役割を担ってローカル5Gを運用する
今回のローカル5G検証システムで組んでいる3社の役割はそれぞれ以下のようなものです。
- FNETS: 無線局免許申請支援、無線エリア設計、電波伝搬測定、ネットワーク設計および工事
- 富士通: ローカル5G検証システム(コア装置、無線基地局など)の提供、実証実験支援
- ケーブルメディアワイワイ: ローカル5G検証システムの運用計画
大手電気メーカーである富士通が技術を提供し、富士通傘下のFNETSがネットワーク設計や無線局免許申請支援などのノウハウを提供します。
そして、ローカル5G構築に欠かすことができない光ケーブルや電柱をすでに保有しているケーブルメディアワイワイはローカル5G検証システムの運用計画を担うという役割です。
大手の技術提供と免許申請支援によりローカル5Gは普及する
今回のように大手電気メーカーや商社などが技術と免許申請支援などをケーブルテレビ局に提供し、ケーブルテレビ局と大手企業が一緒にローカル5Gを推進していく流れは、今後ローカル5Gが普及する流れの中でスタンダードなものになるでしょう。
同じように住友商事も、ケーブルテレビ数社と一緒に「グレープ・ワン」という無線プラットフォーム事業の展開を行う会社を設立し、グレープ・ワンがケーブルテレビ局に無線プラットフォームの設置を支援するというスキームを発表しています。
ローカル5Gでケーブルテレビに光が当たる|5G時代のケーブルテレビの役割とは
今回の富士通とケーブルメディアワイワイの動きもこれと同じです。
今後は「大手企業が技術を提供し、免許申請を支援し、ケーブルテレビ局が運用する」というローカル5G普及のためのスタンダードな形になっていくでしょう。
ケーブルメディアワイワイに設置されるネットワーク
それでは、今回の富士通とケーブルメディアワイワイの検証システムでは具体的にどのようなネットワークが導入されるのでしょうか?
コア設備とエッジ設備をローカル基地局で結ぶ
このシステムでは、コア設備をケーブルメディアワイワイに設置します。
コア設備とはIAサーバ上のソフトウェアで5Gの通信制御、ユーザ認証、データ転送などの機能を実現する設備です。
次に実証実験先にエッジコア設備とローカル基地局とBWA(Broadband Wireless Access:広帯域移動無線アクセス)基地局を設置します。
ローカル基地局とBWA基地局からの情報をエッジコア設備が収集し、コア設備に届け、その情報をケーブルメディアワイワイが管理運用するという仕組みになっています。
これによって一地域や特定の設備に5Gのローカルネットワークを構築することができるようになります。
NSA方式で構築
また、今回のシステムでは、4G LTEのネットワーク基盤を流用するNSA(ノンスタンドアロン)方式で無線基地局を開局しています。
NSA方式とは、制御信号はLTEを利用し、ユーザデータは5Gを利用する5Gシステムの通信方式となっており、4Gコアネットワークを利用するため、大手キャリアの5G通信網が構築されなくてもローカル5G通信網を構築することができます。
ローカル基地局は工場や農地に設置可能
末端のローカル基地局は工場や農地に設置することが可能です。
理論上はエッジコア設備とローカル基地局とBWA基地局が設置できるところであれば、どのような場所でも5Gローカルネットワークを構築することが可能です。
今後はスマート工場の実現および地域課題解決の実証実験を行なっていくと3社はプレスリリースしています。
ローカル5G検証システムでできること
今回のローカル5G検証システムで実現できることとして以下の3点が挙げられています。
- 遠隔監視やセンシング
- リモート作業支援
- 実用化に向けた取り組み
富士通とケーブルメディアワイワイのローカル5G検証システムでどのようなことが実現できるのか詳しく解説していきます。
遠隔監視やセンシング
5Gは無数のカメラやセンサーのデータを大量かつ瞬時に通信することができます。
工場などに大量のセンサーやカメラを設置することで、遠隔地からでも工場のモニタリングなどを行うことができます。
また、街中などにカメラやセンサーを仕掛けることで、異常があった時に瞬時にセンサーが反応し災害などを未然に防ぐことができるようになるかもしれません。
リモート作業支援
ローカル5G環境を工事現場などに構築しておくことで、重機に設置されたカメラの映像を遠隔地の管制室で監視・リモート操作などを行うことができることも期待されています。
5Gが遅延がないので、今起こっていることを今伝えることができます。
これによって遠隔地から工事現場や災害現場での作業ができたり、無人で農業機械を操ることができるようになることが期待されています。
実用化に向けた取り組み
3社が行う実証実験では、遠隔監視やセンシングなどの情報データを集めて、実用化に向けた取り組みを行うとしています。
このような取り組みが進んで行けば、自動運転や遠隔操作やスマート工場の実現などは遠い未来の話ではないかもしれません。
大手キャリアの5G通信網構築よりも早くなる?
NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの大手キャリア3社の5G通信網構築は遅れています。
全てのキャリアで5Gを接続することができるのは日本の中のほんの一部だけとなっており、地方にまで5Gが届くのは数年程度先になりそうです。
このようなことをしている間にローカル5Gはどんどん実験の場を広げ、早ければ2021年には実用化がスタートするでしょう。
多くの地方においては大手キャリアの5G通信開始よりも地域のケーブルテレビ局が敷設するローカル5Gネットワーク構築の方が早いかもしれません。
現にをはじめとしたケーブルテレビはすでに4k放送を普通に始めており、インターネットも非常に早く接続することができます。
大手キャリアがゆっくりしている間にも次世代通信はケーブルテレビが先導していくのかもしれません。
【2026年7月追記】あれから6年、ローカル5Gは「実用化」したのか
ここまでが2020年4月時点の記事本文です。冒頭で紹介した富士通・FNETS(富士通ネットワークソリューションズ)・ケーブルメディアワイワイ3社によるローカル5G検証システムについて、その後の具体的な成果や本格運用への移行時期などの続報は、公開情報の範囲では確認できませんでした。個別プロジェクトの行方を追うのは難しいため、ここではローカル5G全体がこの6年でどう動いたのかを、総務省の公表資料をもとに整理します。
免許局数は着実に積み上がった
総務省総合通信基盤局電波部移動通信課の資料によると、2025年9月末時点のローカル5G免許局数は、Sub6帯(4.6〜4.9GHz帯)で電気通信業務用1,313局・工場や医療機関など一般業務用504局、ミリ波帯(28GHz帯)で電気通信業務用11局・一般業務用17局・公共業務用2局となっています。単純合計すると1,847局にのぼり、2019年の制度創設・2020年の運用開始当初の実証実験段階から、実際に免許を取得して運用するフェーズへと着実に移行してきたことがうかがえます。
| 周波数帯 | 用途 | 免許局数 |
|---|---|---|
| Sub6帯 | 電気通信業務用 | 1,313局 |
| Sub6帯 | 一般業務用(工場・医療など) | 504局 |
| ミリ波帯 | 電気通信業務用 | 11局 |
| ミリ波帯 | 一般業務用 | 17局 |
| ミリ波帯 | 公共業務用 | 2局 |
| 合計(単純合計) | 1,847局 | |
※2025年9月末時点。総務省総合通信基盤局電波部移動通信課の公表資料をもとに作成。
制度面のハードルも下がってきた
総務省は2023年にローカル5Gの「共同利用」を解禁したほか、2024年9月には高出力端末(HPUE)やレピーター(電波の中継装置)の利用を制度化するなど、エリアカバーの改善や導入コストの低減につながる見直しを重ねてきました。報道によれば、遠隔点検や農業などでの活用をさらに後押しするため、参入のハードルを下げる新たな制度の検討も進められています。2020年当時に本記事で紹介した「大手メーカーが技術と免許申請支援を提供し、地域のケーブルテレビ局などが運用を担う」という座組みは、その後もローカル5G普及における一つのモデルケースとして各地で参照されてきました。
「大手キャリアより早い」という構図は変わった
2020年当時の本記事では、大手キャリアの5G通信網整備の遅れを踏まえ、「地方まで5Gが届くのは数年先」「ローカル5Gの方が先に実用化するかもしれない」という見立てを紹介していました。しかし総務省の発表によれば、全国の5G人口カバー率は2025年度末時点で98.6%に達しており、大手キャリアによる5Gエリア展開はこの数年でほぼ全国規模まで進みました。
その結果、当初イメージされていたような「ローカル5Gが大手キャリアの穴を埋める」という役割よりも、工場内のセンサーネットワークや建設現場の遠隔操作、農地でのスマート農業機器の制御など、特定の敷地・用途に閉じたネットワークとしての価値がローカル5Gの主戦場になってきています。エリアの広さで大手キャリアと競う存在というよりは、キャリア5Gとは別軸で棲み分ける専用インフラとして定着しつつある、というのが2026年時点での実態に近いといえるでしょう。
「実用化の日は近い?」への2026年時点の答え
2020年の記事が投げかけていた「実用化の日は近い?」という問いに対する2026年時点での答えは、「限定的な用途では実用化が着実に進んだが、当時イメージされていたような大手キャリア5Gに匹敵する広がりには至っていない」というのが実情に近いでしょう。免許局数は1,800局を超える規模まで積み上がり、共同利用の解禁やHPUE制度化など制度面の見直しも続いていますが、爆発的な普及というよりは、工場・農業・建設・防災といった特定分野で着実に活用が広がってきた6年間だった、とまとめられます。
※本記事は2020年に公開した内容をもとに、ローカル5Gの免許局数や共同利用・HPUEなどの制度改正、5G人口カバー率の実績を含む2026年8月時点の最新情報を追記して更新したものです。
