5G基礎知識

【5G JAPAN】KDDIとソフトバンクは地方へのエリア展開を早期実現できるか?

【5G JAPAN】KDDIとソフトバンクは地方へのエリア展開を早期実現できるか?

2020年3月、NTTドコモ、au、ソフトバンクの大手キャリア3社の5G商用サービスが開始されました。

開始からわずか数週間後の2020年4月1日、KDDI(au)とソフトバンクが共同出資で5Gインフラ整備を行う会社である5G JAPANを設立し、話題となっています。

4G LTEサービスまでは、大手キャリア3社は独自に基地局設置の道を歩んできましたが、5Gに関しては商用サービス開始当初から大手同士で組んでインフラ整備を行う計画です。

それには5Gの電波が抱える問題や総務省の基準が大きく影響しています。

KDDIとソフトバンクが設立した5G JAPANはどのような役割を果たすのかを解説するとともに、今後の5G通信網構築の未来を予測していきましょう。

5G JAPANとは|KDDIとソフトバンクの合弁会社

5G JAPANとは|KDDIとソフトバンクの合弁会社

5G JAPANとはKDDIとソフトバンクが作った会社です。

目的は地方への5G通信網を構築することです。

突然降って湧いたうような話として報道されていましたが、実はKDDIとソフトバンクは以前から提携しています。

5G JAPAN設立の目的や背景や企業のミッションについてまずは詳しく解説していきます。

KDDIとソフトバンクの合弁会社

5G JAPANはKDDIとソフトバンクが共同で出資して設立した会社です。

社名 株式会社5G JAPAN
設立日 2020年4月1日
事業内容 5G基地局の設計・施工に関する調整・管理
住所 東京都港区新橋1-1-13 アーバンネット内幸町ビル4F
主な役員 代表取締役社長 寺尾 徳明
代表取締役副社長 大瀧 栄司
資本金 5億円

5G JAPANはKDDIとソフトバンクが均等に出資して設立した会社です。

そのため、2億5,000万円ずつKDDIとソフトバンクが出資したことになります。

また、代表取締役社長の寺尾 徳明氏はKDDIの建設本部で副本部長を勤めており、副社長の大瀧 栄司はソフトバンクのエリアネットワーク本部長を勤めていた人物です。

5G JAPANは出資比率も人事もKDDIとソフトバンクが共同で設立した会社になります。

KDDI(au)とソフトバンクの5G通信網確立が目的

5G JAPANの社長・副社長が、建設やエリアネットワーク出身であることからも分かるように、5G JAPANは5G通信網の確立を目的とした会社です。

5G JAPANの寺尾社長は5G JAPANの事業目的について以下のように語っています。

5Gネットワークの地方展開を加速するべく、両社が保有する基地局資産を効率的に相互利用するインフラシェアリングを推進し、5G基地局の工事設計や施工管理に関する業務を行います。
KDDI株式会社の「お客さまの期待を超える感動をお届けすることにより、豊かなコミュニケーション社会の発展に貢献」と、ソフトバンク株式会社の「情報革命で人々を幸せに」の二つのビジョンの下、あらゆる産業をカバーする5Gネットワークを早期に整備し、日本の産業育成や地方創生、国土強靭化に貢献することで国際競争力の向上を目指して参ります。

参考:5G JAPAN|Message

5G JAPANはKDDIとソフトバンクの5G基地局の全国展開を共同を進めることをミッションとした会社です。

以前からKDDIとソフトバンクは提携している

以前から、KDDIとソフトバンクは提携して基地局の相互利用であるインフラシェアリングを進めてきました。

2019年7月、KDDIとソフトバンクは地方での5Gネットワークの整備を協業すると発表ており、実際に2019年秋から北海道旭川市、千葉県成田市、広島県福山市で実証実験を進めています。

5G JAPANの設立は急に始まった話ではなく、これまでの共同検証の蓄積を踏まえ、5G商用サービスが始まったことから、満を持してスタートしたと言った方がよいでしょう。

地方でのエリア展開が課題とされる5Gですが、5G JAPAN設立によってKDDIとソフトバンクでも地方での早期の5Gエリア展開が期待されます。

KDDIとソフトバンクが5G JAPANを設立した理由

KDDIとソフトバンクが5G JAPANを設立した理由

5G JAPANが設立された背景には、5Gの電波が抱える問題が大きく影響しています。

5G通信網構築には時間とお金がかかるので、簡単に言えば1社で通信網を構築するよりも複数社で組んでインフラ整備をした方が効率的なのです。

また、総務省が5G通信事業者に対して厳しい基準を設けていることも、今回の5G JAPAN設立の背景に大きく関係しています。

5G JAPAN設立の背景について詳しく見ていきましょう。

全国整備には膨大な数の基地局の設置が必要

5Gの課題はなんと言っても、狭すぎる通信エリアです。

高い周波数の5Gの電波は1つの基地局から通信できるのは200mと言われています。

そのため、日本全国に5Gの電波を行き渡らせるには膨大な数の基地局の設置が必要になります。

5Gが「サービス開始をしてもすぐには利用できない」と言われる理由は、この基地局整備の問題が大きいからです。

実際に5G商用サービス開始段階の通信エリアは各キャリア以下の通りです。

  • NTTドコモ:公共施設、スタジアム、駅、ドコモショップなど
  • KDDI:全国各都市の主要エリアのみ
  • ソフトバンク:東京駅周辺などほんのわずか

各キャリア、商用サービス開始時に利用することができるエリアは超限定的です。

長期にわたる工事と多額の投資

200mしか通信しない5Gの電波を日本全国に行き渡らせるには、多額の投資を行い、長期間の工事をしなければなりません。

大手キャリア4社が総務省に提出している基地局への投資額とカバー率の計画は以下の通りです。

実際、NTTドコモは2024年までに約8,000億円もの投資を行い97%をカバーする計画ですが、ソフトバンクは約2,000億円をかけても64%しかカバーできない計画になっています。

基地局整備についてKDDIとソフトバンクが争うよりも、基地局整備は共同で行い、それをシェアしようというのが5G JAPANの目的です。

インフラシェアリングで総務省基準を満たす

基地局を共同で使用するインフラシェアリングを行うことで、総務省の基準をクリアし、5Gサービスの全国展開を図ることができます。

総務省の基準は2年以内の全国展開・5年以内に人口カバー率50%

総務省が5G電波を割り当てたキャリアに課している基準の中には以下のようなものがあります。

  • 2年以内に全都道府県でサービス開始
  • 周波数割当から、5年以内に50%以上のメッシュ(全国を10km四方のメッシュで区切ったもの)で5G高度特定基地局を整備

1つ目の条件である、「2年以内に全都道府県でサービス開始」はそれほど難しい条件ではないでしょう。

全都道府県のどこかでサービスを開始すればいいのであって、NTTドコモは2020年6月に(おそらくはドコモショップで)全都道府県でサービスを開始する予定です。

しかし、2つ目の条件である、「5年以内に50%以上のメッシュで5G高度特定基地局を整備」という計画はかなりハードルが高くなります。

日本全国の50%以上で10km四方に1つ以上5G高度特定基地局を設置し、複数の特定基地局(子局)を展開可能にするのは膨大なコストと時間がかかります。

この課題をKDDIとソフトバンクは協力して基地局を設置しシェアすることで克服し、総務省の厳しい基準をクリアしようとしているのです。

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かなり遅れているソフトバンク

KDDIはすでに多くの都道府県で5Gサービスを開始しています。

しかし、ソフトバンクの5G通信網は大きく遅れていると言わざる得ません。

サービスを開始した2020年3月の段階では、東京23区の中でも通信できるのは東京駅周辺のみ、2020年の夏以降の計画で、新宿、渋谷、池袋、お台場などをカバー、東京全体をカバーする計画は立ててられておらず、かなりの見切り発車でスタートしたという印象です。

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5G JAPANはKDDI・ソフトバンク双方にメリットあり

5G JAPANはKDDI・ソフトバンク双方にメリットあり

5G JAPANの設立は、KDDIとソフトバンクそれぞれにメリットがあります。

KDDIにとっては業界トップシェアを狙うことができますし、ソフトバンクにとっては開始当初から大きく出遅れた分を取り戻すことができる可能性があります。

5G JAPANがKDDIとソフトバンクにどのようなメリットをもたらし、将来的に通信網の構築はどのように進んでいくのか詳しく見ていきましょう。

KDDIは5Gでドコモと勝負ができる

NTTドコモは5G基地局への投資額は約8,000億円というダントツ金額です。

5G通信エリアの計画についても以下のようなかなり具体的なものを発表しています。

  • 2020年3月末は全国150か所
  • 2020年6月末に全都道府県に導入
  • 2021年3月末に全政令指定都市に導入
  • 2021年3月末に500都市以上に導入

2021年3月末には地方都市でも県庁所在地や中核都市の中心部くらいではドコモの5Gが利用できるようになるでしょう。

業界2位のKDDIは5G JAPANで地方の基地局整備を行うことによって、地方におけるシェアでドコモと勝負ができるようになります。

ソフトバンクは大きな遅れを取り戻せるか

一方、ソフトバンクは計画段階で64%ですので、計画通りに言っても基準をなんとかクリアできるというレベルです。

スタートからすでに遅れているソフトバンクですが、このまま行くと「ドコモは繋がるのにソフトバンクは5Gが繋がらない」という事態が日本全国で生じてしまうでしょう。

すると、ソフトバンクの契約数は大きく減少することが予想されます。

また、単体での計画が頓挫したら、総務省の基準すら満たせないかもしれません。

ソフトバンクにとってはKDDIの協力が欠かせません。

KDDIと協力することで何とか地方での展開に目処がつけば、スタートの遅れを取り戻し、地方においてもKDDIとともに通信エリアを構築していくことができるでしょう。

ドコモには遅れるKDDI、スタートからかなり遅れているソフトバンク。

この業界2位と3位が協力して、地方においては「ドコモしか繋がらない」という状況を打破することができれば5G JAPANはKDDIとソフトバンクにとってWIN-WINになるのです。

まとめ

5Gは通信エリアの狭さをキャリアがどう克服して全国展開していくのか、ということが大きな鍵になります。

NTTドコモは莫大な投資を背景に単体で全国展開していく予定ですが、ユーザーにとってはそれはメリットになりません。

皆が地方でも繋がるドコモと契約すれば競争原理が働かずに5Gの料金は高いままだからです。

5G JAPANによってKDDI(au)とソフトバンクでも地方における5G通信が可能になれば競争原理が働き、5Gの料金は下がっていくものと予想されます。

日本全国どんな人でも、5Gを安価に利用することができるためにも5G JAPANとドコモが切磋琢磨して早期に5G通信網を構築することを期待しましょう。