【2026年8月 追記】
この記事は2020年公開当時の情勢を伝えたものです。2026年現在も米中対立とファーウェイの5G機器排除は続いています。ファーウェイは米制裁下で独自チップ「Kirin」を復活させ、自社OS「HarmonyOS」により中国国内では復権しましたが、日本のスマホ市場からは事実上撤退した状態です。日本の5G網の「脱ファーウェイ」はそのまま定着し、5G人口カバー率は98.6%(2025年度末)に達しています。
アメリカ、イギリス、フランスと世界中に飛び火したファーウェイ排除。中国が世界各地で領土問題を引き起こし、コロナウイルスへの対応で不満を持たれ、香港に強権的な対応をとったことから、民主主義国家は次々とファーウェイを排除してきました。日本も尖閣諸島などで中国と対立し、対中関係は決して良好とは言えませんが、ファーウェイに対してどのような対応をとっているのでしょうか。本記事では日本のファーウェイ排除の対応を解説します。
目次
日本政府はアメリカに呼応して通信会社へ排除を依頼
アメリカからの依頼を受け、日本は以前からファーウェイの排除を行っています。民間通信会社に対して5G通信網でファーウェイ製部品を使わないよう呼びかけ、政府調達でもファーウェイからの調達は行っていません。
NTTドコモとKDDIはファーウェイをすでに排除
NTTドコモとKDDIはすでに5G通信網にファーウェイ製の製品を使用していません。アメリカがファーウェイの危険性を主張し始めた時から日本政府の方針に従っており、5G通信網の構築当初からドコモ・auの通信網にはファーウェイ製が使われていません。「ファーウェイが怖い」という人はドコモかauが安全かもしれません。
【2026年8月追記】2020年に本格参入した第4のキャリア・楽天モバイルも、5G基地局にファーウェイ製品を採用していません。同社は基地局のソフトウェアとハードウェアを分離する「Open RAN」を基盤に据え、富士通製の無線装置や自社グループの1FINITY製O-RAN準拠機器などを組み合わせてネットワークを構築しており、複数メーカーの機器を混在させやすい構成になっています。結果として、大手4キャリアはいずれも5G基地局でファーウェイ製の主要設備を採用していません。
ソフトバンクは一部にファーウェイ製部品が
ソフトバンクは日本政府による呼びかけが始まる前はファーウェイと近い関係にあり、通信網には当時すでにファーウェイ製の部品が使われていると言われていました。「政府の方針に従う」として新たにファーウェイ製部品は使わない方針でしたが、既存のファーウェイ製部品と他メーカー部品には互換性がなく、当時は「どこまで脱ファーウェイを図れるか」が焦点でした。
【2026年8月追記】その後ソフトバンクは、既存基地局に残っていたファーウェイ製部品についても、エリクソンやノキアなど北欧メーカー製への置き換えを段階的に進める方針を明らかにしており、5G基地局については当初からエリクソン・ノキア中心の体制で構築されました。全国の基地局における置き換えが何年何月時点で完了したかを示す公式な発表は確認できていませんが、日本の主要通信会社3社はいずれも脱ファーウェイの方向で一致しています。
スマホは日本でも発売中(2020年当時)
2020年当時、ファーウェイのスマホは日本でも販売されていましたが、アメリカの制裁によりファーウェイ製スマホはGoogleのアプリを使用できませんでした。Androidスマホに欠かせないGoogle Playは使えず、代わりのAppGalleryも対応アプリはGoogle Playより限られ、Googleマップも使えないなどGoogle製アプリを利用できないデメリットはかなりの大きさでした。日本では「購入はできるが実際にはあまり使えない」という印象を持つ人が多いようでした。
【2026年8月追記】大手キャリアでの新規取り扱いは2019年ごろから停止しており、2022年には主要な販売チャネルであった楽天市場の公式ショップでもスマートフォンの取り扱いがなくなるなど、ファーウェイは日本のスマホ市場から事実上撤退した状態が続いています。ファーウェイ自身は自社OS「HarmonyOS」と独自チップの開発により、主に中国国内市場でシェアを回復させています。
政府調達ではファーウェイを排除
政府は政府調達でファーウェイ製の商品・部品を完全排除しています。当時は、独立行政法人と指定法人など公共的性格の強い96法人についても、ファーウェイを含む中国企業製の通信機器を事実上使用できなくする方向で調整が進められていました。
【2026年8月追記】こうした個別の「申し合わせ」による排除は、2022年に成立した経済安全保障推進法によって法的な枠組みへと発展しました。同法の「基幹インフラ制度」では、電気通信・放送・郵便など15分野の指定事業者が重要設備を導入・維持委託する際に事前審査を受けることが義務付けられており、2024年5月17日から本格運用が始まっています。特定の国名や企業名を名指しする制度ではありませんが、審査の観点には委託先への外部支配の有無やサイバー攻撃への対策状況などが含まれ、事実上ファーウェイやZTEのような企業の機器導入を抑止する効果を持つとされています。
【2026年8月追記】自治体のIT機器調達にも新たな規制へ 国の省庁・自衛隊や大手通信会社の基幹インフラでは排除が進む一方、地方自治体が調達する通信機器やパソコン、サーバーなどについては、これまで法的な排除義務が及んでおらず、中国製の機器が実際には使われ続けているとの指摘がありました。こうした状況を踏まえ、2026年4月17日、自治体が調達するIT機器について、経済産業省の「JC-STAR」や国家サイバー統括室の「ISMAP」といった政府の認定制度を通過した製品に限定する方針だと報じられました。改正の器となるのは地方自治法施行規則(総務省令)で、2026年6月をめどに制定し、2027年夏からの運用開始を目指すとされています。JC-STARやISMAPは中国製品を認定していないため、「自治体レベルでも中国製機器が事実上排除される」という受け止めが広がりました。
【重要な補足】総務省自身は「中国製品排除ではない」と説明しています
この件は「自治体から中国製品を排除する規制」として広く報じられましたが、総務省の説明はやや異なります。日経クロステック(2026年5月7日)の取材に対し、総務省は「製造国や認証制度で機器を制約することはない」と回答しています。省令が義務づけるのは、調達の段階でネットワーク機器の安全性を確認するサプライチェーンリスク対策であり、悪意ある機能が組み込まれるなど情報の窃取・破壊のリスクがある機器を調達しないよう、調査と管理を求めるものだという位置づけです。
つまり制度の建て付けとしては「特定の国の製品を名指しで禁じる」ものではなく、「安全性を確認する手続きを法的義務にする」ものです。結果としてどの製品が選ばれにくくなるかは運用次第であり、報道の見出しと制度の中身にはずれがある点に注意が必要です。既存の調達済み機器についても、更新のタイミングで順次入れ替える方針とされており、即座に一斉排除されるわけではありません。
5G投資を促す税制優遇
日本は、民間企業が5Gに投資した場合に大幅な減税を行う制度を設けましたが、ファーウェイ製部品を使う企業は減税措置を受けられません。税制を活用して民間企業のファーウェイ排除を促す狙いです。適用には企業が5G整備計画を提出して審査を受け、「安全保障上の懸念がある国の企業」=実質的にファーウェイの部品が使われていないことを確認する必要がありました。
| 優遇内容 | 100億円投資した場合の効果 |
|---|---|
| 5G投資額の15%の税額控除 | 15億円が支払うべき税金から控除される |
| 30%の特別償却 | 30億円を減価償却費として経費算入 |
企業とすればファーウェイ製品を使えば大型の税制優遇を受けられなくなるため、ファーウェイ排除のインセンティブが働きます。日本政府は税制面からもファーウェイ排除を働きかけていたと言えるでしょう。
【2026年8月追記】この5G投資促進税制(5G導入促進税制)は、その後2022年度税制改正で期限が延長されたものの、適用期限であった2025年3月31日(令和7年3月31日)をもって新規の税額控除・特別償却の適用は終了しています。制度としては役目を終えた形ですが、これは「ファーウェイ排除の方針が撤回された」という意味ではなく、5G基地局整備そのものが全国的に一巡し、投資インセンティブとしての政策目的が変化したことによるものです。ファーウェイ排除の実務は、後述する経済安全保障推進法の基幹インフラ制度など、別の枠組みに引き継がれています。
日本は技術でファーウェイを排除
さらに、NTTをはじめとした日本の民間企業には、技術力と価格の市場原理でファーウェイを排除しようという動きも見られました。より安価な通信網を構築しコストがファーウェイ並みまたはそれ以下になれば、市場原理によってファーウェイが排除されるという狙いです。2020年当時、NTTドコモが中心となって進めていたのが5G基地局の「オープン化」で、メーカーごとに異なる基地局の接続仕様を共通化し、複数メーカーの機器を組み合わせられるようにするものです。オープン化で様々なメーカーから機器調達が可能になれば競争が進みコストが下がりやすくなり、競合より2〜3割安いとされるファーウェイにコスト面で引けを取らなくなります。
ファーウェイが5G基地局で世界的なシェアを獲得した最大の理由は「安いから」で、価格競争に晒される世界中の通信会社が相場より2〜3割安いファーウェイをリスク承知で使ってきた側面があります。オープン化によってファーウェイ並みの価格に抑えられれば、通信会社は安心・安全な日本企業を選ぶ可能性が高くなり、結果的にファーウェイが排除されることになります。5Gで完全に出遅れていた日本企業が、排除の立役者になる可能性も指摘されていました。
日本でも中国版アプリ制限か(2020年当時の議論)
このように、どちらかと言えばソフトかつ間接的に日本はファーウェイ排除を行ってきましたが、2020年7月、自民党はインド政府と同様に中国製アプリの使用を禁止する提言を政府に出す方針であることが報道され、日本でも人気のTikTokが利用禁止になるのではという観測が広がりました。
自民党議連が政府に提言、TikTokにも懸念
2020年7月、自民党の「ルール形成戦略議員連盟」(会長・甘利明税調会長)は中国発アプリの使用制限を政府に提言する方針だと報じられました。アメリカは「中国発アプリの使用は個人情報が中国共産党の手に渡りかねない」として自国からの排除を進め、インドはすでに排除を決定しており、日本も安全保障上の観点から中国発アプリの使用を検討する動きが出ていました。排除対象として名前が挙がったアプリには、日本の若者にも人気のTikTokも含まれ、政府対応次第で日本からTikTokがなくなる日が来るかもしれないという論調も見られました。国家安全保障局の経済班などが中国発アプリの情報収集を開始し、菅官房長官も2020年7月27日の記者会見で「サイバーセキュリティーに関する動向は常に注視している。個人が特定される情報の投稿や登録は、十分注意することが重要だ」と発言するなど、利用制限が現実味を帯びているという見方がありました。
【2026年8月追記】結論から言うと、日本国内でTikTokが一般消費者向けに禁止・遮断されたことはありません。2026年現在も、日本国内では個人・企業がTikTokを通常どおり利用できます。
その一方で、政府・自治体レベルでは限定的な制限が実際に導入されました。2023年2月、当時の松野博一官房長官は、機密情報を扱う政府端末においてはセキュリティ基準上TikTokなどの外部SNSサービスを利用できないことを明らかにしました。同時期には東京都や福岡市など複数の地方自治体も、職員の公務用端末からTikTokを削除・利用禁止とする措置を導入しています。これは欧州委員会が職員向け公用端末でTikTokの使用を禁止した動きに追随したものとされています。
つまり実態としては、「業務用・公用端末での限定的な利用制限」にとどまり、アメリカのように法律でアプリストアからの配信停止や事業売却を迫るような措置には至っていません(アメリカでは2024年にTikTokの米国事業売却等を求める連邦法が成立し、2025年9月にはトランプ大統領がオラクルなどの企業連合による米国事業買収を承認する大統領令に署名しました。2026年1月22日には米国事業の移管が完了したと報じられ、オラクルやMGX、シルバーレイクなどが出資しByteDanceの持ち分を2割未満に抑えた新しい合弁会社が米国事業を運営する体制になったとされています。ただしこれは米国内の措置であり、日本の法規制とは別の話です)。日本国内でTikTok自体を禁止する法律は、2026年時点で成立していません。
2020年の見立てと2026年時点の実際
ここまでの内容を踏まえ、2020年当時の見立てと、2026年時点で確認できる実際の状況を整理します。
| 項目 | 2020年当時の見立て | 2026年時点の実際 |
|---|---|---|
| 5G通信網からのファーウェイ排除 | ドコモ・KDDIは排除済み、ソフトバンクは一部残存 | 3社とも脱ファーウェイの方向で一致。全国5G人口カバー率98.6%(2025年度末・総務省) |
| ファーウェイ製スマホ | 日本国内で販売中(Google系アプリ制限あり) | 主要販売チャネルでの取り扱いが終了し、事実上市場から撤退 |
| 政府調達・基幹インフラ規制 | 個別の「申し合わせ」による排除、対象拡大を調整中 | 2022年成立の経済安全保障推進法で法制化。基幹インフラの事前審査制度が2024年5月運用開始 |
| TikTok | 利用禁止の可能性が報道され懸念が広がる | 一般向けの禁止には至らず。政府・一部自治体の公務端末のみ利用制限 |
| 自治体のIT機器調達 | (当時は議論の対象外) | 2026年、地方自治法施行規則の改正で調達時のサプライチェーンリスク対策を義務化する方針(2027年夏運用開始予定)。ただし総務省は「製造国や認証制度で機器を制約することはない」と説明しており、国名を名指しした排除ではない |
【2026年8月時点】排除された側のファーウェイは今どうなっているのか
ここまでは「日本がどう排除したか」を追ってきましたが、排除された側の現状にも触れておきます。日本経済新聞の2026年5月8日の報道によれば、ファーウェイの海外売上高は米国の制裁で大きく落ち込んだ後、ピーク時の7割程度まで回復しているとされています。同社はタイなどで新製品発表会を開くなど、新興国での需要取り込みを軸に攻勢をかけている状況です。
つまり2026年の実態は、「ファーウェイが世界市場から消えた」ではなく、日米欧など安全保障上の同盟関係にある市場からはほぼ締め出された一方、新興国市場では存在感を取り戻しつつあるという二極化です。日本の消費者から見ればファーウェイ製のスマホも基地局も日常で目にする機会はほぼなくなりましたが、それは世界全体の姿ではない、という点は押さえておきたいところです。
| 市場 | 2026年時点のファーウェイの位置づけ |
|---|---|
| 日本 | 通信網・政府調達ともに排除が定着。スマホも主要チャネルから撤退 |
| 米国・英国・フランスなど | 法規制・期限付きの排除方針が確立(英国は2027年末の完全排除期限) |
| 新興国 | 新製品攻勢で需要を取り込み、海外売上高はピーク比7割程度まで回復(報道ベース) |
※海外売上高の水準は報道による推計を含みます。ファーウェイは非上場企業であり、地域別の内訳が第三者に完全に検証できる形で公表されているわけではない点にご留意ください。
まとめ
2020年当時、日本はファーウェイ排除をかなり進んだ形で行っていました。政府調達はもちろん、民間通信会社も実質的にファーウェイ排除を行い、通信会社以外の民間企業にも「ファーウェイを排除した企業に対する税制優遇」を用意するなど、当時からかなり強くファーウェイ排除が行われていたことになります。
2026年現在を振り返ると、この流れは概ねそのまま定着したと言えます。5G通信網からのファーウェイ排除は大手4キャリアいずれも既定路線として続き、投資を後押しした5G投資促進税制自体は2025年3月末で役目を終えましたが、スマホ市場からも事実上撤退、そして2022年の経済安全保障推進法によって、それまで個別の「申し合わせ」レベルだった排除方針は法制度として整理されました。2026年に入ってからは、これまで規制の手が届きにくかった自治体のIT機器調達についても、調達時のセキュリティ確認を法的義務にするという新たな動きが始まっています(ただし総務省自身は、これを特定国の製品を名指しで排除する制度ではないと説明しています)。一方でTikTokについては、当初懸念されたような一般消費者向けの利用禁止には至らず、政府・自治体の公務端末に限定した利用制限にとどまっています。中国と民主主義国家の間の技術・安全保障をめぐる緊張関係は依然として続いていますが、具体的にどこまで規制が広がるかは今後も個別の法制度や国際情勢次第であり、断定的な見通しは避けたいところです。
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記事のとおり、日本の5G網は当初から「脱ファーウェイ」で構築されています。なかでも楽天モバイルはOpen RANを基盤に富士通製などを組み合わせた構成で、料金は3GB以下1,078円・無制限3,278円。5Gは追加料金なしで使えます。
※本記事は2020年に公開した内容をもとに、経済安全保障推進法の運用や自治体のIT機器調達規制、ファーウェイの海外事業の現状など2026年8月時点の最新情報を追記して更新したものです。