「2020年春から5Gがスタート」と最近耳にする機会が多くなりました。
しかし、実は「5Gとは何?」「ただ早くなるだけでしょ?」と思っている程度ではないでしょうか?
確かに、5Gになることで通信速度はこれまでよりも圧倒的に早くなります。
しかし、5Gになることで動画が早く見られたり、ゲームやアプリのダウンロードが早くなるだけではありません。
5Gは私たちの生活そのものを根本的に変革してしまう可能性も持っています。
娯楽も、医療も、仕事もあらゆるものです。
そこで、今回は「いまさら聞けない5Gの基礎」をテーマに解説していきます。
目次
5Gとは?
5Gとは「移動通信システム」の第5世代のことです。
移動通信を無線通信と置き換えてもよいかもしれません。
私たちがスマホで電話やインターネットを使用する時には、電話線やインターネットケーブルなどは繋がっていませんよね?
これは移動通信システムを利用しているためです。
この移動通信の新しいシステムが5Gとなるのです。 では、5Gはこれまでの通信システムとどう異なるのか、詳しく見ていきましょう。
第5世代の次世代移動通信システム
「G」とは「Generation(世代)」のGであり、5Gとは「第5世代」という意味で、これまで変遷を遂げてきた通信手段の5世代目ということです。
では、これまで通信手段はどのように変遷してきたのか、詳しく見ていきましょう。
第1世代
移動通信システムは1980年代に登場しました。
最初の移動通信システムはアナログ回線のみ、自動車に備え付けられていた電話やカバンのようなショルダーホンが有名で、当時は通話しかできませんでした。
40代〜60代くらいの方は「懐かしい」とお思いの人も多いのではないでしょうか?
第2世代
1990年代に登場した第2世代で2.4kbps~28.8kbpsのデータ通信が可能になり、メールの受送信などができるようになります。
第3世代
2000年代になると第3世代が登場し384kbps~14Mbpsの通信ができるようになりました。
通信速度が高速化したことにより、メールはもちろんネットサーフィンなどもそれなりにストレスなくできるようになります。
第4世代
そして、2010年に登場したのが第4世代です。第4世代の通信速度は50Mbps~1Gbps。ゲームや動画視聴、チャットなど現在わたし達が使用しているあらゆる通信がストレスなく可能になりました。
この第4世代に代わる新たな通信システムが「5G」なのです。
ここまでの説明で分かるように、通信システムは10年スパンで進化を遂げており、2020年代は5Gによって様々な分野で大きな変革が起きることが予想されます。
4Gの10倍〜20倍の通信速度
5Gの通信速度は4Gのおよそ10倍〜20倍の10Gbps〜20Gbpsと言われています。
と言われても、あまり実感のない人も多いかもしれません。
そこで、1Gbpsでできることがその10倍10Gbpsではどのくらいの速さでできるのか比較してみました。
ハイレゾ音楽のダウンロード | 50Gのゲームのダウンロード | 4kオンライン動画を同時に見られる人数 | |
---|---|---|---|
1G | 約30秒 | 約7分半 | 40人 |
10G | 約3秒 | 約30秒 | 400人 |
このように、4Gでも十分早かったのですが、5Gになると速度は飛躍的に早くなります。
ゲームや動画や音楽のダウンロードのために何分も待たされるということはなくなり、1つの回線に多数の人がアクセスすることができるようになります。
速度的にはあらゆることが10倍かそれ以上の速さになります。
むしろ、私たちが普段生活する上では4Gでも十分支障がないため、5Gになると移動通信を活用できる範囲が飛躍的に広がるのです。
それが「5Gが世の中を変える」と言われる所以です。
この点については詳しく後述していきます。
年代 | 通信速度 | |
---|---|---|
1G | 1980年代 | アナログ回線のみ |
2G | 1990年代 | 2.4kbps~28.8kbps |
3G | 2000年代 | 384kbps~14Mbps |
4G | 2010年代 | 50Mbps~1Gbps |
5G | 2020年 | 10Gbps〜20Gbps |
5Gの特徴
5Gになると、通信速度は4Gの10倍〜20倍になります。
しかし、5Gの特徴は通信速度だけではありません。
通信速度と併せて5Gには以下のような特徴もあります。
- 高速・大容量(4Gの10倍〜20倍)
- 低遅延(4Gの10分の1)
- 多接続(4Gの10倍)
それぞれの特徴について詳しく解説していきます。
高速・大容量
高速・大容量化することによって、これまでよりも格段に高精細な画像や動画の受送信が可能になります。
そのため、人物の顔認識、車のナンバー認識、体の患部の認識、道路状況などの認識がさらに詳細にできるようになります。
また、4kや8kなどの大容量動画の配信も可能になります。
低遅延
5Gになるとリアルタイムに近い通信が可能になります。
これまでは、データ通信には必ず時差が生じていましたが、5Gには時差はほとんどありません。
これによって、周辺状況を瞬時に判断して自動運転で制御することができたり、機会やマシンなどを遠隔操作することも可能になります。
また、周辺状況とネットワークを組み合わせた仮想空間を作ることも可能になると言われています。
多接続
5Gになると多接続性もも4Gの10倍になると言われています。
つまり、これまでの10倍多くの端末を同時に接続することができるということです。
監視カメラやセンサーなどは、これまで多接続性の問題から設置台数が限られていました。
今後は、必要な箇所に必要なだけセンサーやカメラを設置することができるようになります。
5Gがもたらす可能性
5Gになると、単にダウンロードやアップロードが早くなるわけではありません。
低遅延になることで、リアルタイムの遠隔操作が可能になりますし、多接続になることによって多数の人が同時に接続可能なスマートシティを実現することもできます。
5Gは私たちのリアルな生活を大きく変える可能性を持っているのです。
5Gでどのようなことができる可能性があるのか、もう少し具体的に見ていきましょう。
高速・大容量でできること
高速・大容量になると、高精細な画像や動画を瞬時に通信することができるようになります。
周辺状況を瞬時に通信できれば自動運転技術には格段に寄与します。
体の部位などにカメラに向ければ、カメラの向こうにいる医師の診察を受けることができるようにもなるので遠隔医療の発展にも寄与します。
また、これまでは大画面ではどうしても画質が劣化していたオンライン動画も4kや8k画質でクリアに楽しむことができるでしょう。
さらに、スポーツ会場の複数のカメラからの映像を同時に配信し、VR観戦も可能になるのではと言われています。
低遅延でできること
低遅延でできることの代名詞が遠隔操作です。
現場の映像が瞬時かつ高精細に通信されるので、作業員は遠隔地からカメラの映像で状況を判断し、操作を現場の機械へ伝えることができます。
操作の指令も瞬時に現場へ伝わるので、事故のリスクも軽減できます。
もちろん、この技術を使用した自動運転(遠隔運転)も可能になり、遠隔操作のタクシーやバスなどの登場も期待されています。
さらに低遅延は負の側面での発展も懸念されています。
戦場でも遠隔操作の技術が使われ、兵士や戦車は全て遠隔操作という時代がやってくるかもしれません。
多接続でできること
多接続でできることとしては、やはり多数のセンサーやカメラを設置した不審者や不審物の発見です。
多接続に加え、高精細な動画や画像を送ることができるので、タイムリーかつ高精度の不審者や不審物の発見に寄与します。
このような状態解析やスマートシティ分野の発展に5Gの多接続性が期待されています。
また、一度に多くの端末が接続できるため、VRを活用して、数百人規模のオンライン上のミーティングやパーティなども実現することができるかもしれません。
スカイプのビデオ通話は10Gbpsで6,000人以上同時接続することができると言われていますので、20Gbpsになれば10,000人以上が同時接続が可能になります。
仮想空間でパーティーが行われるというのも夢のような話ではないと言えるでしょう。
5Gは日本ではいつから始まる?
私たちが最も気になるのが「5Gはいつから始まるの?」ということではないでしょうか?
ニュースや広告などでお馴染みのように、5Gは2020年春頃から実際に日本でも始まり、NTTドコモはすでに5G対応の端末も発表しています。
しかし、開始時期はキャリアによって異なり、接続エリアもキャリアによって大きく異なるので注意する必要があります。
大手キャリアのスタート時期
総務省は2019年4月に周波電波数の割り当てを発表しており、それによると各社の5Gスタート時期は以下のようになっています。
- NTTドコモ:2020年春
- au:2020年3月
- ソフトバンク:2020年3月頃
- 楽天モバイル:2020年6月頃
各社、詳細についてはまだ発表していませんし、受付が始まっているわけでもありません。
そもそも5Gは基地局を整備しない限りは使用することができないため、スタート直後は基地局が整備されている場所に限って受付を初め、使えるエリアは少しずつ広がると考えた方がよいでしょう。
接続エリアには課題も
5Gが日本国内全てのエリアで使えるようになるにはまだ課題があります。
2024年までの各キャリアの計画値で、全国どの程度のエリアをカバーできるのかを比較すると以下のようになります。
- NTTドコモ:97.0%
- au:93.2%
- ソフトバンク:64.0%
- 楽天モバイル:56.1%
現状の計画値では、2024年までかかってもソフトバンクや楽天モバイルは56〜64%までsかカバーできていないことになります。
これは基地局の整備に投資する金額の差が如実に現れているためと言えます。
- NTTドコモ:約7,950億円
- au:約4,667億円
- ソフトバンク:約2,000億円
- 楽天モバイル:約2,000億円
エリアのカバーに関しては今後投資計画が見直される可能性はありますが、いずれにせよ、日本全国どこでも5Gが使えるようになるまではもう少し時間がかかると言えそうです。
まとめ
5Gの概要や可能性についてお話してきました。
- 5Gは移動通信サービスの第5世代
- 5Gになると通信速度は10倍〜20倍、遅延性は10分の1、多接続は10倍になる
- スマホなどの通信手段だけでなく、医療、工業、産業分野での活用が期待される
様々な可能性を秘める5Gですが、日本全国に一般化するのはあと数年程度かかりそうです。
まずは2020年春からどの程度の普及を見せるか、様子を見てから5G端末や5G契約を行なった方がよいかもしれません。