イギリスを中心として世界中で流布されている噂が「新型コロナウイルスは5Gが拡散している」というものです。
イギリスではこの噂を信じた一部の団体が5G基地局を放火するなどの騒ぎになっていますが、2019年末から2020年5月末に、アメリカでも同様の事件が起こっています。
イギリスからアメリカへ、暴動の動きが移動し、5Gとコロナを巡る人々の混乱は世界的なものへと広がりつつあります。
アメリカで起きた放火事件の内容とアメリカ政府の対応について詳しく解説していきます。
目次
アメリカでもコロナと5Gの陰謀論が流布
以前から5Gが健康に及ぼす危険性は指摘されてきました。
一部の人たちに「5Gが免疫力を低下させる」「発がん性がある」などと信じられ、5Gに対する健康被害は以前から主張されてきたものです。
この不安が新型コロナウイルスのパンデミックによって、新型コロナウイルスと5Gの関係に結びつき、世界中で「新型コロナウイルスは5Gが広げた」との陰謀論が流布されています。
イギリスでは、基地局の放火につながりましたが、アメリカでも同様の事件がおきました。
アメリカで起きた5G基地局に対する攻撃はどのようなものだったのでしょうか?
米国の国土安全保障省の警告
イギリスにおいて「5Gの電波が新型コロナウイルスの感染拡大を加速させている」という陰謀論が流布され、これによって5Gの基地局が放火されるなどの事件が起きています。
このような動きがアメリカ国内にもあることを察知したアメリカの国土安全保障省は以下のようにアメリカ国内に対して警告を発しています。
「次世代通信サービスである5Gと新型コロナウイルスの関係を疑う陰謀論者が、基地局のアンテナと通信事業に従事する人々を攻撃する恐れがある」
すでに基地局への放火事件が発生
アメリカはイギリスやヨーロッパで起きたことと同様の暴動がアメリカ国内でも起きることを予測し、上記のような警告を発しました。
しかし、警告も虚しく実際にアメリカでは基地局の放火事件が勃発しています。
アメリカの国土安全保障省によると、2019年12月以来5G基地局への攻撃は「テネシー州メンフィスの基地局アンテナを標的にした正体不明者による放火事件が少なくとも5件発生し10万ドルを超える被害をもたらした」
としています。
さらに、「2020年2月から4月にかけてテネシー州西部で14の基地局アンテナが、ブレーカーを損傷させられたことで意図的に停止させられた」とも発表しています。
最初の攻撃はコロナウイルスとは無関係|コロナを利用しているだけ
イギリスでの5G基地局への放火が最初に報道されたのが2020年4月だったことを考えれば、アメリカでの最初の放火が2019年12月だったとするならばアメリカでの放火事件の方がイギリスよりも早く実行された可能性が高くなります。
もちろん2019年12月は新型コロナウイルス感染拡大前の話ですので、2019年12月時点ではコロナとは無関係に放火されているはずです。
この頃から「5Gが人体に深刻な被害をもたらす」との噂は流れていたため、この噂を信じて5Gの施設を攻撃する行為は実はコロナとは無関係に以前から行われていたことが分かります。
ここにコロナウイルスの都市伝説が加わり、5G施設への攻撃が世界的に広がったというのが正しい順番でしょう。
つまり「5Gがコロナを広げた」と信じるから暴動をしているのではなく、最初から「5Gは健康に悪影響を及ぼす」と主張する人間が、コロナを利用して主張を拡散していると言った方がよいでしょう。
5Gとコロナのデマに対するアメリカ政府の対応
5G基地局が攻撃を受ける事態となり、アメリカ政府は速やかに対応をしています。
通信事業者へ自警を促したり、FBIや国家テロ対策センターと連携するなどしっかりと対応しています。
また、WHOも5Gとコロナの問題について正しい情報を公表しています。
アメリカ政府の対応について詳しく解説していきます。
通信事業者へ自警に関して助言
アメリカ政府は通信事業者に対して、以下のように「自警するように」と助言を行なっています。
アメリカの大手メディアは、この問題に対して政府が事業者に対して「適切なセンサーと防壁の設置、サイバー侵入検知システム、監視カメラ、基地局アンテナ付近での監視ドローンの運用など、攻撃リスクを低減させる方法」に関して助言を行うだろうとしています。
政府は今後も暴動は継続すると見て、事業者に対して自警を促しています。
FBIと国家テロ対策センターと連携
さらに、国レベルでは、FBIと国家テロ対策センターが連携して連邦職員と法執行機関に向けて合同でこの事件に関する情報を送達したとされています。
アメリカでは各所が連携して情報を共有し、5G施設への攻撃に備えています。
YouTubeはデマ動画を削除
「5Gが新型コロナウイルスを広げている」という噂の根拠は1つのYouTube動画だと言われています。
YouTubeは新型コロナウイルス感染症を5Gが拡散しているという医学的に根拠のない話を広めようとする動画が最新のポリシーに違反しているため削除対象になると公表しています。
これによって、これ以上動画から5Gがコロナウイルスを拡散しているというデマは広がることはありません。
しかし、すでに噂は世界中に広がっているため、動画が削除されたとしてもデマが簡単に消えることはないでしょう。
WHOはコロナに関するデマのリストを公表
WHOは新型コロナウイルスに関する様々なデマの情報を公表しています。
その中には
- 新型コロナウイルスは蚊で感染する
- 一生ウイルス残る
などのデマが公表されていますが、この中に「新型コロナウイルスは5Gが拡散している」という情報も公表されています。
WHOも5Gが新型コロナウイルスを拡散させているというデマの火消しを行なっていることが分かります。
5Gがコロナを広げたと主張する根拠は1つだけ
そもそも、「5Gがコロナウイルスを広げた」と主張する根拠は1つしかなく、極めて説得力の乏しいものとなっています。
しかし、説得力に乏しい噂がネットで世界中に広がり、暴動にいたってしまっているのも事実です。
5Gがコロナウイルスを広げていると主張される根拠について詳しく解説していきます。
5G展開図とコロナ感染図の一致のみを根拠としている
「5Gが新型コロナウイルスを拡散した」という主張の根拠になっているのは、世界の5G展開図と、コロナ感染図が一致しているという情報のみです。
このように5Gが展開している地域は新型コロナウイルスが拡散しているというのが根拠です。
しかし、感染拡大当初に爆発的な感染者を出したイランでは5Gサービスは始まっていません。
論理的に考えれば根拠はないのですが、この主張をしている人たちはコロナ以前から「5Gは健康に悪影響がある」と主張していた人たちですので、上記の地図を錦旗のようにして「5Gが新型コロナウイルスを拡散した」と流布しています。
まとめ
当初はイギリスを中心としたヨーロッパで5Gと新型コロナウイルスの陰謀論が拡散し、実際に基地局を放火する事件まで起きています。
しかし、アメリカのケースでは最初に放火が起きたのは2019年12月と、新型コロナウイルスの感染が拡大する前の話になります。
つまり、放火とコロナは直接的な原因ではなく、もともと「5Gの電波は人体に悪影響がある」と主張してきた人間が、5Gの展開図と新型コロナウイルス感染地図の相関性を持ち出して噂を流布し、騒ぎを広げているだけということが分かります。
5Gを攻撃する人々は不安ではなく意図を持って行なっているため、各国政府や国際機関などがどのような対応をしてもしばらくはこのような事件は続くでしょう。
5Gが一般化し、今反対している人たちの生活までも便利にして5Gを手放すことができなくなった時に初めて暴動は収束するでしょう。