5Gで大きく出遅れている日本が、世界中のファーウェイ排除の動きを背景に、復権に向けて大きなチャンスを迎えようとしています。
企業間で連携し、ファーウェイの優位性を排除しようと動いており、大きく出遅れた5G戦争に最後の戦いを挑もうとしているのです。
ファーウェイ排除によって日本に回ってきたチャンスや日本企業の復権に向けた具体的な取り組みについて詳しく解説していきます。
目次
止まらない世界のファーウェイ排除
アメリカが2年ほど前から世界中に呼びかけられてきたファーウェイ排除ですが、2020年に入ってからファーウェイ排除の波が世界中に押し寄せています。
2020年に入ってから起こった新型コロナウイルスへの中国の対応や、香港に対する対応などが世界中で不信を買いファーウェイ排除が加速していると考えられています。
5Gシェア世界No1のファーウェイ排除の影響をおさらいしておきましょう。
アメリカが呼びかけ排除した国
アメリカは以前からファーウェイが安全保障上のリスクがあるとして、世界中に排除を呼びかけてきました。
アメリカの呼びかけによって何らかのファーウェイ排除の措置を講じた国は以下の国々です。
アメリカ、日本、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、台湾、スウェーデン、ポーランド、デンマーク、チェコ、ラトビア、エストニア、ルーマニアといった国々はファーウェイの排除に踏み切っており、今後はさらに増える可能性があります。
ただし、これまではEUの多くの国々はファーウェイ排除に踏み切っていませんでした。
2020年7月にフランスも排除に踏み切る衝撃
ところが、2020年7月、EUの中心国であるフランスがファーウェイ排除に踏み切りました。
これまでファーウェイはEU諸国に大きなシェアを持っていましたが、EUの中心であるフランスが「2028年までにファーウェイ完全排除」を打ち出したことによって大きなニュースとなりました。
また、7月末にはポルトガル大手通信事業者3社がファーウェイ排除を宣言し、いよいよヨーロッパにもファーウェイ排除の波は本格的に広がっています。
今後、もう1つのEUの中心国であるドイツもファーウェイ排除に踏み切るようなことになれば、世界中でファーウェイを排除する流れが完全にできつつあると言えるでしょう。
漁夫の利を得るのは北欧勢
ファーウェイが排除されればファーウェイに次ぐ5Gのシェアを持っている北欧勢です。
2019年5Gインフラシェアでファーウェイに次ぐ世界第2位のシェアを誇っているスウェーデンのエリクソン、世界4位のフィンランドのノキアなどがファーウェイ排除によってシェアを拡大するこのと見られ、実際にフランスなどはエリクソンと5Gインフラを構築していくことが予想されます。
5Gシェアへ復権をかける日本勢
このように、ファーウェイは北米でも日本でもヨーロッパでも排除されています。
世界No1のシェアを誇るファーウェイが国際舞台から排除されつつある中で、5Gで大きく大きく出遅れた日本は復権をかけるチャンスが回ってきたといえます。
現状は大きく遅れていますが、政府も復権を後押ししており、すでにファーウェイを排除したイギリス政府と協議も行なっています。
日本へどのような追い風が吹いているのか、具体的に見ていきましょう。
現状は大きく遅れている
現状、日本の5Gインフラシェアは世界の中でも非常に大きく遅れてしまっていると言わざるを得ません。
上記のように、日本勢ではNECがわずかに1.3%、富士通が0.8%のシェアを占めているだけです。
世界中が5Gインフラ投資を拡大している中、日本勢はわずか2.1%のシェアしか獲得することができなったまさに負け組となってしまっています。
今回、世界中がファーウェイを排除したことのよって、ファーウェイが持っている36%のシェアをどこの企業が獲得するのかという点が大きな焦点です。
日本も失地回復に向けて官民ともに強力な取り組みを行なっています。
国も企業を後押し
日本政府も5Gやその進化版の技術開発の研究に対して後押しを行う方針です。
まず、支援策としてNECや富士通、楽天モバイルなどが選ばれ、これらの企業は政府からの委託を受けて、高速で安定的な通信ができる光ファイバー網や、国際的な規格の次世代型型基地局の開発などに取り組むことによって、政府から総額で700億円の支援を受けることになります。
この研究は5Gだけでなく、その先の6Gの研究開発も念頭に置かれており、大阪万博が行われる2025年までに集中して取り組み、大阪万博で「未来の社会像」を世界に示すことが目標となっています。
政府の後押しによって2025年までに次世代通信の研究を集中的に行うプロジェクトです。
イギリスがNECと協議
すでにファーウェイの排除を決めているイギリス政府とNECが2020年6月に協議を行なっています。
NEC側は「特定のプロジェクトの内容については回答できない」とコメントしていますが、NECのイギリス5G市場への参入を巡る会談だったことは明らかで、イギリス政府は日本のNECの他、韓国のサムスン電子もイギリスへ5Gインフラを供給する企業として名前が上がっています。
何ら確定的な話になったわけではありませんが、ファーウェイ排除によって日本企業にチャンスが巡ってきたことだけは間違いないようです。
ラストチャンスへNTTとNECが資本提携
復権へ向けたラストチャンスとばかりにNTTとNECはかなり大型な資本提携を行いました。
両者が具体的にどのような取り組みを行い、復権に向けてどのような開発をするのか詳しく見ていきましょう。
NTTがNECに640億円(約4.8%)を出資
2020年6月、NTTとNECが資本提携と行いました。
提携内容はNTTがNECに640億円を出資するというもので、これによってNTTはNECの4.8%の株式を取得する第3位の株主となる、非常に大きな資本提携となります。
この資本提携は、両者が「ファーウェイの巨大な牙城を崩す」という覚悟を感じさせるものです。
5G関連の機器を共同研究
NTTとNECが資本提携をする目的は「両社の通信技術を結集させ海外の通信インフラ大手に挑む」というものです。
もちろん、その先にはファーウェイのシェアが念頭にあることは間違いありません。
ファーウェイは年2兆円規模の研究開発費を投じてトップを走り続けており、この業務提携によるシナジーがファーウェイに代わる対抗軸になることが期待されています。
今回の資本提携の目的は長期の協業です。
NTTとNECは5Gだけでなく、その次の6Gの超高速無線、海底ケーブル、宇宙空間など、最先端の通信基盤を共同開発することとしており、6Gでは先頭を走ろうという強い意思を感じさせるものとなっています。
通信規格のオープン化でファーウェイの優位性を超える
この資本提携では、5G基地局のオープン化も研究していきます。
基地局のオープン化とは、メーカーごとに異なる基地局を構成する機器同士を接続する際の仕様を共通化することによって、複数のメーカーの機器を組み合わせて接続することができるようになることです。
基地局のオープン化が実現すれば様々なメーカーから機器を調達でき、メーカー同士の競争が進んでコストが下がりやすくなります。
オープン化によるメーカー同士の競合によって2割〜3割安いと言われるファーウェイにコスト面で引けを取らないうようになるため、ファーウェイのシェアを日本勢が獲得することが期待されています。
まとめ
中国の覇権主義が止まらない限り、国際的なファーウェイ排除の流れが止まることはないでしょう。
今はわずか2.1%しかない日本の5Gインフラのシェアですが、ファーウェイが持っている36%のシェアを獲得することができれば十分に5Gインフラ市場で失地回復することができるでしょう。
これまではメーカーが互換性のないそれぞれの技術を高め合って進化する「ガラパゴス化」してきた日本の通信メーカーですが、今度は互換性を重視した「オープン化」を目指しています。
安心と信頼の日本メーカーが世界中の5Gインフラで採用される日も遠い先の夢物語ではないかもしれません。