【2026年7月 追記】
本記事は2020年当時の技術ニュースです。2026年現在、5G基地局は30万2,118局(2024年度末)まで拡大し、人口カバー率は98.6%に達しています。
2020年当時、5Gは「エリアが狭く、から騒ぎに終わる」と懸念されていました。そんな中、2020年2月にNTTドコモが発表したのが電柱に巻きつけるアンテナです。
目次
5Gの問題点は通信範囲の狭さ(2020年当時)
| 2020年当時の課題 | 内容 |
|---|---|
| 通信エリアが200mのみ | ミリ波は直進性が強く、1基地局あたりの通信範囲が約200mしかない |
| 光ケーブル敷設が膨大 | 200m間隔で置く基地局同士を光ケーブルで接続する必要があり、全国整備に時間がかかる |
| 当面はキャリアアグリゲーション | 2020年中はミリ波基地局が未整備のため、既存LTEと5G帯域を束ねて疑似高速化(理論値2Gbps、実測は1Gbps程度の想定) |
ドコモが開発した電柱に巻けるアンテナとは?(2020年当時)
- 28GHz帯(ミリ波)に対応:電柱に巻きつけて、ミリ波の受送信を行う試作アンテナ
- フッ素樹脂製で360度対応:電柱に巻くだけで全方位に電波を送受信。全国の電柱に展開すればミリ波エリアを一気に拡大できると期待された
- ガラスアンテナも同時開発:ビルの窓ガラスに設置でき、景観を乱さず街中に5G網を構築。2020年中のサービス開始を目指すと発表
新技術で5Gエリアはどんどん加速する(2020年当時の見通し)

電柱アンテナやガラスアンテナの普及により、電波塔のような大掛かりな設備なしで5Gエリアが広がると期待されていました。ドコモは2023年までに人口のほとんどを5G網でカバーすると発表していました。
2026年最新状況:ドコモの新型アンテナ技術はその後どうなったか
2020年2月の発表から6年。「電柱アンテナ」「ガラスアンテナ」、そしてミリ波(28GHz帯)全体のいまを公表資料で確認できた範囲で整理します。
電柱アンテナは続報なし、発想は次世代技術へ継承
ドコモとAGCが試作したフッ素樹脂製の電柱巻きつけアンテナが、全国規模で商用導入されたことを示す公式な続報は見当たりませんでした。ただし「身の回りのものをアンテナ化する」発想自体は継承されています。
- つまむアンテナ(ドコモ、2021年発表):ケーブルをプラスチック片で挟むだけで周囲を通信エリア化。工場・屋内向けに、6G時代を見据えた研究開発が現在も継続中
- フィルム型アンテナ(DNP、2022年発表):電柱・街灯に巻ける5G対応アンテナで、2023年度の量産化を目指すと発表。その後の商用導入規模を示す公式な続報は確認できず
ガラスアンテナは実用化が進み、大阪・関西万博でも稼働
- WAVEATTOCH(AGC)として製品化:ドコモ・AGC・エリクソン・ジャパンが開発、ビルの窓に設置して屋内外の5Gエリアを構築する用途で導入が拡大中
- 2025年の大阪・関西万博会場でも活用:「景観を乱さずアンテナを設置する」という2020年当時の狙いは、電柱アンテナよりガラスアンテナの側で先に実を結んだ形
- 2026年4月、適用範囲を拡大:省エネ性能の高いLow-Eガラス(電波を通しにくい金属膜コーティング)越しでも、現場施工により屋外5Gの受信電力を約10dB(電力比約10倍)改善する実証実験にドコモ・AGCが成功
ミリ波(28GHz帯)は「面」でなく「点」の展開に
2020年当時は「ミリ波基地局が全国に広がる」ことが期待されていましたが、実態は異なります。
- 2025年度末の5G人口カバー率98.6%は、主に4G周波数帯の「5G NR化」やSub6帯(3.7GHz帯・4.5GHz帯)による(総務省)
- 直進性が強く障害物に弱いミリ波は、スタジアムや駅など人が密集する限定エリアでの「点」の展開にとどまる
- 2026年5月、ドコモ・KDDIが共用中継器を共同開発:両社のミリ波電波を1台で中継。サイズ216×216×246mm・重さ4.9kgで、従来のミリ波用基地局比大きさ・重さとも約7割削減。2026年夏から上野恩賜公園で実証実験予定
ミリ波普及の軸足は、電柱アンテナのような「面を敷き詰める」方式から、中継器でピンポイント補強する方式へ移りつつあります。
| 技術・要素 | 2020年当時の位置づけ | 2026年時点の状況 |
|---|---|---|
| 電柱巻きつけアンテナ(ドコモ・AGC試作) | 2020年2月に試作発表、実用化に期待 | 大規模商用導入の続報は確認できず。研究の方向性は「つまむアンテナ」等へ発展 |
| ガラスアンテナ(AGC「WAVEATTOCH」) | 2020年中のサービス開始を目指すと発表 | 実用化が進み、2025年大阪・関西万博などで活用 |
| ミリ波(28GHz帯)全体 | 全国に高速大容量5Gを行き渡らせる切り札として期待 | スタジアム・駅・イベント会場など限定エリアでの活用が中心。全国カバレッジの主役はSub6帯 |
| 次世代研究(つまむアンテナ/6G) | (未発表) | 2021年に発表。6G時代の「どこでもアンテナ」構想として研究継続中 |
まとめ:アイデアは生きたまま、実装の形が変わった6年間
- 「電柱ごとアンテナ化」という2020年当時の未来像は、そのままの形では実現せず。発想はガラスアンテナの実用化とつまむアンテナの研究開発に姿を変えて受け継がれた
- 2026年時点の5GエリアはSub6帯による広域カバー+ミリ波・中継器によるスポット補強の組み合わせが実態。新技術の発表は「実現可能性を示すニュース」であり、全国普及の確約ではない点に注意