2020年1月22日「インターネット税」というワードがトレンド入りし、ネット上では大きな騒ぎになりました。
ネットの中では「インターネットを利用している人、1人から1,000円を徴収する」という具体的な話まで出ましたが、この噂はデマだったことが分かりました。
5Gの回線を日本全国に行き渡らせるのには膨大なお金がかかることは間違いありません。
この費用は誰が負担すべきものなのか、利用者は5G必要なコストを何も負担する必要はないのか、詳しく考えていきましょう。
目次
インターネット税とは?
ネット上で噂になったインターネット税とはどのようなものなのでしょうか?
そもそも総務省はインターネット税について何も言及せず、実際にはネット上に流れたデマだったことが分かります。
発端は2020年1月20日の報道
この騒動の発端となったのは2020年の1月20日の新聞報道です。
「総務省が光回線維持で負担金制度検討」という見出しのタイトルから、「負担金」という単語が「インターネット税という新しい税金が導入されるのでは?」という憶測を呼びました。
詳しくは後述しますが、実際には新聞記事に「インターネット税」という言葉は登場していません。
インターネット回線利用者から税をとる
1月20日の新聞報道を受けて、ネット上ではこの新聞報道が拡散。
拡散とともに、「インターネット利用者から直接負担金を要求する」「ネット利用者1人あたり1,000円のインターネット税が取られる」など情報がどんどん尾ひれをつけて広がっていきます。
この結果として、1月22日には「インターネット税」というワードがトレンド入り。
当たり前のように「5G回線の負担はインターネット利用者が直接背負う」という情報がネット上で既成事実化してしまいました。
新聞報道に問題あり
実際には1月20日の新聞報道には「インターネット税」という文言や、「ネットユーザーから税金を徴収する」などの内容は一切記載されていません。
しかし、読者が「インターネット税が導入される」と勘違いする内容であることは事実です。
以下、産経新聞記事の抜粋です。
高速インターネットの利用環境を全国各地で維持するため、2020年代半ばにもネット利用者から広く薄く徴収して、不採算地域に光回線を持つ事業者に交付金を出し、回線の補修や更新に充てることができるようにする方向で調整する。
この記事には「税金を徴収する」という文言は記載されていません。
しかし「ネット利用者から広く薄く徴収して」という部分がインターネット税という解釈に繋がってしまうのは止むを得ないと言えます。
後述しますが、総務省はネット利用者から「直接徴収」する意図は持っておらず、実際には新聞記事が見切り発車をしていたことが分かっています。
ネット上は大荒れ
この新聞報道を受けてネット上は大荒れになってしまいます。
【罰金の種類】
住んだら→住民税
働いたら→所得税
買ったら→消費税
持ったら→固定資産税
乗ったら→自動車税+ガソリン税
飲んだら→酒税
吸ったら→たばこ税
継いだら→相続税
貰ったら→贈与税
40歳から→介護保険料
60歳まで→年金インターネット→インターネット税
唯一の賞金→生活保護
— 🌸れいわちゃん🌸フォローちてほちぃ (@reiwachan_co_jp) January 22, 2020
・二重徴税紛いなガチガチ税金
・五輪などグダグダ無駄遣い
・自分の置かれた役職の基礎知識もないお祖父ちゃん
・会議中に寝てる議員
・証拠や根拠も用意せずイチャモンばかり話に上げる奴等
・なポンコツ達への給与なんかを見せれ続けて
今度は走行税だインターネット税だまずお前らの腹を切れ
— 永遠の蒼 (@sioagisoluto) January 22, 2020
5G基地局整備でインターネット税導入の動きをテレビでやってた
街の人の声で
料金が高くなってまでこれ以上
性能が良くなる必要性を個人的に感じない
まあ、一般の人は今の4Gで十分と感じるだろうなー pic.twitter.com/QNvPC3FTqZ— 電波やくざ🌒関東電測組 (@denpa893) January 21, 2020
ワイドショーまで、「インターネット税」という文言を使って報道していたので、ネット上ではインターネット税に対して大炎上。
大きな話題となりました。
総務省は検討すらしていない
総務省はネット上で拡散する「インターネット税」について、「検討すらしていない」と発表しています。
つまり、インターネット税は新聞報道から端を発したデマだったことが分かります。
なぜこのようなデマが流れたのでしょうか?
それは総務省が2019年11月にまとめた「ユニバーサルサービス料」の政策提言に端を発したものと思われます。
ユニバーサルサービス料とは
ユニバーサルサービスとは、生活に最低限必要な加入電話(固定電話や公衆電話など)を人口の少ない地方でも維持するために、電話サービスを提供している通信事業者から負担金を徴収する制度です。
要するに、回線を維持するための負担金を通信事業者から国が徴収し、その負担金の原資はは利用者が支払う電話代に上乗せされています。
固定電話加入者の減少からブロードバンド利用者からの徴収も検討
しかし、今は固定電話などの加入電話の利用者が減少しているため、負担金を徴収することが難しくなっています。
そこで、総務省は光回線などを含むブロードバンドをユニバーサルサービスの対象とすることを2019年11月の政策提言としてまとめました。
間接的にネットユーザーに「ユニバーサルサービス料」として負担を求めることから「インターネット税」と判断されて拡散されましたが、実際にこの話は政策提言をまとめただけで、何も前に進んでいません。
この話を新聞各社が「2020年半ばには導入へ」と報道したのが事の事実です。
今後は、ネット回線にもユニバーサルサービス料金が加算されるかもしれません。
しかし、現在のユニバーサルサービス料金は1人あたり2円と言われているので、「1人あたり1,000円」のような大きな金額になるようなことはないでしょう。
まとめ:5Gの利用者負担は避けられない
5Gの設備投資にお金がかかることは間違いありません。
5Gの主要回線となる「ミリ波」は接続範囲が非常に狭いので、日本全国に高速大容量のミリ波を敷設しようとしたら、200メートル間隔で基地局を設置しなければならないと言われています。
この基地同士を結ぶ光回線も必要になるので、5Gの設備投資にお金がかかることは間違いなく、国や通信各社はこの投資に必要な財源の確保ができていないのは事実です。
今回のインターネット税の報道はデマだったことが分かりますが、やはりユニバーサルサービス料などで、何かしらの料金負担が必要になることは間違いないでしょう。
思えば、4G導入直後も電話料金は非常に高額でした。
ある程度の料金にしなければ通信各社が通信基地への設備投資の回収ができなかったためと言われています。
5Gも敷設完了までには、やはりユーザーがある程度の料金負担をしなければならないことは間違いないでしょう。
ただし、「インターネット税」という形で国が直接国民に負担をかけることはないでしょう。
「実質的には同じ」と思うかもしれませんが、実際にはこれは大きな違いがあります。
基地整備のために必要な料金上乗せは、投資の回収が終われば料金が下がる可能性があります。
しかし、財政難の我が国では、一度導入された税金は、立法事実がなくなったとしても無くなったり下がったりすることはまずありません。
いずれにせよ、5G開始によって、私たちの生活が便利になる分、何かしらの形でユーザーは負担を強いられる流れになることは間違いありません。
インターネット税はデマでしたが、5Gの料金が今と同じ水準である可能性は非常に低いと覚悟しておいた方がよいでしょう。