future

【5Gと仮想現実】5Gで実現できる仮想現実に必要な2つの要素

【5Gと仮想現実】5Gで実現できる仮想現実に必要な2つの要素

【2026年9月 追記】

本記事は2020年当時の見通しです。5Gは契約数1億3,153万件・人口カバー率98.6%まで普及。一方、自動運転や遠隔手術など超低遅延の分野は5G SAとともに発展途上です。

「5Gが普及すればVRの世界が実現する」——2020年の期待は、2026年には外れていました。普及を止めたのは通信ではなく価格・重さ・使う理由です。

結論:2020年の期待と2026年

論点 2026年9月の答え
VRは普及した? XR機器は年1,500万台規模にとどまる
5Gが決め手だった? いいえ。本体処理+自宅Wi-Fiが主役
クラウドVRは? 一般向けは主流にならず、業務用途で始動
ハプティクスは? エンタメは研究段階、医療で実証が進展
5Gが効く機器は? 屋外で常時つながるスマートグラス

2020年に期待された2要素

5Gに期待された仮想現実の2要素 2020年当時、この2つが揃えば仮想現実が変わるとされていた 多人数の仮想空間接続 多接続性(4Gの10倍)で 同じ空間に大勢が同時に入れる 感覚の肉感的な伝達 低遅延・大容量通信で 痛み・触感まで再現(ハプティクス) 距離を超えた「没入体験」
当時の見通し 内容
変わるもの 360度VR自体は5G以前から存在。変わるのは接続人数と感覚の質
ハプティクス 遠隔の感覚を伝える技術。遠隔手術支援と同じ仕組み
しくみ ロボットアームの感触をグローブへ、グローブの動きをアームへ
期待された体験 遠方の家族と手をつなぐ、職人が手の動きを伝える
新たな課題 仮想空間での加害行為をどう扱うか

6年後の答え合わせ

2020年の期待と、2026年の現実 2020年に語られていたこと 2026年9月の現実 誰もが仮想空間で生活する XR機器の世界出荷は年1,500万台規模にとどまる 高価なVR機器が一気に普及する Vision Proは法人・研究開発用途が中心 5Gがあれば大人数が同時接続できる 実際の接続はWi-Fiとオンデバイス処理が主役 ハプティクスで触覚まで共有される 研究・一部製品どまり。標準機能にはなっていない メタバースが次のプラットフォームになる Metaは2026年にVRとスマホ向けを明確に分離 普及のボトルネックは通信速度ではなく、機器の価格・重さと「使う理由」だった

①出荷台数は伸び悩んだ

指標 数値・動向
2024年のVR出荷 Vision Pro・Quest 3S投入も大きく減少
IDCの分析 価格の高さが妨げ。法人の研究開発用途が中心
XR市場規模 年1,500万台規模(2030年に7,000万台規模の見通し)
VR・ARシェア首位 Meta 76.3%
比較:スマホ市場 年10億台超=桁違い
Metaの戦略転換 2026年、VR向け「Quest」とモバイル向け「Horizon Worlds」を分離しスマホ展開へ

②ボトルネックは通信ではなかった

普及を阻んだ要因 内容
価格 高性能機はスマホ以上の出費
重さ・装着感 長時間の使用に耐えにくい
使う理由 日常的に使い続ける用途が限られる

ポイント:映像処理は本体チップ、外部接続は自宅Wi-Fiで足りている。「通信が速くなれば実現する」前提は部分的に外れました。

クラウドVRが主流にならない理由

VR酔いを防ぐ目安は、頭の動きが映像に反映されるまで20ミリ秒以下(モーション・トゥ・フォトン遅延)です。

方式 処理の流れ 20msの使い方
オンデバイス処理 検知→本体で描画→表示 全部を描画と表示に使える
クラウドレンダリング 検知→上り送信→クラウド描画→下り受信→表示 往復通信と符号化・復号が圧迫
  • 問われるのは無線区間でなく往復の合計
  • 主流のNSA方式は4G設備経由で、低遅延が活きにくい
  • 本体チップは6年で単体で描画を完結できる水準に

【2026年3月】業務用途で始動

項目 内容
発表 2026年3月17日、NVIDIA CloudXRがApple Vision Proに対応
手法 ダイナミック・フォービエイテッド・ストリーミング(視線の中心だけ高解像度)
発想 通信を速くせず送るデータを減らす
処理の場所 描画はNVIDIA GPU側、映像のみ配信
主な用途 実物大の車体3D、建築の実寸大レビュー

ポイント:本体で描けないほど巨大な3Dだけがクラウドへ。居場所は一般向けではなく業務用途です。

5G SAで結論は変わる?

Opensignalの調査(2025年7月31日)で、5G SAはNSAの下り約1.7倍・上り約1.5倍。上り(頭の動きの送信)の改善はクラウドVRに有利です。

条件 クラウドVRへの意味 2026年9月時点
5G SAの普及 往復の予算に余裕 提供開始。エリア・端末は限定的
エッジコンピューティング 基地局近くで描画し距離短縮 産業用途の実証が中心
本体の性能向上 通信そのものが不要に 最も進んだ。現在の主流

クラウドVRは「本体の性能向上との競争」。SAが効くのは処理能力を積めないスマートグラスです。

③ハプティクスの現在地

領域 2026年時点
エンタメ・VR 振動で近似するベスト・グローブ型は市販。「殴られれば痛い」には未到達
医療(遠隔手術支援) 実証が進展。2025年に日本―フランス間 約23,000kmで成功

伸びている領域

領域 状況 5Gの関わり
ゲーム・エンタメ Quest中心にユーザー層が定着 小(自宅Wi-Fi)
産業研修・訓練 危険作業・医療手技で導入 中(ローカル5Gの例)
設計・製造の可視化 Vision Pro法人利用の中心 小
スマートグラス 軽量な「表示+AI」型が注目 大(屋外常時接続)
一般消費者の日常利用 当時の期待に届かず —

ポイント:5Gと没入型デバイスは「常時つながる軽い機器」という別の入り口から再び結びつく可能性があります。

【2026年】伸びているのはヘッドセットではなくメガネ

IDCの2026年6月15日の分析では、ディスプレイを持たないAIメガネ型が市場を牽引しています。ゴーグル型(MR)とは桁が離れました。

カテゴリ 2026年の出荷見通し 補足
ディスプレイなしスマートグラス 約1,360万台 2024年通年は約270万台。2026年1〜3月だけで約225万台
MR(ゴーグル型) 約320万台 Quest・Vision Proなど
光学シースルー型グラス 約300万台 表示機能を持つメガネ型
  • 2026年1〜3月のスマートグラスはMetaが69.2%。EssilorLuxotticaとの提携が効いている
  • 日本でも2026年5月21日にRay-Ban Meta(Gen 2)73,700円〜・Oakley Meta HSTN 77,220円〜が発売(ディスプレイ搭載のRay-Ban Displayは対象外)。2026年9月24日には第3世代のRay-Ban Meta(Gen 3)が78,980円〜で発売(最大9時間駆動・Gen 2も継続販売)。9月25日からはソフトバンクも取り扱いを開始
  • 2年で約5倍に伸びた理由は「軽い・かけっぱなしにできる・数万円」。VRゴーグルが越えられなかった壁をメガネ型が越えた形です

出典:IDC「Smart Glasses Surge」(2026年6月15日)/Meta「Ray-Ban Meta(Gen 2)およびOakley Meta、5月21日より日本でも販売開始」。ルックスオティカジャパン「AIグラス『Ray-Ban Meta』の次世代モデルGen 3、本日発売」(PR TIMES・2026年9月24日)、AI Watch(2026年9月25日)。調査会社により集計範囲が異なるため、他社の数値とは一致しません。

よくある質問

Q. VRに5G回線は必要?

不要です。主流のスタンドアロン型は本体で描画し、通信は自宅Wi-Fiで足ります。

Q. 5GでVR酔いは減る?

直接は関係しません。本体で描画する限り、通信は介在しないためです。

Q. 5G SAでクラウドVRは実用的になる?

条件は改善しますが、本体性能も上がり続けています。効きやすいのはスマートグラスです。

Q. 買うなら何を基準に?

通信規格ではなく、重さ・装着感と繰り返し使う用途で判断を。

まとめ

  • VR/XRは年1,500万台規模で、当時の熱狂ほど広がらず
  • 普及の壁は通信でなく価格・重さ・使う理由
  • クラウドレンダリングは業務用途で始動(2026年3月)
  • 5Gが本当に効くのはスマートグラスや産業用途
  • 2026年に伸びたのはディスプレイなしのAIメガネ(約1,360万台見通し)。日本でも5月21日に発売された

※本記事は2020年公開の内容を、VR/XR市場の推移とクラウドVRの検証など2026年9月時点の情報に更新したものです(多接続の倍率表記を総務省の公表値にもとづき4Gの100倍→10倍に訂正、8月28日に5G SAの節、9月3日にNVIDIA CloudXRの節を追加)。2026年9月13日に図表中心の構成へ再編集し、9月19日にIDCの2026年スマートグラス出荷見通しと日本発売の情報を追記しました。2026年9月27日にRay-Ban Meta(Gen 3)の国内発売を追記しました。