2020年4月3日「筑波大学が5G電磁波でロケット推進力を獲得」という記事がニュースになりました。
以前から健康被害への懸念が指摘されていた5Gの電磁波ですが、「ロケットを飛ばすほど強力なものだったのか!」と驚いた人も多いのではないでしょうか?
しかし、よくよくこのニュースを読んでみると、今回の「5Gの電磁波でロケット推進力を獲得」というニュースは以前から指摘されていた「5Gが健康に悪影響を及ぼす」という話とはほとんど関連性がないことが分かります。
5Gの電磁波がどのようにロケットの推進力になるのか、このニュースを受けた世間の反応、そして健康被害への影響について詳しく解説していきます。
目次
5Gの電波でロケット推進力を生み出す実験に成功
2020年4月3日、筑波大学が5G電磁波でロケット推進力を獲得する実験に成功しました。
専門的な話をせずにこの実験の趣旨を説明すると以下のようになります。
- 5Gの電磁波(マイクロ波)を地上から送る
- ロケット底部に照射すると強いエネルギーが集まり爆発が起きる
- 将来的にはロケットにエンジンや燃料タンクなどが不要になる
5G電磁波でロケット推進力を獲得する実験の概要や成果について詳しく解説していきます。
5Gの電磁波(マイクロ波)を地上から送る
筑波大学の実験は、5Gと同じ周波数のマイクロ波を地上からロケットに送ることによってロケットの推進力を得ることができたというものです。
この実験では5Gの周波数である28GHzのマイクロ波を用いて電子レンジの約500倍の出力である250kWを地上から照射を行い、ロケットの推進力を得ることができました。
簡単に言えば、5Gと同じ周波数のマイクロ波を大量にロケットに照射してロケットを飛ばすことができるというものです。
ロケット底部に5G電波を照射すると強いエネルギーが集まり爆発が起きる
この実験では、地上の送電アンテナからマイクロ波のビームをロケット底部に照射することによって、強いエネルギーが集まり爆発が起きます。
この爆発が推進力になってロケットが飛ぶという内容です。
今回の実験では、長さ60センチのロケットの模型に5Gと周波数である28GHzのマイクロ波を送ったところ電子レンジの約500倍に相当する出力を得て推進力を得ることができました。
5Gの電波がロケット構造の革新に繋がる
この実験では、ロケットにタンクやエンジンが不要であるという可能性を見いだすことができました。
ロケットにタンクもエンジンも不要になるのであれば、ロケットの構造は大きく変わります。
将来的にはロケットの開発コストを100分の1に削減することができると言われており、今後はロケットがさらに安価に開発できるようになることに大きく期待されています。
5Gでロケットが飛ばせることに対する健康への懸念の声
5G電磁波でロケット推進力を獲得する実験に成功したニュースを受けて、ネット上では様々な意見が飛び交っています。
健康被害を懸念する声が少なくありません。
本日付日本経済新聞記事です。5Gは、電子レンジの500倍の電磁波が出力と。ロケットが打ちあがるのだから、確かに人間も殺せる力ありますね。怖っ!😱 pic.twitter.com/w0DqfJXmFr
— ひろもん (@ikiikiikiyou) April 27, 2020
ロケットでも打ち上がりそう…🚀#携帯基地局
一昔前まで、マンションの屋上なんてスッキリしたものだったのに、最近はいたるところに巨大な装置が設置されています。#5G など… 行き過ぎた進化を止めないと、街中こんな風景だらけになっていってしまう。#電磁波 反対。 pic.twitter.com/5S0w1smjHA— finnsheep (@finnsheepee) April 26, 2020
一方、「5G電磁波」というタイトルが恣意的だという意見もあります。
どうして「5G電磁波」をタイトルに。。
5G電磁波からロケット推進力:日本経済新聞https://t.co/zF6gQxnX89
— Hiroshi Ota (@otahi) April 26, 2020
今回の実験の内容をよく調べていくと「5G電磁波」という言葉が非常に恣意的で「5Gの電波が健康に悪影響がある」と心配する人たちを煽っている傾向があることが分かります。
「5G電磁波からロケット推進力」という見出しを見れば、多くの人が「5Gはロケットを飛ばすことができるほど危険なのか」と心配してしまうのではないでしょうか?
しかし、この見出しには明らかに悪意があると言わざるを得ません。
実際、この実験と以前から心配されている移動通信サービスとしての5Gの健康被害の関係はあるのでしょうか?
ロケットを飛ばした電磁派とスマホ5Gの健康被害は無関係
ロケットを飛ばすことができるいわゆる「5Gの電磁波」と以前から指摘されている5Gの健康被害は無関係です。
そもそも今回の実験では、①偶然5Gと同じ周波数になっただけで、他の周波数でも実用可能だという点、さらに②実際には5Gと同じ周波数でロケットを飛ばすことは難しいという点、そして、③ロケットの推進力獲得のための電磁波は日常生活に大量に注ぐものではないという3つの理由があります。
ロケットを飛ばすことができるいわゆる「5Gの電磁波」と以前から指摘されている5Gの健康被害は無関係である3つの理由について詳しく解説していきます。
偶然5Gと同じ28GHzを使っていたというだけ
今回の実験では、偶然5Gのミリ波と呼ばれる28GHzの電磁波を使っていたというだけです。
今回の実験を行なった筑波大学情報システム系の嶋村耕平助教授は以下のように話しています。
今回の計測実験では、5Gと同じ28GHzの周波数を用いたが、これは共同研究者の假屋准教授が核融合発電の研究で使っている装置を流用したところ、偶然5Gと同じ28GHzを使っていたというだけで、マイクロ波によるワイヤレス給電がこの周波数でないと実現しないわけではない。他の周波数帯でも実現できる。
つまり、5Gの電波でなければロケットを飛ばすことができないというわけではなく、他の高周波の周波数でも実現することができるということです。
今回の「5G電磁波からロケット推進力」という見出しがいかに語弊があるのかお分かりいただけるのではないでしょうか?
5Gの周波数だけがロケットを飛ばすことができるのではなく、「高周波数のマイクロ波のワイヤレス給電がロケットの推進力を得ることができた」というのが正確な事実です。
5Gの28GHzでの実現は難しい
また、5Gの28GHzでは実際にロケットを飛ばすのは難しいと言われています。
5Gと同じ周波数の大量の電磁波を発射した場合には、携帯電話の5G通信網と混線してしまい、5G通信網に大きな悪影響を及ぼしてしまう可能性があるためです。
そのため、実際に電磁波でロケットを飛ばす時には5Gとは異なる周波数で行われる可能性が高いと考えられます。
つまり、「ロケットを飛ばす5Gの電波は身体に影響がある」というのは、杞憂だと言えるでしょう。
実際にロケットを飛ばすのは5Gと同じ28GHzではないと考えられます。
ロケットの電磁波は大量に降り注ぐものではない
5Gの電波が健康に害があると言われているのは、「高周波の電波が大量に降り注ぎ続けるから」というものです。
確かに、携帯電話の5G基地局では高周波の電波が日常的に大量に降り注ぎ続けることになります。
しかし、ロケットの電磁波は人体に大量に降り続けるものではありません。
発射は人家から離れた場所で行われるでしょうし、ロケットの発射は毎日行われるものでもありません。
つまり、ロケット発射のための高周波の電波が体に悪影響を及ぼすという観点で見ても、電磁波でロケットを飛ばすということが人体に悪影響を及ぼすわけではないということができます。
まとめ
5Gと同じ周波数の電波でロケットの推進力を得られたということは、今後のロケット開発を大きく変革する可能性のあるニュースです。
今回の実験で高周波の電波はロケットを飛ばすほどのエネルギーがあることが分かりました。
しかし、それは5Gの周波数である28GHzだけではありません。
むしろ、今回の実験で5Gと同じ周波数が使われたのは偶然に過ぎないというのが実際のところです。
5Gとは異なる周波数でもロケットは飛ぶと考えられているため、今回のニュースで5Gは危険と判断するのは誤りであると考えた方がよいでしょう。
5Gの高周波の電波が人体へ悪影響を与える可能性を指摘されているのは事実です。
しかし、今回のロケットの推進力獲得のニュースとは分けて考えるべきでしょう。