ローカル5G

ローカル5Gでケーブルテレビに光が当たる|5G時代のケーブルテレビの役割とは

ローカル5Gでケーブルテレビに光が当たる|5G時代のケーブルテレビの役割とは

「5G時代になるとケーブルテレビに光が当たる」と言われています。

それは地上デジタル放送では受信することができない4k8k映像をケーブルテレビの光回線であれば受信することができるというだけではありません。

ケーブルテレビはローカル5G構築に欠かせない存在と言われています。

ローカル5Gとは、特定の地域や工場など、特定のエリアに限定された5G通信網のことです。

ローカル5Gは工場のIOT化、病院での遠隔診断や遠隔手術、工事現場の無人化などに活用されることが期待されています。

大手キャリアは2020年春から5Gをスタートさせますが、基地局設置の問題から利用できるのは一部のエリアのみで、日本全国の地方にまで5G通信網が構築されるのは5年程度先になると考えられています。

一方、ローカル5Gを導入すれば、5G通信網が配備された特定の地域や特定の工場・施設などを全国展開に先駆けて行うことができるようになります。

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このローカル5Gになぜケーブルテレビが欠かせないのでしょうか?

ケーブルテレビのポテンシャルと、ケーブルテレビと5Gの関係性、そしてケーブルテレビとともにローカル5Gを全国展開させようと取り組む、住友商事の動きとともに解説していきます。

ケーブルテレビの5Gにおけるポテンシャル

ケーブルテレビの現状

ケーブルテレビはなんと日本の半分以上の世帯が加入しており、その有線電気通信設備の実に70%が光回線というポテンシャルを持っています。

ローカル5G構築のためには、このケーブルテレビのポテンシャルが大いに活用することができると言われているのです。

まずは、ケーブルテレビが5G構築の必要なポテンシャルをどの程度秘めているのか詳しく見ていきましょう。

日本の半分以上の世帯が加入

日本全国のケーブルテレビの加入世帯は約3,055万世帯となっており、世帯普及率は約52.2%です。

実に日本の世帯の半分以上がケーブルテレビに加入していることになり ます。

平成29年の加入世帯は約3,115万世帯であるのに対して、平成30年は約3151万世帯となっており、人口減少社会においてもケーブルテレビは地域に根ざして着実に加入世帯を増やしていることが分かります。

70%が光回線

5G通信網の構築には光回線が必須です。

5Gの電波はこれまでの電波よりも高周波になるので、通信距離が少ないのが課題です。

1つの基地局の電波は200mしか飛ばないと言われています。

そのため、5G通信網構築には無数の基地局同士を光回線で結ぶ必要があり、この設備構築のために5G通信網の構築には2020年開始から3年以上はかかってしまうと言われています。

ローカル5Gにおいても光回線は必須ですが、ケーブルテレビはすでに敷設済みの有線電気通信設備の実に70%が光回線です。

つまり、ケーブルテレビの通信網はすでにローカル5Gを導入するためのインフラ整備が整っていると言えるのです。

地上波よりも映像面でも優位に立つケーブルテレビ

ローカル5Gとは直接関係ありませんが、ケーブルテレビは映像面でも地上波よりも優位に立つことになります。

地上デジタル放送は4k8kを受信することはできません。

しかし、光回線を敷設しているケーブルテレビは高速大容量通信に対応しているので、4k8k映像を通信することが可能です。

下記は総務省の4k8k推進のためのロードマップです。

すでにケーブルテレビは2015年から4k放送を開始しており、8k放送の実験取組も行なっています。

東京オリンピックくらいから8k放送が本格開始され、その後は家庭のテレビで普通に4k8kを視聴することができる時代がすぐそこまで来ています。

しかし、地上波ずっと2kのままです。

つまり、今後は4k8kを視聴するために地上波からケーブルテレビに切り替える人が増える可能性もあります

地上波はインターネットとの競争だけでなく、ケーブルテレビとの競争でも優位性がなくなっていくものと考えられます。

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ケーブルテレビがローカル5Gに欠かせない理由

ケーブルテレビがローカル5Gに欠かせない理由

日本全国に光回線網を敷設済みのケーブルテレビはローカル5Gに欠かせない存在と言われています。

また、ケーブルテレビが地方の5G格差を是正することができるとも言われています。

ケーブルテレビがローカル5Gに欠かすことができない理由について詳しく解説します。

自前の通信インフラや営業基盤を活用できる

ケーブルテレビはすでに自前の光通信網を持っています。

5Gは電波の通信エリアが狭いので、ローカル5Gを導入したい建物やエリアの近くの電柱に基地局を設置する必要があります。

ケーブルテレビはすでに近くの電柱を持っていたり、光ケーブルを近くまで設置している可能性があるので、例えばどこかの工場が「自分の工場にローカル5Gを敷設したい」となった時に、近くの電柱に5G基地局を設置すればすぐに通信可能にすることができます。

これまで、ケーブルテレビが蓄積してきた光回線や電柱などのインフラを活用すれば、ローカル5G通信網も確立は驚くほど簡単にできる可能性があります。

ケーブルテレビは地域をよく知り何かあれば駆けつけられる

ケーブルテレビはこれまで地方とともに成長して来た企業で、地方のこともよく分かっています。

もしもローカル5Gエリアで通信障害などのトラブルが起こった時にもすぐに駆けつけることができるのがケーブルテレビの強みです。

中央主導型の大手キャリアの5Gよりも、よりミニマムで顧客に近い5Gサービスを提供することができるのもケーブルテレビ・ローカル5Gの強みです。

ケーブルテレビ局同士でサービスエリアが重ならない

そして、ケーブルテレビ・ローカル5Gの大きな強いがケーブルテレビ同士でサービスが重ならないということです。

もともと1地域だけの限られたエリアで営業しているケーブルテレビはローカル5G分野でもサービスエリアが重なりません。

それぞれのケーブルテレビで蓄積したノウハウを共有して技術発展させることも可能です。

5G通信網の地方の後回しをケーブルテレビが解決できる

これまで地域に根付いてきたケーブルテレビが、ローカル5Gによって地域の町おこしや発展に寄与できることに期待が置かれています。

NTTドコモやKDDIなどの大手キャリアは、5G通信網を、都市部→中規模都市部→地方→無人区域へと都市から田舎へと時間をかけて広げていきます。

そのため、5Gは「最初は都会でしか利用できない」とされています。

しかし、ローカル5Gで地方都市が自前の5G通信網を構築することができれば、都市部と地方の情報格差はなくなり、5Gインフラを求める産業を誘致することができる可能性があるのです。

住友商事とケーブルテレビでローカル5G推進へ

住友商事とケーブルテレビでローカル5G推進へ

住友商事は20年以上前からケーブルテレビと深い関係にあります。

住友商事が蓄積したノウハウとケーブルテレビとの関係性を活用して、住友商事はローカル5G会社を設立しました。

ローカルでしか構築できないローカル5Gを住友商事とケーブルテレビ各社が全国展開させている事例を解説していきます。

住友商事とケーブルテレビでローカル5G会社を設立

2019年12月、住友商事・インターネットイニシアティブ・秋田、栃木、東京、三重、愛媛のケーブルテレビ5社・地域ワイヤレスジャパンの合計8社で共同出資による「グレープ・ワン」を設立したと発表されました。

グレープ・ワンは「ローカル5Gの活用を目的とした無線プラットフォーム事業の展開」を事業目的としています。

前述したように、ケーブルテレビは光回線や電柱などのローカル5G通信網構築に必要な通信インフラを保有しています。

しかし、ローカル5Gを構築するためには末端で無線基地局を設置しなければなりません。

グレープ・ワンはケーブルテレビに無線プラットフォームの設置を支援し、ケーブルテレビとともにローカル5Gの普及を目指します。

住友商事はジュピターテレコムでノウハウを蓄積済み

そもそも住友商事はケーブルテレビと深い関係にあります。

1984年からケーブルテレビに出資をはじめ、1995年には国内最大のケーブルテレビ統括会社ジュピターテレコム(J:COM)を設立しています。

このような経緯から住友商事とケーブルテレビ業界は深い関係にあり、今回もグレープ・ワンは日本ケーブルテレビ連盟と協力して、ケーブルテレビ事業者のローカル5G免許取得、導入支援、運営支援などを行います。

ジュピターテレコムのJ:COMブランドは仮想移動体通信(MVNO)もサービス展開しており、無線基地局設置にもノウハウを持っています。

ケーブルテレビは基地局設置のノウハウがなく、設置を行う事業者の数も少ないため、ここをグレープ・ワンが支援を行うことで、ケーブルテレビ事業者がローカル5G事業に参入するためのハードル下げることができるのです。

2019年6月からローカル5Gの実証実験開始

住友商事はすでに2019年6月からローカル5Gの実証実験を開始しています。

長野県安曇野市の工場と東京大手町の工場をロカル5Gで結び、東京大手町の本社のゴーグルカメラで長野県安曇野市の工場に設置された4kカメラを通して360度視察をすることに成功しています。

また、住友商事竹橋ビルと、東京大手町をローカル5Gで繋いだVR会議も実験しています。

すでに住友商事はローカル5Gの実験に成功しており、今後の本格的な商用展開に期待が持てるものと言えるでしょう。

まとめ

ケーブルテレビは日本の隅々までネットワーク網を構築しています。

そしてこのネットワーク網はローカル5G構築に活用することができます。

ケーブルテレビにローカル5G構築のノウハウが加われば、中山間地域に5G工業地帯などができるかもしれません。

ローカル5Gは地方創生のチャンスになりうるものですし、その担い手としてケーブルテレビが期待されています。