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【5Gのライバル技術】広域低速ネットワークLPWAとは?

【2026年8月 追記】

本記事は2020年当時の見通しをまとめたものです。2026年現在、5Gは契約数1億2,632万件・人口カバー率98.6%まで普及し、当時の予測の多くが現実になりました。一方で自動運転や遠隔手術など超低遅延を要する分野は、5G SA(スタンドアローン)方式の普及とともに現在も発展途上です。

5Gは万能の電波ではなく、唯一の次世代通信でもありません。速度で突出する5Gとは対極に、「広域・省電力・低価格」を武器にするLPWAという通信規格が、実際に成果を挙げています。LPWAの特徴と5G比較、活用事例を解説します。

LPWAとは? 5Gとは対極的な長所が

LPWAとは? 5Gとは対極的な長所が

LPWAとは、簡単にいえば「広域、超省電力、超低価格」などの長所を持つ、特定の通信規格の総称です。

LPWAの通信速度は、5Gどころか、すでに全社が停波した3G回線にすら太刀打ちできないほど低速です(3GはドコモFOMAが2026年3月31日に終了し、国内の3Gは全廃済みです)。

しかし、IoT機器の中には、それでも十分に機能するものが多くあります。

当然ですが、どっちでも機能するなら安い方が良いですよね?

LPWAは、特定のIoT機器に対して必要十分な通信を提供するものです。

5Gの特性が「高機能性を武器に、あらゆる機器を平行運用して、狭い環境を劇的に作り替える」ことだとしたら、LPWAは「安さを武器に、単純な機器を飽和運用して、数の力で広い環境を作り替える」ことを得意としています。5GとLPWAは、運用コンセプトからして全く違うもの、と考えてください。

民間レベルへの普及を考えたとき、安さと手軽さは最大の影響要因ですから、世界の通信を「速さの5G」と「数のLPWA」が分担する構図が定着しつつあります。両者の違いを整理すると次のとおりです。

項目 5G LPWA
通信速度 超高速(数Gbps級) 超低速(数kbps〜数百kbps)
消費電力 大きい 極小(電池で数年)
通信コスト 月990円〜(スマホ) 1台あたり月10円前後〜
得意な用途 動画・AR/VR・高精細な機器連携 センサー・見守り・インフラ監視

業界団体のGSMAは2020年当時「2022年までに50億台のデバイスがLPWAに接続される」と予測していました。その後もNB-IoTやLTE-Mといったライセンス系LPWA、ならびにSigfox・LoRaWANといった非ライセンス系LPWAは着実に接続数を伸ばし、スマートメーターや物流・インフラ監視の分野で定着しています。5Gが人と端末の高速通信を担う一方、無数のセンサーをつなぐ土台はLPWAが支える、という役割分担が2026年時点でも続いています。

LPWAはどれくらい安いのか?

LPWAはどれくらい安いのか?

キャリアやプランによっては、デバイスあたり月10円前後から運用でき、消費電力も低いため電池交換なしで数年稼働する設計が一般的です。5Gのスマホ料金は月990円〜(LINEMOなど)まで下がりましたが、それでも桁が違います。多数のセンサーを長期間動かす用途では、ランニングコストはLPWAが圧倒的に優位です。

LPWAでできること

LPWAでできること 

個々の用途は既存技術でも実現可能な地味なものですが、広範囲で組み合わせて使うことで、トータルでは5Gにも劣らない成果を上げられます。活用事例を整理すると次のとおりです。

サービス/提供元 用途 成果・特徴
jwp IoT Platform
株式会社ジョイ・ワールド・パシフィック
ビニールハウスの環境管理(温度・湿度・日射量・CO2濃度を常時計測) 全国の農園データをAIが学習し環境を最適制御。実証実験で収量30%向上と発表
ST COMM
CACH株式会社
橋梁・トンネルなど構造物のひずみ・応力を常時監視 肉眼で見えない微細な変化を検出。老朽インフラの補修タイミング最適化に活用
SLIMS-ST(JR西日本コンサルタンツ) 傾斜・衝撃センサーによる災害危険個所の監視 異常発生時に自動通知
水位計(オサシテクノス) 河川の氾濫リスクをモニタリング 電池式で長期間の定点観測が可能

いずれも通信速度は不要で、電池1本で長期間動く省電力性がLPWAならではの強みです。老朽化が進む日本のインフラ維持管理や、目視点検に頼ってきた農業の分野で、5Gに先駆けて実用化が進んでいます。

【2026年最新】5GとLPWAの「あいだ」を埋めるRedCapの登場

本記事を公開した2020年当時は、「速さの5G」と「安さのLPWA」という二極構造で説明するのが分かりやすい状況でした。しかし2026年現在、そのあいだを埋める第三の選択肢が実際に動き出しています。それが5G RedCap(レッドキャップ)です。

RedCapとは何か

RedCapは「Reduced Capability(能力を絞った)」の略で、NR-Lightとも呼ばれます。3GPPのRelease 17で規定された、5G NRの機能をあえて簡略化した端末カテゴリです。

なぜそんなものが必要になったのか。理由は、5GとLPWAの間に大きな空白があったからです。

  • LPWAでは足りない用途がある……数kbps〜数百kbpsでは、映像監視やウェアラブル端末のような「そこそこのデータ量」を扱う機器には力不足
  • フル5Gではオーバースペックすぎる……数Gbpsの性能はいらないのに、モジュールが高価で消費電力も大きく、小さな機器に組み込めない

RedCapは対応帯域幅やアンテナ本数、同時処理能力を意図的に削ることで、モジュールを小型・安価にし、消費電力も抑えつつ、LTE Cat.1やCat.M1(LTE-M)より上の速度域をカバーします。想定用途は産業用の無線センサー、映像監視カメラ、スマートウォッチなどのウェアラブル、そして物流の資産追跡です。

LPWA・RedCap・5Gの棲み分けマップ 速度と、消費電力・端末コストのバランスで用途が分かれる 通信速度 → 消費電力・端末コスト → LPWA 数kbps〜数百kbps 5G RedCap 数Mbps〜数十Mbps 5G(通常) 数百Mbps〜数Gbps センサー/検針/見守り 映像監視/ウェアラブル/資産追跡 スマホ/AR・VR/高精細映像 RedCapが埋めるのは、この「あいだ」の空白

日本での商用化はどこまで進んだか

日本でのRedCap商用サービスはまだ入り口の段階です。2025年9月、ソフトバンクがApple Watch向けに国内初となるRedCapの商用サービスを開始しました。ウェアラブルという、まさにLPWAとフル5Gのどちらでも収まりが悪かった領域からの立ち上がりです。

世界に目を向けると、展開が最も速いのは中国で、大手3社がそろってRedCapネットワークを展開しています。北米ではT-MobileとAT&Tが商用カバレッジを広げ、Verizonも2026年中の展開を表明。イギリスではBTグループとVodafoneが試験を終え、本格的な提供は2026〜2027年と見込まれています。

普及のペースを左右するのが5G SA(スタンドアローン)の整備状況です。RedCapはSA構成のネットワークを前提とする技術であるため、SAの展開が進んだ地域から順に使えるようになるという関係にあります。

日本のLPWAは「規格が寡占に向かった」6年でもあった

本記事の公開当時、LPWAはSigfox・LoRaWAN・NB-IoT・LTE-Mなど複数の規格が並び立ち、どれが主流になるか見えない状況でした。6年を経て、日本ではこの顔ぶれに変化が出ています。

たとえば非ライセンス系の代表格だったSigfoxは、フランスの本家が2022年に経営難から再建手続きに入り、その後シンガポールのUnaBizが事業を引き継ぐという波乱を経験しました。日本ではKCCS(京セラコミュニケーションシステム)が電気通信事業者として運営しており、本家の再建局面でも「日本のユーザーには直ちに影響はない」として運営継続の方針を示し、2026年現在もサービス提供と障害情報の告知が続いています(KCCS Sigfoxニュース)。

ここから読み取れるのは、LPWAを選ぶときは「規格の性能」だけでなく「その規格を誰が何年運用し続けてくれるのか」も判断材料になるということです。センサーは一度設置すれば5年、10年と使い続ける前提の機器です。設置してから通信網が畳まれてしまえば、端末が生きていても意味がありません。速度や電池持ちのスペック比較に目が行きがちですが、事業継続性こそがLPWA選定の実務上の勘所だと言えます。この点、キャリアが自社網で提供するNB-IoT/LTE-Mのようなライセンス系は、携帯電話網の一部として運用される安心感がある一方、キャリア側の設備方針転換の影響を受けるという別のリスクもあります。

LPWAの役割がなくなるわけではない

RedCapが出てきたからといって、LPWAが不要になるわけではありません。

RedCapが狙うのは「LPWAでは足りない」帯域であり、逆に言えば数kbpsで足り、電池1本で数年動かしたい機器なら、依然としてLPWAが最も合理的です。スマートメーターや河川の水位計、農業用センサーのように、送るデータが1日に数回・数十バイトという世界では、RedCapの性能は必要とされません。

2026年の構図は、二極から三層へと変わったと捉えるのが正確です。

  LPWA 5G RedCap 5G(通常)
速度の目安 数kbps〜数百kbps 数Mbps〜数十Mbps 数百Mbps〜数Gbps
端末の電池持ち 数年 数日〜数週間 1日程度
主な用途 センサー・検針・見守り 映像監視・ウェアラブル・資産追跡 スマホ・AR/VR・高精細映像
規格上の位置づけ NB-IoT / LTE-M / Sigfox / LoRaWAN 3GPP Release 17(NR-Light) 3GPP Release 15以降
日本の状況(2026年8月) 定着・実運用中 立ち上がり期(2025年9月に国内初の商用開始) 人口カバー率98.6%

まとめ

LPWAのポイントは以下の通りです。

  • 通信速度では5Gが圧倒。ただ、LPWAは通信コストがべらぼうに低い。
  • センサーなど、静的な通信にはLPWAで十分。
  • GSMAは2020年に「2022年までに50億台」と予測。LPWAは実際に接続数を伸ばし続けている。
  • 2026年は「速さの5G」「安さのLPWA」の二極から、あいだを埋める5G RedCapを加えた三層構造へ。ただしLPWAの役割が消えるわけではない。
  • 規格選びでは性能だけでなく「その通信網が何年運用され続けるか」も重要な判断材料になる。

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華々しく取り沙汰される5G関連ニュースの裏で、LPWAは着実に成長を続けています。

※本記事は2020年公開の内容をもとに、5G RedCap(NR-Light)の登場と日本での商用化状況、LPWA各規格の運用体制の変化など2026年8月時点の最新情報に更新したものです。