アメリカと中国は貿易戦争・通信戦争を経て本当の戦争に突入しそうな勢いになっています。
この最中、アメリカは「5Gクリーネットワーク」という国内通信事業における中国当局の脅威を排除する取り組みをスタートさせました。
中国企業排除を国内から排除すると同時に国際的に大きくアピールする取り組みです。
5Gクリーンネットワークは日本企業にも大きく関係し、今後は日本企業のファーウェイをはじめとした中国企業との付き合い方も大きく変わらざるを得ないでしょう。
5Gクリーンネットワークの概要と日本との関係について詳しく解説していきます。
目次
5Gクリーンネットワークとは
5Gクリーンネットワークとは、以前からアメリカが進めていた5Gクリーンパスという取り組みに基づき、中国からの脅威を排除するサービスです。
簡単に言えば、中国の様々なインターネットサービスの中で、危険性が高いと判断したものをアメリカ政府が名指しして排除する呼びかけになります。
まずは5Gクリーンサービスの概要について理解していきましょう。
中国当局の脅威を排除する取り組み
5Gクリーンネットワークとは、アメリカの国内事業者向けの取り組みで、アメリカ国内の通信事業者を中国当局の脅威から守る取り組みです。
国内事業者向けに中国の危険な企業やアプリなどを排除する取り組みで、アメリカのポンペオ国務長官は「クリーン・ネットワークは、中国共産党などによる悪質な攻撃・侵入から、米国民の個人情報と企業の最も重要な情報を保護するための包括的なプログラムである」と話しています。
アメリカの対中国向けの取り組みであると同時に、中国をアメリカの通信事業から排除する取り組みです。
5Gクリーン・パスに基づく取り組み
5Gクリーン・ネットワークは、トランプ政権が今年4月に公表した「5Gクリーン・パス(5G Clean Path)」構想に基づく取り組みです。
クリーン・パス構想とは、5Gによる通信がアメリカの外交関連施設を通過する際に、ファーウェイZTEなど信頼できない中国のベンダーからの機器・サービスを一切介さないことを通信事業者に対して求めるものです。
トランプ政権は5Gクリーン・パスに以下の5つの指針を付け加え、世界各国の産業界にも中国のメーカーをアメリカと同じように排除することを求めています。
5つの指針は次のとおりです。
- クリーン・キャリア:信頼できない中国の通信キャリアが米国の通信網に接続されていないことを確実にする
- クリーン・ストア:信頼できないアプリを米国のモバイルアプリストアから排除する
- クリーン・アプリ:信頼できない中国のスマートフォン製造者(ファーウェイを例示)が、製造した端末に米国のアプリを事前インストールしている、もしくは独自のアプリストアからダウンロードできる状況を阻止する
- クリーン・クラウド:アリババ、バイドゥ、テンセントなどの企業のクラウドシステムを通じて、米国市民の機微な情報や米企業の重要な知的財産が外国の敵対勢力に渡ることを阻止する
- クリーン・ケーブル:米国と国際インターネット通信をつなぐ海底ケーブルが中国政府による諜報に侵されないよう確実にする
これらの総称をクリーンネットワークとしています。
アメリカが排除するサービス
アメリカが排除する主なサービスは以下の通りです。
- TikTok
- アリババや百度、テンセントなどの企業が米国内で運営するクラウドベース
当初はファーウェイ排除を目的としていた5Gクリーンパスでしたが、今は中国IT業界全体を排除する動きへと変化しています。
5Gクリーンネットワークによる影響
5Gクリーンネットワークに関して、民間企業や西側諸国がアメリカの忠告を守らなかったからと言って法的な拘束力はありません。
しかし、アメリカが公式にこのような発表をすることによって世界には大きく「中国の情報産業は信頼できない」とアピールすることができるので、中国企業に影響が出ることは間違いありませんし、実際にすでに影響は出ています。
5Gクリーンネットワークでどのような影響があるのか、具体的に解説していきます。
法的拘束力はないが中国企業に影響を与えることは間違いない
5Gクリーネットワークを守らなかったからと言ってアメリカの通信業界に対して法的拘束力はありません。
ただし、政府がここまで大々的に中国IT業界を締め出す理由として「中国共産党政権がクラウドサービスを通じて、米国民の個人情報や中共ウイルス(新型コロナウイルス)のワクチン研究を含む米企業の貴重な知的財産にアクセスするのを阻止するため」だと言及している以上、アメリカでは実際に中国IT企業は締め出しになり、中国企業に影響を与えることは間違いありません。
アメリカが中国を信頼していないことのアピール
そして、日本をはじめとする西側諸国にとっても、アメリカがここまで大々的に中国を排除するように求めているのですから無視することはできません。
今や多くの国が「中国を選ぶかアメリカを選ぶのか」の岐路に立たされており、日本やイギリス、台湾、フランスを始めとした多くの国がファーウェイなどの中国勢を排除しています。
アメリカが5Gクリーネットワークを策定しアピールすることで、アメリカ国内だけでなく、世界的に中国のIT排除は加速していくことになります。
現実に日本でもTikTokの信用禁止が真剣に議論され始めました。
クリーンリストも公表
アメリカは、5Gに関してクリーンな取り組みをしている企業のリストである「クリーンリスト」も公表しています。
ここは、日本企業に対して明暗を分ける結果となりました。
結論的に言えばソフトバンクはリストから漏れてしまいました。
リストから漏れたソフトバンクは安全なのかどうか、リストに入る基準とともに解説していきます。
日本ではNTTとKDDIがリスト入り
アメリカが発表している5Gクリーンリストの中に、日本企業ではNTTとKDDIは入りました。
この2社は以前から5Gの通信網からファーウェイを排除していることは公表していたため、この点が評価され5Gクリーンリストに入ったものだと思われます。
ソフトバンクはリスト漏れ
一方、以前からファーウェイとの強い関係性が指摘されていたソフトバンクは5Gクリーンリストから漏れてしまいました。
2018年時点では、ソフトバンクの携帯基地局ベンダーシェアのうち59.9%がファーウェイとなっています。
今後はエリクソンとノキアを採用すると発表していますが、2018年時点の数字を見るとアメリカがソフトバンクを信用していないと判断しているのも頷けます。
ソフトバンクの取り組みについて知りたい方はソフトバンクのホームページを参照してください。
ちなみに、楽天モバイルはNECをベンダーとして選んでいるため、安心だと言えるでしょう。
楽天モバイルの5Gサービスはまだ開始されていませんが、通信ベンダーは安全ですし4Gであれば1年間無料なので、安く安全を求めるのであれば実はかなりメリットの大きなキャリアです。
詳しくは下記をご覧ください。
ソフトバンクは安全なのか
では、ソフトバンクは安全なのでしょうか?
確かにアメリカが懸念している通り、ファーウェイが個人情報を中国共産党に提供している可能性は否定できません。
実際にファーウェイが中国政府、人民解放軍と深い繋がりがあることは事実であることは広く知られています。
そのため、携帯基地局ベンダーの6割もファーウェイに頼っているソフトバンクは危険と言えば危険です。
しかし、今の日本国内の世論を考えらればファーウェイ排除は避けようがありません。
ソフトバンクもノキアやエリクソンへの転向を表明しているため、将来的には安全でしょう。
すぐに危険性はないものの、心配は人は様子を見ながらソフトバンクを利用すると言ったところが無難ではないでしょうか?
ちなみにソフトバンクは2年間は5Gを4Gと同じ料金で利用できるので、お得と言えばお得です。
すでにソフトバンクユーザーの人が様子見がてらソフトバンクの5Gを試すのであればメリットがあるプランになっています。
詳しくは以下に。
まとめ
アメリカが中国に対して本気の排除を図っています。
思えば2年ほど前にアメリカがファーウェイ排除を主張した時には「アメリカの言いがかり」的な世論が多かったものの、今は中国のウイグルや香港への対応、新型コロナウイルスへの対応、そして日本をはじめとした周辺国との侵略に近い領土争いを見ていると、アメリカのこれまでの主張に同意する人の方が大半になってきました。
実際に中国のIT企業の危険性は定かではありません。
しかし、情報産業が国の安全保障を担っていることだけは事実です。
中国企業が中国共産党に利用されていてもいなくても、安全保障という観点からは中国のIT企業を排除するというのは、日本の立ち位置にとって当然だと言えるでしょう。
その中で、契約するキャリアも私たち個人が慎重に検討すべきかもしれません。