ローカル5G

ローカル5Gでケーブルテレビに光が当たる|5G時代のケーブルテレビの役割とは

ローカル5Gでケーブルテレビに光が当たる|5G時代のケーブルテレビの役割とは

【2026年8月 追記】

本記事は2020年当時のローカル5G黎明期の情報です。2026年現在、ローカル5Gは工場・病院・物流拠点・農場などで実導入フェーズに入り、免許取得件数も着実に増えています。全国の5G人口カバー率は98.6%(2025年度末)に達し、公衆網とローカル5Gを使い分ける段階に移りました。

「5G時代になるとケーブルテレビに光が当たる」と言われています。地上デジタル放送では受信できない4k8k映像を、ケーブルテレビの光回線であれば受信できるというだけではありません。ケーブルテレビはローカル5G構築に欠かせない存在とも言われています。

ローカル5Gとは、特定の地域や工場など限られたエリアに構築する5G通信網のことです。工場のIoT化、病院での遠隔診断や遠隔手術、工事現場の無人化などへの活用が期待されています。大手キャリアは2020年春から5Gを開始しますが、基地局設置の制約から利用できるのは一部エリアのみで、全国の地方にまで5G通信網が行き渡るには5年程度先になると見られていました。一方、ローカル5Gを導入すれば、特定の地域や工場・施設単位で全国展開に先駆けて5G通信網を構築できるようになります。本記事では、ローカル5Gになぜケーブルテレビが欠かせないのか、そのポテンシャルと住友商事の取り組みを解説します。

ケーブルテレビの5Gにおけるポテンシャル

ケーブルテレビの現状

日本の半分以上の世帯が加入、70%が光回線

日本全国のケーブルテレビの加入世帯は約3,055万世帯世帯普及率は約52.2%と、日本の世帯の半分以上が加入しています。平成29年の約3,115万世帯から平成30年は約3,151万世帯へと、人口減少社会でも地域に根ざして着実に加入世帯を増やしてきました。

5G通信網の構築には光回線が必須です。5Gの電波はこれまでより高周波で通信距離が短く、1つの基地局がカバーできる範囲は200m程度とされます。そのため無数の基地局同士を光回線で結ぶ必要があり、5G通信網構築には2020年の開始から3年以上かかると言われていました。ケーブルテレビはすでに敷設済みの有線電気通信設備の実に70%が光回線であり、ローカル5G導入に必要なインフラがすでに整っていると言えます。

地上波よりも映像面でも優位に立つケーブルテレビ

ローカル5Gとは直接関係ありませんが、光回線を敷設しているケーブルテレビは高速大容量通信に対応しているため、地上デジタル放送では受信できない4k8k映像も配信できます。ケーブルテレビはすでに2015年から4k放送を開始し、8k放送の実験にも取り組んでいました。今後は4k8kを視聴するために地上波からケーブルテレビへ切り替える人が増える可能性もあります

ケーブルテレビがローカル5Gに欠かせない理由

ケーブルテレビがローカル5Gに欠かせない理由
強み 内容
自前のインフラを活用できる 光ケーブルや電柱をすでに保有しており、近くの電柱に5G基地局を設置すればすぐ通信可能に
地域密着で迅速対応 地方とともに成長してきた企業で土地勘があり、通信障害時もすぐ駆けつけられる
事業者間でエリアが重ならない もともと1地域限定で営業しており、各社が蓄積したノウハウを共有しやすい
5Gの地方後回しを解消 大手キャリアは都市部→地方の順に展開するが、ローカル5Gなら地方が自前で先行構築できる

ローカル5Gで地方都市が自前の5G通信網を構築できれば、都市部と地方の情報格差を縮め、5Gインフラを求める産業の誘致にもつながる可能性があります。

住友商事とケーブルテレビでローカル5G推進へ

住友商事とケーブルテレビでローカル5G推進へ

住友商事は1984年からケーブルテレビへの出資を始め、1995年には国内最大のケーブルテレビ統括会社ジュピターテレコムを設立するなど、20年以上前から深い関係にあります。2019年12月には、住友商事・インターネットイニシアティブ・秋田/栃木/東京/三重/愛媛のケーブルテレビ5社・地域ワイヤレスジャパンの合計8社が共同出資し、「グレープ・ワン」を設立しました。ローカル5Gの活用を目的とした無線プラットフォーム事業として、日本ケーブルテレビ連盟と協力しながらケーブルテレビ事業者のローカル5G免許取得・導入・運営を支援する狙いです。

ジュピターテレコムのJ:COMブランドは仮想移動体通信(MVNO)も展開しており無線基地局設置のノウハウを持つ一方、ケーブルテレビ各社は基地局設置のノウハウや事業者数が乏しいのが実情でした。グレープ・ワンが支援することで、ケーブルテレビ事業者がローカル5G事業に参入するハードルを下げることができます。住友商事は2019年6月からローカル5Gの実証実験も開始しており、長野県安曇野市の工場と東京大手町を結んでゴーグルカメラ越しに360度視察を行う実験や、竹橋ビルと大手町を結ぶVR会議の実験に成功しています。

【2026年8月 追記】グレープ・ワンのその後

本記事で紹介した住友商事とケーブルテレビ各社によるローカル5G事業者「グレープ・ワン」は、2020年12月にミリ波帯のローカル5Gサービスを商用開始し、複数のケーブルテレビ事業者への提供を継続しています。全国のケーブルテレビ事業者との連携によるローカル5G免許取得支援・導入支援というスキームは現在も続いており、IP放送など新たな活用検討も進んでいます。ケーブルテレビが持つ光回線・電柱インフラを生かすという2020年当時の狙いは、実用フェーズに入った現在も基本的な方向性として維持されています。

2023年、「共同利用」制度でローカル5Gが商用フェーズへ

ローカル5Gの共同利用と商用サービス

2020年の実証実験段階から数年を経て、ケーブルテレビ事業者によるローカル5Gは実際に個人・法人向けサービスとして提供される段階に入りました。転機となったのが、複数の事業者が同じ免許エリアを分担して使える「共同利用」制度です。三重県のケーブルテレビ事業者ZTVは2023年9月29日、共同利用区域を設定したローカル5G無線局免許を全国で初めて取得し、同年11月から個人向けの固定無線アクセス(FWA)サービス「Z-LAN Air 5G Service」の提供を開始しました。同じく2023年10月には愛媛CATVが四国で初めて共同利用区域を設定したローカル5G免許を取得し、無線局8局・基地局32局という体制で「eねっとAir Premium」の提供をスタートしています。

共同利用制度によって1つの免許で複数事業者がエリアを分担できるようになったことで、単独では基地局整備の負担が大きかった地方のケーブルテレビ事業者でも参入しやすくなった点は、2020年当時にはまだ制度化されていなかった大きな変化です。これらのFWAサービスは、光回線を敷設しにくい世帯やケーブルテレビの「ラストワンマイル」区間の代替手段としても位置づけられています。

2024〜2026年の最新動向

ローカル5Gの最新動向

その後もケーブルテレビ業界と行政の双方でローカル5Gの整備は進んでいます。ここまでの流れを時系列で整理すると次のようになります。

ケーブルテレビ×ローカル5G 実用化の歩み 2019-20年 住友商事が 実証実験、 グレープ・ ワン設立 2020年12月 グレープ・ワンが ミリ波帯ローカル 5Gを商用開始 2023年9-10月 ZTV・愛媛CATVが 「共同利用」免許を 取得しFWA開始 2024年3・11月 JCTA「無線利活用 戦略2024」発表/ 200MHz幅に拡張 2025年9月末 Sub6帯局数が 1,817局に 拡大

具体的な数値でも、ローカル5Gの普及は着実に進んでいることが確認できます。

指標 数値 時点
ケーブルID連携基盤の無線サービス契約件数(JCTA調べ) 約315万件(104社) 2024年2月末
ローカル5G(Sub6帯)基地局数(電気通信業務用+一般業務用) 合計1,817局 2025年9月末
ローカル5G免許申請件数(2022年〜2024年累計) 2,063件(うち約7割がソニー系1社) 2022年1月〜2024年12月
ローカル5G免許人の数(総務省) 134者 2026年6月末
ローカル5G基地局数(サブ6+ミリ波、総務省) 約1,710局 2026年6月末

【最新】ローカル5Gの免許人は134者、基地局は約1,710局

ローカル5G全体の広がりを示す最も新しい公式値は、総務省の電波利用ポータルが公表しているものです。2026年(令和8年)6月末現在、ローカル5Gの免許人は134者、基地局数はサブ6とミリ波を合わせて約1,710局となっています(出典:総務省 電波利用ポータル|ローカル5G)。

2020年当時、ローカル5Gはまだ実証実験が中心で、免許を持つ主体はごく少数でした。それが6年で100者を超える規模に育ったことになります。ただし数字を見るうえで注意したいのは、「免許人134者」と「基地局約1,710局」は桁が大きく違うという点です。1者あたり平均13局程度で、これは全国をくまなく覆う公衆網とは性質がまったく異なり、工場・キャンパス・病院・農場といった特定の敷地を面で押さえる使われ方をしていることを示しています。ローカル5Gは「エリアの広さ」ではなく「使う場所の濃さ」で測る技術だということが、この数字からも読み取れます。

※本記事で先に挙げたSub6帯1,817局(2025年9月末)という数値とは集計の基準が異なります(届出ベースと免許ベースの違い、対象周波数の範囲の違いなど)。異なる統計どうしを引き算して増減を語ることはできない点にご留意ください。

日本ケーブルテレビ連盟は2024年3月、無線サービス活用に関する方針を更新した「無線利活用戦略2024」を発表しました。ケーブルテレビ各社が提供する無線サービス(地域BWA・ローカル5Gなどを含む)の契約件数は、ケーブルID連携基盤ベースで2023年6月末の約303万件から2024年2月末には約315万件(104社)まで拡大しています。インフラ面でも、グレープ・ワンは2024年11月15日、ローカル5G(ミリ波帯)基地局が対応する周波数帯域を100MHz幅から200MHz幅へ拡張するアップグレードサービスを商用開始し、既存の商用エリアでもより高速・大容量の通信が可能になりました。

一方で、総務省がまとめた免許統計を見ると、2022年から2024年までのローカル5G免許申請2,063件のうち約7割は、ケーブルテレビ事業者ではなくソニーネットワークコミュニケーションズ(旧ソニーワイヤレスコミュニケーションズ)1社によるものだったことも分かっています。同社は法人向け通信サービス「MOREVE(モアビ)」の拡大を背景に2024年4月以降申請を急増させており、ローカル5Gの担い手はケーブルテレビだけでなく、通信事業者・機器ベンダーなど多様なプレイヤーに広がっているのが2026年時点の実像です。ケーブルテレビは「地域に根ざした運用力」という強みを生かしつつ、こうした事業者とも競合・協業しながらポジションを模索している段階だと言えます。

まとめ

ケーブルテレビは日本の隅々までネットワーク網を構築しており、そのインフラはローカル5G構築にも活用できます。ローカル5Gは地方創生のチャンスになりうるものであり、その担い手としてケーブルテレビが期待されています。2020年時点では構想段階だったこの取り組みは、2023年の「共同利用」制度によるZTV・愛媛CATVの商用サービス開始を経て、2026年現在は実際に契約者がいるサービスへと育っています。

同時に、ローカル5Gの免許取得件数を見るとケーブルテレビ以外の事業者の存在感も大きくなっており、ケーブルテレビが持つ光回線・電柱インフラと地域密着の運用力は依然として強みですが、それだけで市場を独占できる段階ではなくなっています。今後もケーブルID連携基盤の契約件数やSub6帯・ミリ波帯の基地局整備状況といった公開統計を継続的に確認しながら、ケーブルテレビ各社の取り組みを追っていく必要があるでしょう。

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※本記事は2020年に公開した内容をもとに、「共同利用」制度によるZTV・愛媛CATVの商用化やローカル5G免許統計など2026年8月時点の最新情報を追記して更新したものです。